2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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柳澤大輔氏(以下、柳澤):けんすうさんはさっきの話題について、どうですか?
古川健介氏(以下、古川):僕は「お金の流れを逆にする」というのが、よくやるかたちです。例えば今、アルではいろいろな出版社さんの作品を売るためにコラボすることが多いんです。普通は、出版社からすれば「(アルに)お金を払うと、コラボして宣伝してくれる」と思うんですけど、今は出版社さんからはお金を取らずに、コンテンツを作るユーザーさんから月1,000円払ってもらっています。
「月1,000円で『アル開発室』というコンテンツを作るグループに入ってもらえれば、好きな漫画のコラボコンテンツに関われます」ということをしています。それが今2,000人ぐらいいるんですけれども、毎月それで1,000円ずつ払ってくれた人たちでコラボのコンテンツを作るんです。
そうすると、出版社さんは「どんどんコラボしましょう」になりますし、お客さんはコンテンツを作って漫画に貢献できたり、好きな漫画に関われたりするので、うれしくてやるんです。
こういうことをすると、他の会社では「100万円かけてコンテンツを作って、しかも熱狂的なファンが作っているわけじゃないので、そこそこのクオリティです」というものが「タダでできて、しかも熱いファンが作ったクオリティの高いコンテンツです」というふうにできるんです。そういう感じでお金の流れを逆にすることはやったりしますね。
柳澤:おもしろいですね。普通はお金を払うところをもらうとか、もらうところを払うだけで、ぜんぜん違うものになるということですね。
古川:そうですね。「お客さんがコンテンツを作る」というところを、我々がコストをかけて、気持ちよく作品に関われて大満足する、というサービスを作らないといけないので、仕事内容もだいぶ変わるというのはありますね。
柳澤:なるほどね。思いつかないアイディアの育て方で、さっきのお二方は自分が思いついたものをいったん1回捨てて、さらにもう1個を絞り出すという方法でやられていましたけれども。けんすうさんの場合は枠組みから、そもそもお金の流れを逆にしたら、それが人の思いつかない領域になるのかなということですね。これはこれできっと、まあまあ失敗することもあるんですよね? そんなことはないですか?
古川:そうですね。失敗することが多いですね。あとはお金の流れを逆にしたり、キャッシュをもらえるポイントをズラすことをよくやるんですけれど、普通に失敗するとめちゃくちゃお金がなくなるというリスクがありますね。
(一同笑)
なので、そこだけですね。アルを作った当初は、僕が自分で1億円ぐらい出してやったんですけど、そこはほとんど無駄になりました。
ただ「お金をめちゃくちゃ無駄にする人」というのは、企業活動においてはレアなんです。「あの人たち、非合理にお金を突っ込むんだ……」ということをやっておくと、わりと新しい分野を切り拓ける可能性があるので、そこはやっていますね。
柳澤:なるほどね。お金にまつわることは確かにありますよね。うちもたぶん上場会社では唯一だと思うんですが「サイコロ給」という制度を最初に作りました。給料をサイコロで振って決めるというだけでもう「頭がおかしいんじゃないか」と言われます。
確かにお金にちょっと絡めただけでも、だいぶ人が思いつかないアイディアになるということは、おもしろいかもしれない。お金じゃなくてもいいし。川口さんは、何かあります?
川口典孝氏(以下、川口):今はもう、おもしろいなと勉強させてもらいました。このセッションをやれてよかった(笑)。
(一同笑)
柳澤:そうですね。だいぶみなさんの「どうやったら思いつかないアイディアを育てられるか」という方法の輪郭がつかめてきた気がします。
川口:今おっしゃった通り、お金に対する常識をパツンと取っ払った瞬間、新しいものが出てきそうな気はしますね。
柳澤:それって、なぜなんですかね。お金が唯一共通の価値観になっているからとか、タブーがあるほうがむしろやりやすいんでしょうか。比較的「『ここは聖域だ』というところに突っ込むといける!」ということもあるのかな。
川口:「稼がなきゃ」「利益を出さなきゃだめでしょ」という思い込みがあるじゃないですか。それを取っ払うんです。もしくは今、けんすうさんが言っていた「お金の流れを逆にする」と、否が応でもこの何百年か出なかったアイディアが噴出しそうな気がしました。
柳澤:前澤(友作)さんがTwitterで10万円を配っていますけど、ああいうことをやる人がいないから、やっぱりあれだけで「うぉっ!」となるということですね。
樹林伸氏(以下、樹林):そうですね。お金の流れが逆という話ですけれども、僕がちょっと関わっているブロックチェーンの『JobTribes』というゲームは、ゲームをやるとユーザーにチャリンチャリンとお金が入ってきちゃうんですよ。やればやるほど稼げるというゲームなんですよね。
上野直彦氏(以下、上野):おもしろい。
樹林:俺も、そう聞いたときにおもしろいなと思ったんです。ドラクエでもジャラジャラジャランと金貨が落ちてくるじゃないですか。「あれが本当にお金として使えたらいいな」というところから、吉田直人さんという方が発想したんです。
(吉田さんは)「ごろうさん」と言われている人なんですけれども、その人からこの話を聞いて「あぁ、おもしろそうだからやってみようかな」と思った。僕は今、そのストーリーを作っているんです。
「あぁ、この発想はおもしろいな」と思ったのは、ブロックチェーンって要は仮想通貨なので、作ることができるわけですね。造幣局を持っているわけで、そこで作ったお金をユーザーに配っていくんです。
だからゲームをやっていくと給料がもらえたり、敵のモンスターを倒したときにバラバラと出てくるお金がいずれキャッシュに換えられるとかね。(海外では)実際に換えられるような流れができてきています。そもそも上場できないから日本ではちょっと難しいんですけどね。だけどあちこちで、例えばインドネシアなんかでも、キャッシュに少し使えるというかたちになってきているんですよね。
それがいきなり大金になるわけじゃないにせよ、ちょっとおもしろい話だなと思います。仮想通貨なので価値が変動しますから、最初の頃にそのキャッシュを握っておけば、大きくなっていったときにけっこうなお金になることもあるわけですね。
柳澤:なるほどね。
古川:漫画の1話目を読んだら、お金がもらえるというサイトをやりたくて……。
樹林:なるほど。
古川:やっぱりみんな「最初に読んでもらうハードルが高い」と言っていて「1話読んだら、お客さんに50円あげますよ」だったら、読む人がいるんじゃないかと思っています。
柳澤:おもしろいですね。それで続きを読んじゃうということだよね。
古川:そうですね。それで続きを読んでもらってペイするとしたら、漫画を読みまくることが職業になったりしないかなと思っているんです。
柳澤:今、広告にはありますよね。見るだけでお金が入るものがあるわけじゃないですか。
古川:そうですね。そういう感じです。しかも、漫画のほうが広告より絶対にいいわけじゃないですか。
柳澤:中毒性があるから、絶対に読んじゃうもんね。
古川:そうですね。そういうのをやりたいなと思っています。
柳澤:これはおもしろいですね。有料のものを無料にしたり、無料のものを有料にするだけで人が思いつかないものになる。これはもうかなりの黄金法則のような気がしました。とてもいい解をいただいて、もう終了してもいいんじゃないかな(笑)。
柳澤:まあ、いいや。まだ15分ありますので……逆に「狙いすぎて外した失敗談」とか、どうですかね。逆にみんなのヒントになるような話ってあります?
上野:そうですね。例えばですけれど……あのネタでもいいですかね。何年でしょう。南アでの大会(注:南アフリカ共和国で開催された、FIFA2010ワールドカップ)の後、2010年ぐらいだと思うんですけど……。
本当に今でこそ、大坂なおみ選手とか八村塁選手とか(ハーフやクォーターである日本人アスリートの存在)が普通になったと言うか、大活躍しているんですけれども……。いわゆる、アフリカ系日本人という表現がいいですかね。
それで、アフリカ系日本人が主人公のスポーツ漫画を(原案として編集部に)持って行ったんですよ。バスケなどではなくて、それもあえて柔道にしたんですね。もう大和魂みたいな「内股でしか決めない」というのを持っていったんですが、そもそもこの設定がけっこう早すぎるのか難しいのかで、編集部にはじかれたことがあったんですけど。
柳澤:それは何がいけなかったかというのは、分析しきれてないんですね?
上野:早すぎたとは言いませんけど……。今だといいんでしょうけど、ちょっと遅い感じもします。なので、タイミングがあるのかなというのはいろいろと考えさせられましたね。
柳澤:これは今日話してみて、僕がみなさんにご意見をいただきたいんですけれども、やっぱり「当てたことのある人」は、失敗してもやり続けて当てるわけじゃないですか。その人たちは、外しても「時代が合わなかっただけだ」と絶対に言うんですよ(笑)。
なんだか、自分の価値観には絶対的な自信があるから「いけるはずだ」「ただタイミングとかいろいろなものが重なっていけなかった」という言い方をするんです。今、ちょっとその匂いを感じましたね(笑)。
柳澤:だからこそ当てられるということなんでしょうけど、実際にそういう確信がありますよね。あまり失敗は気にしていないと言うか、自分の感覚は正しいと思い続けていると思うんです。その辺はどうなんですか?
上野:さっき言いましたけれども、僕はサッカーが好きで、(フランスで開催された)ワールドカップを1998年に見に行って……惨敗ですよね。
(初出場の日本代表は初戦、2戦目と連敗し、)もう本当は5対0、4対0ぐらいの内容の試合だった。実際は、1対0、1対0でしたけどね。決勝で見たフランス代表は、本当に多種多様な人種だった。その時に、逆から考えて「日本代表もこうならないとだめだ」と思ったんです。
(採用されなかった漫画は)キャラ設定や背景も違ったのかもしれないですけれど、なかなかうまくはいかなかったですね。「あくまで、それはサブキャラだよ」というふうになってしまったので、今、柳澤さんが言われた通りで「思い込みが強すぎるとこうなっちゃう」という例ですね。
柳澤:僕の話になっちゃうんですけれども、まだYouTubeが流行るか流行らないかという時代だと思うんですけれども、昔ちょっとボディビルにはまっていた時期があったんです。
ボディビルの応援というのが、すげぇおもしろかったんですよ。「大きい!」というのと「切れている、切れている!」というのと「すごいよ、ナイスポーズ!」という掛け声がおもしろいんですね。ボディビルの動画を見て、その掛け声を出すために押すボタンを4つつけて「ボディビルだけを見る動画プレイヤー」を出したんですよね。
これは絶対におもしろいと思ったんだけど、無風で、何の話題にもならない(笑)。
(一同笑)
でも10年ぐらい経って、このボディビルの掛け声がおもしろいという本が出版されたり、後になっておもしろさがわかってくるということがありました。「絶対におもしろかったはずだ」と思っているという、なんだか「失敗を分析しない」という傾向があるなというのが、今聞いていて改めてわかります。
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