2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
鈴木亜生氏(全1記事)
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鈴木亜生氏(以下、鈴木):よろしくお願いします。今回ご要望いただいたのはエコハウス、屋上緑化の家を建てたいと言われまして、そこで鹿児島だけのエコハウスというのを建てられないかと思いまして。
一般にエコハウスっていうとパッシブ(デザイン)、設備の力で家を建てようっていうのがあるんですけど、アクティブ(デザイン)、自然の力で家を建てたいと私は思いました。
じゃあ、鹿児島で自然の力って何があるか。私は「シラス」を考えました。
シラスとの生活、営みが鹿児島の自然風土を古来から作り出しています。身近(にあるもの)でシラスが作り出しているものはというと路面電車の緑がそうです。(スクリーンを指して)ここは土ではなくシラスのブロックですが、これだけの緑が青々と育っているんですね。
このように、シラスというのは「断熱性」「吸放湿性」など五つの特性があります。シラスでできたブロックを使って洞窟のような温室環境を持った家を作れないか(と考えました)。そこでお客さんと採掘場に行ってシラスの原石を掘り出すことから、この家(の建築)をスタートさせました。
(会場歓声、拍手)
材料は舗装ブロックを使い、外周全体にブロックを内外壁二重に積み上げ、家を作っていきました。
まず、工場での工程なんですが、さっき採石場で拾ったシラスの原石を、パレットに載せた人工のブロックに敷き詰めていきます。シラスの自然の息吹をここに敷き詰めることで、自然石のような表情のブロックにしていきました。
工場は路盤の土木メーカーですから、(ブロックを)加工する時はこうやって並べていくんですけども、仕上げは表面が上ですから、組積ブロックだと、上をカットすると側面になるわけです。
ですから、シラスは側面で並べていきます。2階(建て)の建物ですから6mくらいの高さがあります。それを五十何段も積み上げていくには倒れないための強度が必要です。そのために工場で孔開け加工をして、鉄筋を(ブロックに)通していきます。
ブロックは約5,000個ですね。一つ一つ幅・角度が違いますから、(それぞれに)ナンバーが付いています。奥に並んでいるのが天文館(鹿児島市の繁華街)の舗装ブロックです。ブロックの工場メーカーですが、このために初めて家のブロックを作ってくれました!
内壁ブロック積みが開始されました。一つ一つずらして斜めにブロックを積んでいます。初めての工法ですので、原寸のモックアップを作った上で、鉄筋を20cm間隔で通しています。
これで外壁のブロック積みは最終的に完成なんですが、この職人さんも今すごい達成感を得て、こんなにいい笑顔!
(会場拍手)
(最初の頃は)「鈴木さん、なんでこんなに面倒くさい工事をさせるんだ!」と。最後にボルトで固定して締めていくんですけど、「こんだけ斜めで積んだ甲斐があった!」って言ってくれたんですね。
これは屋上緑化です。これは路面電車と同じシラスのブロックですね。これがブロック会社の社長です。室内温度はこれで2.7℃程度低下していきます。お客さんは屋上が3階だって言ってくれてるんですけど、屋根が生活の場になって桜島を一望できるような感じになっています。
(この建物には)空調設備、クーラーがないんですね。お客さんの要望なんですけど、シラス壁・屋根全体が内外の環境をエアコンディションしてくれます。さっきシラス壁に息吹を吹き込んだって言いましたけど、コンクリートは(空気を)遮断しますけど(シラス壁は)呼吸する壁ですので(通気に優れています)。
土が家の基礎の土台となり、シラスの家ができて、風ができて、鹿児島の風土、風景を作り出す。これが、シラスの家です。
(会場拍手)
先ほど内外二重壁といいましたけど、外壁、内壁、それぞれ素材の性能が違うんですね。外壁は日射の断熱、内壁は高温多湿の鹿児島の風土に合わせて吸放湿、吸湿性(に優れます)。シラスに堆積した歴史が、そのまま(壁の)表情に変わっています。
人の入り口、土のある場所。そこが風の抜け道、人や家族の集いの場になるような家に設計してるんです。こうしたところは、風が通るように、ブロックを抜いて透かし積みにしています。
(屋内は)2階(建てに)、こうした2層の間仕切りがあるという「洞窟の家」のイメージです。こちらに居住域の熱だまりがあって、(階段や)2階の吹抜け(を立ち上り)、トップライトから自然換気していく(という構造になっています)。
和室、トイレ、お風呂場、どの部屋でも全部シラスのブロックが身近にあって落ち着きます。お客さんには新築(の段階)から(既に)歴史を持っている家なんだっていうお話をしています。
階段を上がった先でもシラスの量塊感があり、一日の日差しの経過がたどれるように(作られています)。僕は(この家の)作品名を『シラス』って付けているんですけど、僕が名付ける前に、地域に住む方が「あの家は『ピラミッド』だ」って先に言っているんです。
テラスや屋上に出ると(そこから)桜島が見えます。(この家の)コンセプトは「大地との一体感」。大地のエネルギーで生かされている鹿児島で、改めてシラスの大地の情報をつかむことにより、新しいライフスタイルを見出し、これからの町づくりにつなげていけるんじゃないかと(考えています)。いろんなプレゼンターがいらっしゃいますけど、そこは建築に限らず共通してるんじゃないかと思っています。ありがとうございました。
(会場拍手)
PechaKucha Kagoshima代表・木場雄一郎氏(以下、木場):会場が一体感をもって聞けるお話だったんじゃないかなと思うんですが、今まで全国各地で建築に携わっておられる中で、鈴木さんにとって鹿児島というフィールド、そしてシラスという素材は、これまでのお仕事と比べてどういうふうにご覧になられました?
鈴木:やはり、(シラスという)素材自体が生きているので、それを表層のイメージやデザインで殺さないっていうことが大事なんじゃないかなと思います。どう(鹿児島という)環境とつなげてあげるか、建築家のデザインで殺さないかっていうことです。今回は、お客さんからエコハウスっていう依頼をいただいたんで、それをどうリンクさせるかを提案させていただきました。
木場:実際、お客様からの反応はいかがでしたか?
鈴木:今日もお客さんのご自宅に打ち合わせで行ったんですけど、「この家は息吹を殺したら意味がない!」「窓を閉めたら意味がないんだ!」って、お客さんが僕のコンセプトに先行していただいているんです。本当にもう、お客さん自身が新しいライフスタイルを先行しています。
建物の形をデザインしましたけど、私は形ではなくてライフスタイルを提案することに意味があるんだって、お客さんには言っています。生活が新しいこれからの提案になる、シラスがその新しい役割を担っているんだと思ってデザインしました。逆にお客さんから新しい刺激を受け、この建物ができた。
木場:鈴木亜生さんでした。ありがとうございました!
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