
2025.02.12
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Why Scientists are Giving Robots Human Muscles(全1記事)
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ロボット工学が目覚ましい発展を遂げるにつれ、人間そっくりの動きを見せるロボットが開発されています。しかし、表情などには改良の余地が残っていますね。人の表情はきわめて複雑なものであり、いわゆる「不気味の谷現象」からは脱出するに至らず、日夜研究が進められています。
さて、このギャップを埋める一つの手段として、ぎこちない動きをするロボットのパーツを人間由来のものに置き換えてしまう、というものがあります。まるで映画『アンドリューNDR114』のような話ですが、人間とロボットのハイブリッド、いわゆるバイオハイブリッド・ロボット工学は、SFの世界の夢物語ではありません。実在する分野なのです。
単に人間そっくりのロボットを作るだけにとどまりません。バイオハイブリッド・ロボットを製造するには人体を模倣しますが、その過程で、人体の動きや構造の理由、損傷した場合の治療方法などを模索することができます。
人体と同様、通常のロボットには骨格が必要です。さらには、骨格を動かす手段が要されます。つまり、モーターやアクチュエータなどを用いて、骨格の関節部分に回転運動や直線運動を加えるのです。
バイオハイブリッド・ロボットにおいて、このような運動を司るのは、なんと生体の筋組織です。もちろん、人間から筋肉を剥いでロボットに付け替えるようなことはありません。仮にそのようなことが実施されていれば、外界にばれないようこっそりやっているはずでしょう。悪の研究室では、秘密裏に実験が行われているものです。
清く正しい研究者の皆さんの場合は、筋細胞をきちんと培養して用いています。異なる筋細胞へと発達させることのできるユニークな胚細胞、つまり筋芽細胞というものを培養するのです。
まず、必要な筋細胞へと発達を遂げるように、ハイドロゲルでスキャフォールド(細胞培養の足場)を作ります。これは、液体成分のゲルで、細胞の接着・培養に適しています。ハイドロゲル内ではまず筋繊維が生成されます。
これは、筋肉組織を形成する、同方向へ引っ張られる力を持つ細胞です。ハイドロゲルの形状を変化させれば、筋繊維の集まりである筋束を引っ張って調整し、力が働く方向をコントロールすることができます。
いったん筋束が形成されれば、あとはごく微細な電気を流してやれば、収縮させることができます。この筋束をロボットの骨格の関節部に装着すれば、見事バイオハイブリッド・ロボットの誕生です。いや、完成と言った方が適切でしょうか。
とはいえ、人間をそっくりまるごと複製した物は、いまだ造られていません。かろうじて、東京大学の研究チームが2018年初め、実際に稼働する、一対の小さな筋肉の培養に成功しただけに過ぎません。バイオハイブリッド・ロボットが実現するには、克服するべき壁がたくさんあるのです。
まず培養された筋肉には、自己修復機能がありません。維持できるのは、わずか数日から数週間にすぎないのです。実際の人体においては、筋肉は血液から自己修復に使うさまざまな成分を受け取りますが、バイオハイブリッド・ロボットには、そのような液状循環システムが存在しません。そのため、いったん損傷すれば、それきりです。このような損傷は、筋肉を動かした時の摩擦により起こります。
人体の筋肉は、筋外膜と筋膜で覆われています。筋外膜と筋膜は、個々の筋肉を分け、お互いが触れることがないようスムーズに動かす役割を果たしています。つまり、バイオハイブリッド・ロボットを長時間稼働させるには、bio-WD40のような生体適合性のある潤滑油が必要となってくるのです。
また、電気刺激についてもまだ研究が必要です。筋肉を動かすことは可能ですが、筋肉収縮力の強さの、微細なコントロールが難しい段階です。特に継続的な収縮は困難で、信号伝達細胞の滑らかな動きは、実はいまだ実現に至ってはいないのです。
また電気刺激は、筋肉を摩耗させます。筋肉は水分を含みますが、電流を流すと水は必然的に水素と酸素に分解されます。これは、電気分解(電解)という働きです。この気泡が、筋肉のダメージを加速させます。
これを回避するには、筋組織の中に運動ニューロンを生成し、この運動ニューロンから筋肉に指令を送らせればうまくいく可能性があります。『ウエストワールド』の「ホスト」を彷彿とさせるので、少々恐ろしい話です。
多少の薄気味悪さは残りますが、バイオハイブリッド・ロボットを完成させることには十分なメリットがあります。生体の筋肉を利用する大きな利点の一つは、潤滑な動きが期待できることです。
このようなソフトで柔軟な動パーツを用いることは、ソフトロボット工学の分野における機動力です。ここで使われているのは、金属製のモーターではなくケーブルや空気注入式の袋で、こういった素材の柔軟性は、より高度なタスクに適しているのです。
バイオハイブリッド・ロボットが向上したソフトロボットへと繋がり、果てには人体にも適用できるほど安全性の高いソフトロボットができるかもしれません。鋭利な部品や生体を損ねる化学物質を使わないからです。
しかし一番興奮するべきなのは、バイオハイブリッド・ロボットが人間そっくりに動くことです。これはつまり、人体の動き、脳によるコントロールの理解、病気の治療法などの発見に繋がるかもしれないのです。
人体とは、気が遠くなるほど複雑な精密機械です。四肢の関節ひとつを動かすのにも、何百もの筋肉が協働し、仕事や遊びの動作、ボタンをクリックしSciShowの視聴登録をする動作などを行います。
たった一つの動きをするのに複数の筋肉が関係したり、たった一つの筋肉が複数の異なる動作に関連したりします。ですから、ひとたび運動障害が生じると、その実態を明確に把握することはたいへん困難です。
例として、脳卒中から回復した患者の一部は、半身に力が入らなくなる半身麻痺を患います。筋シナジーに(異常をきたしたことに)より、一セットの筋肉を動かすと、別の筋肉が不随意に動いてしまう患者もいます。どちらの場合であっても、その原因は脳の指令の阻害や混迷、筋肉そのものの異常、もしくはこれら両方である可能性があります。
人間の腕を模倣したバイオハイブリッド・ロボットが開発されたなら、このような症例の原因の究明にもつながりますし、何にも増して、医療者による患者の原状回復の一助にもなるでしょう。
そもそも論として、僕たちがこの驚異に満ちた人体を理解するには、まだほんの第一歩を踏み出したにすぎません。まあ、僕としては『ウエストワールド』のシナリオの実現が未然に終わるのであれば、それでも一向に構いません。
ところで、ケイトリンって実在するのでしょうかね? また、今のロボットの表情は何とか改善されてほしいものですね。どうも不気味で仕方ありません。
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