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サイボウズのリモートワークの歴史とコロナ対応について(全2記事)

「ここまで来るのに10年かかった」 サイボウズの"オープンチームワーク"ができるまでの苦難の歴史

新型コロナウイルスの蔓延により、働き方に急激な変化が必要とされる、昨今。首都圏を中心にテレワークを導入する企業が増えてきました。顔が見えない中で、マネジメントや人事評価、社内コミュニケーションをどう取ってくかなどについては、まだ事例が少なく、なにが正解と言えるのか難しいところです。そこでこちらのイベントでは、テレワークを含めた先進的な働き方を実践してきた講師の方が「テレワーク中の社内コミュニケーション」について話します。本パートでは、株式会社サイボウズ コーポレートブランディング部 部長の大槻幸夫氏が語っています。

サイボウズ 営業職の日報

大槻幸夫氏(以下、大槻):(スライドを指して)「サイボウズはどうなんですか」と、ちょっと例を持ってきました。例えば営業さんの日報ですね。

「kintone提案が不安です」と。この方はkintoneを提案しているんですけれども、こうやって書いてくるわけですね。すごいなと。全社員見れますから。通知は来ないですけれども。

これに対して先輩社員から「わかるよ。私も最初はそうだった」とか「こういうふうに勉強していくと、スキルが高まるよ」みたいなやりとり。

こういったやりとりがこのチームにとってもすごく大事ですし、リモートワークで1人の働き方の中で大事ですし「こういうやりとりをしているんだ」というふうに、関係ない社員も見れると。

「あー、こういう動きが社内であるんだな」ということがわかるわけですね。

それから開発と営業のやりとり。こちらですね。メーカーさんだとよくあると思うんですね。開発と営業の仲が悪くて「こんな製品売れるか」「いや、売り方が悪いんや」みたいな。やっぱりあれも赤の他人になってしまうと、そういう言葉遣いになってしまうのかなと。

ふだんからデジタル上で交流があれば、そんなことは言えなくなってくると思うんですね。

サイボウズの場合、例えばkintoneのプロダクトマネージャーが「今度、こんな機能がつきます」と呟くわけですね。そうするとどうなるか。営業さんとかが「いいね!」ボタンを押すと。これだけでいいんですね。

これだけの簡単な交流でも、人の名前と顔が見えるから、そんなひどいコミュニケーションは生まれないんですね。

情報を“徹底的に”公開する

大槻:こうやってデジタル上で用意しておけば、ふだんであってもリアルで、拠点ごとに開発と営業が違うとなってくると赤の他人になってくるので、コミュニケーションががさつになってくると。テレワークでやればもっと影響が大きくなる。

これをふだんからクラウドのやりとりをしていれば、そういう問題は起きにくくなるんですよね。サイボウズは性善説なんですねって言いますけれども、そうじゃないと。善意で組織は動かないので、情報を徹底的に公開しておいてくださいと。

公開しておけば何か問題があったときにそこまで立ち戻る、そこまでをルール化するみたいなことができるよね、という仕組みで考えていると。

なので多くの会社さんは、部活動・誕生日会補助金を出したりしていると思うんですけれども、これもやりっぱなしではだめですよと。やった結果をグループウェアにレポートを報告してくださいね、と。そうしたら会社からお金を支給します、というルールにしています。

これをやらないと「また会社のお金を使ってあいつらは何をやっているんだ」という疑心暗鬼、不安。風土が乱されるわけですよね。でもレポートをちゃんと上げてくれれば「あの人はこんなことをやってるんだ。こんなことに興味があるんだ。今度話してみよう」みたいな、タテ・ヨコ以外のナナメの関係が生まれてくると。

毎週木曜日、先ほども朝10時から経営会議をやっていました。この内容もその日のうちに議事録が全社員に共有されますので、ここまでやるから経営者視点が持てるし、ここまでやるからテレワークで孤独な中、会社の方向性を見失わずに一体感を持って働けるのかなと。

こうやって経営情報を出さないで「最近、社内・社員の当事者意識が低いんだよな」とおっしゃる社長さんも多いんですけれども、それはそうですよねと。

情報がなければそんな意識は持てなくて。サイボウズの場合は毎週毎週こうやって「社長とか経営陣がこうやって、こういうことに関心を持っているんだな」「トピックとして話し合っているんだな」「うちの部長はこういうふうに言っていたな」と。

こういうことが見えるから、社員も一人ひとり当事者意識を持てるのかな。テレワーク中も一体感を失わずに仕事ができるのかな、と思いますね。

なので成功の鍵は「ITインフラにおいては、クラウド上に隣で働いている人を感じられる空間を再現するということ」がすごく大事なのかなと思います。

風土として「オープンチームワーク」があればいい

大槻:例えばサイボウズの取り組み、最近だと日報もあるんですけれども、さらに分報というのがあります。社内Twitterみたいな感じですよね。

「今から仕事を始めます」とか「お昼に入ります」とか「これからカタログの原稿を作ります」とか。こういうふうに書いてもらえれば、すごくわかりやすいですよね。隣の人が何をしているかがわかる感覚で、テレワークもできると。マネージャーとしてもすごく嬉しくて。

これはリアルな状態でもそうですけれども、1日中会議が入ってて、メンバーが何をしていたか把握していないときがあるんですよね。こうやってログを残してくれているとこうやって頑張ってくれてたんだな、ここに詰まっていたんだな、誰かがヘルプしてくれたんだなとそういうことがわかるので。評価を変えなくていいんですよね。

様子がわかるから普通に評価ができる、苦労しないということなんですよね。

1対1のコミュニケーションツールは今までいっぱいありましたが、やっぱり阻害されてしまう人が出てきてしまう。メールとかチャット、そしてZoomなんかもそうですよね。これも便利なツールなんですが、やはりそこに入れないと情報阻害されてしまう人がいる。

だったらグループウェアでみんな一緒の場に入って、その中で緩やかに話をするんだけれども、そこというのは通知の関係性ではないんですけれども、見に行けると。こういう風通しの良いITインフラがあると一体感を失わずに、リモートワークが文化として定着していくのかなというふうに思います。

成功の鍵は、風土としてオープンチームワークがあればいいと思うんですね。例えばサイボウズの総務部であればどうか。「出張手続きはどうするの?」と、社員からよくある質問だと思うんですね。これをメールで受け付けていると、宛先に入っていないとわからない。代わりをお願いすることも難しいわけですよね。

なので、総務部では問い合わせはkintone化しましたと。kintoneに問い合わせを載せてくださいと。そうすると全員見えますから「代わりに答えてください」ということをお願いしやすいです。

実際の管理画面は(スライドを指して)こんな感じですね。ここに質問が並んでいて、今のステータスと対応している総務部のメンバーが、ここに並んでいると。

これのいいところは、代わりは誰でも対応できるというオープンチームワークの部分があるんですが、質問をしようと思ったら「同じ質問がなかったかな?」と検索すれば、多分だいたいあるんですね。総務部への問い合わせ。

なので、わざわざ質問しなくてもすぐに回答が得られる社員側のメリットもありますし、後は会社としてノウハウが資産として残っていくというメリットもあります。

これはメールでやっていると、メールだと受信ボックスに溜まっていくだけなので、退社したらそれは全部失われてしまうんですけれども。kintoneであれば会社の場所ですので、このやりとりがナレッジとして残っていく。

後から入った人がこれを見ればすぐに対応できる、わかる。こんな一石三鳥のメリットがあるのかなと思います。

なので、今回のコロナ対応でもkintone上にスペース、コロナ対応スペースを作って、こういうふうに人事総務が対応しているよというのを見える化して、そうしておくと例えばそれを見た他の部署の社員が、開発ではこうして欲しいマーケでこうしてほしいと。

どんどんブラッシュアップが生まれるんですね。要望なんかもkintoneアプリで対応していけばメールで溢れることもないですし、重複することもないですし。スムーズに対応していけるし。

もしこれが来年同じ時期にコロナが始まったときに、この情報をもとにまた新たにスタートを、すぐにスタートすることができるということになります。

ということで、先ほど制度・風土・ツールと申し上げたんですが、やっぱり順序はあるかなと思っていて。いきなり制度とか風土とかを変えようとしても「みんなやっているのかな?」と疑心暗鬼が生まれた途端、組織変革が難しくなってくるので。

情報共有、しかもみんなが同じ場所にいて、見に行こうと思ったら見に行ける。こういうITインフラが導入されると制度改革、風土改革がしやすいのかなというふうに思っています。

今までは物理的なオフィスに出社するというのが通勤でしたけれども、これからはクラウド上のデジタルオフィスを加えて、こっちに出社しようと。時間あればコストをかけて、電車・車に乗ってみんなで会おうよと。濃厚接触しようよ、というかたちになるのかなと思っています。

試行錯誤があったからこそ、コロナに対応できた

大槻:まとめです。サイボウズは試行錯誤していたからこそ、危機に対応できたよと。ここまで来るのに、やっぱり10年サイボウズというのはかかっていますと。昨日今日でできたわけではないんですね。やはり風土が変わるというのが、すごく大きかったなと。

テレワークの成功の鍵は「クラウドにオフィスがあったから」というところですね。サイボウズの場合はクラウドで働いているというのがメインになっていたので、スムーズにできたのかなと。

そのときのポイントはオープンチームワーク、情報をオープンにしてくださいよと。そうすることでチームで働けますね。何気ない会話・雑談から全部をさらけ出すというポイントになってくるかなということです。

クラウド上にオフィシャルオフィスを作ると、今後の危機対応……。これから長めの梅雨ですね。大雨、梅雨、台風のシーズン、こうなってくるとまたリアルに出社ができませんので、そういったときにまた大事になってくるのかなと思います。

あとすみません、お知らせを何点か。今、サイボウズはこの流れをどうやったのか? ということを職種別に、部署別にご紹介をするオンラインセミナーをやっております。

これまで、もう終わった回なんですけれども。総務労務編とか、人事、採用系などをやっておりますが。Webの方からお申し込みをいただければ、オンデマンドで録画をご覧いただくことができますので、そちらをぜひご覧いただければと思います。

詳しいサイボウズのリモート対応の歴史は「サイボウズ テレワーク」で検索いただいたサイトで、PDFでダウンロードいただけるようになっていますので。ぜひご覧いただければと思います。

また、サイボウズの働き方のご案内ですね。こういった私の情報なんかを、たまに気が向いた時につぶやくグループがありまして(笑)。Facebookで「働き方改革コミュニティ」で検索いただくと「powered by Cybozu」と、こちらのグループが出てきます。

本日の日付とセミナー名をご記載の上、参加申請をいただければ、こちらの方でサイボウズの情報を私の方から、たまに呟かせていただきますので、ぜひご参加いただければと思います。私からのお話は以上となります。ご清聴いただきましてありがとうございました。

司会者:大槻さん、ありがとうございます。

大槻:ありがとうございました。

対話、コミュニケーションをまんべんなく共有する手段

司会者:それでは質疑応答に移らせていただきたいと思います。まず1つ目なんですけれども、経営層から社員への対話やコミュニケーション、それらを社内でまんべんなく共有する手段ですね。あと「働き方が変わる中で注意すべき点等あれば知見を高めたいです」というご質問をいただいております。今のお話の中にもあったかと思うのですが、改めてご回答をお願いします。

大槻:なるほど。まんべんなくというところが、曲者だなと思うんですけれども(笑)。やっぱり無理はしない方がいいですね。やっぱり興味を持った人が来るという状態がすごくいいなと思っていて。

最近、サイボウズで起きているのは1,000人ぐらいになってきて、みんながみんな情報にリーチできるわけじゃなくなってくるので、キュレーターみたいな存在がどんどんどんどん増えています。グループ内を駆け巡るスキルが高い人たちが「営業でこんな発表をしていたよ」「これマーケの参考になるね」とか。

「人事がこんなことを言っていた、みんなアンケート回答した?」とか。そんな感じで、情報を集めて配信してくれる人が出てきまして。そういう人を、普通の会社だと「お前仕事しろよ」って「お前何やっているんだ」って潰しちゃいがちなんですけど。実は組織変革、組織が健全に動いていく上では、その情報流通を賄う人ってオンライン上では大事だなと感じるんですね。

なので、もしそういう人が出てきたら大事にしてあげて。あるいはいなかったら「そういう人いないかな?」という目で探すとか。そういうことをすると、トップのメッセージなんかもまんべんなくといいますか。いい感じで届いていない人に届くようになるかなという気はしています。

ゆるい雑談を否定しない

司会者:なるほど。ありがとうございます。あと、オンラインでの自然な雑談の生み出し方ですね。アドバイス等をいただければと思います。

大槻:これも、仕掛けようとするというのはいつも失敗するかなというか(笑)。自然に生まれるというのは、やっぱり自然なので。サイボウズの場合は、例えば「日報」とか、さきほどの「分報」というツールが、自然な雑談が生まれる場所になっているんですけど。

やっぱり強制しないということが大事ですね。「やりたい人がどうぞ」と。「場は用意しているけれども、やるかやらないかはあなたの自由です」と。盛り上がっていく瞬間を見ていると、だいたい共通するのはやっぱり仕事以外の話をし出した時ですよね。

なので、ゆるい雑談を否定しないというか。そういう場ですよという風土を作っておくということと、そこで盛り上がっていくと。今日もついさっきある人の日報のところで「誰が『スラムダンク』のキャラクターに似ているか」みたいな話題で突発的に盛り上がったんですね(笑)。

「ヨシハラくんは清田信長かな」とか、そういう感じで盛り上がった(笑)。そういう盛り上がりの瞬間を見つけて、もし雑談を盛り上げたいんだったらそこにマネージャーとして加わっていって「マネージャーもこれは承認している感じなんだ」と。「ここで盛り上がっていいんだ」というのを印象づけ、プロデュースをしていくことで、敷居がどんどん下がって書き込む人が増えていくみたいな。

やっぱりその場所を用意する。「そこはなんでも話していいんだよ」という雰囲気を醸し出す。それで、実際そういう盛り上がりがあったらすかさず乗り込んでいくということが、行動で示すということの方が規定するよりは大事かなという気がします。

司会者:なるほど、ありがとうございます。あと「オープンにすることによる弊害・反発等はなかったでしょうか」というご質問をいただいております。

大槻:そうですね。これが今まさにサイボウズが直面している課題で、オープンにすると例えば不満も見える化されるんですね。組織の中で問題があったとすると、それがすぐに見える化されてくるのがオープンの最初のデメリットですね。ただこれは、やっぱり問題は解消した方が組織にとっていいので。そこを上手く……問題、不満を言った人を責める文化をなくしたりとか。言われた方も人格を否定されたんじゃなくて、よくするための行動なんだと受け止めたりとか。

見ている側もこの人が良い悪いという価値判断をしないで、何が問題だったかを解決する感じで議論を誘導していくみたいな、そういうスキルが必要になってくるので。オープンは手放しではいいわけではなくて、やっぱり議論のスキルであったりそういう問題発言に向き合う態度とか、文化というのも一緒に醸成していくことが大事ですけれども。これができると、もうめちゃくちゃ強い組織ができるなと感じています。

司会者:なるほど、ありがとうございました。

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