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Napping Is Awesome... but Is It for Everyone?(全1記事)

お昼寝はすばらしい…だけど、それは“誰にでも”当てはまることか?

ヨーロッパではシエスタがあるように、一般的にお昼寝は有益であることは知られています。しかし、これは誰にでも言えることなのでしょうか? YouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、お昼寝にまつわるサイエンスを解説します。

お昼寝は誰もがすべきなのか

マイケル・アランダ氏:夜間に十分な睡眠をとっている若くて健康な成人にとっても、昼寝は非常に有益であるという研究結果が、続々と出ています。たしかに、ちょっとうたた寝するだけで、大抵の人は気分爽快になりますよね。

ここで、疑問が頭をもたげます。昼寝は誰もがするべきなのでしょうか。実は、必ずしもそうではありません。話は想像以上に複雑です。

昼寝に絶対的な信頼を寄せている人は多くいます。例えばアメリカ人の約半数が、一週間内に必ず昼寝をしています。さらに、数多くの研究が、昼寝の有益性を主張しています。

多くの人は、計算力や論理的思考力、反射神経、記憶力、気分の良し悪しなど、あらゆる分野の測定テストにおいて、昼寝の後の方が成績優良です。昼寝をするのは、カフェインを摂取するよりも有益であるというテスト結果すら出ています。

ところで、この結論には、少々偏りがあるのも事実です。なぜならば、こういったテストは、その多くが睡眠不足の人や、ふだんから昼寝を実践している人を対象としているからです。常習的に昼寝をしている人は、昼寝後の成績が非常に優良であるため、ふだん昼寝をしない人を含む実験では、被験者全体の成績を上げてしまうのです。

ところで、研究者たちが、昼寝を常習している人や、疲労を溜めている人を実験に重用するのは、仕方がないことかもしれません。たしかに、昼日間に馴染みのないラボで、管に繋がれたまま強要されて眠りに就くのは、容易なことではありません。

しかし、これは裏を返せば、昼寝が有益な人とはどんな人か、なぜ昼寝は有益なのか、といった研究が、始まったばかりであるとも言えます。平均的には昼寝には多大な利益があるとはいえ、すべての人に等しく有益であるわけではありません。

試行錯誤を経て、ごく一般的な被験者を研究することにより、常習的に昼寝をする人と、そうでない人との差異が、徐々にわかってきました。常習的に昼寝をしない人は、昼寝による目立った活性化は見られず、むしろ起き抜けに気だるさを感じることが多くありました。これは、昼寝の間に脳内で起こることに違いがあるせいかもしれません。

常習的に昼寝をしない人は、深い睡眠時間が長い傾向にありました。つまり、起きるのにより労力がかかります。また、新しい情報が長期記憶として定着する、「記憶固定化」の脳波が少ない傾向にありました。昼寝後の記憶テストの成績が振るわないのは、このためであると考えられます。

研究からわかった、お昼寝の効果

では、ふだん昼寝しない人が、昼寝の習慣を導入したら、どうなるのでしょうか。2018年の研究において、研究者たちはこの点を掘り下げました。ふだん昼寝をしない人たちに、昼寝を習慣づける訓練をほどこしたのです。

被験者には、週3回20分間、昼寝をしてもらいました。ところが4週間経過後には、何ら変化は認められなかったのです。昼寝中の脳波には変わりはなく、覚醒時には相変わらず気だるさを覚え、認知テストの結果にも変化は認められませんでした。

こういった昼寝との相性の悪さは、生来のものである可能性があります。生まれつき昼寝が有益かどうかや、幼児期の昼寝の習慣などが、遺伝子レベルで決まっている可能性を示唆した実験結果があります。

もしくは、昼寝の習慣がない人は、昼寝をしてもあまり変化がないことを、経験により学習した人なのかもしれません。あるいは、この実験での被験者の訓練が、単に時間が短すぎた、もしくは不十分であった可能性もあります。

しかし、習慣にしている人ほどうまくはできなくても、昼寝はするべきだと断定するにはまだ早いようです。

シフト制勤務者や、睡眠障害のある人、睡眠が不規則な生活の人の場合、話はより複雑になってきますし、高齢者はもともと幼児よりも頻繁に昼寝をしますが、よく寝る高齢者には、高確率で質の悪い病気がある可能性があります。

しかし、良質のシエスタを楽しみとする、若くて健康な成人であれば、習慣的に昼寝することにより得るものは大きいことでしょう。この習慣の有効性を裏付ける科学的根拠は、たくさんあります。

研究によれば、最適な昼寝の時間は10~30分間とされています。これより短い場合は、充分に休養が取れず、長い場合は寝起きがだるくなります。

さらに、午後2時から5時くらいの間が、昼寝には最適のようです。概日リズムは、午後に自然に下降するため、昼下がりに昼寝するのがちょうど良いのです。このように自然に眠りに就くのは、うまく昼寝するとても重要な要件です。

しかし、あまり遅い時間帯に昼寝をすると、夜間の睡眠に悪影響を及ぼすことも証明されています。午後2~5時くらいの昼寝であれば、充分に時間が早く、そういった悪影響を避けることができると考えられます。

通常であれば昼寝をしない人でも、このようなコツをもとに実践してみれば、ひょっとして効果が表れるかもしれませんよ。仮にうまくいかなかったとしても、ガッカリする必要はありません。単にみなさんの脳が、そういった働きに適していなかっただけなのかもしれません。

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