2024.10.10
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Is Alkaline Water Really Better For You(全1記事)
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オリビア・ゴードン氏:「アルカリイオン水」という言葉は聞いたことがあるでしょう。最近は健康のトレンドとなっており、スーパーの棚でもよく見かけます。
通常、水はpH7の中性ですが、これらの製品は、これに手を加えてpH8から10にした単なる水であり、体を酸性からアルカリ性へ変え、みずみずしく健康にしてくれるとされています。さらに、健康教の伝道師たちの言葉を信じるならば、アルカリイオン水を飲めば、骨粗しょう症を予防し、ガンも治るようです。
しかし、「奇跡の飲料」としての働きは、科学的にはまったく根拠はありません。アルカリイオン水が体に良いという主張は、「酸性食品説」なる考えに基づいています。つまり、酸性に傾いた体は、ガンや骨粗しょう症など、トラブルを発症しやすくなるというものです。体が酸性なのが健康によくないのであれば、弱アルカリ性にしてあげれば、さまざまな病気が防げるのではないかという考えです。
そのために、ここ何十年もの間で、人々はさまざまな飲食物を摂取してきました。そして今日では、アルカリイオン水のような飲料が脚光を浴びています。こういった飲食物は、なぜか体のpHを上げ、ガンすら治癒するらしいのです。
まず手始めに、「体のpH」なるものは存在しません。例えば、人間の血液のpHはだいたい7.4くらい、筋肉であればやや酸性度が高く、pHでいえば6.1ほどです。そして、飲食物によりこの数値を変化させるのは、そう簡単ではありません。
2001年に発表された論文は、「特別な食品」は体内のpHを偏らせると繰り返し主張していますが、それでもなお、目立った変化を発見することはできませんでした。この論文の研究者たちは、8人のボランティア被験者たちに、2つの食生活プランを用意しました。片方には、リン酸塩が多く含まれる酸性度の高い食事と、pH値の低い飲料水、もう一方には、カリウム含有が多い食事とpH値の高い飲料水が用意されました。
アルカリ性の食事を摂取し続けて4日後、被験者の尿は明らかに酸性度が低くなる一方で、血液のアルカリ濃度は平均で0.014程度しか上りませんでした。これは、被験者の日々の変動の範囲内であり、測定機器の誤差のレベルです。
食事による血液のpH変化が認められなかったのは、良いことなのです。人間の細胞が活動できるpH範囲は非常に狭く、これがいずれかに大きく変動してしまうと、内臓にダメージをもたらすのみならず、死に至ることもあります。
そのため、体には酸塩基バランス(pHバランス)を適切に保つシステムが複数備わっています。一例を挙げると、二酸化炭素は酸を発生するごくありふれた化合物ですが、体は呼気量を増やしてこれを排出し、pHの低下に対応します。
しかし、もっとも活躍するのは腎臓です。腎臓は、血中の不要な成分を尿へ排出します。摂取した飲食物により、尿のpHが変動するのは、このためです。先に挙げた2001年の論文では、アルカリ性分の高い飲食物を摂取した被験者の尿は、平均でpHが1.02上昇しました。
つまり、アルカリ性の飲料水で血液のpHを変化させたければ、腎臓に干渉すればよい話なのですが、当然のことながらこれは大きな害となります。
また、pHを恒常的に調節してくれる器官は他にもあります。いずれの臓器も、血中に酸性や塩基(アルカリ)性の物質、その他不要な物質を排出し、腎臓がその後処理をします。
つまり、アルカリイオン水を頻繁に摂取して変えられる体液は、体の中では唯一尿だけということになります。とはいえ例外はもう一つあります。
胃液のpHは、少なくとも一時的には、何かを食べて胃酸を直接中和すれば、外からコントロールできます。ここで、アルカリイオン水が役に立つ「かもしれない」症状が、一つだけあります。胃食道逆流症です。
胃食道逆流症は、胃酸が消化酵素の一つであるペプシンを過活性化させるため起きると考えられています。ペプシン過多により胃酸は、食道やその他の本来あるべきではない場所にまで込み上げて来てしまい、組織と結合することにより、げっぷや胸やけなどを起こします。
2012年に発表されたある論説によれば、アルカリイオン水は、確かにペプシンを非活性化するようです。しかしそれはラボのシャーレ上であり、実際の人体でのことではありません。しかも、胃酸を中和できる安価で入手しやすい医薬品は、すでにたくさんあります。つまり、これが制酸薬です。
アルカリイオン水の摂取で得られるとされる、他の健康上の利点については、立証されていません。
例えば、ガンを見てみましょう。ガン細胞は、健康な細胞に比較して酸性度が高いことが指摘されたことがありました。酸性度を下げることにより、ガンを予防ないし治療できると考える人々は、ここに着目したのでしょう。
もしそれが事実ならば、尿のpHは食事から影響を受け得るため、アルカリ性の飲食物を摂取することは膀胱がんに効果がありそうな気がします。しかし、2005年に実施された、2万7千人を対象としたフィンランドの実験によりますと、たとえ尿のpHが低くとも、膀胱がんが増えることはありませんでした。
さて、似たような主張に、骨の密度が減ってもろくなる病気である骨粗鬆症の予防ないし治療に、アルカリイオン水が役立つというものがあります。その根拠は、腎臓の働きが低下した場合、酸性度が高くなると、それを緩和するために体が取る代替手段が、骨からカルシウムや炭酸水素塩を放出することだから、というものです。カルシウムを失った骨は、密度が低くなります。
しかし、2010年のある研究は、尿のpHと被験者の骨密度、骨折との関連性は無いとしています。また、メタ分析によれば、排泄される酸と骨の健康との間にも、なんら関連性は無いとしています。
つまり、アルカリイオン水を摂取することによって予防できるとされる病気については、実証されたものは今のところ皆無であると言えます。しかも、「酸性食品説」が半世紀以上も信じられているにも関わらず、アルカリ性の食品ないし飲料が、健康に良いとする直接的な研究結果は出されていません。幸運なことに、目だった副作用もないようです。
ですから、もし皆さんが、アルカリイオン水の味が好きで飲んでいるのであれば、それはそれでよいと言えます。ちょっとだけ高価なおしっこが出るだけなのですから。SciShowをご視聴いただき、ありがとうございました。
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