2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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ランディ・パウシュ氏:人助けをすること。人々を助けることについては、デニー・プロフィット氏のほうが私よりも詳しいです。彼の業績はもっと評価されるべきです。彼は私に、どう組織を運営するか、どう人に関心を持つかを、身をもって教えてくれました。
M.K.ヘイリー氏。私には「大家族で育った人のほうが優秀である」という持論があります。人とうまくやっていくコミュニケーション能力が磨かれるからです。ヘイリー氏は子供が20人いる家庭で育ちました。ええ、信じられない数ですよね。
彼女はいつも言っていました、「不可能なことにチャレンジするのって楽しいわよ」。私がイマジニアリング社で働き始めた時、彼女は私の肩書きを取り払ってくれた人の1人でした。
彼女は私にこう言いました。
「アラジンのプロジェクトに入ることになったそうだけど、何ができるの?」
私は答えました。
「僕はコンピュータ・サイエンスの教授だからね」
「あら、それはご立派ね。でも私が聞いているのは、『あなたには一体何ができるの?』ってことよ」
(会場笑)
これまで何度か触れたように、私は労働者階級の出身です。その価値観を今も持ち続け、大事にしています。このスタジャンを長年愛用しています。大学院生の頃からこれをよく着ていました。
友人のジェシカ・ホドギンスがそれを見て、「どうしていつもそのスタジャンを着てるの?」と聞きました。私は周りの、自分よりも頭は良いけれども運動しなさそうな男たちを見渡してこう言いました。
「僕には似合うからね」
彼女はそれにかなりウケたようで、ある時僕にこの手作りのランディ人形をくれました。ちゃんとスタジャンも着ています。僕の生涯のお気に入りです。自己中男には最高のプレゼントです。
このように、私はたくさんの人たちと出会って来ました。
忠誠心というのはお互いを思いやる気持ちです。バージニア大学に、デニス・コスグローブという青年がいました。彼が若かりし頃に……ここでは単に「ある問題が起こった」とだけ言っておきましょう。
私は学部長に報告しなぜだかわかりませんが、学部長はデニスを非常に苦々しく思っていたのです。デニスはとてもいい奴なのですがね。
理由はともかく彼がデニスに難癖をつけてくるので、最終的に私は「デニスのことは私が保証します」と言いました。
彼は「君はまだこの大学でテニュア(終身雇用権)すらとれていないじゃないか。そんな身分でこの、2年生だか3年生だかを保証するというのか」と言いました。
私は、「ええ、保証しますとも。私は彼を信じていますから」と答えました。彼は「君のテニュア昇進を審査する時、このことを覚えておくからな」と言いました。「わかりました」と私は答えました。
その後デニスのところへ戻って、「これこれこういうわけで……こうしてくれると助かるんだが」と恩を着せましたがね。
(会場笑)
お互いを思う気持ちが忠誠心ですが、自分の忠誠がいつ報われるかは、神のみぞ知ることです。もう何年になるかわかりませんが、アリスをスタートさせた時、プロジェクトを引っ張ってくれたのは誰であろうデニスでした。彼は私のためにずっと働いてくれました。
宇宙探査船に乗せてエイリアンと遭遇する人を誰か1人選ぶとしたら、私はデニスを推しますね。
この素晴らしい人物への賞賛を抜きにして、カーネギーメロン大学は語れません。シャロン・バークス氏。彼女に言った冗談があります、「君が退職するなら、僕はもう生きている意味がないよ」。
(会場笑)
シャロンは本当に素晴らしい人間です。言葉で言い表すことはできません。私たちが彼女にどれほどお世話になったか、とても言い尽くせません。
彼女とシルが一緒に写っている、この写真が好きです。シルもまた素晴らしい女性です。彼女はさまざまな局面で、私に最高のアドバイスをくれました。若い女性はみな、彼女のアドバイスを聞くべきだと思います。
シルは言いました。「だいぶ時間がかかったけど、ようやくわかったわ。言い寄って来る男を見極める時、やることはたったひとつ。彼の言葉はすべて無視して、彼の行動だけをよく見るのよ。たったそれだけ。簡単なことよ」
これを聞いた時、私は自分の独身時代を思い出して、「しまった……」と思いました。
(会場笑)
あきらめないこと。私はブラウン大学に入学できませんでした。繰り上がり入学希望者のリストには載っていたので、毎日電話してお願いをしました。あまりにもしつこく電話したので疎ましがられたのでしょう、入学を受け入れてくれました。
カーネギーメロン大学では、大学院に入ることができませんでした。アンディは私に「博士課程に行くなら、カーネギーメロンに行け。俺の教えた優秀な学生はみんなカーネギーメロンに行った」とアドバイスをくれました。
そこで私は彼に推薦状を書いてくれるよう頼みました。ただ彼は、全米でトップクラスの博士課程に入るための難易度がものすごく上がっていることを忘れていました。
さらに彼は、私のGREのスコアが足りないことも知りませんでした。彼は私を信用していましたし、大学入試の際の点数を見て行けるだろうと判断していたのです。
かくして私はカーネギーメロン大学に入ることができませんでした。みなさん初耳でしょうね、今まで誰にも言ったことはありませんでしたから。私はカーネギーメロンから不合格の通知を受けたのです。
私は若干、態度の悪い若者でした。私はアンディのオフィスへ行き、不合格通知を彼の机の上に落としてこう言いました、「カーネギーメロンへあなたが書いた推薦状がどうなったか、お知らせしておきますよ」。
(会場笑)
手紙が彼の机の上に落ちる前に、彼は電話に手をのばして言いました。
「私がなんとかしよう」
私は慌てて言いました。
「いえいえ、そういうんじゃないんです。そういうやり方はよくないと親に言われてきましたから。きっと、僕を入れてくれる大学院が他にあると思います……」
彼はこう言いました。
「カーネギーメロンこそは君が行くべき大学院だ。だからこうしよう。他の大学院も見て来なさい。他の良い大学に行った学生もたくさんいる。いろいろな大学を見て、どの大学も気に入らなかったら、私がニコにかけあってやる」
ニコとは、ニコ・ハーバマン学部長(オランダ人コンピュータ科学者)のことです。
私は、「わかりました」と言い、他の大学院を見学に行きました。ここでは名前を出しませんが……(小声で)バークレーとか、コーネルとかです……。
(会場笑)
それらの大学でどうも歓迎されていないようだったので、私はアンディに言いました、「就職することにします」。「それはだめだ」彼は言いました。そして電話を取り上げ、いきなりオランダ語で喋り始めたのです。
(会場笑)
電話を切ると彼は私へ向き直り、「ニコは、君が本気なら明日の朝8時にオフィスに来いと言ったぞ」と言いました。
ニコをご存知の方は、私がどんなに怖じ気づいたかおわかりでしょう。ともかく私は翌朝8時にニコ・ハーバマン氏のオフィスに行きました。正直に言って、彼は私とのミーティングにそれほど興味が無いようでした。というかまったく無いようでした。
彼は、「ランディ、なぜ私は君に会う必要があるのかね?」と聞きました。私は、「アンディが電話したからですかね?」と冗談を言い、その後続けて「願書を提出した後で、海軍の研究所から研究奨学金を得ることができました。とても名誉ある奨学金です。願書を出した時はまだもらえていなかったので、書類には書いてありませんでした」と言いました。
彼は、「奨学金。金か。カーネギーメロンには金ならたくさんある」と言いました。昔の話ですからね。
(会場笑)
彼は「金以外で、奨学金にどんな意味があるんだ?」と尋ね、私を見つめました。人生を変える瞬間というものがあります。その時はわかりません。10年後に振り返ってみて、あの時が人生を変えた瞬間だったのだとわかれば幸運です。
でもその瞬間、ニコが私の心のうちを見通そうとした一瞬……あの時は人生を変える瞬間だとわかりました。私は言いました。
「経済的なことをほのめかしたのではありません。ただ名誉なことだと思ったのです。全米でたった15人にしか支給されないこの奨学金は、価値あるものだと思ったからです。それが私の思い込みに過ぎないのなら謝ります」
彼は微笑みました。それで合格でした。
さて、ではどうやって人に助けてもらうか? 自分1人でできることには限界があります。人の助けなくしては何も達成できません。私は因果応報を信じています。人にしたことは自分に返って来ます。
人に助けてもらうためには、正直でないといけません。本当のことを言うのです。カッコいい人よりも、まじめな人を私は信用します。カッコよさはすぐになくなりますが、まじめさは長続きします。
失敗したら、謝ること。自分でなく、他人を思いやること。どうやったら良い例を見せることができるだろう? 私は考えました。そこにいる人を大事に思っているということを、どうやったら伝えられるだろう? はっきり示すには?
実は昨日が妻の誕生日だったのです。私が自分のことだけに集中しても良い場合があるとすれば、それはこの「最後の講義」でしょう。でも私は妻に対してとても申し訳ない気がしていました。彼女の誕生日をちゃんと祝うことができなかったので。
そこで私は考えました。もし500人が彼女のために「ハッピーバースデー」を歌ってくれたら、素敵じゃないかな、と。
(会場拍手喝采。壇上に巨大なケーキが運ばれ、全員で誕生日の歌を合唱する)
後のレセプションパーティにも来て下さいね。
「レンガの壁」は、あなたがどれだけ本気か示すためにあると言いました。壁は、子供の頃の夢を本気でかなえたい人と、それほどでもない人とを隔てるためのものです。
逃げ出さないこと。肥桶の底に金が隠れていることもあります。
(会場笑)
EA社でのサバティカルについて、スティーブ(EA社の社長)がみなさんに言わないだろうことがあります。EAで2日ほど経ったあとのことです。みなETCのことを褒めてくれていました。「素晴らしい」「君たちは最高だ」などなど。
そこへとある人がやってきて私の袖を引き、耳打ちしてきたのです。「ところで、私たちは南カリフォルニア大学に80億円寄付して、あなたの大学と似たようなプログラムを設立することになりました。立ち上げに協力してもらえませんか?」
そこへスティーブがやってきて「何を言われたんだ?」と私に尋ね、「なんてこった……」と頭を抱えました。そしてアンディの口癖を借りて、「俺がなんとかする」と言ってくれたのです。
言葉通り彼は対処してくれました。スティーブは素晴らしいパートナーでした。仕事上でも個人的にも、私たちはとても良い関係を築くことができました。
また彼は、EA社のゲームをプログラムに使う交渉の窓口になってくれ、何百万人もの子供の教育に貢献してくれました。本当に多大な貢献です。
サバティカルをやめて引き抜きのオファーに応じることは、合理的な選択ではあったでしょうが、正しい選択とは思えませんでした。正しいことをすれば、道はおのずと開けます。
定期的にフィードバックをもらい、それにきちんと耳を傾けること。こういうふざけた棒グラフでもいいですし、1人の偉大な人物からの忠告を受けるのでもいいです。いちばん難しいのは「聞く」ことです。誰だってきつく叱られる時はあります。
「確かにその通りだ……」と忠告を素直に認める人はほとんどいません。「ええっ、違うよ、だって……」と反論したくなるものです。そういう人をたくさん見てきました。フィードバックをもらったら、ありがたく受けとめ、それを生かしましょう。
感謝を示すこと。私が終身教授に昇進した時、研究チーム全員をディズニーワールドへ1週間の旅行に連れて行きました。バージニア大学のとある教授から、「どうしてそんなことをするんです?」と聞かれました。
私は答えました。「彼らがものすごく頑張って働いてくれたおかげで、私は世界で最高の仕事を手に入れることができたんです。何もお礼をせずにどうして平気でいられるんです?」そうじゃありませんか?
文句を言わないこと。代わりにもっと頑張りましょう。スライドの写真はジャッキー・ロビンソンです。彼の契約書には、「ファンに唾を吐きかけられても、不平を言わないこと」という項目がありました。
何かに秀でること。あなたの価値を高めます。
一生懸命働くこと。私は他の人よりも1年早く終身教授に昇進しました。准教授たちは「1年早くテニュアを手に入れるなんてすごいね! 秘密は何なの?」と聞いて来ました。私は「金曜の夜10時にオフィスに電話してくれたら教えるよ」と答えました。
人の長所を見つけること。ジョン・スノディが私に言ってくれたことです。長い時間待たなければいけないかもしれない。時には何年もかかることもある。
でも人はきっと、どこか良い部分を見せてくれる。どんなに時間がかかっても、辛抱強く待ってあげましょう。完全な悪人なんていない、誰にでも良い面がある。信じて待つこと。きっといつか見つけられます。
準備を怠らないこと。幸運とは、それまでの積み重ねにチャンスが訪れた時のことを言うからです。
以上が、今日の私の講義です。私の子供の頃の夢。他人の夢の手助け。そこから得た教訓。でもみなさん、「隠された学び」に気付きましたか?
この話は、「どうやって子供の頃の夢をかなえるか」ではありません。「どう生きるか」なのです。正しい生き方をしていれば、人生はおのずと良い方向へ導かれます。夢は自然とかなっていくのです。
もうひとつ、「隠された学び」があります。気付きましたか? この話はみなさんに向けたものではありません。この話は、本当は私の子供たちに宛てたものなのです。ありがとうございました。
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