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How Engineers Move Medicine Around the World(全1記事)

人が住む最果ての地に薬を届ける、エンジニアたちの挑戦

私たち人類が開発した薬品やワクチンは、さまざまな病気を根絶してきました。けれども、なかには熱や光に弱い薬もあります。せっかく薬を開発しても、それを届ける手段がなければ、地球上のすべての人々を病気から救うことはできません。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、安定した電気が供給されない人里離れた地へ薬を届けようとするエンジニアたちの挑戦を紹介します。

人の住む最果ての地へ薬を届けるための挑戦

ハンク・グリーン氏:現在の薬品やワクチンのおかげで、歴史上最悪の病気が予防可能になりました。例えば、天然痘は完全に根絶されました。それに、ポリオももう少しで根絶できることろまできています。

しかし、ここまでくるのは容易なことではありませんでした。このような実績は、非常に大きな世界規模の努力によるもので、アメリカ郊外から人間の住む最果ての場所まで薬を届けることは挑戦となってきました。

薬は時に繊細なので、地球上すべての人に薬が届くようにするのは難しいのです。薬の中には状況がどうあれ、安定した状態を保つことができるものもありますが、中には光や湿度、特に熱に弱い薬があります。例えば、薬の中には摂氏2度から8度の状態を保つ必要があるものもあります。その間で温度管理をするのは挑戦です。

裕福な先進国においては、そのような条件があっても、精巧な生産管理のおかげで、実験室から患者の手に渡るまで品質を保つことが可能です。しかし、発展途上の地域において、特に簡単に安定した電気系統が供給されていない場所ではそれが挑戦となります。クーラーやアイスパックは、人里離れた場所にワクチンや薬を届けるため飛行機に積んだり、運転や山登りをしたりする時に有効です。

しかし、根本的に問題を解決するには、細かくコントロールできる、長期にわたる解決策が必要になります。環境が暑すぎたり寒すぎたりした場合に、それを感知できるシステムが必要です。幸いなことに、エンジニアたちはいくつかの解決策を提示しています。

人里離れた場所でワクチンを冷蔵保存するには?

その中の一つで、長きにわたり用いられてきた方法に、「灯油やガスで動く冷蔵庫」があります。

名前を聞いて皆さんが想像されるのとは異なり、この冷蔵庫はただ単にガスで動く発電機に繋がって動くというシステムではありません。このシステムは、スマートなエンジニアリングと物理学により可能になります。

まず、アンモニアなどの液体冷媒を取り、それを低圧で密封された容器に入れます。低圧の環境が液体アンモニアを蒸発させ、ガス状にします。この物理状態の変化は、周りから熱を吸収します。ちょうど汗が蒸発することで皮膚の温度が下がるのと同じ原理です。

それにより冷蔵庫内の熱が吸収されるため、庫内の温度が下がります。すると、そのアンモニアガスはパイプを通って、水が入った容器に移され、混ざって液状になります。その液体がガスや灯油による燃焼で沸騰し、その蒸気が分離器や凝縮器にかけられます。

最終的にアンモニアと水が分離され、アンモニアは元の容器に戻されて、再び冷却プロセスが繰り返されるわけです。

この方法と多少異なるモデルが異なる化学物質で用いられることもありますが、基本的な冷却方法は同じです。この冷却サイクルは燃焼するガスが続く限り繰り返されます。温度は手動やサーモスタットにより調整されます。

サーモスタットやレコーダーがあれば、もし機械が偶発的に熱すぎたり冷たすぎたりした時、医師に警告を促すことができます。灯油冷蔵庫は、実際に冷蔵庫として用いられてきた初期のモデルで、昔のスタイルは時にとても有効な働きをするものです。

この方法は、人里離れた場所で薬剤を冷たく保つために、35年ほどの長い間使われてきました。このスタイルの冷蔵庫は、ワクチンを保存している60パーセント以上の場所で使われてきました。もちろんそんなに単純な話ではありません。これらの冷蔵庫は絶えず燃料を必要としますし、とても効率が良いわけではないからです。そこで、より良くシンプルな方法に取って代わられようとしています。

太陽光で薬剤を冷やすソーラーパワー冷蔵庫

例えば、「ソーラーパワー冷蔵庫」があります。この冷蔵庫はソーラーパネルにより稼動し、灯油式冷蔵庫と同様、サーモスタットや温度リーダーが付いています。

はじめにこの冷蔵庫が登場したのは1980年代のことです。しかし問題となったのは、燃焼のための燃料が必要でなくなった代わりに、夜間も運転させるために大きなバッテリーシステムが必要になってしまったのです。

そのシステムは故障もしますし、修理したり部品を取り替えるのに多額の費用がかかってしまいます。それで、2010年頃から「ソーラーダイレクトドライブ」というテクノロジーが用いられるようになりました。その方法ではまだソーラーパネルが使われますが、そこでできるエネルギーでバッテリーをチャージするのではなく、水のような液体を凍結するのに直接使われます。そうすれば薬剤は冷たい状態で保たれ、その氷は太陽が出なくなっても最大数日間は残ります。

また水ではなく、「相変化材料」と呼ばれるものが用いられることもあります。それは水のように凍りますが、摂氏0度以上、摂氏5度くらいで凍結します。そうすると冷たい状態を保つことができますが、偶発的に温度を下げすぎてしまう危険が防げます。もちろんこのような方法では、バッテリーにより冷蔵機能を保つ方法にはかなわないかもしれませんし、雲に覆われた場所では有効ではありません。

でも、太陽光が豊富な場所では、チャージの時間が短くてもすべて冷凍状態にするには十分です。この機械はまだ広範囲でテストされた訳ではないので、どれくらいの寿命があるのか検討がつきませんが、この有効さと使いやすさはタンザニア、コロンビア、そしてケニアにおいて実証されました。これらの機械は初期投資が高価ですが、長い目で見た時に、よりシンプルですし安価と言えます。それに常に改善されていますから、このようなシステムが今後さらに医療コミュニティで用いられていくことでしょう。

人類が病気を根絶するための問題

もちろん、ソーラーダイレクトドライブや灯油、ガス式冷蔵庫の他に薬剤を運搬する方法がないわけではありません。新しい研究やデザインは常にされており、それにより興味深い発見もありました。

例えば、あるプロジェクトでは小さい樽くらいの大きさで、丈夫かつ超保温可能な容器が発明されました。それを使えば、山を登ったり旅行をする間の持ち運びが可能になりますし、1ヶ月以上冷たい状態を保つことができるのです。この容器の中央にワクチンを入れ、その周囲を氷の塊で囲います。その容器の内部は断熱材で覆われていて真空状態なので、外から熱が入り込むのを防いでくれます。

小さな温度センサーが搭載されていて、もしシステムが冷たくなりすぎると電子装置がアラームを鳴らすので、医師が容器を開けて中身を詰め直したり、ワクチンを別の場所に移動したりすることができます。

この装置は2015年の事前認定製品として、世界保健機構のリストに掲載されました。もしある国やNGOが医療設備を買ったり寄付したりしたいと思った場合、このリストを見ればWHOの推奨する設備を知ることができるのです。そこになければ自分で開発する必要があります。学生たちやデザインコンペなどでも、手動クランク、つまり機械的エネルギーで発電可能なクーラーが発表されています。

また現存の技術を縮小して持ち運べるようにしたデザインもあります。このようにして、私たちはこの運搬に関する問題に取り組んでいます。医療の面で、人類はいくつかの病気を治療したり根絶することに成功してきました。今は冷静に残りの問題に取り組んでいく必要があるのみです。

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