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Why Can't Kids Just Take Smaller Doses of Adult Meds?(全1記事)

なぜ大人用の風邪薬を子どもには少量しか服用してはいけないのか?

4月に入ったとはいえ、まだまだ寒い日が続きます。世界中を席巻している新型コロナウイルスはもちろん、ごく普通の風邪にも気をつけなければいけません。治療法として、風邪薬が常とう手段ではありますが、大人用の風邪薬は子どもにも服用できるのか? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、風邪薬にまつわるサイエンスを解説します。

子どもの服用薬のトリビア

ステファン・チン氏:ドラッグストアで市販薬を吟味していると、小児用として売られている薬が多くあることに気がつきますね。これは、子ども用に量を減らした薬なのだと思ってしまいますが、実はそれは誤りです。子どもは、成人の縮小版ではないのです。

ややもすれば、子どもの薬は成人よりも用量が多い場合もあるのです。これが、「アロメトリー」の不思議なサイエンスです。

アロメトリーとは、体の大きさに対応した生理学を指します。子どもの薬の服用量は、これと深く関わってきます。ぱっと見には、薬がターゲットとするであろう細胞や組織などが多い、体の大きな人のほうが、たくさん薬を飲まなければいけないように思えますね。

実際、体重別処方といって、患者の体重に応じて処方される医薬品もたくさんあります。例えばある成人が、体重1キログラムに対し5ミリグラム処方されるような薬を指します。

ところが不思議なことに、このような処方法は生涯同じではありません。成人が体重に応じて処方された薬を、小児の体重に換算して服用量を決めるわけにはいかない場合が、しばしばあるのです。というのも、成長するにつれ消費されるエネルギー量は低下していくからです。

言い換えれば、体の大きな人は、体の小さな人より「単位体重当たりのエネルギー代謝速度(mass-specific metabolic rate)」が低くなります。

細胞レベルや、細胞内のレベルであっても、酸素やカロリーの消費は、大きな体の方がゆっくりです。それだけでなく、これらは非線形の関係にあります。体が小さくなれば、代謝は速くなります。

薬に関しては、人体の薬の代謝速度に関係してくるため、これが重要になってきます。一般論でいえば、代謝速度が上がれば、薬の分解速度も上がります。つまり、体が小さい人であれば、より多くの薬を服用して、薬が効く時間を長く確保しなくてはならない場合もあるのです。

アセトアミノフェンの正しい服用方法

「タイレノール」として知られる、アセトアミノフェンを見てみましょう。これは市販されている解熱鎮痛薬です。

標準的な成人のアセトアミノフェンの用量は、650ミリグラムです。北アメリカの成人の標準体重である80キログラム程度の体重の成人であれば、この用量を4時間から6時間おきに服用することになります。

アロメトリーの知識が無い人であれば、この4分の1の体重の子ども、つまり20キログラムの人であれば、薬を162.5ミリグラム服用するものと考えることでしょう。ところが実際には、これではまったく足りません。この子どもは、速やかに薬を代謝してしまうでしょう。つまり、薬が効いてくる時間がまったく足りないのです。

アセトアミノフェンの小児用薬は、1回240ミリグラムを服用することとされています。44キログラムの子どもであれば、指定された用量は640ミリグラムです。この場合はつまり、成人の半分の体重の子どもであるにも関わらず、処方量はなんと成人とほぼ同量です。これを体重ベースの処方に換算すると、小児の用量は、ほぼ倍量になってしまいます。

他の薬はもっと極端になります。インフルエンザ感染症の治療薬であるオセルタミビルの成人の用量は、1日150ミリグラムです。つまり、80キログラムの成人であれば、1日分の用量は体重1キログラム当たり換算で2ミリグラム弱ですね。小児用薬であれば、1日の1キログラム当たり換算の用量は3ミリグラムから6ミリグラムまで及びます。

代謝率が、このような奇妙な非線形の関係性にある理由については、実は生理学者たちには、まだわかっていません。しかし、さまざまな大きさの人間や動物を調べているうちに、有力な仮説が浮上しました。

一番有力でわかりやすいものは、成長期の小さな個体の体は、身体組織の維持よりもむしろ成長の方により多くのエネルギーを費やすから、というものです。これはまず、有力な理由付けの一つでしょう。しかし、理由は他にもあるはずです。アロメトリーのパターンは、いろいろな体格の成人にも適応されるからです。

これには、小柄だったり大柄だったりといった、体格が関連してきます。体が小さい場合は、体格の小ささに比して表面積が大きくなるため、深部体温を速やかに失います。そのため、より多くのエネルギーを代謝します。つまり、代謝率を上げて体温を維持する必要があるのです。

絶対安全を期すなら小児用薬を

しかし、この説でもなお、自然界の代謝率とアロメトリーの関係性は充分に説明できません。人間のように、体温を発生させることにより、厳密に体内温度を調節している、いわゆる「温血動物」にのみ当てはまるからです。

代謝率との関係性は、爬虫類などのようないわゆる「冷血動物」にも適応されるのです。もしかしたら、こういったことを全て説明できる体格との関係性が、他にもあるのかもしれません。

大型の動物は、循環器の関係で代謝率が上がらない可能性が、計算上で出ています。

血管は枝分かれしており、血管の太さと血管壁にかかる血流の圧力、血流を体内で循環させる力との間で、うまくバランスを取る必要があります。

大型の動物の循環器は、より長大で細かく枝分かれしており、末端の血流の速度は低下します。

血流が低速度で体が大きい場合、血液による酸素の運搬には時間がかかるはずです。しかし、心拍数を上げたり、強めたりして血流の速度を上げるのは、心臓の負担が大きくなるので不可能です。つまり、動物が大きくなっていけば、細胞が同じペースで酸素を代謝し続けることはできないはずです。しかし、このような考察は、人間に当てはめて考えるには、まだまだ究明するべきことはたくさんあります。

このように、子どもの代謝率が高い理由はさまざまですが、いずれにせよ、子どもの薬の服用量は大きく変わる可能性があります。つまり、小児用薬とされる薬がとくに存在するのは、必ずしも用量が少ないからではありません。患児やその保護者が、子どもの体に合わせた薬の用量をより慎重に調節できるからなのです。

液状の内服液はとくに、子どもの体重に合わせ、細やかに量を調整できます。

小児用薬が存在する理由は、他にもあります。例えば錠剤は飲み下しにくく、とくに幼児には窒息を起こす危険もあります。そのため、多くの小児用薬は、チュアブル錠や内服液の形態をとっています。

さらに、すべての小児薬が全年齢向けではありません。幼児が服用すれば、効果が無いばかりか、深刻な副作用が現れるものもあります。もしくは、全年齢向けのテストがされていない場合もあります。最低限のラインとしては、小児用として市販されていない薬は、子どもに服用させる前に、まず小児科を受診して相談するようにしましょう。

子どもに薬を服用させる場合には、必ず小児用薬を使いましょう。成人の服用量よりも多く見えたとしても、それが正しい用量を守る最善の道なのですから。

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