2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Where Did Werewolf Myths Come From(全1記事)
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今週はハロウィンですので、サイエンスを超自然に寄せてお送りします。今回のエピソードは、大人気のもふもふ系お化け、人狼についてです。
人狼の物語は古く、その起源は古代ギリシアにまで遡ります。ヨーロッパで非常に広範囲で伝えられ、北欧やケルト神話にもその片鱗を見ることができます。
人狼は、現代でも人気が高く、『ジェイコブ・ブラック(注;ステファニー・メイヤーの小説『トワイライト』シリーズに登場する架空の男性ワーウルフ)』からもその人気が伺えますね。
人が狼に変身するなどということは、まずありえませんが、実はまったく根拠がないわけではありません。噛まれた人が奇怪な行動を取ったり、ふさふさとした毛が生えてきたりするというお話は、実在する科学的現象、とりわけある病気についての誤認が引き起こした可能性があるのです。
例えば、噛まれた人が獣に変身してしまうという認識は、狂犬病から来ているのかもしれません。狂犬病は、ウィルスが中枢神経系や唾液腺に感染することにより起こります。
多くの人狼譚と同様、狂犬病もまた、感染した生き物が他に噛みつくことにより感染します。
狂犬病ウィルスに感染した人は、興奮して、非常に奇怪な行動を取るようになります。また、幻覚を見たり、不眠症に悩まされたりします。こういった症状が起こるのは、ウィルスが脳細胞を損傷し、ニューロンの交信に使われる化学物質に干渉するからです。例えば、睡眠サイクルや痛感覚、攻撃性などをコントロールする、セロトニンの分泌が乱されます。
感染の段階が進むと、唾液腺がウィルスに侵され、過剰な唾液を分泌します。唾液に含まれるウィルスには感染力があり、他者に噛みつくことによりウィルスを媒介します。とはいえ、人の歯は、皮膚を噛み破るほど鋭くは無いため、人から人への感染は稀です。鋭い犬歯のある他の哺乳類の方が、感染経路としては優秀です。
狂犬病は、命に関わる病気です。ウィルスに感染する前に、抗ウィルス剤やワクチンを接種していなかった場合は、ほぼ死に至ります。仮にあなたが、中世ヨーロッパの農民であったとしましょう。
村に突如、おかしな行動を取る攻撃的な犬が現れ、近所の人に噛みついたとします。
すると、隣人たちもまた、同様におかしな行動を取るようになります。隣人たちは興奮し攻撃的になり、最初に現れた犬と同様に口の端から泡を垂らします。
やがて彼らは、死んでしまいます。
ウィルスの働きや正体がわかっていなかった時代は、噛みつかれた人の豹変は「人狼」になったから、ということで説明がついたのです。
また、狼のような外見の人についての噂も、同様でした。そのような噂は、実在する病気である「多毛症」から起因していることが考えられます。
多毛症は、遺伝子の異常により、色の濃い毛が過剰に生える病気で、昔は狼男症候群(注;もしくはウェアウルフ症候群、日本での正式名称が「多毛症」)とも呼ばれ、患者の顔や体に、異常に分厚い、時には毛皮のような、ふさふさとした毛が生えるために、そのような名がつきました。
ところで、この病気の発症は極めて稀です。中世以降の医学的な記録は100件にも満たず、研究が非常に困難なのです。例えば、ある1つの家系を徹底調査して、発症原因を探るのに、20年もの年月がかかりました。1984年には、X染色体の突然変異が原因だということが突き止められました。1995年には、X染色体上のどの領域が原因か、ということまで絞り込むことができました。2011年にようやく、DNAで起きることの詳細が判明したのです。
DNAの特定の領域に挿入が起こり、発毛を司る、SOX3という遺伝子の発現を変異させ、その結果、本来は発現されるべきではない箇所に、過剰発現が起こります。特異な分厚い体毛が生えたり、まぶたなど本来は毛が生えるべきでない箇所に発毛したりするのです。
不要な毛が生えること自体は、特に害があるわけではありません。しかし、この症状は、他の健康や発達の不全に関わる遺伝子異常と、関連性が高いのです。
人間は、見た目が異なる者に対し冷淡です。そのため、この症状を持つ者の心理的な苦痛は大きなものです。多毛症患者は「狼人間」と呼ばれ、祭やサーカスの見世物にされました。恐ろしいことですね。昔の多毛症患者は、人狼伝説の信憑性を増したことでしょう。ひょっとすると、人狼伝説は、多毛症患者を、本物の人狼だと信じ込んだ人々が作りだしたのかもしれません。
リカントロピーという精神病は、外観が狼のようになるのではなく、自身を狼だと思い込む病気です。罹患者は、犬歯が鋭く伸びた、体毛が濃くなったなど、自分の体が変化したと主張します。さらに、四つん這いで走り回り、遠吠えをし、生肉を食べさせるよう要求するなど、狼のように振る舞うことさえあります。
リカントロピーは、人が「誤認」を起こす、妄想性人物誤認症候群の一種です。自身の肉体を認識する脳の部位が異常を起こし、自分が狼になったと錯覚するのです。精神病の知識が乏しい中世ヨーロッパに生きる人であれば、狼のように振る舞い、「鋭い牙と大きな尖った耳が生えてきた」と主張する人物がいれば、震えあがることでしょう。超自然の存在の影響を受けたのだと信じても、不思議ではありません。
ところで、妄想性人物誤認症候群の原因については、謎が残っています。そもそもの発症例が少なく、大抵が、より一般的な気分障害である統合失調症であったり、特に前頭葉右側の脳梗塞や、トラウマなど、脳のダメージと関連性があるとされています。脳の自己認識の構造については、まだまだ解明が始まったばかりです。
いずれは、リカントロピーの罹患者は、抗精神病薬で治療を受けることができるようになることでしょう。同様に、多毛症も、美容脱毛などのさまざまな手段により対応ができることとなるでしょう。
今日の我々は、人狼伝説の元となったリカントロピーや多毛症は、恐れるに値しないことを知っています。しかし、狂犬病は現代でも脅威であり、狂犬病ウィルスは恐ろしいものなのです。
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