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Pain-Killing Hunger and Superpowered Diabetic Fish(全1記事)

空腹には“痛み止め”作用があるかもしれない

空腹感は、人間にとって非常に不快な感覚です。人類の文明が発達しようとも、空腹を乗り越えるテクノロジーはいまだ発明できていません。ですが、食欲を満たすよう促す本能が発するアラートには、意外な効果があるかもしれないということが判明しました。 今回のYouTubeのサイエンス系チャンネル「SciShow」は、空腹にまつわる2つの最新研究を紹介します。

空腹は痛み止めになる?

ハンク・グリーン氏: 痛みはつらいものです。そこまでひどくはなかったとしても、痛み止めには中毒性や副作用が含まれる場合があります。そのため研究者たちは新しいものを探し続けています。

セル誌に新しく発表された研究では、似つかわしくないものが取り上げられました。空腹です。

木曜日にペンシルバニア州立大学の生物学者チームが発表した研究では、エサを1日与えられなかったネズミは普通にエサを与えられたネズミより、炎症で感じる痛みが少なくなったのです。

研究チームは、動物の脳が欲求の優先度をどのように決めているのかに興味を惹かれました。これまでの研究で、空腹のネズミが痛みの刺激にあまり反応を示さないことは分かっていましたがその理由は不明でした。

そこでまず1日エサを与えず空腹状態にしたネズミと、いつもどおりエサを与えたネズミを用意します。次に、鋭い痛みと炎症の痛みを与える化学物質を足に注入します。

鋭い痛みにはビクッと反応しますが、炎症は腫れが始まった後ズキズキした痛みがしばらく続きます。まさに多くの慢性的な痛みを抱えている人の症状です。

満腹のネズミも空腹のネズミも、彼らにとっては不快この上ないことですが、鋭い痛みを注入されると足を舐め始めました。つまり体にとって差し迫った脅威はすぐに脳へと届けられるということです。

ですが炎症の痛みを注入された場合は、空腹のネズミはそこまで長い時間苦しんでいるようには見えませんでした。まるで痛み止めを注入されたかのようだったのです。

次に、脳内のどのニューロンが痛みの緩和と関係しているのかを調べました。光遺伝学(オプトジェネティクス)と呼ばれる技術を使って、空腹に反応する脳の細胞を遺伝的に調べ、レーザー光を使って発現させます。すべてのニューロンを活性化させていくことで、痛み止めの効果をもつものを特定するのです。

さらに脳の特定の部位を光らせる極小のファイバーを使って、ニューロン回路を一つひとつ調べていきます。

その結果、わずか300のニューロン回路を発現させることで、エサを与えられたネズミであっても痛みを取り除けることが分かりました。

これはあくまでネズミにおける結果ですが、研究者たちは基本的な仕組みは人間にも備わっているのではないかと考えています。もしそうならニューロンの研究は、ひどく続く慢性的な痛みを空腹にならずとも取り除ける新しい道が開けるかもしれません。いいことずくめですね。

こうした治療法が実現するのは何十年も先かもしれませんが、慢性的な痛みに苦しむ人たちにとってはこの小さなニューロンは興奮を誘う発見でしょう。

少ない餌で生存する魚

次は、メキシカンテトラという小さな魚にまつわる、空腹の進化を取り上げましょう。メキシカンテトラのなかには、洞窟の中で長年にわたって暮らしていたために目が退化した種類がいます。

ですが洞窟で暮らす上での最大の進化はこれ(目の退化)ではないと言う研究者もいます。

今週のネイチャー誌に載せられた研究によれば、メキシカンテトラは糖尿病の兆候を示しながらもとても健康だというのです。進化におけるこの謎をとけば、代謝異常の病気を治療するより良い方法が見つかるかもしれません。

メキシカンテトラは長年にわたって川で暮らす種類とは別々生きていたにもかかわらず、独自の種ではありません。また洞窟ごとに環境が異なるため、そこで暮らすメキシカンテトラがどのように適応進化を遂げたかを調べることが可能です。

この研究では空腹の状態でどのように生き延びたのかを調べました。洞窟は植物が育つほどの光が届かないため、食べ物がほとんどありません。そのため洞窟で暮らす魚は、季節ごとに起こる洪水によって流れ着いたエサや、コウモリが水面に落としたフンなどを、1年に1、2回程度しか食べられません。

こうした空腹状態でも生き延びるため、普通の川の魚に比べて洞窟の魚はエサを食べると太りやすく、エサにありつけない状況でも体重が落ちにくいということが研究で分かりました。

少ない栄養で生き延びるメカニズム

次に、どのようなメカニズムなのかを突き止めるため、研究者チームは別々の洞窟で暮らすものと、川で暮らす同じ仲間とで3種類のグループを作り、1杯の砂糖を与えました。

8時間後に魚の血液を調べると、洞窟で暮らす魚の血糖値は依然として高かったのですが、川で暮らす魚の血糖値は元に戻っていました。

人間の場合、こうした特性は明らかにインスリン抵抗性、つまり血流から血糖を減らすよう細胞に信号を送るインスリンホルモンの量が少ないことを意味し、2型糖尿病の明らかな証拠です。

案の定というか、研究者がインスリン誘発剤やインスリン自体を注入すると、血糖値は川で暮らす魚のみ減少しました。研究者たちは、洞窟で暮らす魚たちが体重を素早く増やしてゆっくり消費することが、エサを取れない長い期間を生き抜く秘訣だろうと考えています。

ですが魚たちがどのように糖尿病の悪影響を避けているのかはよく分かっていません。人間であれば血糖値の高さや、インスリン抵抗性は歓迎されるものではありませんが、メキシカンテトラが疲弊している様子はありません。

実際川に住む他の生物に比べてゆっくりと年をとっているように観察されます。水槽に住むものを洞窟で暮らす同じ若いメキシカンテトラと比べると、年をとった兆候である曲がった背中、たるんだ表皮、けばだった背びれが見られましたが、洞窟で暮らすものは依然として元気に泳いでいました。

その鍵となっているのは、洞窟で暮らすものがなんとかして糖化反応を抑制しているからではないかと考えられています。糖化反応とは、糖の分子がタンパク質へと運ばれることで、血糖値の高い状態が長く続くことです。

糖化反応はタンパク質の機能の変化や細胞組織へのダメージ、さらには糖尿病の合併症の大きな要因ではないかと考えられています。洞窟で暮らすものも川で暮らすものも、血糖値濃度が続く長さに関わらず同じ数の糖化したタンパク質を持っていました。

糖化反応を抑制している仕組みを解明できれば、糖尿病の人たちにも同じことを適用できるかもしれません。空腹による痛み止めもそうですが、そう遠くない将来きっと人間にも役立てられる日が来ることでしょう。この小さな糖尿病の魚が示しているように、血糖値が高くても長く健康に生きる秘訣を解明しなければいけませんね。

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