2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
How to Fight COVID-19... with a Virus(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:研究者たちは、ここ数か月の間、COVID-19のワクチン開発を続けています。猛スピードのスケジュールで進行しているとはいえ、その手法のいくつかは、従来型のワクチン開発にほど近いようです。
よりクリエイティブな手法でアプローチを試みている研究グループもいます。人間の遺伝子を直接編集してしまおうというもので「遺伝子治療」と呼ばれています。しかし、みなさんが考えるほど突飛な手法ではありません。「遺伝子治療」において唯一突飛であるのは、その主なツールがウィルスであるという点です。つまり、現在ウィルスによって発生している問題を、ウィルスをもって制すわけです。しかし、このアプローチはまだ不確実で非常に高額であり、確定されたものではありません。
では、想定されているその仕組みを解説しましょう。
そもそもワクチンとは、人の免疫システムに、ウィルスなどの病原体から作られた安全な抗原を接種するものです。
ワクチンを接種された人体は抗原を認識し、一定期間の抵抗力を持ちます。つまり、弱体化もしくは無毒化したウィルスや細菌を人体に投与して、抗体が作られるようにするのです。
ところで、抗体を作らせる手段は、実は他にいくらでもあります。回復期にある患者から取った抗体を、危険な状態にある患者に投与する「回復期血漿療法」は、医療において使われることがあります。とはいえ、これはまだ試験段階です。
DNAとRNAなどの核酸をベースにしたワクチン候補の開発(注;核酸ワクチン)は、臨床試験段階で迅速に進行しています。これは、抗原を人体にまるごと注入するのではなく、人体の細胞に抗原を作らせてしまい、免疫システムに認識させることを試みるものです。
この手法におけるハードルの一つは、細胞へ遺伝情報を入れる方法です。特にRNAは、体内でたいへん容易に分解されてしまうからです。しかし、この手法のコンセプトはたった一つです。SARS-CoV-2(COVID-19の病原ウィルス)で言えば、人体に侵入するときに用いる突起部分のたんぱく質などのウィルスの特定の一部分を、人体の細胞に作らせてしまおうというのです。そこで、患者に単一の遺伝情報を注入するのではなく、毒をもって毒を制す、もしくはウィルスをもってウィルスを制するようなアプローチが試みられているのです。
ウィルスは、巧みに宿主の細胞に遺伝情報を侵入させます。ウィルスは、まさにそのためだけに生きています。ウィルスとは「核酸を侵入させる小さな小包み」であり、より多くの「小包み」を作るよう指令を出しています。そして人間が、この指令を再プログラムしてしまうのです。実はウィルスは、このような遺伝的指令を細胞に入れたい場合に使うには、うってつけの代物です。
ところで、これには人間が病気にかからないウィルスが必要になります。そこで、アデノ随伴ウイルス、略称AAVが、DNAを搭載させる器として使われます。AVVは、病原性が確認されていない微弱なウィルスで、これを自身は増殖しない上で必要な情報を搭載するように遺伝操作します。AVVは、別種のコロナウィルスへの対策として、すでに導入されています。
異なるAVVが、それぞれ別個の細胞組織に侵入します。COVID-19は肺を侵すため、気道に侵入してくれるAVVを見つける必要があります。培養した呼吸器細胞に侵入してくれるAVVは、すでに試験済みですが、実際の人体ではまだ試験されてはいません。
AVVは単純な「小型DNA注入ユニット」であるため、配列をどんどん入れ替えて、迅速に試験することが可能です。AVVを基盤とした遺伝子治療は、他の病気ではすでにアメリカ食品医薬品局に承認されているため、今後のいくつかのCOVID-19バージョンでの導入は迅速であると思われます。
この遺伝子治療で懸念されている欠点は、細胞を半永久的に編集してしまう点です。とはいえ、実はそれほど長期的にではありません。まず、生殖細胞はターゲットでないため、子孫にはこのDNAは受け継がれません。どのタイプの細胞をターゲットとするべきか、その全容はわかっていません。いずれにせよ、遺伝子の変化が生涯持続することはなさそうです。
つまり、SARS-CoV-2対策として開発された、AVVを基盤とした遺伝子治療は、一定期間しか持続しないのです。とはいえ、長期間有効なワクチンが開発されるまでの一定水準の防御としては、十分に機能するでしょう。
しかし、すでに分かっていることからは安全とされてはいますが、人間のDNAを直接いじってしまうことから長期的に起こりうる副作用の恐れを、完全に払拭することはできません。
何にもまして問題なのは、高額であることです。現在承認されているAVVを基盤とした遺伝子治療は、きわめて稀な遺伝病の治療に用いられるため、非常に高価です。しかし、COVID-19へのAVVを基盤とした遺伝子治療は、はるかに大きなマーケットが対象です。そのため、価格は大幅に低減するものと思われます。
さて、そもそも遺伝子治療はCOVID-19には効くのでしょうか。この点に関しては、このたび良いニュースが出ています。マサチューセッツ州の研究チームが、AVVを基盤としたCOVID-19への遺伝子治療の臨床実験計画を発表しました。現在、前臨床試験が進行中であり、これがうまくいけば、年内には人間への臨床実験を開始するとのことです。
実戦でAVVを基盤とした遺伝子治療が投入されるのは、このニュースからすると当面先のことになりそうですが、これは非常にクリエイティブなCOVID-19への対策となるでしょう。私たちは、できることはすべて試してみる必要があるのです。
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