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We're Getting Closer to Real-Life Tricorders(全1記事)

どんな病気でも見つける万能の装置「メディカルトライコーダー」は開発できるのか

患部に当てるだけで病巣を見つける……。こんな万能の機械が映画『スタートレック』には登場します。第4次産業革命真っ只中の現在、こんな機械が登場する未来は訪れるのでしょうか? 今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」は、劇中に登場した「メディカルトライコーダー」の実現の可能性について検証します。

スタートレックに登場した機械のように

ハンク・グリーン氏: 近い将来に実現可能な医学診断のアイデアは、SFの中に見つけられます。

スタートレックの劇中では、病院に行くと、医師が診断装置「メディカルトライコーダー」を片手でかざしながら病巣を見つけます。がん、骨折、動脈瘤など、トライコーダーならどんな病気でも見つけられるのです。

スタートレックで登場するようなトライコーダーが実現するのは、現時点ではまだまだ先のように感じられるかもしれません。ですが今でこそまだ実現していませんが、優秀な研究者や新技術のおかげでトライコーダーはそう遠くないうちに実現できそうです。

トライコーダーを実現するためには2つの壁が立ちはだかっています。小型化と正確性です。

トライコーダーは体の外から体内の異常を検出する必要がありますが、現在でも医師は自分で立てた予測に基づきながら、X線からMRIといった多くの手段を使って病巣を発見しています。

ですが切開せずに体内の様子を観察するには、巨大で高価な機械が必要です。そのため科学者は、多くの医療機器を小さくする方法を探し続けてきました。

2012年、クアルコムという通信技術の企業は、「Tricorder X Prize」という競技大会を立ち上げました。参加者には、「基本的な健康状態に加えて貧血、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群といった10種類の病気を診断できる、2.3キログラム以下の機械を開発する」というゴールが課せられました。さらに多くのリストから3つの症状も追加で選ぶ必要があります。

優勝者は2017年4月に発表されました。数百ものエントリーがありましたが、優勝したのは「Final Frontiers Medical Group」というチームが開発した「DxtER」という装置でした。2位は「Dynamical Biomarkers Group」というチームでした。

どちらのチームも、与えられた課題をすべてこなしたのです。両デバイスとも患者の多くの基礎情報や質問事項に基づき、血圧や心拍数といったバイタルデータを計測し続けます。

その次に精密な画像を得るためのテストを行う、別の装置を使います。どのチームも独自の設計を行ったため、患者の状態を診断するために別々の設計思想が活かされています。

呼吸音を調べるものもあれば、尿検査を行ったり、血糖値、赤血球や白血球の数を調べたりするものもありますが、いずれにしても針や管を患者に差し込む必要はありません。

こうした情報すべてが診断コンピューターに入力されて、病気の症状と現在の状態とが照合されると診断結果が表示されるのです。患者が病気かどうか、またその病名を突き止められるのです。

どちらのチームも本物のトライコーダーのような片手サイズにはできませんでしたが、靴箱サイズだったので遠くない未来に実現できるでしょう。

トライコーダー実現までの問題

こうした小ささと同じほど魅力的でありながら、トライコーダーを作る上でまだ実現できていない2つ目の大きな問題が、一般化です。糖尿病と百日咳を、指先からの採血なしにまったく別のものと診断できる装置を開発できるのはすごいことです。ですが本当に実現したいSFの未来にはまだ足りません。

最終的な目標は、あらかじめ指定された特定の病気に限らずどんな病気であっても診断できる装置です。多くの研究者たちは機械学習を活用してこの難題に挑戦してきました。

膨大な患者のあらゆるデータや診断結果を高性能なコンピューターに入力することで、コンピューター自らがデータに基づいた最適な診断方法を見つけ出すのです。その結果を受けて、新しい患者に対して行われた診断が正しいかどうかを調べます。

十分なデータと試行回数があれば、コンピューターによって多くの手順が一般化され、信頼性の高い診断方法が見つかるだろうと期待しています。

いろいろなアルゴリズムによって、医師はがんや心筋梗塞、「レッドフラッグ」と呼ばれるすぐに治療が必要で致死性の高い病気の症状などを見つけられるようになってきました。

ですがこうしたアルゴリズムは特定の病気を見つけるためのものです。クアルコムの優勝者はなにも、医師が日ごろ行っているような、患者の情報に基づいてすべての可能性から適切な診断をしたわけではありません。これははるかに難しい作業です。

情報が不足していてもWebMD(注:健康に関する情報を掲載するWebサイト)やグーグルなどを活用すれば正確な結果を得られるのでは、と思うかもしれません。ですがグーグルやWebMDの結果を調べてみると、同じ情報を与えられた医師が出す診断よりはるかに悪いものです。

例えば頭痛がしたからといって必ずしも脳に腫瘍があるとは限りません。

コンピューターの性能が劣っていればいるほど、こうした問題も致命的になります。しかし使えると判断したコンピューターアルゴリズムを医師が活用するようにすれば、ほぼ毎回正しい診断が行えるようになるのです。もうしばらくすればメディカルトライコーダーも実現するでしょう。

多くの企業がより小さく、体内に影響が少なく、高性能なセンサーを開発して、体内すべてをより低いコストで診断できるように努力しています。スタートレックの未来がそう遠くないとしても、ドクター・マッコイは必要とされるでしょうね。

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