実はトカゲも“ざんねんないきもの”だった？　走りながら息ができない理由

数種類のトカゲは、走りながら息をすることができない

ステファン・チン氏：トカゲが動いている時、走って、少し止まって、そしてまた走り出すという動きをしているのをご覧になられたことがあるでしょう。

実はトカゲのうちの少なくとも数種類のものは、走りながら息をすることができないのです。他の動物は違った方法で適応できるようになったのに、トカゲはそうならなかったのは、トカゲの先祖の四足動物が陸上での生活に適応するための進化の過程の名残であるようです。

トカゲは走る時と息をするときに同じ筋肉を使います。走る時、トカゲは胸の筋肉を一つひとつ縮めることにより、前方へ跳ねることができます。息をするときは、その同じ筋肉を違った形で動かす必要があるのです。ですから、同時に走ったり呼吸したりできないのです。

『The Journal of Experimental Biology誌』で1997に発表された研究では、科学者たちはイグアナをランニングマシンに乗せて実験しました。すると、イグアナは速く走れば走るほど、息がしづらくなっていることがわかったのです。

持久力はない代わりに瞬発力を活かして適応

これは理にかなわないことです。もしあなたが追いかけられたり獲物を追ったりする場合、走り続けるために呼吸をし続ける必要があるのではないでしょうか？　1987年に『Paleobiology』で発表された論文によれば、このトカゲの生体の欠陥は、脊椎動物が海から陸に上がって暮らす進化の過程の名残だそうです。

論文は初期の四足獣、現代でいう四足は虫類、両生類、鳥類、そして哺乳類を含む四足獣が、酸素の少ない水中で生活し、短距離を急速に泳ぐだけの魚類から進化したのかもしれないと述べており、その魚の動きが現在のトカゲにも見られる動きなのです。

魚は水中でちゃんと呼吸できるのですが、その子孫で陸での生活に適応するようになった動物は同じような動きをするにもかかわらず、呼吸に関してはそうならなかったのです。実際、陸上で歩くことは、泳ぐよりももっとエネルギーを必要とするのです。

それに、息をしている時に走れないというハンデが、彼ら初期の先祖に、とても疲弊する代わりに爆発的な動きができるようにさせたのかもしれません。しかし、トカゲはこの欠陥に最善を尽くして適応しています。息をするために立ち止まる必要はありますが、動いている時は、とても素早く動くことができるので、酸素を制限する筋肉の構成を最大限に活用しているのです。

他のトカゲも走りながら息をする上で、もっと良い適応をしています。例えば、オオトカゲはかなりの速さで走りながら息をすることができるようです。

『Science誌』で1999年に発表された論文によれば、オオトカゲのこの能力は喉甲板のパンピングのおかげではないかというのです。つまり、オオトカゲや他のいくつかのトカゲの仲間は、喉の収縮運動により新鮮な空気を肺に送り込むことができるいうのです。

この研究をした科学者たちが、オオトカゲにこの喉の動きをできない状態にしたところ、進化のアドバンテージのないトカゲと同じような呼吸法になったというのです。

動物によってさまざまに進化した呼吸法

このような適応能力は、トカゲに限ったことではありません。ほとんどの四足獣は陸上でもっと効果的に呼吸ができるように進化してきました。例えば、哺乳類の横隔膜筋は肺に空気を出したり入れたりすることができるのです。

ワニにもそれがあります。時間が経過するにつれ、鳥類は歩行運動を変えたり、動くときの体勢を変えたりすることにより、息をする時と動く時に使う筋肉を同じにしなくても良いようにしたのです。

そして、馬やホロホロ鳥のように早足で走ることのできる動物は、自分の動きと呼吸するリズムを合わせることができます。そうすることで、さらに効果的に体内システムにおいて空気を出し入れすることができるのです。

ですから、トカゲが走ったり止まったりする動きは、進化においての欠陥のように思われるかもしれませんが、実際は進化的革新の副作用に過ぎないのです。動物は生体構造、行動の変化に適応し、そのときの自分の体の最善で一番効果的な方法で生活してきたのです。