2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
How We Make the Coldest Things in the Universe(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:宇宙の中で一番冷たい場所は、約1ケルビン、つまり摂氏マイナス270±2度です。これは「絶対零度」と呼ばれる、史上最も冷たい温度より1度高い温度です。しかし、宇宙の中で一番冷たい場所は、地球上で科学者により作り出されました。
その温度は「10億分の1ケルビン」、つまり「ナノケルビン」です。この温度は「超低温物理学」で使われます。粒子は冷たくなるほどその動きが少なくなり、研究者たちがそれぞれの原子や分子の特性を調べたり、物理学の基本となる分野でテストすることを可能にします。また、超低温を用いて、「ボース=アインシュタイン凝縮」という現象を引き起こすことができます。
「ボース=アインシュタイン凝縮」とは、原子が完全に調和して動く状態で、それはまるで量子がフラッシュモブをしているようです。
もしかしたら、この状態を作り出すのにチャレンジとなる点にお気づきかもしれません。私たちは通常何かを冷ますとき、その物体から、もっと冷たい物体へと熱を移すことによりそれを冷やすことができます。しかし、原子を「10億分の1ケルビン」まで下げる場合、ただ原子を冷蔵庫へ突っ込むことはできません。
その代わりに必要となるのは「量子力学」と「レーザー照射」です。科学者たちが「ナノケルビン」に到達させるために使う主な技術は二つあります。最も一般的なタイプのレーザー冷却は「ドップラー冷却」と言います。
これは、超低温物理学においてとても役に立つ技術です。この技術は1970年代後半に初めて実証され、現代では、もっと低い温度まで下げることのできる洗練された技術があるにもかかわらず、未だに世界中の物理学研究所で使われています。
この原理は、量子力学のおかげで、原子が光や光子の粒子を吸収したり放出したりできるという考えに基づいています。ですが、そのとき光子はちょうど良いエネルギーを持っていなければなりません。原子はこれに関してはかなり神経質なのです。
原子が光子にぶつかる時、光子は原子から運動量を奪います。これはちょうど2つのビリヤードのボールがぶつかって跳ね返る様子と似ています。
どのようにぶつかるかに応じて、時には片方が速度を落とし、片方が勢いを増します。つまり、原子に光をあてるだけで原子の運動エネルギーを変えたり、そのスピードに関係するエネルギーを変えたりできるというわけです。
「温度」の本当の意味をいうならば、原子や分子の中にどれだけの運動エネルギーが含まれているのかを計った値がそれなのです。熱が高ければ温度が高く、速く動く粒子があるということなので、原子を冷やすためにやるべきことは、その運動エネルギーを取り除けば良いというわけなのです。
しかし、たくさんの原子にレーザーを当てるだけでは温度が下がることはありません。なぜなら、原子はランダムに冷えていくからです。それにビリヤードのボールのように、光子がどのようにぶつかるかによって、ぶつかった原子の速度が落ちたり上がったりするのです。ですから、もっと賢い方法でやるとなると、この「ドップラー」の出番となるのです。
救急車が通り過ぎる時、それが向かってくるか、遠ざかるかによってサイレンの音が変わるのを考えてください。
それこそが「ドップラー効果」なのです。聞こえてくるサイレンの音は、あなたに相対した速度に応じてピッチや周波数が影響を受けるのです。光に関しても同じ現象が起こります。あなたが高速で移動すると、見える光の周波数や色が若干変化します。そして、光の周波数はそのエネルギーと直接関係しています。
光子の周波が高くなるほど、そのエネルギー量も多くなります。ですから、原子にレーザーを当てる時、その光子の周波数を原子が吸収できるように下げ、「ドップラー効果」を用います。
つまり、光子に向かって素早く動いている原子のみが、その周波数を見て関わることができるので、そうなればその原子と光子がまっすぐぶつかって、結果的に原子の速度が落ちるというわけです。
原子を冷やすというのは、原子をたくさんの光子で叩くようなもので、それはまるで動いている車をプールヌードル(棒状のビート板)で止めるような感じです。それでも効果があるのです!
しかし、この効果にも限界があります。これよりもっと温度を下げるためには、他の技術が必要になります。この方法で「ドップラー制限」と呼ばれる他の量子効果が起こる前に、原子を数百万分の1ケルビンまで冷やすことができるのです。
他の技術の中の一つに、「シーシュポス冷却」と呼ばれる技術があり、これは1980年代後半に発明されました。ギリシャ神話の中に「シーシュポス」という登場人物があり、彼は神たちを怒らせたため、罰を受けます。
ギリシャ神話の中から学べる1番の教訓は、「神を怒らせるな」ということです。シーシュポスの黄泉の国での罰は、坂道で転がり落ちる玉石を永遠に持ち上げ続けるというものです。
この神話から取られた「シーシュポス冷却」は、この罰と同じ原理です。坂道で原子を押し上げることにより、それから運動エネルギーを取り除くという方法です。しかし、シーシュポスが玉石を押し上げて「重力の力」と戦っているのとは違い、原子における「シーシュポス冷却」は「電磁気の坂」を登ります。
多くの光と同様、レーザーから出る光は光子の粒子、または電磁気の周波であると考えてください。これらの周波は、まるで山や谷のある風景のような電磁場を作り出します。
坂を上るジェットコースターを想像してください。坂の頂上に来ると、ジェットコースターの速度は遅くなります。つまり、運動エネルギーが少なくなります。
しかし、重力による位置エネルギーはたくさんあります。ジェットコースターがそのレールに沿って下って行くと、位置エネルギーが速度となり、その速度で次の坂の頂上まで登ることができます。
それと似たような現象が原子でも起こるのです。原子が電磁場のピークに到達すると、運動エネルギーがなくなり、代わりに位置エネルギーが加わります。そして、それが下がって行くと逆の現象が生じます。
原子を冷却するためには、坂を下る時間より上る時間を長くしなければなりません。そうすることで、得られるエネルギーより失う運動エネルギーの方が多くなります。それをするために、原子が頂上に到達するときに、そのエネルギーレベルが非常に高くなるようにします。
ここで出て来る量子力学は、我々が日常で目にする物理の法則とは異なるので、想像しにくいかもしれません。しかし、正しくセットアップすれば、原子はレベルが高くなった状態で光子を放出し、その段階でエネルギーを失うので、登ってきた坂をずっと下まで落ちていってしまいます。そして、そのサイクルを繰り返そうとします。
これを繰り返すたび、少しずつ原子はエネルギーを失っていき、その温度も下がっていくのです。「シーシュポス冷却」は「ドップラー制限」の問題を解決し、科学者たちがナノケルビンまで温度を下げることを可能にしました。この技術を発明した発明家は1997年のノーベル賞を受賞しています。
今日の研究者たちも「ドップラー冷却」、「シーシュポス冷却」やそれに似た技術を用いた方法で、もっと大きな分子を冷却する方法を研究しています。私たちにさらなる量子力学について教えてくれる他にも、このタイプの精度管理はもっと正確な原子時計を作る助けとなったり、量子コンピュータのような新しい開発へつなげてくれたりします。ですからある意味、物理の将来は冷え切っていると言えるでしょう。
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