2024.10.01
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Searing Meat Is A Delicious Lie(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:料理本やテレビのシェフ、家庭料理などにおいても、「“肉汁を閉じ込めるために”調理の最初に肉の表面を焼くべきだ」と言いますよね。実は不思議なことに、この理由は完全に間違っているのです。とはいえ、みなさんはステーキを焼く時には、ちゃんと表面を焼くべきであることは確かです。
さて、この誤解は、長らくまかり通ってきました。そもそもは1840年代、ドイツの化学者ユストゥス・フォン・リービッヒ男爵が、その著書”researches on the chemistry of food(食品化学における研究)”において、肉の表面を焼く利点を説いたことに端を発するようです。
実は、この説が誤りであることについても、長らく知られてきました。肉の表面を焼けば、水分が保たれるどころか失われてしまうことは、1974年の論文においてすでに指摘されていました。表面を焼いた12枚の肉のサンプルと、焼かないサンプル12枚とを比べたところ、最初に表面を焼いたサンプルは、3パーセントほど多く水分を失ったのです。
同様の実験が、ラボや家庭で長年にわたり何度も行われてきましたが、いずれも似たような結論が導き出されました。ある実験では、失われる水分に差異はありませんでしたが、別の実験では、表面を焼いた肉の方が失われる水分がやや多いという結論が出ました。いずれにせよ、最初に表面を焼くことによる大きな違いは見られませんでした。つまり、表面を焼くことは、ステーキをジューシーに焼くこととは、なんら関係が無いのは明らかです。
また、表面を焼くとジュージューとよい音はしますが、ステーキの表面をよく見ればわかりますが、肉汁の保護には役には立たないようです。
筋肉には、筋原繊維と呼ばれる繊維が含まれます。熱を加えることにより、これらの繊維はダメージを受け、時間と共に水分が失われます。失われる水分量はまちまちですが、温度が大きく関係してきます。高温であれば失われる水分量も多くなり、60度以上においてそれは顕著です。焼き具合であれば「ミディアム」に該当します。
さて、表面を焼いても肉汁を封じ込められないならば、私たちはなぜ、この神話から離れられないのでしょうか。
私たちが表面を焼いたステーキを汁気たっぷりだと感じるのは、焼いた方が美味しいからです。私たちは、脂と香りが、「汁気たっぷりだ」という客観的な印象を与えることを知っています。さらに、肉が褐色に変色する「メイラード反応」が起きると、肉の香ばしさがぐっと増します。これは、フランスの化学者、ルイ・カミーユ・マヤール(メイラード)が、1900年代初頭に研究した反応です。
メイラード反応は、糖とアミノ酸を加熱したときなどに起こる一連の反応で、温度やpHなどの要素により異なる進行状況を呈します。そして、これはたった一つの反応ではなく、同時に多くの細かな反応が起こっており、その結果、新たな味や香りが生まれ、焼いた肉は褐色化します。
他の食品も同様の反応を起こします。
つまり、肉の表面を焼くことにより、メイラード反応が起こり、おいしさを実感する多くの要素が生まれるのです。とはいえ、それは必ずしも「肉汁を閉じ込める」ことではありません。
しかし、この「伝説」が根強く残る理由は、このおいしさかもしれません。肉の表面を焼くことには、私たちが信じるような効果こそありませんが、よいアイデアなのは確かです。とてもおいしくてすてきなアイデアですよね。ジュージューと音を立てるお肉の話をしていたら、なんだかお腹が空いてしまったというあなたは、恐らくはベジタリアンではないはずですよ。
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