2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
A Zombie Gene Keeps Elephants from Getting Cancer | SciShow News(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:細胞が増殖する際に不具合が起きることが、ガンが怖いとされる一番の点です。その理屈からすれば、体格の大きな動物の方が、細胞がたくさんあって長生きするぶん、ガンに罹りやすいのではないかと思いますよね。ところが不思議なことに、そのようなことはないのです。
この生物学上の謎は、「ペトのパラドックス(注;もしくは「ピートのパラドックス」とも)」と呼ばれており、研究者たちはその解明に取り組んでいます。例えば、体が大きな長寿の動物は、細胞の暴走を防ぐ仕組みを発達させてきたことがわかってきました。ところが、その仕組みがどのようなものなのかは、実はまだ解明に至っていません。しかし、ゾウについてはわかってきています。
数年前、2つの研究グループが、ゾウにはTP53というガン抑制遺伝子のコピーが20種類もあることを突き止めました。ヒトを含め、大半の動物が持っているコピーは1種類のみです。この遺伝子は、壊れたDNAを修復したり、修復不能な損傷を受けたDNAを破壊したりする働きを持つ、p53たんぱく質を生成します。
ゾウはこのたんぱく質を多く持つため、ガンの成長を抑制することに優れています。実際に、ゾウの細胞数はヒトの約100倍ですが、優れた抑制機能により、ガンの罹患数はヒトより少なく済んでいます。
さて、ガンの抑制に貢献しているのは、TP53だけではないことがわかってきました。今週、シカゴ大学の遺伝学者グループが、ゾウは「ゾンビ遺伝子」なるもう一つの「奥の手」を持っていることを発表しました。「ゾンビ遺伝子」なんて聞いたこともない、という方はご安心ください。この論文発表が初出のようです。みなさんも、研究者として名付けてしまえば、何でもありのようですよ。
さて「ゾンビ遺伝子」という名は、その特性と働きから見て、非常に的を射ているようです。この遺伝子は、進化の過程において“復活”したもので、その働きはひたすら細胞を殺戮する、というものです。
ゾウは「白血病阻止因子」、別名LIFという遺伝子のコピーを、他の動物より多く持っています。ゾウの仲間の動物のうちの何種か、例えばマナティーや、アフリカに生息するウサギに似た哺乳類のロックハイラックスなども、この遺伝子を持っています。しかしこれらの動物においては、この余分に持っているLIFのコピーはうまく機能しないようです。
遺伝学者たちは、これらの動物の遺伝子コピーの多くは「偽遺伝子」であると考えています。これは欠陥のある遺伝子で、複製を作る際に失敗したり、複製された後に変異を起こして誕生したもののようです。DNAを調べればその破片を確認できますが、実際に機能することはありません。
しかし、ゾウのLIFのコピーには、実際に機能しているものが一種類あります。通常であれば、DNA塩基配列がたんぱく質に変換される程度によって、LIFは細胞の保生や自壊を助ける働きをしますが、ゾウが持ち機能しているこのLIFのコピーは、細胞の死を助ける働きのみを行います。この働きはガン細胞の増殖を妨げる役割を果たし、この遺伝子はLIF6と呼ばれています。
研究者たちはゾウの細胞をペトリ皿で培養し、LIF6の働きを調べました。さて、ゾウの細胞はDNAの損傷に弱いので、毒性の薬品を加えると簡単に死滅してしまいます。ここで、細胞が生成するLIF6のたんぱく質を減らしてみると、細胞の耐性が上がりました。
しかし、たんぱく質を増やしてみると、細胞は非常に脆弱になり、わざわざ毒薬を使わなくても死滅してしまいました。ガンに罹りにくくなることの欠点が、こうして明らかになりました。腫瘍の成長を妨げたいのはやまやまですが、細胞が簡単に死滅してしまっても困りますよね。
ゾウにとって都合の良いことに、この“復活”したLIF6遺伝子の塩基配列 は、p53によって活性化されるよう発達を遂げました。従って、DNAにダメージが発生しない限り、通常の状態でこの「細胞殺し」遺伝子が機能することはありません。DNAが損傷を受けると、我らがp53は活性化し、LIF6遺伝子と結合してたんぱく質の発現を開始します。
LIF6が作るたんぱく質は、恐らくはミトコンドリアを破壊するようです。すると、細胞の活性源であるミトコンドリアは、損傷を受けた細胞を死滅させる化学物質を放出するデス・マシーンと化します。つまり、LIF6は殺し屋ではあるのですが、たいへんありがたい殺し屋なのです。
研究者たちは、ゾウやその仲間の絶滅種と現存種の双方からDNAサンプルを採取して、LIF遺伝子が復活を遂げたおおよその時期を推測することに成功しました。マストドンや毛むくじゃらのマンモスには、今日のアフリカゾウやアジアゾウの持つLIF6 とよく似た、正常に機能する遺伝子があったようです。一方で、マナティーやハイラックスにはありません。このことから、遺伝子の「ゾンビ化」は、6,000万年前から3,000万年前の間に起こったことが推測できます。
このタイミングは、ゾウの祖先が急激に体重を増して巨体化した時期であり、たいへん興味深いと言えます。これらの動物は、体中にガンができるリスクをLIF6が抑えてくれたことにより、巨体化できたのかもしれません。TP53が増えたことも、巨体化できた原因かもしれません。
この研究は、ゾウが巨体化した理由や、比較的ガンに罹りにくい理由の解明につながりました。しかし、クジラのような巨躯を持つ他の動物や、コウモリのような長寿の動物がどのようにガンを免れているかは未解明のままです。ゾンビ遺伝子や、不思議な機能を持つ遺伝子が、まだまだあるのかもしれません。
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