2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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司会者:本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日は、最近刊行いたしました『「AIで仕事がなくなる」論のウソ この先15年の現実的な雇用シフト』(イースト・プレス,2018)という本の刊行記念イベントなんですけれども、みなさんAIに興味があってお越しいただいたと思います。
AIって最近話題にはなっていますが、なかなか雇用の側の視点から書かれた記事がなく、AIの研究者の話ばかりの中で、(この本では)いったいこれ(AIで仕事がなくなる論)は正しいのかというところに焦点を置いて書かれています。
(本日は)雇用のカリスマとして知られる(この本の著者の)海老原嗣生さんにたっぷりお話をうかがって…。
海老原嗣生氏(以下、海老原): いいっすか? いいっすか? (前段は)こんなところで。
司会:後半からは、佐渡島庸平さんが(登壇し)、今日のトークとなりますので、ぜひたっぷりお楽しみください。よろしくお願いいたします。
海老原:(マイクを置いて)これぐらいの距離なら聞こえますよね、俺の声。生でやりましょう。早く終わりますので。日本大学のアメリカンフットボール部(の事件)はどう思いますか?
(会場笑)
(参加者に直接聞いて)あなたどう思う? 誰が悪い? あれ見てて何が悪いと思う? いや、今日の話とちょっと関係あるんだよ。
参加者1:監督の方が…。
海老原:監督が良くないね。あとコーチも良くないよな。コーチはゲイビデオに出ていて、辞めさせられるはずだったのに、あの監督に救ってもらって、日大豊山高校の監督をさせてもらってたから、だから(監督に)頭が上がらなくって、何でも言うこと聞くっていうんだよ。
あれ、監督とコーチが悪いと思ったけど、それ以外に悪いと思う人、誰かいます? あ、あなた、あなた、君!
参加者2:はい。
海老原:アメフト、日大の中で悪いのは誰?
参加者2:悪いのは…。
海老原:監督とコーチは今、出した。
参加者2:理事長が、あとは出てくれば。
海老原:理事長? もうちょい聞きたいの、君に。肝心の宮川泰介選手は悪くないの?
参加者2:宮川選手も悪いんですけど。
海老原:いや、宮川選手って相当悪いわけじゃん。なんで、あんなにヒーロー視されているのか、僕にはわからないんですよ。これは、日本の良くないところだと思うんですよ。結局、流れができると、あの人が善人で告白したヒーローみたいに言われてるじゃないですか。これ、よく考えてほしいんですよ。
海老原:ゲームってルールの中でやっているから、何をやっても問題にはならないけど、ルール違反して、ルールと関係ないことをやったら、犯罪行為なわけですよね。しかも、アメフトって将棋の駒みたいに(選手を)使うわけだから、ゲーム中の指示だったら、言うことを聞かざるを得ないっていうのもわかるんですよ。
(あの事件の悪質タックルは)ゲーム中の指示じゃないって知ってます? あれは、「レギュラーにして先発で出場させてほしいなら、俺の言うことを聞け」と言われて。普通の選手は、それ(指示)を聞かないから。
だって、100キロ超える体で猛スピードでタックルしたら、相手が下半身不随になるかもしれないし、2週間くらい、のたうち回るっていうことがわかるから、普通の人は容易にできないわけじゃないですか。
そんな反則で行為で、傷害事件と同じような行為までしてレギュラーを取るというのは、普通の選手はやらなかったわけじゃないですか。だから、監督は、「弱虫」とか「おとなしい」とか「お行儀が良い」と言って、普通の選手のことを罵倒していたわけじゃないですか。
その中で、彼は試合に出たいから「やります」と言ってやったわけでしょ。普通じゃあり得ないですよね。21歳の大人なんですよ。これは、会社の中で不正事件が起きるのと、ちょっと違うと思うんですよ。会社の中の不正事件は何が問題かというと、自分の不正をした後の相手が見えないんですよ。
例えば、その先でお客さんや取引先がどう苦しむか、関係者がどう苦しむかは見えないんです。だから、ついやってしまうのはわかるんですよ。関係先の相手がもし、私のひとさじで死ぬとか、もしくは下半身不随になるといったら、普通の会社員は不正できないと思うんですよ。
今回の(悪質タックル)は、明らかに(犯罪行為だと)わかってるのに、やっているわけです。だから納得いかないんですよ。流れができると、ぜんぶそっちに行ってしまうというのが、こじつけのようだけど、AIの話もそうかなと思っているわけです。
なんでAIで仕事がなくなるか。これはあとで明かしていきますけど、(本の)中を読めば、オックスフォード大学の話も、それから野村総合研究所の話も、ボロボロなわけです。
実際、あのレポートが出てから5年経っているんです。この本の表紙を見てください。(AIで仕事がなくなると言われていた)15年のうちの3分の1が(もうすでに)経っちゃったんです。「もうすぐ私らの時代が来ると言って、5年経ったのにさっぱりです」というのが、ロボットたち二人の会話です。
(15年後に)47パーセントの仕事がなくなるなら、5年経ったら、16パーセントくらいなくならなきゃいけないのに、今は仕事が多すぎて、人手が足りなくて困ってるんですよ。金融緩和の問題があるとか、世界的に超好景気だっていうけど、それだって5パーセントや10パーセントで仕事が減ってなきゃおかしいのに、ぜんぜん減ってないんです。
こういう根も葉もないものに飛びついちゃって、(世の中の流れが)そっちに行って、ビジネス誌がこの5年で書いていたのは、「この10年でなくなる仕事」「10年後に生き抜くために、何をしなくてはいけないか」という特集をずっとずっとやってたんです。
流れができると、それに対してまったく疑問を持たないというのは悪い癖なんです。だけど、この本の最初に書いてあるとおり、仕事は5年経ってもなくならないから、一生なくならないのか。これは落とし穴。ちゃんと見ていくと仕事は、なくなりつつある。仕事がなくならないというのもウソ。本気で考えないとやばい時代にいるよ、という話です。
最初に見てほしいんですけど、2006年に「ディープラーニング(deep learning)」という技術が確立されました。ジェフリー・ヒントンという人です。このジェフリー・ヒントンのディープラーニングから、どれだけ変わったか。とんでもなく変わったという証拠を1個、見せたいんです。
(スライドを指して)これは、『キリマンジャロの雪(The Snows of Kilimanjaro)』(短編集,1936)という本にもあります。アーネスト・ヘミングウェイの名文美文。名文美文で有名なヘミングウェイだから、訳すのも(原文が)韻を踏んでいてなかなか難しいんです。
これは2016年。一昨年、Google翻訳に(この原文を)入れると、どうなったか。その時、Google翻訳は、まだディープラーニングを使ってないんです。使ってないとき、この訳はどうなっているか。
(スライドを指しながら)それでも、そこそこ頑張っていますよ。「キリマンジャロは、雪に覆われた山の1万9,710フィートである」。この「山の」っていうので、ちょっと(日本語的に)破綻していますよね。「山であり」ですよね。「アフリカで最も高い山といわれている。マサイ語で“Ngage Ngai”と呼ばれる西の頂上は、神の家と呼ばれてきた」。「西に近い頂上」。西に近い頂上って言葉、変ですね。
「西に近い頂上、そこには乾燥し、凍ったヒョウの死骸がある。ヒョウがその標高での需要を持っていたかどうか、そこにはない。誰も説明しなかった」。最後は完全に破綻していますよね。これ、高校の英語のテストでこの回答を書いたら、たぶん、この後半はあまりにひどくて、1点ももらえないと思うんです。
(スライドを指しながら)ところが、ディープラーニングを入れて、たった1年でどうなったか。これを見ると、「いやいや、AIって破壊的な仕組みになっているな」って気がしちゃうんですよ。見てほしいんです、1年後の翻訳がどうなっているか。
「キリマンジャロは、1万9,710フィートの雪に覆われた山で」、完璧ですね。「アフリカで最も高い山言われている。その西の頂上は、マサイ語で“Ngage Ngai”と呼ばれ、神の家を意味する」。完璧ですね。ここも合ってますね。「西の頂上近くに、乾燥し凍ったヒョウの死骸がある。ヒョウがその標高で何を欲しがったのか、誰も説明したことがない」。
これなら少なくとも、村上春樹の翻訳ほど、きれいじゃないかもしれないけれど、でも高校の英語のテストだったら、これで満点取れるんですよ。たった1年で、(翻訳のクオリティが)ここまで伸びているんです。ディープラーニングって、ここまですごい。これを見ると、どんどん仕事ってなくなっちゃうんじゃないか。こういう恐怖感ができてもしょうがないでしょう。ここまではわかるよね。
じゃあ、なんでこんなことができるようになったか。ディープラーニングという仕組みを、ちょっと見てみたいんです。コンピューターが人間の脳みそと同じ構造になった。「ニューラルネットワーク(neural network)」という仕組みになった。それがどういうものなのか、簡単にお話しします。
ディープラーニングでは、もともとは機械に何かを教えてそれをわからせるという行為は、人間が一つひとつ、「これは猫だ」「これは犬だよ」って教えなきゃいけませんでした。猫ってどんなのなの? 髭が生えていて、丸っぽくて、毛が生えていて、目が黒くって、目が細くっなったり太くなったり。それで「ニャー」と鳴く(ものだよと)。
こういう特徴をぜんぶ教えると、(AIが)「そういうのに類するものは、猫なのね」(と覚えていく)。こういうものが今までの機械学習だったんです。ということは、どうなるか。僕らは、そこらへんにある森羅万象を(コンピューターに)ぜんぶ教えなくちゃいけないし、それがちょっと変化したら、変化したことをまた教えなくちゃいけない。
だから、「AIなんてものは作れない、無理だ」というのが、私たちが若い時のAIブームの結論だったわけ。それが、今はどうなるか。何千枚も何万枚もすごい数の写真を(機械に)見せていると、どうなるのか。
そうすると、「あれ、この一群は、一つの動物なんだろう。名前は知らないけど、これは猫群なんだろう」と、彼ら(AI)が特徴をわかっていってくれるんです。「これは犬群なんだろう」「これは豚群なんだろう」。
こういうかたちで特徴を見せると、見たこともない写真を見せても、「これは豚だよ」「これは猫だよ」と判断していくようになっていく。これ(ディープラーニング)は、こういう仕組みなんです。
そうするとどうなるか。私たちはコンピューターに教える必要がなくなるんです。栄養素としての情報をたくさんたくさんたくさん散りばめていけば、そのうち彼らはぜんぶ理解していってくれる。だから、急激な進歩をするようになった。これもわかってほしいんです。
特に今は、インターネットがある。クローリング(検索)エンジンさえ作れば、世界中の無数の食べ物(情報)を、コンピューターが食べられるようになる。というので、自動的に彼らが食べて、食べて、食べて、食べてるうちに育ってくれる。
こういう仕組みになっていたので、「AIが怖いよ、怖いよ」と言われるようになった。この仕組みのさらに内部構造を見たいんですけど、ニューラルネットワークってどうなっているか。
例えば、たくさんの写真は、まず画像で入ってくるわけです。画像で入ってきたものは分解されるわけです。線だの、点だの、角だの、色だのに分解される。分解されると、似たような一群がどんどんできてくる。
例えば、顔の真ん中にあって、黒くって、時々、びちょびちょしていて、穴は2つ開いていて、こういう特徴があるもの、あるね。これはなんなんだろう。これはたぶん、「鼻」という認識になっていくというわけなんです。
例えば、顔のけっこう上の方に2つあって、白と黒の部位からできていて、周りに毛が生えている。これは何だろう、これは「目」なんだ、と。こういうかたちで、似たものの特徴、特徴、特徴群を集めていって、この似たものの一群は何か、と。こういう把握をしていってくれるわけです。
口は(顔の)下の方にあって、1個で動いていて、その中に白い硬いものが入っている。こうやって理解していってくれるんです。これが「口」なんだ。この一次理解を積み重ねると、次にどうなるか。これは鼻なのに、ちょっと待てよ、普通の動物の鼻は、黒くてびちょびちょしているものなのに、白くって鼻の穴が下に向いている。
こういう一群もあるね。それは、歩行するときに2足で歩くね。これは「ヒト」なんだ。次の概念、ヒトというものを理解してくれるんです。ヒトという概念が揃ってくると、あれ、この一群の人は、ちょっと柔らかい体つきをしていて、背があんまり高くなくて、髪の毛が長い。こういうとジェンダーになっちゃうんだけどね。
このような一群と、それから筋肉隆々で硬くって背が高くって、髪の毛が短い一群になってきたね。これはなんなんだろう、これは「男」なんだ、これは「女」なんだ。
こういうふうにわかってくれるんです。これがさらなる上の概念になると、浅黒くって、こういう身体的特徴を話し過ぎちゃうと人種差別になっちゃうんですけど。髪の毛がパーマになっていて、彼らはアフリカンなんだね。
こうやって、何層にも何層にも理解を重ねていって、どんどん特徴群を捉えて理解していってくれる。こういう構造にあるから、人間と同じような理解が進む。(画像を)何千万枚も見せていれば、子どもがちょうど、「なんでこれは猫なの」「これはなんで犬なの」とわかるのと同じように理解していってくれるんです。翻訳も一緒です。
翻訳でも、例えば、英文法と英単語しか教えなかったら、機械はどうなるか。飲食店に入って、「私は鮭です」と言ったら、「I am 鮭」、「I am a salmon」 になっちゃうんです。ところが「I am a salmon」にならない理由はなぜか。これは特徴群としていろいろ見てくると、「I am a salmon」の翻訳の対訳を(コンピューターに)何個も見せるわけです。
翻訳の対訳を何個も読ませていると、レストランという場所でオーダーをとられたものに対して答える時の「私は鮭」は、「I order」になるんだ。こういうようなかたちで、特徴を集めて、こんな特徴の時には、こういうことになるんだと理解してくれるから、翻訳もどんどんどんどん上手くなるわけなんです。
こうやって、多くの仕事が機械に置き換わる。AIの怖さ、ここなんですよ。AIってここまで言うと、なんでも万能で、理解できちゃうような気がしますよね。ところがこれは、当たり前に考えればいいんですけど、ちょっとでも雇用に詳しいか、もしくは、ちょっとでも取材すれば、ぜんぜん違うよということが、すぐに理解できます。
今の話だけ聞いていると、とんでもないじゃないですか。僕もおかしいと思っていましたけれども。ある程度大きな飲食店のチェーン店、もしくは製造業の大きな会社、ゼネコンなどメーカーに取材に行く。それから建設業、流通サービス業、こういうようなところへ行くと、みんな同じ答えなんです。それはどんな答えか。
彼らも、広報的には、AI推進企業、AI最先端研究企業ということになっていて、「仕事をどうやってAIに置き換えられるか」というような宣伝ばっかりしているんです。だけど、実際の担当者に聞くと、とくに仲の良い担当者に聞くと、「こんなもの、ぜんぜんうまくいっていません」と。
その上に、「エビさん、絶対に書かないでください」と。今回(本に)出てくれたの、スシロー(株式会社あきんどスシロー)の部長さんだけなんですよ。あとは下取材しても実際は出てくれないんです。なぜならば、うまくいってないなんて言ったら、経営企画に怒られちゃうから(笑)。
なんでうまくいかないんですか? (取材先の人たちが)言うことは、サービス業でも建設業でもメーカーでもぜんぶ一緒。
AIはコンピュータの中で完結する仕事(に対して)は、ものすごく強い。でも、物理的な行為が発生すると、まだまだとてもできない。(それは)AIが物理的な行為をやってくれないから。
そして、対人折衝はもっとできない。この2つが含まれる業務はできない。こういう話なんです。事例としてしっかり話しますけれども、AIに機械をくっつけてメカトロをくっつければ、物理的行為もできるんです。
でも、問題が大きい。これはなぜか。彼らの研究でいうと、当たり前のことなんですけど、今までも自動化できることはフルラインでほぼ自動化しているんです。自動化できないものだけが、人に残っている。人はどういう仕事をしているか。自動化できない勘だの、作業だのが混じった行為です。1人の人がこういう種類の仕事を7つ、8つ、9つと、こま切れでやっているんですよ。
例えば、ケーキ屋さんのレジは、レジ打ちだけなら完璧に機械化できます。その上にちょっとしたメカトロをくっつけて、レジロボなんてつくったら簡単に(精算が)できて、並ばないで済むようになります。
1円も泥棒されないし、1円も間違えないし、一気に行列はなくなります。こんなことはできるんです。でも、ケーキ屋さんのレジ(打ちの人)は、何をやっているか。レジを打つ(ということは)、当然ケーキを箱に入れて包む。その上、またケーキを並べて補充しなきゃいけない。
それからショーウィンドウを磨く、値札を変える。こんなふうに1人で8~10個くらいのことをやっているんですよ。そうするとどうなるか。ケーキを完璧に並べる、早く並べるという一つひとつの行為は、AIもできます。やれるけれども、それごとにぜんぶ、メカトロが必要なんです。
まず、それぞれの作業ごとにAIが別個に必要である。それに、ぜんぶメカトロが必要なんです。そうすると、銀座コージーコーナーとかに行くと、メカトロのお化けになっちゃうんですよ。すごい大きなメカトロがある。これは見栄えも悪いし、しかも投資対効果も費用対効果も合わない。
だから、メカトロなんかにするより、時給800円で人を雇った方がいい。こういう経済的結論になってしまうという話なんです。これは、建設業でも製造業でも流通業でも一緒。なので、案外こういう実務的な仕事はなくならないんです。
「肉体的単純労働」と言われてきた仕事は、実はなかなかAI化されない。人が一番(たくさん)働いているのは流通サービス業で、次は製造業ですけど、こういうところは、なかなか(AI化)されないんです。
一方で、「知的業務」「知的熟練業務」なんて言われているところは、コンピュータとものすごく肌合いが良いってわかります? まず例えば、翻訳や通訳はかなり簡単にできそうでしたよね。
今、「POCKETALK(ポケトーク)」(ソースネクスト株式会社)という(翻訳機があります)。去年発売されたAIを使ったもの、ディープラーニングを使ったもので、どんどん進化しているんです。これを買ってみてください。どんどん進化しているから、どんどん翻訳のレベルが上がってますから。
これは、(翻訳できる言葉が)60ヶ国語出てきます。(ただ、この機械は)インターフェイスが非常に取りにくいです。私がしゃべると、まず、ボタンを押して、相手がしゃべっている時に、そっちに向けてボタンを押さないといけないから、すごくイライラします。でも、海外(旅行)英会話だったら、これで95パーセントは大丈夫でしょう。
インターフェイスのストレスをなくすというので、2020年までには、海外旅行では僕がしゃべれば、僕の声はあらかじめ覚えておいて認識しているから、ボタンを押す必要がない。そして、向けた方向によって質問の指向性がわかるから、相手も特定されて、もうインターフェイスでボタンを押す必要がない。こういうような、ストレスフリーな翻訳機ができてきます。
そうすると、2020年には、海外旅行に対してなんの怖さもなくなっています。それには60ヶ国語に対応した言語が入っていますが、60ヶ国しか入ってないんだよ。例えば、スワヒリ語はスワヒリ語しか入ってないんです。ルワンダ訛りは入ってないんです。
でも、ルワンダに行くときは、インターネットでルワンダ訛りのやつ(データ)を1個6,000円くらいで買ってくれば、ルワンダで旅行しても、なんにも怖くないんです。もう、これからの時代は、必死に勉強してTOEIC850点くらい取っているのなんて、そんな英会話は、まったく無用になるということに気づいてほしいんです。
翻訳でいったら、2025年までには、彼ら(AI)は今「ビジネスでも使える英語を」というので、ビジネス領域まで英会話が自由にフリーになっていくはずです。恋愛とかケンカとかは、さすがにできないですよ。
そのレベルのことができない英会話は、必要なくなってくるわけです。そうすると、生半可な850点くらいのTOEICなどのためには、英会話に投資したってぜんぶ無駄になるわけです。
次に考えるべきはなんでしょう。プログラミングとかWebデザイン。Webデザインのデザイナーという雇用は残ります。でも、Webコーディングとかプログラミング(はどうでしょうか)。調整業務ですから、SEは残りますよ。コンピュータの中で終わる業務なので、プログラマーはもう必要なくなるんです。
手足が必要ない、対人折衝が必要ない業務は、高度に見えて、どんどん脆弱になるということに気付いてほしいんです。例えば「事務だと嫌だな。もうちょっと資格とって、社会保険計算ができたら、少しいいんじゃないかな、給与計算ができたらいいんじゃないかな」。バカ言っちゃいけません。
給与計算とか、社会保険業務なんていうのは、ものすごく簡単にコンピュータ化できるわけです。税務、会計、これも簡単にできるわけです。税理士は今、どうなっているか。今でも年収300万円の税理士ってたくさんいる。
「私は営業で嫌だな。税理士で資格とって、人と対人折衝しなくていいかな」って、税理士に逃げ込んだ人は、単に使われるだけで、税務作業しかやってないから、この人たちは年収300万円に落ちていくんです。
税理士の免許を持って、がんがん(外に)出ていってビジネスやろう。例えば、税理士でもいろんな税理士があります。「節税します、あなたの法人税を3割減らしますよ」(ということを言っている)センターとかあるんです。こういう発想でやっているところは、なくならないです。あと、「税務査察で、最後の防波堤になります」と銘打っている税務署もあるんです。税理士もいるんです。こういうのはなくならないです。
ただ、「私、営業が嫌だから、対人折衝が嫌だから、資格をとって税理士(になる)」というのは、ほぼ(仕事が)なくなっていくということに気付いてほしいんです。こうやってコンピュータの中で終わる仕事はなくなっていくんです。
国際会計なんて仕事はどうです? 国際会計なんてものこそ、あれはルールが難しいだけですよね。ルールにもいろんな例外があって、こういう場合は、こうする、こうする、こういうのは、特徴をつかんで、こういう場合はこうするんだ、と。
さっきの翻訳だって、お店で(注文を)頼むと「I am 鮭」にならなかったわけじゃないですか。それと同じで、こういう場合はこうするんだ、と見ているうちに(AIが)覚えていってくれるわけなんです。国際会計とかマーケティングの下作業をやる作業とか(もそうですね)。
マーケッターと言われて、ちょっと時間帯を変えて、主婦層を減らした方がいいなんて、こんな微調整をしていたような人たち。僕らが「神」と思っていた仕事こそ、どんどんなくなっていく。こういう部分に気付いてほしいです。最初になくなるのは、こういうコンピュータの中で終わる仕事。
あと、運転手さん(の仕事)もなくなります。運転手さんっていろんなことをやっている……運転手さん、ごめんなさいね。運転だけをする人(の仕事)はなくなります。
(ドライバーの仕事は)物理的業務が発生して、いろんなことをやっているように見えますけど、あれは人間のインターフェイスに合わせるために、仕事が多彩化しているんです。人間は手が2本、足が2本しかないからペダルが2個になっていて、棒がこんなふうに出ていてるという形だけど、コンピュータにやらせれば、あの作業はコンピュータ基盤1個でぜんぶできちゃうんです。
だから、運転するだけの業務はなくなります。今はどうです? 運転手さんの中で一番稼いでいて、希少価値が高いと言われているのは、長距離ドライバーです。でも、高速道路は一番自動化に向いているんです。一番お金が儲かって、ヒエラルキーの上にいる長距離ドライバーは、一番最初になくなる可能性が高い。
一方で、小口配送は、物理的行為が付いてくるんです。けっこう大変で、一番つらいと思われているけど。1個1個、毎日何回も行って、いつもドライバーさんたち大変ですけれども、これは残るんです。だって、物理的な業務がくっついてきていて、そこまではメカトロができないから。
そう考えると、一番最初になくなっちゃうのは、やっぱり、座っているだけの長距離ドライバーなんです。不思議なことに、あいにく大型免許を取るのは大変で、一番儲かるし、ヒエラルキーが高いから、あそこに行こうと思っていたドライバー業界(の人は多いと思います)。でも、一番最後に残るのはやっぱり、小口配送員だったりするんです。
(スライドを指して)さあ、ちょっと見ていきたいんです。AIの進化はどうなっているか。今は「特化型AI」というものです。このAIはどういうものか。1つの業務しかできないんです。脳みそは1つしかない。そんな多彩なものはできない。
1つの業務に関しては、プログラミングにしろ、税務にしろ、完璧にやります。でも、多彩な業務がまだできない。いやいや、できるんじゃないの? って言いますけれども、良く考えてほしいんです。
1つの業務を、すごくクローリングしながら、いろんな情報を集めて、どんどん進化していってくれるんです。そういう頭のものなんです。多種類のことは、進化はできないんです。だから1つの業務に向いている。
これは、1つの単純業務で終わる「知的単純業務」で、置き換えは非常に楽です。みなさんが尊敬している士業というものに関して(言えば)、単にそれ(資格)をとって、ビジネスをやろうとしている人は必要なくなりません。
コンサルをやろうとか、新しい儲け口を探すために、会計士(の資格)を取ろうという人(の仕事)はなくなりませんよ。ただ、事務処理をしているだけ、簡単な業務をしているだけの仕事はなくなっていきます。というので、一番最初に置き換えられるのは、いわゆる「知的単純業務」。難易度は高いけど、ルールが難しいだけの知的単純業務は、壊滅的になくなっていきます。
一方で、サービス業や流通業など、いわゆる肉体労働がついてくる業務はなかなかなくならない。でも、10年、15年以内に起こることは何か。これは「すき間労働化」なんです。人間は、さっき話したように、8から10ぐらいのタスクをやっているんです。それをぜんぶメカトロにくっつけたら、メカトロのお化けになる。投資効果も合わない。だから、ぜんぶにメカトロはくっつけられない。
でも、その中で一番付加価値が高くて「熟練の技」なんていわれているところが、最初にAI化されるわけです。それが一番儲かるから。いつも例で出すんですけど、寿司屋で考えてください。回転寿司ってそんなに売れない。(熟練の職人が握る寿司ほどには)美味しくないからです。
その理由はなぜか。酢の量も均一で、握りの手も均一で、ロボットがやっているから、どの形も一緒。酢の味もぜんぶ変えていない。本当はネタによって酢の量を変えたり、握りを変えたり、大きさを変えたりしないといけない。
(それを)やってない。それは熟練の技が必要なんです。さらに言うと、寿司のネタさばきやカットは、まだ機械化されていないんです。ところが、AIというのは、(その技を)ずっと見ていて、「カットっていうのは、こうすればいいんだ、これはこうなんだ」と覚えていってくれるんです。
「こういうときは、こういう握りをしたらいいんだ」と。握りとカットが、(熟練の職人の)一番の大切な仕事なんですよね。こういう(機械)を作れば、回転寿司で銀座の久兵衛と同じ寿司が作れちゃうんです。ここは投資価値が高いから、ここだけはAIを入れて、メカトロ入れようかって普通は考えますよね。
一番投資価値が高い。逆に僕らも、寿司屋に(修行しに)入って、しごかれてもなぜやるのか。一番熟練の技を身に付けたい。すごいカットや、すごい握りが10年かけてできるようになって、独立して、金儲けしたいからやりたいんですよね。ところが、ここはAI化されちゃうわけなんです。
そうするとどうなるか。寿司職人ってその他にやることがたくさんあるんですよ。その調理場で(皿を)洗う以外にも、寿司を作る過程でも、冷蔵庫から(ネタを)出してくる業務もありますし、それから寿司のネタの皮をむく。それから、水につける、氷につける、湯引きする、タレをぬる、いろんな業務があるんです。
ただ、この1個1個は単純業務である。この1個1個は、投資価値が少ないからAI化、ロボット化はしないわけです。そうすると、人間の労働はどうなるでしょう。一番肝の部分だけ、ぜんぶ機械に持っていかれる。
一番熟練して一番鍛えられる、一番努力しなくてはいけない、でも、努力の対価がある部分。人には、ものすごく簡単なこま切れの仕事だけが残って、それをつなぐ。これを僕は「すき間労働化」と呼んでいるんです。どんどん、すき間労働化してくるわけです。どう思います?
人間はこれから、就職のために、何かものが上手くなるために、修業というものが必要なくなる。その部分はぜんぶAIがやってくれる。農業なんかも、このみかんは採るべきかどうか、熟しているかどうか。これは熟練の判断が必要なんです。ところが、そこの部分もAIがやってくれる。AIがピッて(熟し具合を)みて、「これは採るべき」と判断したら、もぐところだけ人間がやる。こうなってくるんです。
仕事には、苦しいけど、その苦しみの対価として成長があり、だから(働くことが)楽しいという、この過程はどんどん崩壊していく可能性がある。そして、寿司を握ったことのないような外国人留学生も、「この店(の寿司)はすごくおいしい」と言われるような、銀座の久兵衛並みの寿司が作れる。
「俺、サラリーマン引退して、65歳から初めて寿司屋をやるんだけど、大丈夫ですよ、寿司職人ロボットがいるから」。それでも銀座の久兵衛並みの寿司屋が作れちゃう。
その上で、「働くって何だろう」と考えてほしいんです。その頃はまだ、AIでなくなるのは、コアの部分の少しの作業人材と士業の仕事くらいなんです。士業に就いている人の数はそれほど多くはないんです。圧倒的多数の配送ドライバーなどの仕事は残っているんです。
そうすると、まだまだ人手不足なんです。人手不足だから、そのすき間労働をやってくれる人を考えたら、どんどん人の給与が上がっていくわけなんです。
一方、例えば回転寿司だったら、今は1個100円くらいだし、通はそもそも行きません。でも、銀座の久兵衛並みなら、(回転)寿司屋なんてまずくて行かないよ、と言っていた人たちも、銀座の久兵衛並み(の回転寿司屋)なら行くでしょ。
そしたら、(寿司の)単価が300円、400円になる。すごく儲かるわけなんです。すごく儲かって人手不足だったら、そのすき間労働=タレを塗るだけの人の給与は上がってくるんです。どうなります?
苦労しないで給与がもらえて、それで、厳しい修行をするということもなくなって。労働はどんどんホワイト化して、給与はどんどん上がってくる。これがすき間労働というものなんです。そして、このすき間労働というのは何か。長期パラダイムで見てみると「シンギュラリティ後の予行演習」になっているんです。その話は後でしましょう。
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