2024.10.01
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What Animal Dominates Earth(全1記事)
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ステファン・チン氏:熱心なアマチュア科学ファンに、「一番種の数の多い生物集団は?」と尋ねれば、「甲虫」という答えが返ってくるでしょう。事実、甲虫は種の数が多く、35万種以上が存在します。
現時点で人間が特定し名前を付けている生き物の種は、細菌なども含め、全体のわずか22パーセントに過ぎません。しかし、甲虫が種類の多さで天下を取っていた時代は終わったと考える科学者もいます。甲虫は「最多の生物種」の称号を、別の生物集団に譲るべきだと言うのです。
とはいえ、具体的にどの生物集団が一番かと問われても難しく、さらには単なる好奇心だけで済まされる問題でもありません。甲虫を始め、植物や鳥などの種の数を的確に推定し続けることは、種数の変動を把握し、保護の対策を練る上で不可欠だからです。
正確な生物種数の把握が難しい理由が、2つあります。まず1つに、推定できる種の数は、現時点で既知の種のみに限られるからです。また、それぞれの生物集団について、人間が等しく精通しているわけでは無いことも挙げられます。人間が興味を抱いていたり、すぐ見つけられるかどうかなどの条件によっても変わるためです。
特に甲虫は、心をときめかせる色とりどりのラインアップにより、昔から自然愛好家に人気のコレクターズアイテムでした。そのような興味を寄せられてきたことはつまり、豊富な蓄積と、新種の甲虫が見つかる機会を生みました。
一方で、それほどカリスマ性の無い生物や、小さかったり数えにくかったりする生物は見過ごされてきました。これにはハバチ、スズメバチ、ミツバチ、アリなどを含むハチ目などの昆虫集団が挙げられます。
2018年に『BMC Ecology 』誌上に発表された論文によりますと、もっとも多くの種があるのはハチ目であり、寄生バチが大きな割合を占めているとしています。ところで、もしみなさんが庭のスズメバチを想像したとしたら、それはハズレです。
寄生バチは、かろうじて砂粒より大きい程度の体躯で、生活史のほとんどを他の昆虫に寄生して過ごします。そのため、極めて簡単に見過ごされてしまいます。寄生バチは、海洋、北極圏、地中深くなど、あらゆる場所に生息する昆虫をターゲットとします。
科学者たちは、これらのハチは高度に「特殊化」していると考えています。つまりそれぞれの種が、異なる特定の宿主をターゲットとしているということです。
2018年の研究によりますと、先ほど話題に挙がった甲虫も含めすべての昆虫のそれぞれについて、恐らくは複数種の寄生バチがターゲットとしている可能性があるというのです。さらに、昆虫には複数のライフステージがあります。異なる寄生バチが、幼虫と成虫それぞれに取りつくことがあるというのです。
では、甲虫1匹につき2種の寄生バチが取りつくと考えればよいのでしょうか? そんな単純な計算では済まされません。他の寄生バチに取りつく寄生バチや、昆虫ではなく、クモのような節足動物に取りつく寄生バチも勘定に入れる必要があります。
同様の説を唱える研究は、他にもあります。カリフォルニア州の砂丘の研究や、カナダの昆虫の研究でも、研究対象の生息地だけでも、ハチ目に属する種は甲虫のそれを2.5倍上回るとされています。
仮にハチ目が最多の種を擁する生物集団ではなかったとしても、最多の生物集団の種は、恐らくは捕食寄生者であることでしょう。捕食寄生者は自然界には非常に多く存在し、15もの異なる生物集団において、200以上も分化し進化しています。これは当然のことだといえるでしょう。寄生先の宿主は、食料とシェルターの両方を兼ねているのですから。
同じ理由で、線形動物、別名回虫も、もっとも種の多い動物集団の候補者です。線形動物はすべて捕食寄生者ではありませんが、多くはそうであり、ターゲットとなるのは昆虫だけでなく、動物や植物も含まれます。1993年のある研究の推定では、線形動物は100万種以上にも及ぶとされました。他の多々の研究では大幅に異なる推定値が出ましたが、これは線形動物についてあまりわかっていないせいだと考えられます。
2008年刊行の別の論文では、脊椎動物に寄生する線形動物だけでも、7万5千種から30万種が存在するとしています。さらに深海底の堆積物中など、線形動物はどこにでも見つかります。恐らくは、人間がまだ行ったことのないような場所にもいるでしょう。これは重要なポイントです。種数の推定は、人間が見つけることができる生物に限られます。つまり、人間が行ける場所にいる生物しかわからないのです。
さて、みなさんもお気づきのとおり、現時点で私たちは、生物の分類系統樹に沿って、ミミズなどを含む線形動物門である線形動物だけをハチや甲虫と比較していますよね。界、門、綱、目の門ですよ。
門全体で比較したとしても、線形動物門はハチや甲虫を含む節足動物門よりも多いのです。その数はそれぞれ100万近いと考えられていますが、推定値そのものが非常に多岐に渡るため、はっきりとした数はわからないのです。
さらに、界、門、綱、目などは、集団数の大きさによって割り当てているわけではありません。この分類については、まったく別の話があります。
カリスマ性の問題についても、ハエなどを含むハエ目が見過ごされがちである理由を十分に説明しています。羽音をたててリビングルームで飛び回っていれば注意を引きますが、甲虫を好きだという人に比べて、あまりハエを好きだという人はいませんよね。
ところが、科学者たちがハエ目を調べはじめたところ、驚くほど多くの種が見つかりました。2018年の研究では、コスタリカの熱帯雨林4ヘクタール四方につき4,000種ものハエが見つかりました。
現時点での推定では、ハエ目には100万種があるとされ、甲虫をはるかに凌ぐ数です。なんだか「100万」という単位を連呼しているようですが、前述のとおり、はっきりとした数はわからないのです。
ハエは陸上であればどこでも生息が可能であり、幼虫は植物の汁から脊椎動物の血液まで、何でもエサにしてしまいます。これもまた重要なポイントで、もっとも多くの種を持つ生物集団となるには、多様な生息地やエサ、生存方法に耐える必要があるのです。寄生虫のように宿主の中でうまく生息したり、地球上でもっとも隔絶した環境でも生き延びたりするのです。
ところで、すべての生物を数える努力から私たちが学んだことがあるとするならば、目の前のものだけではちゃんとした指標は得られないということです。世界に何があるかを知りたければ、まず私たちの方から探しにでかけなくてはならないのです。
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