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サイボウズのリモートワークの歴史とコロナ対応について(全2記事)

成功のカギは「オフィスをクラウドに再現した」こと サイボウズのテレワークを土台から支える3つの要素

新型コロナウイルスの蔓延により、働き方に急激な変化が必要とされる、昨今。首都圏を中心にテレワークを導入する企業が増えてきました。顔が見えない中で、マネジメントや人事評価、社内コミュニケーションをどう取ってくかなどについては、まだ事例が少なく、なにが正解と言えるのか難しいところです。そこでこちらのイベントでは、テレワークを含めた先進的な働き方を実践してきた講師の方が「テレワーク中の社内コミュニケーション」について話します。本パートでは、株式会社サイボウズ コーポレートブランディング部 部長の大槻幸夫氏が語っています。

サイボウズってどんな会社?

大槻幸夫氏:最初にお伝えしたいのが、頑張ってパワポを減らしたんですけれども66枚ぐらいありまして。駆け足でお話しすることになるかもしれませんが、ご了承ください。

私ですけれども、サイボウズでコーポレートブランディング、サイボウズという会社を知っていただく企業広報のマネージャーをしている大槻と申します。2005年にサイボウズに転職してまいりまして、オウンドメディアの『サイボウズ式』を立ち上げたりとか、昨年は出版事業を始めたりしました。

サイボウズをご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、サイボウズはどんな会社というところなんですけれども。97年創業で今年で23年目ということで、だいぶIT業界の中でも老舗になってまいりました。

現在は日本橋に東京オフィスを構えまして、6カ国16拠点で、全体で1000名ぐらいの会社ということで。3人で立ち上げたベンチャーが20数年経って、徐々に大企業に近づきつつある。そんな会社のお話ということで、聞いていただければと思います。

ビジネスは何をしているかと言いますと、今一番力を入れているのがkintoneですね。先ほどのマネーフォワードさんとも連携をさせていただいておりますけれども、エクセルで共有しているような情報をクラウドで手軽に共有するというようなサービスで、これが一番伸びております。

コロナ禍でのサイボウズの働き方

ここから本題に入っていきますけれども、サイボウズというと「働き方改革先進企業」ということで、多くのメディアから取り上げられていて。今年も働きがいのある会社ランキング、女性ランキング1位、アジアランキング8位に入りました。こんな感じなんですよね。

今回のコロナに関しても、ふだんからテレワーク当たり前という環境でしたので、スムーズに移行できたのかな思っています。

実態としてはどうだったかというと、2月28日にもう原則在宅勤務。それまでも、気になる方はどんどんテレワークしてねということだったんですけれども。会社としても全員に対して、出社を選んでいる方もNGということになりました。

なので、ちょっと細かい話ですけれども、例えば総務系であれば「領収書とかどうするの」というところが問題になったりしたんですけれども。もう基本的にはデータ添付で処理しますよ、ということにしたりとか。

電話の転送設定なんかをもちろんしていて、家で電話を取れるようにしていたりとか。

人事系であればいろんな押印が必要な書類とかがあったんですけれども、この辺、まずは期限が伸ばせるものは伸ばすと。

採用通知書などの押印が必要だったんですけれども、こういったものも廃止しましたとか。雇用契約書なんかも、データ系はkintoneで共有できますので、kintoneで終わらせようということになっております。

オンラインでの入社式&全社集会

時期が時期でしたので、入社、特に新卒ですよね。ここはもういろいろ他社さんもやられていますけれども、工夫してオンラインでやりますよということで。わざわざ画像を作って入社式『Welcome to サイボウズ』ということでやりました。

オンライン入社式でワイワイ歓迎し、人となりがやっぱり合わないので、よくこの人がわからないなというのもあるので。社員紹介をkintoneアプリでやったりとか、日報実況なんかを使っている、と。この辺は後ほど詳しくお伝えします。

こんな感じで、オンライン入社式で社員は総勢250人ぐらい参加して。後ろにお花見の壁紙を設定している人もいますけれども、Zoomで開催しました。kintoneで社員紹介アプリがあります。

新しく入られた方、新卒・中途を問わず「私はこんな人です」と紹介をするアプリがあって、そこに登録すると社員に通知が飛んで「ああ、こんな人が入ったんだ」ということがわかるようになっている。

あるいは入社式とかでいうと、毎月全社集会をやっているんですけれども、これもオンラインに移行しました。

社長がファシリテーター、ホストなんですけれども。毎回社内からゲストを呼んで、先ほどのマネーフォワードさんと同じような取り組みだと思いますね。トークラジオという感じで「今、何をやってるの?」というのをしゃべってもらって。

kintoneの実況スレを同時に用意して、そこに見ている社員が質問だとか、感想を書き込んでいく。それを社長の青野が見ていて拾っていって、さらに広げていくというそんなことをやっていたりしました。

「働き方の先進企業」になるまで

ここまでお話をすると「サイボウズはすごい進んでいるな」と。「さすが働き方の先進企業」と思われる方もいるかと思うんですが、もちろん最初からそうだったわけではないですね。

10年前は……。(スライドを指して)これは副社長の山田の、社内の書き込みを引っ張ってきましたけれども。インフラにお金がかかるとか、そもそもどうやって管理評価するのということがあって、在宅勤務をやっていなかったんですね。

ただ10年前に試験的にやってみようと。前日までに上長の承認をやれば、月4回まで在宅勤務できるよということだったんですね。3ヶ月間試験導入しました。

でもやっぱりルールが硬いんですよね。癖が強いというか。「モラル低下させることはだめよ」とか「コミュニケーションコストを増やしちゃだめよ」とか。前日までに申請しなきゃいけないというのも、かなり使い勝手が悪いですよね。ちょっと辛いなという感じだったんです。

それでやってみての社員の感想も、やっぱり同じような感じで。結果報告がわかりやすい資料作成しかできないんじゃないかとか、在宅で目に見えにくい「考える仕事」は難しいんじゃないのと、なかなか使われなかったんですね。でもそこに危機が訪れますと。3・11ですね。

輪番停電があり放射能漏れの危険性もあって、なかなか出社できなかった、と。なので、サイボウズも強制移行することになりました。これがおもしろかったのが、この時期は決算発表の時期だったんですけれども、テレワークでできちゃったんですね。

「これ、けっこういけるじゃん」ということが全社員の共通認識になりました。やっぱり試行錯誤していたからこそ、危機に対応できたのかなというふうに思います。ここから「じゃあデフォルトでいいよね」「普通に使える制度でいいよね」ということで、前日までの申請とかがなくなって。

ここから10年かけて今のサイボウズ、先ほどのサイボウズにたどり着いた、と。コロナが起きても、何の問題もなくスムーズに移行ができているよ、というかたち。

テレワーク成功のカギ

世の中の企業はどうかなと見渡してみると、やはり今回初めて在宅にチャレンジした会社が多くて、まだまだ問題があるよということですよね。なぜ変われないのかなと思うんですけれども、なぜサイボウズがテレワークの定着に成功したかを深掘りしていくと見えていくのかなと思っています。

あしたのチームさんのアンケートにも出ていますが、管理職はテレワーク期間中に何を思っているかというと「寂しい」というのが入ってくるんですよね。

おじさんは寂しいんだなと。寂しいとどうなるか。「在宅なんてだめだ、会社で会議するぞ」と。自分の寂しさを紛らわせるかのように「出社しろ」ということになって、テレワークが定着しないということが起きちゃうかなと思うんですね。

成功したポイントは、オフィスをクラウドに再現していたからかなと思います。オフィスの良さって何でしょうかと。やっぱり周りが見えることですよね。

「営業の方は今日みんな出払っていて、営業活動をしているんだな」とか「開発・運用のほうはバタバタしていたから、何かトラブルかな」とか、そういったことが見える。

これを風土と言い換えてもいいのかなと思います。サイボウズでは組織変革ですよね。テレワークに必要な3つの要素というのをあげています。『制度』。人事制度とかですよね。『ツール』。テレビ会議とかが入っていなければリモートワークはできませんので『ツール』。

この2つは目につきやすいので、みなさん取り組まれるんですけれども、肝心の『風土』はけっこうないがしろにされてしまっていないですか、と。

テレワークは一人ひとり家で孤独になりますので、みんな何しているのかなという、この不安ですよね。これが払拭されないと、なかなか厳しいのかなと思っています。

風土はどうしたらいいんでしょうか。サイボウズに無意識に根付いていた風土は何かというと、やっぱりグループウェアを使っていますので、何でも共有するという風通しの良さがあるかなと思います。

スケジュールも全社員共有していますし、社長の青野もやっていますので。青野はプライベートの予定も入れているので「今週末、お子さんの入学式なんだな」とかそういうところまで見えています。

みなさん日報をつけていますけれども、それも見えると。私はマーケですけれども、営業のみなさんの日報も見ることができて。昨日お客さんにこういうこと言われたんだな、というのもあるんですね。大事なのが、私に通知は来ないんですね。

私は営業ではないので通知が来ないんですけど、見ようと思ったら見に行ける環境が許されているよということです。

いろんなプロジェクトが動いていますが、これもスペース機能で共有されていますので「カスタマーサポートは何やっているのかな」とかそういうことも見に行けると。

こうやって他部署が何をしているのかが見えるから、安心してリモートワークをしていられるということがあるのかなと思うんですね。

すごくおもしろい話で、情報共有ツールが風土を決めちゃっているのかなと思っています。多くの会社さんではメールを使われていると思うんですけれども、宛先に入っていなければ見えないんですよね。当たり前ですけれども。

そうすると後ろに座っている人が何をしているのかわからないとか、テレワーク中はもっとひどいですよね。自分以外、自分とのメールのやりとり以外のやりとりが見えませんから、会社の動きがわからない。組織の壁とかも生まれてしまうと。

サイボウズはみんな同じ内容が見られるので、チームワークが生まれるよねということかなと思っています。

社員は在宅でバラバラになっているのに、肝心の情報はどうですかと。仕切られたままじゃないですかと。実はこのメールを使って仕事をしていると、テレワークって定着しにくいんじゃないですかと思うんですよね。

テレワークにすると、働き方はどう変わっていかなきゃいけないのかと。今までは一人ひとりが頑張っていればなんとなくオフィスにいて見える化されるので、できていたんですが。こうなってくるとバラバラですから。

チームワークで働くというかたちにシフトしないといけない、ということです。チームワークがすべて。そのチームの中にはいろいろあるけれども、アウトプットとしてチームが出ていればそれでいいじゃないかということですよね。

個人個人一人ひとりが、そんなにきっちり管理しなくてもいいよねと。そのチームワークの働き方をするときの大前提は、情報をオープンにシェアするということ。これは難しいですよね、複数人でコラボレーションするためには。

これはもともとオフィスでやられていたことかなと思うんです。だからそれはクラウドに、オフィスを再現するというコンセプトがすごく大事かなと。

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