2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Beware the Bug Spit How Spittlebugs Accidentally Doom Plants (全1記事)
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ハンク・グリーン氏:昆虫の半数以上は草食ですが、深刻な害をもたらすことがないのが多数派です。一方で、少数派に属するのが、アワフキムシです。
アワフキムシは、見た目は無害な小さな虫で、名前の由来となった白い泡を後に残します。ところが、農家にとっては、この泡はパニックの原因となることがあります。虫そのものには別段害はありませんが、この泡は、作物に深刻な被害が迫っている兆しの可能性があるのです。
「アワフキムシ上科(cercopoidea)」は、分類における上科の虫のグループで、実に3,000以上もの種があり、世界中でその姿を見ることができます。アワフキムシ、カエルノツバなどの俗称でも知られています。この小さな虫の大きさは、だいたい小ぶりの米粒ほどから殻無しピーナッツほどの間です。
アワフキムシをユニークかつ害虫たらしめているのは、その食性です。アワフキムシは、導管液のみをエサとして生きています。導管液とは、植物が根系を通して摂取する、土壌からの栄養分やミネラルが溶け込んだ液体です。導管液は、植物が光合成により作った糖分を運ぶ篩管液とは別物です。
アワフキムシにとっては都合良く、栄養分を導管で運ぶ仕組みを持つ維管束植物をはじめとする、多くの植物には導管液があります。維管束植物は、コケ類とわずかな例外を除き、植物の大多数を占めます。アワフキムシにしてみれば、外食先は選びたい放題ですね。
アワフキムシが、成虫になる前段階である「若虫」の形態にある間は、液体を吸いやすい管状の下顎を使って植物を刺し、導管液を吸います。しかし、導管液の栄養価はそれほど高いわけではなく、アワフキムシにとっては決して効率の良いエサとは言えません。つまり、すさまじい量を摂取する必要があるのです。アワフキムシ1匹は、24時間で自重量の280倍もの導管液を消費します。人間に換算すれば、毎日19トンもの食品を食べることになるのです!
当然のことながら、おいしくいただいた導管液には、行きつく先が必要ですよね。アワフキムシの若虫は、暴飲暴食の結果を肛門から排泄します。この排泄物には化学物質と、空気が混入されます。その結果、英語で言うところの「カッコウの唾(cuckoo spit)」として知られる、あの泡状の物質が生まれるのです。
この泡は実際には、アワフキムシが身を守るために身を包む、泡状の繭です。唾のように見えますが、どちらかといえばおしっこに近いものです。鳥のカッコウに一切関連性はありませんが、カッコウが姿を見せ始める早春に多く見られます。いずれにせよ、これは鳥の唾ではなく、虫のおしっこなのです。そこは断言しておきますね。
かわいらしくもあり、汚らしくもあるこの泡ですが、それほど害のある物のようには見えません。しかし、アワフキムシは植物にとっては大きな脅威です。アワフキムシ自体に害はありませんが、その食害が植物全体の健康にダメージを引き起こすのです。
アワフキムシが害虫たるゆえんは、植物にとっては致死的な植物病原性細菌、キシレラ・ファスティディオーサ(Xylella fastidiosa)、つまりピアス病菌を媒介するからです。なんだかホグワーツで習う呪文のような病名ですが、これは植物の枯死を引き起こす、実在の病原菌です。
事実、ピアス病菌はもっとも危険な植物病原性細菌の一つと目されており、世界各地で560種もの植物種に感染します。ピアス病菌は、アワフキムシが口で吸い付く先の、植物の導管に感染します。ピアス病菌に侵された植物は、菌のコロニーにより導管を詰まらせ、水や養分の流れが滞ります。その結果、植物は必要な養分を得ることができなくなります。これは深刻な事態です。
感染した植物の葉は落ち始め、生育は鈍化します。感染を見過ごされてしまった植物は、やがて枯死します。「カッコウの唾」を作るこの小さな虫は、樹液を吸うことにより、植物から植物へと、恐ろしい病原菌を媒介するのです。
まず、アワフキムシが病原菌に侵された植物から汁を吸うことにより、細菌が虫の腸にコロニーを作ります。そしてこのアワフキムシが別の植物に吸い付くと、細菌を移してしまうのです。
植物にとって迷惑なのはもちろんですが、農家や農業全般も、この病気により大きな打撃を受け、困った事態となります。ピアス病菌は、農作物の多くの病気の背後に潜む真犯人でもあります。残念なことに、この病気に対する治療薬はありません。そのため、ブドウやオリーブ、かんきつ類などの農作物が感染を受けた場合は、被害は甚大です。
2008年、イタリアのレッチェ県で見つかった「オリーブ早期枯死症(Olive quick decline syndrome)」として知られる病気が、最初の例でした。2015年には、科学者たちは1万ヘクタールものレッチェ県のオリーブ畑が感染を受けたと試算しました。
これは実に、オリーブの半数近くが被害を受けた計算になります。言葉を換えれば、10年足らずのうちに、100万本近くのオリーブ樹に感染が拡大したことになります。中には、樹齢100年を超える古樹もありました。しかも、さまざまな試みにも関わらず、この病気はなかなか根絶することができません。
うれしいことに、科学者たちは、ピアス病から農耕地を守る手段の開発に乗り出しています。すでに、3,000種もあるアワフキムシの中から、病気を媒介する種の特定に成功しています。イタリアのオリーブ樹に被害を広げた主犯は、ホソアワフキという虫であることが報告されており、科学者たちによりますと、2014年8月イタリアのサレント半島で捕獲されたホソアワフキの100パーセント近くが、この菌の感染に陽性であったことがわかりました。
研究者たちはさらに、病気の拡大を防ぐスプレータイプの薬品など、さまざまな形での予防や治療の技術をテスト中です。
こんな小さなアワフキムシが、甚大な被害をもたらす元凶であるなんて、ちょっとかわいそうな気がします。アワフキムシにしてみれば、泡状の排せつ物でできた繭にくるまって、一生懸命に生きているだけなのですから。願わくば、真の元凶である病原菌を撃退し、このちっちゃな虫が「カッコウの唾」で植物を飾り付ける傍らで、人間も平和に共存できる日が来ると良いですね。
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