2024.10.01
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Abilities Evolution Took From Us(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:自然淘汰や進化は、進歩への長い繋がりであり、体などへ新たにいくつもの形質が加えられていく過程だと誤解されがちです。
しかし、進化とは”何かが新たに加わる”だけではありません。進化により形質が奪われることもあるのです。自然淘汰では、生き物が繁殖したり、繁殖可能になるまで生き延びる助けになる形質が残ります。反対に、役に立たない形質は淘汰されてしまいます。
このような形質は、繰り返される突然変異により消えていきます。これは「選択緩和(relaxed selection)」と呼ばれるもので、自然淘汰により形質は維持されなくなるのです。体が、ある形質の維持に過大なエネルギーを費やさなければならないとき、その形質は選択圧によって失われることすらあります。
ヒトの進化には、この実例が豊富にあります。事実、我々人類の遠い祖先にはできていたのに、現代の我々にはできなくなったことはたくさんあります。
ここでは、フェロモンによる交信から、電気の感知に至るまで、進化により我々から奪われてしまった、不思議な能力を挙げていきましょう。
まず第一に挙げられるのは、「第三の眼」です。トカゲの一部やカエルには、小さな灰色の点のような物が額にありますが、これは鱗ではありません。これは、頭頂眼もしくは顱頂眼(ろちょうがん)と呼ばれる器官で、光を検知します。科学者たちは、これは日光に対するセンサーの役割を持つもので、季節の移ろいや、日の長さを測るためのものだと考えています。
また、この器官は、睡眠や生殖、体温調整など、生物学的なサイクルを調整するホルモンであるメラトニンを合成します。
顱頂眼は古来からあるもののようです。遥か昔に絶滅した、哺乳類の祖先の頭蓋骨の化石にも見られます。頭蓋骨には頭頂孔と呼ばれる孔があり、生きた状態であれば、ここに顱頂眼とこれを司る神経が収容されています。
2016年に行われた研究では、興味深いことが発見されました。哺乳類の祖先の頭蓋骨を調べたところ、この孔と、そしておそらくは顱頂眼は、2千6000万年前から2万450百万年前あたりから、次第に小さく、あまり一般的には見られなくなっていったようなのです。
研究者たちは、顱頂眼の消滅は、2つの事象のうち、いずれかを証明していると考えています。
1つは、日が射す長さを検知して、季節の移ろいを把握する顱頂眼の役割を、生き物の「通常」の眼がカバーできたからではないかということです。もう1つは、恒温動物となり、体温調整に長けた証拠ではないかということです。つまり、温暖で快適な日光が照射される季節を、頭頂部で検知する能力には、需要がなくなってしまったのです。
いずれにせよ、この器官は以前の有用性を失い、選択圧により弱体化されてしまいました。今日の人類には、その名残が脳の松果腺として残っており、今でもメラトニンの分泌を調整しています。とはいえ、額の真ん中の眼は、もはや必要ではありません。
進化によって人類が失ったもう一つの能力は、「電気の知覚」です。一部の魚類や両生類にある、微弱な電波を受容する能力です。例えばデンキウナギは、生息地である視界の悪い河川で、獲物を感知するために、この能力を使います。
同様の役割を果たす組織は、サメや一部の魚類の側線(魚類や両生類の体の両わきに一列に並んでいる感覚器)にも見ることができます。
今日では、あまり多くは見られない形質ですが、多様な系統の生き物に見られます。つまりこれは、初期の脊椎動物が持つ形質であった可能性があります。
ところが、我々の祖先は、地上で生きるための進化の過程で、この能力を失ったようなのです。それはいったい、なぜでしょうか。陸上では、水中のようにはうまく機能しなかったからかもしれませんね。ここでも再び、有利な選択として貢献しない形質は消えていったのです。
おもしろいことに、カモノハシ、ハリモグラ、一部のイルカ、その他の哺乳類が、再度、電気受容器官を発達させました。しかし、まったく異なるメカニズムのものであり、その用途はいまだ解明されていません。
最後に挙げるのは、「ヤコブソン器官(鋤鼻器:じょびき)」です。この器官は鼻の内部にあり、臭いやフェロモンを感知します。ヘビが舌をチラチラ出すのは、ヤコブソン器官を使っているのです。
ウマやネコは、おかしな風に顔をゆがめることがありますね。実はこれも同じ働きで、フレーメン反応というものです。
人間にも鋤鼻器はありますが、実際には機能していないようです。人間がフェロモンを感知できるかどうかは、長らく論争の的となってきました。しかし、人間が成熟するころには、ヤコブソン器官には感覚神経が繋がっていない状態となりますので、ほとんどの研究者は、ヤコブソン器官は脳に何も送信していないと考えています。
他の多くの動物には、鋤鼻器を機能させる遺伝子は多々ありますが、人間に関しては、この遺伝子は機能していないようです。人間がこの機能を失った時期に関しては、2003年に行われた研究により、ヒト科がサルから分化した、2,300万年前頃らしいことがわかっています。
このタイミングは、ヒトの視覚システムが向上し、社会的生活や生殖活動において、視覚情報が匂いよりも重要な情報となった時期と一致しています。ひょっとしたら人類は、今まさに、特に目標もないままに、ヤコブソン器官を司る遺伝子を失う過程の只中にあるのかもしれませんね。
ゲノムの突然変異は常に起こっており、遺伝子は、変化したり不活性化されたりしています。ある遺伝子の変異の累積を止めるような選択圧が働けば、その遺伝子が司る形質は消滅してしまうこともありえます。
つまり、自然選択とは、体に新たな形質が加わっていくことだけではないのです。子孫を残すのに役立たない形質は、長期的に淘汰されてしまいます。人間が「第三の眼」やその他の素敵な形質を持っていない理由は、そういった特性無しでも、うまく生きられるように進化したからなのです。
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