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ステファン・チン氏:クラシック、ポップ、ジャズ、ヒップホップなど、ほとんどすべての人は、なんらかのジャンルの音楽が好きです。しかし、私たちがリズムや韻を好むのは珍しいことではないのかもしれません。
何十年にも渡って行われてきた研究によれば、動物たちも音楽が好きなのかもしれないのです。さまざまな動物たちがどのように音楽に反応するかという研究により、なぜ人間は音楽を知覚し、評価するように進化したのかを知る助けとなるかもしれません。
私たちにとって、音楽はほかの音とは異なり、聴いたらすぐにわかります。それは「音楽性」と呼ばれる音楽のセンスです。そしてどうやら、私たちとは遠く離れた種類の動物にも、その能力が備わっているようなのです。
ある勇敢な研究者のグループが、ナイルワニを使って、彼らが音楽と単純な音を聴き分けることができるかという研究をしました。
研究者たちは機能的磁気共鳴画像、またはfMRIと呼ばれる脳画像化技術を用いて、脳の異なる部位の血流を見て脳の活動の目安を測りました。もしかしたら、ワニが脳のスキャンをされている間、どのようにして静かに機械の中でおとなしくしていられるのだろう、と不思議に思われるかもしれません。
ですが、使われたワニは1メートルにも満たない子どものワニでした。それに、そのワニには弱い鎮静剤が打たれていて、特別なヘルメットを被せられていたので、そんなに頭を動かすことはできませんでした。
そして、驚いたことに、研究者はワニがバッハの音楽と、ただのランダムなコードを聴いた時に、異なる脳活動のパターンがあることを発見しました。つまり、ワニにとって音楽がさまざまに聴こえているということです。
多くの動物はそれより進んでいて、音楽の異なるジャンルを聴き分けることができるのです。ハトは、バッハを聴いた時とストラヴィンスキーを聴いた時に、それぞれ異なる鍵盤を突くように訓練することができるのです。
魚ですらバッハのブルースを聴き分けることができるのです。どうやらみんな、バッハの音楽で研究をするのが好きなようです。しかし、その実験では動物たちが実際、音楽を好きかどうかについてはわかりません。それについて解明するため、研究者たちは動物たちがメロディーやビートにどのように反応するかを詳しく調べました。
ある研究で、研究者たちは実際に猫用の音楽を作り出しました。その音楽では、スライディング周波数という猫の発声によく見られる特徴の周波数と、猫が喉を鳴らす音が1分間に刻むのと同じビートのテンポが使われました。
すると、猫は普通の音楽を流していた時よりも、スピーカーの方を向き、近くに寄ってくる傾向がありました。それにより、猫がこの猫リミックスを好んでいるということがわかったのです。
そしてちょうど人間と同じように、動物たちも、ある種の音楽はほかの音楽よりもリラックスできると感じるようです。例えば2012年に、檻に入れられた117匹の犬を対象に行われた研究では、クラシックを聴いた犬は吠える時間が短くなり、寝る時間が増えたのです。反対にヘビーメタルは彼らをイラつかせました。
また霊長類、象、鳥、そしてげっ歯類を対象にした研究でも、ある種の音楽が彼らをリラックスさせ、毛づくろいなどの社会行動を活発化させたり、緊張したり攻撃的になったりするのを抑えたりする効果があることがわかったのです。
しかし、なにかによってリラックスするからといって、それを好んでいるとは限りません。動物が音楽を好むのかどうかについて知るには、彼らがなにを聴くかを自由に選ばせる実験をすれば良いのかもしれません。
2007年に行われた実験では、猿が檻の異なる部分に移動することにより、異なる音楽を選べるようにしました。
すると、猿はテクノより子守唄を好みました。しかし、無音も選択肢に入れると、無音を好みました。これにより、研究者たちは人間の先祖は音楽を好まなかったということがわかりました。
しかし、ある研究者たちは、行われてきたほとんどの研究が用いてきた音楽が西洋のジャンルに偏っていて、世の中にはもっとさまざまな音楽があるということを指摘しました。
そこで、2014年の研究では、大きなチンパンジーの檻の外で、3種類の異なる国際的な音楽を流しました。16の研究で、チンパンジーは西アフリカの音楽と北インドラーガ音楽を好むことがわかりました。
彼らは、より長い時間スピーカーのそばで遊んでいたからです。しかし日本の太鼓音楽にはあまり関心を示さず、無音の時と五分五分の反応でした。
総合的に、科学では動物、特に哺乳類はなんらかの音楽的嗜好を持っていると考えられています。しかし、一体なぜ動物は音楽を好むのでしょうか。その疑問に対する答えは、まだミステリーのままです。
実際、私たちも人間が音楽を好む理由について、はっきりわかっていないのです! 科学者たちは音楽性の進化について、多くの仮定を述べています。
なかには、音楽性は私たちが胎児であった時と関係があるというものもあります。その説によれば、人間が安定したビートと発声を好むのは、それが自分の母親の鼓動と声を思い出させるからであるというのです。
そうであれば、哺乳類の音楽嗜好については説明がつくかもしれませんが、卵から生まれてくる動物、例えば鳥類の音楽嗜好については説明がつきません。ですから、研究者たちは発声についてさらに研究する必要があると考えています。
初期の人類は、音楽のような発声をすることにより、コミュニケーションをとっていたのかもしれません。それで、声の微妙なトーンやリズムを理解することがその人の生存確率を上げていたのかもしれません。
そうであったなら、私たちがなぜ音楽を心地よく感じるのかについては説明がつくかもしれません。人間の脳は、自身の生存と繁殖を有利にするものに対して心地よく感じるようにできているからです。
それに、なぜ霊長類と鳥類に音楽性があるかにも説明がつきます。彼らはコミュニケーションを取るときに発声を用いるからです。そうすると、動物王国全体で音楽の嗜好があるということになるのかもしれません。ある種の魚や昆虫ですら、音でコミュニケーションをとっているからです。
しかし、究極的には、人間が音楽を愛する理由は謎のままで、実験でそのような仮定を証明するのは困難です。幸いなことに、人間や、毛の生えた、または羽を持った友達が一緒に音楽を楽しむのに、なぜ人間だけに音楽を楽しむ能力が進化したのかを知る必要はありません。
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