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21世紀のビジネスパーソン必携の思考法とは 企画力・発想力を引き出すアナロジカル・シンキング(全3記事)

私たちは身の回りの情報を“編集”しながら生活している 編集工学研究所コンサル直伝のアナロジカル・シンキング講座

2018年8月23日、NTTドコモ・ベンチャーズ ラウンジにて「21世紀のビジネスパーソン必携の思考法とは?! 企画力・発想力を引き出すアナロジカル・シンキング」が開催されました。時代を切りひらく武器として、企業や学校など幅広い場面で活用されている「編集工学」。第2回の開催となる今回は、「アナロジカル・シンキング(類推)」をテーマとして、株式会社編集工学研究所のシニアコンサルタント・安藤昭子氏が講演を行ないました。本記事ではその前半部の模様をお送りします。

企画力、発想力を引き出すアナロジカルシンキング

安藤昭子氏(以下、安藤):みなさん、こんばんは。

今日は、編集工学シリーズの2回目ということで、前回いらして下さった方も、ちらちらとお顔を覚えてる方がいらっしゃいます。ありがとうございます。

今日はお暑いなか、台風も近づいてきてるようですけれども、たくさんの方にいらしていただいてうれしいです。

今日はこちらにもあるように、「21世紀のビジネスパーソン必携の思考力とは」ということで、企画力、発想力を引き出すアナロジカルシンキングと名付けています。

アナロジカルシンキングってなんだろうな? というイメージを持ちながら、いらしてくださったと思うんですけれども、この2時間で皆さんがなにかしら明日からちょっと試してみようかな、と思えるようなものを持ち帰っていただけたらなと思います。

私たちは情報を編集しながら生きている

さっそく中身に入っていきたいと思います。前回いらして下さった方には1回目でも少しご紹介したんですけれども、私ども、編集工学研究所と申します。

設立されてから30年ちょっとの会社でして、この壁じゅうが本で埋め尽くされたこの場所が、わたしたちのオフィスの一部で「本楼(ほんろう)」と呼んでいます。

ここでさまざまにイベントをやったり、あとお客様をお招きして打ち合わせをしたり、さまざまな活動をしております。

この編集工学研究所がどんなことをやってる会社かというと、お手元に簡単的な事業案内をお配りしております。

ちょこっと(会社案内を)のぞいてみたいと思うんですが。まず、開いていただくと本楼の写真がありまして、その次に編集工学と書いてます。

編集工学って、初めて聞く方もたくさんいらっしゃると思いますが、弊社の所長である松岡正剛が創始した物事の見方・考え方を体系化したものです。

私たちが捉える編集というのは、よく出版社で雑誌をつくってたり、本をつくってたり、もしくはテレビ局で映像を編集してたりという狭義の意味での編集ではなくて、すべてに「編集」が関係すると捉えてるんですね。

私たちの周りには常に情報が溢れていて、ふだん私たちはその情報をなにかしらのかたちで処理をしながら、生活をしています。

その営みすべてを「編集」と呼んでいます。

その編集ってどんなふうになってるのか? その仕組を明らかにして、かつ社会に適用できるような技術として構造化したものが、「編集工学」です。

企業のルーツを編集していく

編集工学研究所は、この編集工学という方法論を軸にしながら、さまざまな企業、自治体、国、学校などのお手伝いをさせていただいています。

最近とても多いケースとして、自分たちはなにものなのかということを改めて言語化しい、自分たちはどこから来てどこへ向かおうとしているのか、ということを捉えなおしたいという企業さんからのご相談があります。

ルーツエディティングと私たちは呼んでるんですけれども、そういった編集工学を駆使しながら、さまざまに企業や地域のルーツを編集していくということをしています。

ふたつめのブックウェアソリューションでは、本をさまざまに使って空間をつくったり、場をつくったりですと、本のある空間づくりのお手伝いもしています。

もうひとつ下にエディトリアルソリューションとあります。たとえばサービスや商品に関する発想を広げたい、新規事業を創造したいというようなところで、編集工学を用いながら、その場の発想が広がっていくようなをお手伝いしてます。

あとはイシス編集学校という編集工学を一般の方々に学んでいただくオンラインの学校ですとか、松岡正剛を塾長とした企業の次世代リーダー向けの塾を運営しています。

ご興味おありの方は、さまざまな企業様とこういうことをやってます、という事例紹介がありますので、覗いてみていただけるといいなと思います。

ビジネス思考力を鍛える探究型読書のすすめ

私たちが日頃編集工学を活用しながらさざまな活動をする上で、とても大事にしていることとしてアナロジカルシンキングがあるんですね。

これをメソッドとして取り出したものを、今日は皆さんに共有したいなと思い、アナロジカルシンキングということで、この場を設けさせていただきました。

アナロジカルシンキングに入っていくまえに、前回7月25日に編集工学シリーズの1回目でなにをやったかということを少しご紹介します)。今日2回目でいらしてくださってる方は、復習のつもりで聞いてください。

1回目は読書術についてやったんですね。「ビジネス思考力を鍛える探究型読書のすすめ」ということで、クエストリーディングと名付けてます。

クエストリーディングってなにかというと、物事を深く思考して、自分の考えを組み立てて、ことの本質を追求し続けるための、ここが大事なんですけれども、手段としての読書と言ってます。

趣味としての読書はそれぞれ好きなスタイルで読んでいただくといいんですけれども、本をこういう思考のための道具として使う場合の、その手法について、皆さんと2時間かけて駆け足でやらせていただいたというのが前回です。

ちょっとその中身をご紹介しますと、心得その1というふうに書いてますけれども、読書を読前と読中と読後という3ステップで捉えましょうというのが、このクエストリーディングの一番の基本になります。

それで読前読中読後までやりおわったあとに2時間かけて読んでいただいた本の内容について、そこから得たさまざまな視点と似ているものを探してくださいというワークをしました。

これは読んだ本を「一冊読み終わった」だけで終わらせないという、ひと手間なんですね。自分が読んで今感じたことってなにかに似てんじゃないかな、と思ってもらおうと。

これがクエストリーディングの最終仕上げのところの手順になります。これをしていくことによって、頭のなかに意味のネットワークができていきます。なにかとなにかが繋がっていくと。ここに書いてあるように、これはまさしくアナロジカルシンキングです。

そして、頭のなかで、情報と情報が繋がっていくことを起こしていくためのひとつの手段として、読書という行為を活用ましょうという立場が、クエストリーディングだったんですね。

そもそも「アナロジー」とはなんなのか

今日はその最後にもアナロジカルシンキングというふうに出てきてますし、先ほど申し上げたように編集工学研究所が日頃活動するなかで、非常に大事にしている方法論ということで、今日は編集工学シリーズの2回目としてアナロジカルシンキングを取り上げていきたいと思います。

アナロジーとはなにか。おそらく聞いたことある方もたくさんいらっしゃるとは思いますけれども、ざっくり言うとアナロジーは類推のことです。

先ほどもクエストリーディングの文脈のなかで、これってなにかに似てるんじゃないか、と思ってもらうといいと言いましたが、なにか似ていると思えるもの、類似のものから推し量ること、つまり類推ですね。これをアナロジーと言います。

これってことさら特別なことではなくって、私たち頭のなかで日頃知らず知らずのうちにやっていることなんですね。アナロジーを用いないと、ぜんぶゼロから考えなきゃいけないはずなんです。

例えば、今日皆さんこの会場に入っていらっしゃって、席が並んでいて、それぞれ座って待機してくださいましたよね。

これも皆さんがイベントってこういうもんだよなという、なにか頭のなかにイベントのモデルがあるので、空いている席に座ってそのうち始まるのを待つ、ということができてるわけですよね。

これを例えば、なにも知らないロボットにやらせようと思ったら、もしかしたら入ってきて、ステージの上で座って待ってるかもしれないし、入り口のところでどうしたらいいかわからなくなってるかもしれない。

だけど、そんなひとは誰一人おらず、今日このアナロジカルシンキングのセミナーについては初めての体験であるにもかかわらず、全員が同じような振る舞いをしている。

これはなにかうすでに経験していることに照らし合わせながら、皆さんが先ほどの行動をしているということであって、頭のなかで似た経験と照合しながら、思考が進んでいるということだと思います。

既知の領域を未知の領域に当てはめる

これをもう一歩図式的に表すと、既知のもの、既知ってすでに知っているということですね。その領域を未知のもの、まだ知らない領域に当てはめて想像することを、アナロジーというふうに言ってもいいです。

(スライドを指して)この左側にビックリマークで既知があって、右側に未知がありますけれども、私たちは常に世の中のことをすべて知っているわけではなくて、わかんないことも多いですよね。

わからないことをわかろうとするために、すでにもう知っているものを当てはめながら考えていく。私たちはそういうことをいつもいつも動かしながら生活しているはずで、この類似や相似を手がかりにものごとを考えることがアナロジーなんです。

なので、アナロジカルシンキングは、すでに皆さんのなかにある力で、ただそれを意図的に上手に使っていくというのが、今日のひとつの目指すゴールになりますね。

もうひとつ既知の領域を未知の領域に当てはめる、と少し難しい言い方をしていますけれども、ひとことで言うとなにかに例えている、ということなんですね。これも皆さんいつもやられていることと思います。

例えば新入社員が入ってきて、会社の仕事を教えようとしたときに、その新人さんがすでに持っていそうな知識に当てはめながら例えて話をするということは、先輩としてやられていることが多いと思います。

もしくは子育てをするなかで、子どもにわかるように話をするときに、なにかに例えて話をするということもあると思います。

5歳の子どもにインスタを説明

今日は皆さんにお手元のワークシートに実際に書きこんでいただいて、ところどころでワークをして頭を使っていただきながら、ときには私がマイクを向けて皆さんにどうでしたかと聞いて回ります。ですので随時参加をしながらお楽しみください。

(スライドを指して)さっそく最初のワークに入ります。「なになにみたいなもの。アナロジーで理解する」とあります。

次の事柄を5歳の子どもにもわかるように説明してください。これが皆さんへの今のミッションです

このときに言葉の意味を定義し始めちゃうと大変なので、できればひとことふたことで「なんとかみたいなものだよ」という表現をうまくつかって説明してみてください。

5歳の子どもに説明するネタとして3つ、インスタと営業と売り手市場。最後につれて、ちょっと難しくなってますね。

お手元のワークシートを使ってください。今からまず2分お時間を差し上げます。今日のコツは、制限時間のなかになんとか収めようとすること、高速に頭を使うっていうのがポイントです。2分のなかにこの3つのお題を収めようとしてください。

いいですか? いきますよ。はい、スタート。

(時間経過)

どうでしょう? 3つ埋まりました? 皆さん、それぞれ上手に書かれてると思うんですが、せっかくなのでお隣さん同士で紹介しあってみていただけますか。お隣にお席がない方は3名様で。そのあたりは融通し合ってください。

それで自分はこんなふうに考えました、というのを3つそれぞれお互いに紹介してください。どうぞ。

(参加者ディスカッション)

はい、ありがとうございます。それぞれ「あ、なるほどね」という声もあちこちで聞こえましたけれども、自分が考えたのとけっこう違うことを考えてたりしたんじゃないですかね。

ちょっと聞いてみましょうか。インスタは?

参加者1:私は写真がアルバムみたいなもの、というふうに説明しました。

安藤:ああ、覗いてたらアルバムはけっこういらっしゃいましたよね。

じゃあこっち、営業。

参加者2:営業は、君がつくったものを買ってもらえるようにお願いするようなもの。

安藤:確かにそうですね。

じゃあこちら、売り手市場。ちょっと難しい。

参加者3:ひとつだけしか持ってないけど、みんなが欲しいもの。

安藤:なるほど。なるほどね。

こちらは売り手市場をもう一回。

参加者4:そのものを売るひとが少ないかもしれないけど、欲しいひとが多い市場。

安藤:なるほど、すばらしい。

似てるものから借りてきて、当てはめて説明する

安藤:いまアナロジカルシンキングの構造もコツもなにもお話ししない状態で、皆さんこれだけのたとえ話をたった2分で3つしていただきました。

これ、1、2、3の順番にだんだん構造が複雑になってくんですよね。インスタは、アルバムみたいなもんだよと言い換えてみればいい。

営業には人と人との関係がありますよね。自分と相手の間でなにか行為が発生している。これをなんと説明するか。

3番の売り手市場に至っては、関係に加えてパワーバランスもあるかもしれないし、今言い当ててくださいましたけれども、売るものは少ないんだけれども、欲しいひとはいっぱいいるというような需要と供給の構造の話もあります。

これを5歳児に伝えるために、おそらく今皆さんの頭のなかでは2分間に渡ってアナロジカルエンジンがぐるぐる回ってたと思います。そのエンジンがどんなものなのかっていうのを、ちょっとこのあとお話ししていきたいと思います。

それでアナロジーって、というところにもう一回戻るんですけれども。アナロジーが動くためには、まず少なくとも3つのステップが要るんですね。

先ほどからのお話の通り、なにかにまずは似てると思うことから始まります。で、似てると思ったもののなにかを借りてくるんですね。そして借りてきたものをあてはめる。

この3ステップがアナロジーと言われているものの中身と思っていただいていいです。

ちなみにアナロジーの語源をちょっと見てみると、anaとlogosということが出てきます。anaっていうのは上にとか、沿ってというような意味なんですね。logosはロゴスですね。

そうすると同じ論理の上で考えられるもの、というような意味になります。これがアナロジーですね。

ロジックは論理ですけれども、そのロジック同士を重ね合わせて考える、というようなイメージがアナロジーだと思っていただければいいと思います。

このアナロジーによって私たちはなにをしているかということなんですけれども、まずは理解することですね。自分自身がなにかをわかろうとするときに、アナロジーを働かせるということがありますね。

これは先ほどもお話ししたように、今日皆さんこの会場にいらっしゃって、ここに来てまず自分はどう振る舞えばいいかということを、なにかの自分の経験知と照らし合わせながら、まずは自分で理解するということをしていただいてました。

説明するというのは、今やっていただいたことです。他者に対してなにかを説明しなきゃいけない。そのときにすべての要素を埋め尽くして説明しても伝わらないことっていうのはありますね。もしくは、そうすると大変なことっていうのがあります。

そこでなにかを似てるものから借りてきて、当てはめて説明する。これがたとえ話ですね。

アナロジカルシンキングとロジカルシンキングの違い

3つめが発想する。今日は主にはここの部分をやっていきたいと思います。1番と2番っていうのは、知らず知らずのうちにやってることです。それらの能力をいかに3番の発想力ということろに繋げていくか、というのが今日のテーマになります。

もう一度補足として添えますけれども、じゃあアナロジカルシンキングは、どういうときに使えるのかというところなんですが。まずは新しいアイデアを生み出す場面というのは今のお話の通りです。それだけではないんですね。なにか新しい領域で仮説を立てたいというとき。

例えば、まったく新しい市場に出ていこうと思うんだけれども、そこでなにが起こるかというのが、自分たちの体験知としてはまだ蓄積されてない。なので、なにか仮説を立てなければいけない。そういうときにアナロジーの力というのは、非常に効果があります。

あとは既存の思考の枠組みを越えたい場面。これも最近はけっこうあるんじゃないかなと思います。

今まではこれでいいと思ってやってきたことなんだけれども、どうもこれじゃ通用しなくなってる。でも自分の思考の枠組みってなかなか変えられない。そういうときにアナロジカルシンキングを動かしていただくと、前に進みやすくなるということがあります。

ちなみに(スライドの)下に書いてありますが、既存の枠組みの分析や検証というのには、皆さん馴染んでいらっしゃるものかもしれませんが、ロジカルシンキングがやはり有効ですね。

なにか枠組みが決まっていて、このなかの正しさを検証しなければいけない。このなかのなにかしらを分析していきたいというときには、ロジカルシンキングがいいと思います。

アナロジカルシンキングとロジカルシンキングの一番の違いは、アナロジカルシンキングというのは、自分のイマジネーションを入れないと前に進めないものである、ということなんですね。

一方、自分の頭の中の固有のイマジネーションを動かさなくても、あるフレームに則ってプロセスをふめば、同一の答えが導けるように体系化したものを、ロジカルシンキングと言ってもいいと思います。

一言で言うと、同じ情報が与えられたら、同じ解が出るようなものを手続き化したものがロジカルシンキング。アナロジカルシンキングは、同じ情報が入ってきたとしても人によって変わってくる。ここがキモなんですね。

ですので、発想法や新規事業を考えるときに、差別化という観点でもアナロジカルシンキングが必要になってくるというふうに言えると思います。

人はアナロジーを駆使しつつも自覚していない

(スライドを指して)ちょっと余談ですけれども、こちらですね。下にジョバンニ・ガベッティという名前が書いてますけれども。この人はハーバード・ビジネス・スクールの経営学の人で、おそらく10年ちょっと前になると思うんですが、ハーバード・ビジネス・レビューで「不確実な時代の戦略思考、アナロジカルシンキング」という記事を書いてます。

おそらく日本でアナロジカルシンキングという言葉が出たのは、この記事が最初なんじゃないかなと思うんですが、このジョバンニ・ガベッティって人はなにを言ってるかっていうと、いわゆる戦略思考にとって、アナロジーというのは王道であると言ってるんですね。

そうなんだけれども、ここがおもしろいところで、アナロジーを駆使しているということをたいていの人は自覚してない。

先ほどからのお話でもそうですね。皆さんも使ってるんだけど、それをアナロジーだとか、そこになにか方法があるというふうにはあまり思ってない。

この方は、アナロジーで思考している自分に目を向ければ、戦略上の意思決定の質を高めたり、判断ミスを減らすことができるという問題意識に立って、いろんな経営者の方たちにインタビューしたりしながら、そのひとたちの意思決定の途中に出てきたアナロジカルシンキングを集めてきたんですね。

そうして、皆さんこれだけアナロジーを駆使しながら判断をしていますよ、ということを論文にします。

このようにふだん自覚していないアナロジーというものに対して、まずは自覚的になるというのが、今日の第一歩です。

じゃあ、どれだけ私たちが日頃無自覚にアナロジー的なことを行っているか、ということをちょっと感じていただきます。アナロジーの仲間と言ってもいい比喩とかメタファーというのがありますね。

先ほど皆さんにたとえ話をしていただきました。インスタとか営業というのを、なにかに例えていただきましたけれども。こういうふうになにかに例えて話をするということは、日常的にやってます。

例えば風穴を開けるとか言いますよね。猫なで声というのも言いますけども。これ普通のなんの気なく使っている日本語だと思うんですが、よくよく考えると、例えば新しく入ってくるメンバーに「君にはうちの組織に風穴を開けてほしいんだよ」と言ったときに、そのひとがドリルを持ってオフィスの壁に穴を開けるわけじゃないですよね。それは誰も期待していない。

だけれども、まさに風が通る穴を開けるかのように、思い切ったことをしてほしいという意味ですね。それはもうみんな暗黙の了解のうちに、このコミュニケーションは進みます。

例えば、「あいつ猫なで声出しやがって」と言っても、ニャオと言ってたとは思わないですよね。これもみんなお互いに暗黙にわかることです。

メタファーとアナロジー

そういうかたちで、ここに書いてある表現って、ぜんぶメタファーなんですよ。ほとぼりが冷めるとか、顔を潰すとか、泣き寝入りとか。

恋は盲目と言っても、恋に夢中になっちゃってる状態であって、ほんとに目が見えくなるわけではないですよね。

私たちは、こういったことを日常の会話のなかで常に交わしています。メタファー禁止ゲームをやったら、おそらく喋れなくなると思います。

例えば、メタファーを使っちゃったひとに対して「メタファー1回言ったら100円ね」みたいなゲームをやったとしたら、けっこう貯金箱のなかに小銭貯まってくるんじゃないかなと思います。それぐらい私たちは無自覚に、なにかに例えて理解したり伝えようとしたりということをしてるんですね。

これをもうちょっと分解していくと、メタファーってAをBと見立てる、「See as」ということです。あるAというものをぜんぜん違うBに見立てて考えるということですね。

その時、理解したいA、もしくは説明したいAは、なにか言いがたいことです。もしくはわからないこと。

そしてB がその言いがたいことのなにかを代用をしてくれる。これがたとえです。

さっき皆さんがインスタや営業、売り手市場という、5歳児にはちょっとわかりにくいようなことを、なにか代用を借りてきて説明をしてくださいました。それが比喩とかメタファーといったものですね。

この辺りはもう厳密な定義があるわけではないかと思いますが、メタファーとアナロジーを念のため整理をしておくと、メタファーってさっき言葉がざーっと出てきたように、ある言葉とか概念における比喩なんですね。なにかに例えて理解するということです。

これに対してアナロジーとここで言っているのは、もうちょっと複雑なんですね。そのなにかの関係性や構造というのが似てるなと思って、その似た構造・モデルを使って仮説をするというのがアナロジーです。

これらは発見的・連想的思考のエンジンというふうに書いてありますけれども。私たちが今日のテーマでもあるこの発想力とか企画力とかというのを高める、もしくは自分のなかから引き出していくためには、まずは思考が連想的になっていることがとても大事なんですね。もしくは発見的になってることがとても大事です。

思考がどんどん連想を広げていけるようになることが、まずは発想力の源だとすると、連想を進めていくためのエンジンというのが、アナロジーだったり、メタファーだったりするというふうに思っていただければいいんです。

これはもう一度繰り返しますけれども、なぜかというと、わからないことがあったとしても、なにかを借りてきていったん理解するということが、アナロジーによってできるからということですね。

同じ場所にいても、頭の中は違う進み方をする

もう一回ちょっとウォーミングアップをしたいと思います。ひとり連想ゲームというふうにありますが、これもふだん皆さん連想をもう自然とやっちゃってることです。

それを紙に書いて、わざわざ自分の連想を可視化するということは、ふだんあまりやらないと思うんですけれども、それをすこしやっていただきます。ここに例として、起点の言葉が「鉛筆」とありますけれども、これは本当にものの20秒ぐらいの連想です。

鉛筆から始まって、消しゴム。消しゴムは匂い付きのあったな。匂い、香水。香水がある場所は鏡で、洗面所。あ、タオルがあるな。タオルって粗品って書いてあるよな。粗品ってボールペンがあるな。こういうもう脈絡もない連想ですね。

これでいいんです。ウォーミングアップなので、まずは皆さんの頭の中で起こっていく連想を手元に可視化してあげてください。

起点となる言葉は、手元のワークシートの2枚目にありますけれども、今日docomo さんの場所をお借りしているので「docomo」から始めましょう。

これも制限時間を2分設けますので、2分のなかで目標はできるだけたくさん出すというつもりで、まずはざーっと書いてみてください。いいですか。はい、じゃあどうぞ。あと1分です。

(時間経過)

いかがでしょう。紙がメモでいっぱいになってる方もいらっしゃいますね。これ最後がなにになったかというのを、ちょっとお隣の方に教えてあげてもらえますか? ぜんぜん関係のないところに行ってると思うんで。

(参加者ディスカッション)

はい、ありがとうございます。ちょっとお隣のかたとお話するだけでも、ぜんぜん違う道筋を辿ってるのがわかると思います。

こんな感じで私たちの頭の中っていうのは、みんな同じようなことを考えてるだろうと思っているような、同じことをやってる場所でも、まったく違う進み方をしているというのが可視化できたと思います。

前の方なんてdocomo からの次の連想が「かしこも」っていう(笑)。そう来たかっていうのがありましたけれども。そんな感じで、私たちの頭の中はまだまだ不思議なことだらけなんですね。そこにふだんは自覚的になってないというだけです。

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