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ダライ・ラマ法王14世トークセッション 「ONE - we are one family -」(全4記事)

ダライ・ラマ法王が説く、非暴力の時代への道筋 「人間本来の性質は慈悲と愛の心」

2018年11月17日、日比谷公園大音楽堂にて、チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ法王14世と、カルチャーやアートの分野で活躍するイノベーター/アーティストによるトークセッションが開催されました。『ONE - we are one family - 』をテーマに、「70億人の人間が一つの存在である」と世界中でメッセージを送り続けるダライ・ラマ法王14世とゲストが語り合い、日本の未来を考えます。本パートでは、ダライ・ラマ法王が、21世紀を平和な時代にしていくために大切なことを語りかけました。

地球上のすべての生き物の望みは幸せになること

丸山智恵子氏(以下、丸山):それではここから、ぜひトークセッションに入らせていただきたいと思います。まずは、ダライ・ラマ法王猊下から、お話をいただきたいと思っています。

とくに若い方たちのためにメッセージとして広げていらっしゃる、いろいろなお考えのなかから、1つ目のテーマとして時間というものをお尋ねしたいと思います。今の日本人は、時間に追われていると多くの方が感じています。そのなかで時間の価値を考えるということを、ぜひお尋ねしたいと思います。

法王猊下は2歳の時に、ダライ・ラマ法王の13世の転生者として認定を受けられています。そのような法王様にとって、時間の価値とはどういうことなのか。そして限られた時間のなかで、どのようなことを使命とされているのか。ぜひまずお聞きしたいと思います。

(日本語訳)ダライ・ラマ法王14世:では最初に、兄弟姉妹のみなさま方、私はここに来ることができまして、再びまた日本のみなさまにお目にかかれたということを私自身、非常にうれしく思っております。

そしてこのような場におきまして、私自身の考えていること、そして体験したことなどを、みなさま方と分かち合うことができたらと思っているわけです。私自身はどこに行きましても、70億人の人間のなかの1人であるということを考えているわけです。

そして私たち、この地球上に生きている70億の人間たちは、精神的にも感情的にも、そして肉体的にもまったく同じ1人の人間であるわけです。そして最も大切なことはなにかといいますと、そのすべての人間たちがすべて幸せを望んでいるということです。

しかし、さまざまなタイプの生き物たちがこの地球上には存在しています。ですから、それによって生き方が異なっているわけです。例え小さな虫けらであったとしても、彼らも苦しみを望まず幸せになりたいという気持ちは、まったく同じように思っているわけです。

人間以外のほとんどの動物は無限の欲望や執着を持たない

ですから、もしそのような動物たちであるならば、そのようなことを考えつつ、しかし自分が生き延びるためだけに、他の動物たちを殺すというようなことをして生きているわけです。私たち人間たちは、とても優れた知性を持っているにも関わらず、ときには人間の優れた知性というものを破壊的な目的のために使ってしまうことをしているわけです。

例えば、武器は人間が作ったものです。先ほども申し上げたとおり、虎やライオンなどは、自分が生き延びるための殺戮しか行うことはいたしません。しかし私たち人間たちは、それを超えたことをしてしまうことがあるわけです。

そして私たちの歯を見てみるならば、虎やライオンなどのように尖ったものとは違っています。どちらかというと、鹿などの草食動物の歯と似たような歯を私たちは持っているわけです。つまり私たちはどちらかというと、菜食に適した身体を持っているわけであり、自分の欲望だけを満たすことのために、限りなく悪いことをしてしまうことも起こっているわけです。

このように、ほとんどの動物たちは限られたなかでの殺戮などをするだけで、自分自身の欲望や執着が満たされたとき、それ以上の殺戮などをすることはあまりありません。しかし私たち人間は、無限の欲望と執着の気持ちを持っているわけです。

ですから今このとき、私たちはここで平和を楽しんでいるわけですけれども、時を同じくしまして、その他の地域では、同じような人間が殺されている状況もあります。後ろの方々は太陽に照らされて温かそうに見えますけれども、私たちは影に座っていてとても寒いような気がします。(冨永)愛さんなどはとても薄い服を着ておられるので、きっと寒いのではないかと思います。

そのような違いが、私たちのなかには存在しています。そして、私たちが集まってこのように楽しんでいる今このときも、シリア、アフガニスタン、そしてアフリカなどでは殺戮が行われています。小さな子どもたちも殺されているわけです。

21世紀を「非暴力の時代」とするためにやるべきこと

ですから私たち人間というものは、この優れた知性が故に武器を作ってしまいました。それよりももっとひどい状況は、核兵器を作り出したことにあるわけです。日本の方々はその破壊的な結果というものを得てしまわれ、広島、そして長崎では多くの方々が放射能を浴びて、その後、多くの方が亡くなりましたし、多くの方々が長い間苦しんでこられたわけです。

私自身も広島や長崎を訪問したことがありますけれども、最初に広島を訪問させていただいたとき、その博物館のなかで年老いた女性が、その昔に放射能を浴びてどれほど苦しんだかということを、私にお話をしてくださいました。

その博物館のなかには、10時の時点で腕時計が半分溶けた状態で止まっているようなものも、展示されていました。そのように鉄でできている時計ですら溶けてしまうほどの恐ろしい熱射で、多くの人々が苦しんだということは、本当にあってはならないことです。

私たち人間たちが、この知性を誤ったことに使ってしまう場合、そのような本当に考えられないような苦しみを人々に与えることになってしまうわけです。

私たちはこの優れた知性というものを、自分自身の喜びを得るために、幸せになるために、そしてほかの人たちをも幸せにするために使っていかなければなりません。そのように非常に恐ろしい恐怖と不安を生み出すということさえ、できてしまうわけです。

私たちは今ここで、21世紀を生きていますが、そのような間違いを決して繰り返してはなりません。20世紀において、第一次世界大戦、第二次世界大戦、そしてその後、ベトナム戦争、韓国における戦争、たくさんの戦争が中国のなかでも起きましたけれども、そういった状況下において、約2億人の人がこの暴力的な戦争という行いによって殺されたと報告されています。

私たち人間たちは、もう暴力は十分であることを、新たに認識し直す必要があります。この21世紀を非暴力の時代とし、より良い世界とし、より平和な世界にするために、私たちは自分自身の心のなかに慈悲深さ、つまり愛や思いやりの心を高めるということをしていかなければなりません。

違いを強調することが、争いや戦争のもとになる

そのために、今回のこのイベントのタイトルになっているように、地球上に生きている70億人の人間たちが、1つの家族としてともに手を取っていく時代としていかなければならないわけです。

私たちは「私たち・彼ら」というような、違いを強調することが非常に多いです。自分の周りにいる人たちだけは大切にしますけれども、敵である人たちに対しては、平気で殺戮をしてしまうこともあります。

このようなことはあってはならないことであり、より深いレベルにおいて、私たちは人間同士すべての人たちがまったく同じ立場にあるということをみなさま方に改めて再認識していただきたいと考えております。

(付き人になにかを言われて)そうか。(ここまで休みなく話していたので、通訳に向かって)すみません。長過ぎましたね。

(会場笑、会場拍手)

(訳している間に)私はお茶を楽しむとします。

(会場笑、会場拍手)

そこで、先ほどもお話ししましたように、この「私たち・彼ら」という概念。これからさまざまな争いごとや、戦争が生じてしまいます。私たちは幸せになりたいという心を誰もが持っているわけですから、それを私たちは忘れてはなりません。

どのような生き物であったとしても、すべての命あるものたちが幸せに暮らしたいということを考えているわけです。そして誰からも邪魔されずそのような権利を、幸せになりたいという権利を持っているわけです。

一人ひとりの心の平和から世界の平和が始まる

そこで、この地球という1つの星の中で、無限の力を使うことによって、さまざまなことを私たちは成し遂げていくことができます。つまり、本来的に私たちは幸せを望んでいるわけですから、私たちが得ているさまざまな設備などを利用することによって、活用することによって、70憶人の人間たちが言葉や肌の色などの違いを超えて一つになり、お互いにコミュニケーションを図っていくべき時がきていると思います。

もちろん、この銀河系というより広いことを考えてみるならば、地球以外のほかの惑星があって、そこに生きているものたちも存在しています。しかしそのような生き物たちに対して、私たちができることはあまりありません。

私たちは地球という1つの住処に、同じく生きている一人ひとりの人間たちであります。この70億の人間たちが、一つの家族として手に手を取るということが、今非常に求められていることではないかと、私は考えています。

そこで私が第一の使命としていることが、この一つの家族という認識をこの世の中に広め、高めていくということです。そのようなことに同意してくださっている多くの友人たちが、私とともに働きかけてくださっています。

そのような取り組みによって、この21世紀をより幸せな世界にしていくことができます。このように、より平和な世界を作り出すということ。この源は、みなさま個人個人の内なる心の平和を構築することから始まります。

ですからそのようなことに、みなさま方ももっと関心を持っていただき、自分の心のなかに穏やかな、平和な心を作り出すことを努力していただきたいと思います。

そのためには、私たちの持っている、人間の知性をフルに働かせなければなりません。私たちは、いずれこの70億人の人間たちとともに、私たちが望んでいるか望まないでいるかに関わらず、ともに手を取って生きていかなければならないんです。そこに、例え宗教の信心の違いがあっても、そういったものを乗り越えていくことができます。

人間本来の性質は慈悲と愛の心

最近では、地球温暖化、そして自然災害が次から次へと増えてきているという問題を、私たちは考えています。ですから、私たちは、70億人の人々が手に手を取って立ち上がり、共に働き、すべてのことを分かち合っていくべきだと思います。

それに加えて、私たち人間が作り出してしまった武器などによって苦しんでいる人々を、できるだけそのような状態に置かず、そのような状態がなくなる努力をしていかなければなりません。

つまり、私は最初に「兄弟姉妹のみなさま方」という呼びかけを常にしているわけですが、そのような観念をみなさま方お一人おひとりが持つことができたならば、私たち人間同士が手に手を取って、共に本当の平和構築を成し遂げていくことが必ずやできると信じているわけです。

そこで、概念的な世界における武器廃絶を、私たちはぜひ成し遂げなければなりません。まずその初歩に、土台として成し遂げなければならないことは、みなさま方の心のなかの武器を排除する。敵をやっつけようなどという心、そして怒りの心、こういったものを鎮めていくことが必要とされます。

最近では科学者たちが、私たち人間の本来的な性質は、慈悲と愛の心であることを、実験結果として報告されておられます。もし怒りが私たち人間の本来的な性質であるならば、手に手を取って立ち上がるようなこともできないことになってしまうわけです。

そして、根本的に私たち70憶人の人間すべてが、お母さんのお腹から生まれ、お母さんの限りない愛情を受けて育ってきたという意味においても、私たちはまったく同じ立場にあります。

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