2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Egyptian Blue: How an Ancient Pigment Could Save Lives(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:世界で初めて人工的に作られた顔料のエピソードは、古代のミステリーでありながら、ドラマチックに再発見され、最先端の技術も関係する、とても興味をそそるものです。
今ではこの古い化学物質によって、科学者は偽造の防止ができる場合もあれば、さらには命を救うことさえあるのです。
ですが、そういった用途に使われる以前、この顔料はエジプトのファラオの墓に色を付けるためのものでした。
青は空やナイル川の色であり豊穣や繁栄の象徴とされていたので、古代エジプトにおいて大きな意味を持った色でした。
最初期の顔料は、いろいろな鉱物や木炭から作られていました。茶色、赤、黄色などですね。天然に存在する青単色の顔料はラピスラズリ(瑠璃)と呼ばれる、珍しくて高価な鉱物です。
砕いて粉にすることで、ウルトラマリンと呼ばれる青色の顔料になります。
このとても効果な顔料の代わりに、古代エジプト人は化学的に合成した世界で最初の人工顔料を作りました。
この「エジプシャンブルー」は紀元前2600年に登場し、メソポタミア文明やローマ帝国の影響のもと瞬く間に世界中へ広がりました。
この顔料を古代の人がどのように作っていたかの手がかりは、ローマの著述家ウィトルウィウスが残したものしかありません。
原材料は今では石英として知られる砂、銅を含んだ鉱物、エジプト人も死体の防腐処理に使っていたナトリウム化合物であるナトロンです。これらを混ぜ合わせてボール状にし、粘土のポットに入れてオーブンで焼き上げます。焼きあがったものを砕いて粉にすれば青い顔料が得られるのです。
こうした顔料は壁画やミイラの棺、陶器の色付けなどに用いられました。
ところが赤や黄色といった他の色はローマ人に大流行したにも関わらず、エジプシャンブルーは人気を失います。4世紀頃には使われなくなっていき、ついには製造方法までわからなくなってしまいました。
この話が日の目を見るのは、1814年に考古学者がポンペイの遺跡を調査している際にエジプシャンブルーを発見した時です。
彼らは解析のためにサンプルをロンドンへ送ります。ロンドンでは何で構成されているかを調べるために、混ぜ合わせたり溶かしたりして反応を確認しました。
数多くの実験が行われた結果、今ではエジプシャンブルーの化学的な名称がケイ酸銅カルシウムであるとわかっています。
ウィトルウィウスが書き残した原材料、石英の砂、銅、ナトロンを、古代エジプトが使っていた砂の中の、カルシウムを含んだ石灰と共に焼き上げたことででき上がるのも理解できます。この魔法のような変化を起こすためには、混合物を900度から1000度で2時間ほど焼かなくてはいけません。
古代エジプトがこの手法をどのように発見したかはいまだにわかっていませんが、化学反応を起こすためにはこの高温を保ち続けながら酸素を釜の中に送り続ける必要があります。
また、この顔料の耐久性にも目を見張るものがあります。エジプシャンブルーの顔料は、3000年近く経っても墓の中で同じ化学組成のままなのです。
また現代では、この顔料にさらに驚くべき点があります。
研究者は2009年に、エジプシャンブルーに可視光線を当てると赤外線を放射することを発見しました。赤外線は波長の長い光で人間の目には見えませんが、暖かさを感じたりカメラでは認識できたりする場合もあります。
これによって大昔の美術作品を分析しやすくなりました。研究者たちはすり彫刻や青の顔料で描かれた絵画が傷んでいても、化学組成を検出することで分析できるようになったのです。
ですが、こうしたエジプシャンブルーの特徴は他にも多くの可能性を秘めていることを示しています。
赤外線は、可視光線や紫外線といった別の波長の光よりも体内を透過しやすい特徴を持っています。そこで染料として体内に取り込むことで、新たな医療用画像技術につながるのです。
また偽造を防ぐ安全インキとしても使われますし、指紋検出用の試薬の粉末に用いれば反射やパターンを読み取って通常ではわかりにくい指紋も発見できるのです。
壁や棺に青色を描こうとしていた古代の化学者たちは、まさか現代でこんな使われ方をするようになるとは想像もできないでしょうね。エジプシャンブルーの新たな歴史は始まったばかりなのです。
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