CLOSE

Bdelloids: The Most Hardcore Animals in the World?(全1記事)

粉々になっても死の淵から蘇る微生物 ヒルガタワムシ、驚きの再生方法

ゾンビであれば一度死んでしまっても、再び蘇ることはあるかもしれません。映画やアニメでは定番の存在ですが、現実でも死の淵から蘇る生物は果たして存在するのでしょうか? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、 生存戦略に特化する微生物「ヒルガタワムシ」の生態を紐解きます。

ヒルガタワムシの生態

ハンク・グリーン氏:ヒルガタワムシとは、葉巻の先端に刷毛がついたかのような見た目の微生物です。とくにびっくりするような見た目をしているわけではありませんが、生物の中で一番丈夫な生き物です。

果たして、ヒルガタワムシにはどんな力が備わっているのでしょうか? 放射線などでDNAが粉々になってしまっても、それを元通りに修復する力が備わっているのです。

加えて、より強い遺伝子を得るために、自らを困難な状況にあえて置くことすらあります。ワムシは干ばつの危険性のある池などに生きているため、住居が失われても生き残る必要があるのです。

こういった話はクマムシにも当てはまります。クマムシも同様の状況下で生存できます。しかし、ワムシの場合はもっと徹底しています。生存に特化したワムシ独自の方法を紹介しましょう。

ヒルの仲間は400種以上いますが、そのなかには干ばつに耐性がある種類がたくさんいます。

ワムシは乾きやすいコケの表面に現れる水滴を摂取し、水量の少ない池で生息しています。場合によっては水分が枯渇するため、否が応でも無水生活となり、仮死状態へと突入します。こうした乾燥状態に自らの身体をさらし、生きることを一時停止しています。

極度の乾燥地帯で生き抜くには、常軌を逸した方法をとることがあります。DNAにとって非常に悪い方法です。乾燥の程度がある一定値を超えると、DNAの分子は耐えられなくなります。そうなると、DNAを螺旋状に支えている細胞が切断を引き起こしてしまうのです。これを「二本鎖切断」と呼びます。

DNAは細胞にとって必要不可欠ですが、連鎖途中で損傷が起こると働かなくなります。さらに悪いことに、ほとんどの生物は二本鎖切断の修復に長けていません。不適切な分子を用いて、修復するか、新たな分子を取り込んで修復するか。このどちらかで修復しますが、どちらでも突然変異の危険性を孕んでしまいます。放射線に耐性のあるワムシも二本鎖切断を引き起こします。

2008年のマサチューセッツの研究班の研究結果によると、ワムシは遺伝子を粉々にしてしまう放射線に耐えられるそうです。そのため、遺伝子の再生能力が20パーセントほど低下するだけの耐性を誇ります。

奇妙なことに、ワムシは干ばつに遭ってからは、水分補給するまでDNAを修復しません。修復の仕方ははっきりとわかっていませんが、DNAが損傷していたとしても、ワムシのたんぱく質がDNAを極度の乾燥状態から引き上げ、修復しています。

他の生物から遺伝子を借りる特殊能力

バラバラになったDNAを繋ぎ合わせることは、ワムシだけが持つ奇妙な力ではありません。他の生物にも同様の傾向は見られます。では、ワムシが何に優れているのか。それは、バクテリアや植物、菌類などから遺伝子を借りる能力です。ワムシがそんなことをするようには見えませんよね。

有性生殖が欠けることで、他の遺伝子を取り込むことを遺伝子の「水平伝播」と言います。バクテリアは、水平伝播を常に行っています。ですが、生物においてはものすごく珍しい行為です。

ワムシの遺伝子の8〜9パーセントは、他の生物から借り受けたものです。干ばつを経験したワムシは、経験しなかった近親種よりも、異質なDNAを取り込む傾向があることがわかりました。ワムシがDNAを修復している最中に、他の生物・微生物からDNAの取り込んでいることがわかりますね。

「こっちのDNAをここに持ってこよう」「予備の遺伝子を取ってこよう」「ここにこれをつけよう」。こんなことをワムシが心の中で言っているかもしれませんね。

確かなことはわかりませんが、干上がっていないワムシにも異質な遺伝子が見られることからも、この仮説は正しいのではないでしょうか。

また、この無秩序とも言える遺伝子の取り込みが、ワムシが生き残りに長けている事実を示しているのではないでしょうか。2015年の「プロスワン」誌によると、遺伝子の水平伝播がワムシを乾燥から生き延びさせた方法も、かつての謎に光を投げかけます。クマムシを含む、多くの乾燥耐性生物は、干上がった時に水の代わりとなる別の液体で体を満たします。

多くの生物にとって、それは「トレハロース」と呼ばれている糖類です。ワムシにはトレハロースは見られませんでしたが、研究者がトレハロースの遺伝子に近い遺伝子を調べたところ、トレハロースをつくり出す遺伝子と破壊する遺伝子両方を併せ持つことがわかったのです。

一方の遺伝子は植物から、もう一方の遺伝子はバクテリアからの遺伝子から吸収したのでしょう。双方の遺伝子はワムシの遺伝子の中で発現したものですので、生物化学的に有効であるかどうかはわかりませんが、何かをつくりだすために使われたのでしょう。

トレハロースを破壊する遺伝子は、つくり出す遺伝子よりも多く見られたので、ワムシの中で生み出されたトレハロースは、発見されるより早く破壊されているのではないかと推測されます。

とはいえ、実際にワムシが干ばつから生き抜いている仕組みはまだまだ霧の中です。だとしても、ワムシが動物界随一のサバイバーになり得ることも納得ですね。まるで、ゾンビのように、細切れになっても死の淵から蘇ってくるのですから。

解き明かさなくてはいけないワムシの謎は、まだまだたくさんあります。彼らが防御力に長けている、というのは間違いないでしょうね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!