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Pairs「2018年男女の恋愛はこうなる!」(全4記事)

『逃げ恥』的な恋愛に憧れて--それでも踏み出せない若者が感じるハードルとリスク

2018年2月1日、国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」を提供する株式会社エウレカの事業説明会が開催されました。第1部ではアジア市場へ展開する同社のビジョンが語られ、第2部には、世代・トレンド評論家の牛窪恵氏が登壇。「2018年男女の恋愛はこうなる!」と題して、恋愛をしない若者の心情や日本文化に合った恋愛観について語ります。

恋愛することのハードルとリスク

牛窪恵氏(以下、牛窪):カップルというのは、男の人・女の人が何を考えてるか、お互いにわりとわかりにくい。「だったら女同士のほうがいいよね。どうせ男性は奢ってくれないしね」。男の子たちも「別にそんなにガツガツしたいわけじゃないから男同士のほうが気楽でいいや」ということで、どんどん自分と気の合った人たちと一緒にいるほうが心地良いという感覚になっていきます。

そしてゆとり世代と言われる主に20代、私は‟親ラブ族”と呼んでいます。まず親御さんと非常に仲がいい。もちろん今の親御さんたちが若々しいというのもあるんですけれども、いろんな意味で、国もそこを推奨しています。親御さんと仲良くしていただいたほうが、あとあといいなという意味合い。

とくに結婚・出産したあとの近居。実は今、20代でも30代でも、とくに東京は奥様の実家が多いんですが、実家から30分未満の距離に住む方が全国で65パーセントを超えてきました。

そのくらい親御さんの近くにいて、お孫さんが熱を出したときにちょっと見てもらいたいなと、いろんな意味で親御さんと仲がいい。ですから恋愛するときも「親が気に入る相手じゃないとな」ということを言う人たちも増えました。

一方でコスパ。親御さんとの関係もそうなんですが、「やっぱり効率がいいほうがいいよね」とか「みんなが楽しいほうがいいよね」という感覚になってきて、気の合う同士なら別に男女でも付き合ってなくても、ルームシェアいいじゃないという。やはり今の20代、アラサーくらいからですかね。ルームシェアが非常に注目されるようになりました。

そして90年代後半からもう1つ、恋愛市場ではリアル恋愛のリスクというのが言われるようになりました。セクハラ、パワハラ、ストーカー、DV、デートDV、リベンジポルノ。リベンジポルノというのは別れたあとに変な画像をばら撒かれたりという。

数としてそんなに多いわけではないんですが、なにしろインターネットの報道でこういうものが出てきます。実際にもし付き合った相手がこんな人だったらどうしようと、当然若者たちは怯えますよね。

ですから道端での出会い、なにも知らない相手と急に出会って深い関係になるのはやっぱり怖いな。男性にしても痴漢も含めて冤罪のリスクもあります。下手に会社の中で声をかけて、そんなに親しくもないのに「ちょっと飲みに行こう」なんて言って、あとからコンプライアンスだ、なんだかんだと言われる時代になりました。

周りに気を遣いすぎて恋愛ができない

なかなかリアル恋愛でいきなり深い仲になるのが難しい世の中になっています。実際にこれも国立社会保障・人口問題研究所の調査ですが、やはり街中や旅先で出会って結婚するケースはバブルのころよりも減ってきています。2005年にいったん4.5(パーセント)まで減りましたね。

むしろ目立って増えたのが友人、兄弟姉妹の紹介や学校。つまり、ある程度身元がわかった人と知り合いたいというところがポイントです。さらにもう1つ注目すべきデータがあります。実は私はこれも大きな問題というか注目すべきところだと思っています。

20~24歳、大学生とか高校を出て就職してというような時期ですね。いわゆる友人として交際している異性がいる、これが87年から急激に男女ともに減っています。つまり、みなさん本当は身元がわかっているほうがいいと言っていました。

だったら友人として交際するということで、恋人になる直前ですね。友人として身の周りの人と付き合うということはいいことじゃないかと思うんですけれども。

実はよく出てきたのはこれです。リアルのコミュニティ。例えば、大学の同級生の紹介とかサークルで出会って、ある程度時間が経ってからならいいんだけれども、自分たちがまだ若いときにそこで実際にリアルのコミュニティが進行しているとき、例えば大学のサークル仲間ともし付き合ったら、自分が告白したら、ほかの人が好きかもしれないのに自分が奪っちゃうかもしれない。

あるいは、会社に入ったばかりのときに新入社員同士で付き合うと、今度は別れたあと職場の環境がまずくなるんじゃないか。実はいろんなことを考えて、リアルのコミュニティが進行中のときに付き合っちゃうと周りにも迷惑かけちゃうんじゃないか、と。

こんなこと、私たちが若いころは考えませんでした。「別にほかの人はどうでもいいから、好きな人と付き合いたい」って。今の子たちは周りに気を遣うんですね。ですから、こういう中でいきなり進行中のリアルなコミュニティで付き合うのはなにかと大変だなぁ。

『逃げ恥』に憧れても、恋愛に自信がない

でも、つながりたくないのかと言うと、一昨年、『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマが非常に流行りました。ゆるくつながりたい。あそこでもハグの日というのが出てきましたけれども、ちょっと手を繋ぎあうとかちょっと抱きしめあうとか。取材するとやっぱり、そういう人肌の温もりみたいなものには憧れています。

じゃあなんでそこまで深くいかないのか? いわゆる男友達・女友達で別にデートもしないしというままで終わってしまうのかというところを取材すると、やっぱり自信がないんですね。

「大丈夫だよ」ということを周りに言ってほしい。あるいはマイペースでいきたいのに「付き合え、付き合え」ってそういう中だと「じゃあ、もういいな。面倒くさいから」となってしまう。

あるいは、きっかけがなかなかない。お互いに合コンでメアド交換とかIDを交換したところで、ちょっといいなと思って彼女に連絡して返信がないと、男の子たちは「ダメなんだな」って諦めちゃうんですね。そうすると女の子たちも「じゃあ別に私から言うほどでもないし、いいや」と。そういうきっかけがなかなかない。

今まであったネットの出会い系サイトと言われるようなもので、今度は、怖いのは先ほど言いました恋愛リスクです。こういうものを誰かが見守ってくれていないとなにがあるかわからないな。あるいは、私が選んだ人は本当に間違ってないんだろうか。いろんな根拠の中でこの人に辿りついたならいいけど、なんとなく勘だけで「この人!」っていうのもちょっと怖いな。

いろんなところがあって、「大丈夫だよ」「見守ってるよ」「あなたはマイペースでいいんだよ」とか、そういう太鼓判を押してほしいというのを、私は20代の若者たちに感じます。

Pairsはバーチャルとリアルの両面から若者の出会いをサポート

最後に、今年以降どうなるかということなんですが。冒頭申し上げましたAI、IoTというのが今アンサンブル機械学習ということで、どんどん自動的に学習して頭が良くなってるんですね。こういう人たちがマッチングしやすいんじゃないかとか、どんどん精度を上げていきます。

ただ、みんな太鼓判は押してくれるかもしれないし、あなたの性格にはこういう人がいいかなと言ってくれるかもしれないけど、やっぱりリアルの場で実際の目で確かめたいというところで。

私はPairsさんがいいなと思ったのは、こういうシステム上のものだけではなくてリアルのイベント、こういうきっかけをいろいろ促していらっしゃるところですね。

つまり今年以降は、もちろんバーチャル。AI、IoTを使ったインターネット系のもの、バーチャル系のサービスはどんどん出ているんですが、やはりリアルの部分も、ある程度いろんなきっかけをくれたり後押ししてくれたりする。よく車でも言いますが、ハイブリッド型ですね。こういう時代に入ってくるのではないかなと思っています。

私自身も国もそうなんですが、「結婚しろ、しろ」って言う前に、まず若い人たちの出会いをサポートしてあげなきゃいけない。そのためには、賢い若者たちの心を、私たち上の世代も知らなきゃいけないんじゃないかなというところです。

今日はこのあと座談会というか、みなさまに実際どういうところがというのをお聞きしますけれども。私もそういう意味合いでPairsさんのサービスを捉えましたし、みなさまもなにかご質問がありましたら、ぜひいただければなと思います。今日はご静聴ありがとうございました。早口ですみません。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございました。では、ここから牛窪さんへのご質問を受けたいと思います。ご質問がございましたら挙手をいただき、係りの者がマイクをお持ちいたしますので、ご所属とお名前をおっしゃってからご質問ください。いかがでしょうか?

牛窪:なかなかこういうところだとみなさんね。どうでしょうか。

(会場挙手)

牛窪:あ!

自由恋愛が流行ったのはバブル世代だけ?

質問者1:すみません。このあと登壇する予定の小林なんですけれども(笑)。

牛窪:はい、ありがとうございます。

質問者1:貴重な講演ありがとうございました。パワーポイントのスライドのなんとか世代、なんとか世代っていうのがこの話のメインだったと思うんですけど。

バブル世代は自由恋愛に憧れてすごく自由恋愛をした。一方で考えたときに、その上のもっとおじいちゃんとかひいおじいちゃんの世代は、家と家の問題。自由結婚じゃなくて、親が決めたとかそういうのがメインで。

逆に言うと、バブル世代だけが自由恋愛がすごく流行っていただけなんじゃないかとときどき思うんですけど。それについてはどうお考えですか?

牛窪:素晴らしいですね。その通りで、実はかなり近いです。日本は大正時代に恋愛に非常に憧れた時代があるんですね。このときにいろんな小説家の方が無理心中とか、それが美しいと言われた。

なんで無理心中したのか? 結局やっぱり小林さんがおっしゃった通り、周りが認めてくれないと恋愛・結婚までいかなかった。親や周りが認めてくれない人たちは、本当に好きで好きなんだけれども結ばれないなということで、みなさん憧れはあったんだけれども諦めてたんですね。

ところが戦後、1960年代後半に恋愛結婚とお見合い結婚が逆転します。だいたい今の団塊の世代と言われる人たち、70歳前後の人たちから見合い結婚よりも恋愛結婚が徐々に増え始めます。それでもなかなかそういうところまでいかない。

恋愛って言ってたのも、当時は会社の中でセッティングして出会うのがほとんどだったんですね。小津安二郎さんという方の映画を見ると。会社の中に派閥がありましたから、結局なんで見合いをセッティングするかと言ったら自分の派閥に取り込みたいので、〇〇部長さんのお嬢さんの〇〇さんと結婚する。政略結婚ですよね。

日本は熱愛よりも『逃げ恥』のほうが文化的に合っている

ところがバブルが弾けたあととかバブルが弾ける直前というのは、洋風のアメリカナイズされた文化がどんどん流行ってきました。80年代半ばくらいから『愛と青春の旅立ち』とか『トップガン』とか、『ゴースト/ニューヨークの幻』とか『プリティウーマン』とか。

かなりの熱愛、バーニング恋愛みたいな恋愛で。日本もそこに憧れたんですけど、この『男女7人(夏物語・秋物語)』が出るまでは、基本的に結婚を前提としなきゃエッチしちゃいけないっていう文化があったんですね。

もちろんされてた方もいたでしょうけれども。それがいいんだっていうことで市民権を得たのがこのドラマからなんです。ですからみなさん憧れはあったけれどもできずにいて、「あ、それをやっちゃっていいんだな」ってことになって、そこでいきなりバーって広がったんですけれども。

でも、結局バブルが弾けたあとはそれどころじゃないなと。就職も厳しいし、みんな結局別れてるじゃんって。だんだん現実的なことが分かっていって憧れがどんどんしぼんでいったのと、いつでもしていいよって言われたら「別に今しなくてもいいや」って思いますよね(笑)。

みなさん突然やっていいってなったから盛り上がっただけで、実はそんなにたいしたことじゃないな。むしろそれよりも、いわゆる情が移って、一緒にいてだんだんいいなと思うようになる、『逃げ恥』的な文化のほうがたぶん日本には合ってるんですね。

これはかなりアメリカの影響を受けてこの流れになってますが、本当に小林さんがおっしゃったように、一時的な盛り上がりです。ですからこれを子供世代に押し付けるというのはすごく間違っているんですけど。

でもまだまだ勘違いしている上の世代の方は「なんでうちの子は出会わないのか?」「なんであんなに真剣にならないのか?」って思っている方が多いんですね。

非常に鋭いご質問でした。ありがとうございます。

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