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インターネットラジオ : ハマれないふたり(全9記事)

笑い飯・哲夫はなぜスベったのか? 24時間テレビ「坂上忍事件」の真相を、お笑い評論家が解説

8月、日本テレビの「24時間テレビ」の深夜枠で、笑い飯の哲夫さんと、坂上忍さんがトークバトルをする予定でしたが、話がかみ合わず、笑い飯哲夫さんが一方的にスベってる感じに。Twitterも荒れ、本人がラジオで釈明するにいたった。なぜあんな放送になってしまったのか? お笑い評論家として活躍するラリー遠田氏と、編集者の梅田カズヒコ氏の2名が、その真相を語った。

笑い飯哲夫も被害者である

ラリー遠田(以下、ラリー):8月に放送された日本テレビの24時間テレビで、ある企画がネットで話題になっています。人気絶頂の坂上忍さんが、話をしたい人がいると言って、ある人を呼び出した。それが笑い飯の哲夫さんです。哲夫さんが、大阪でお笑いの賞を受賞して、会見の席で、「坂上忍を倒したい。アイツよりも、俺たち芸人がもっとテレビに出ないといけないんです!」みたいなことを言ったと。

梅田カズヒコ(以下、梅田):なるほど。

ラリー:その真偽を聞きたいということで、坂上さんが哲夫さんを呼んだ。二人の間でいろいろ議論になると思いきや、あまり話がかみ合わなかった。

梅田:『しゃべくり007』のメンバーがスタジオにいましたね。

ラリー:そう。そこで議論が盛り上がるわけでもなく、かといってバラエティ的に面白かったりするわけでもなく、だれがどう見てもシーンとしちゃった。哲夫さんが自分の主張を熱弁するんだけど、それが空回りしている。

梅田:哲夫さん一人がしゃべっている印象でしたね。可哀そうなシーンでした。

ラリー:終わってからネットで話題になって。一般的な反応としては、「哲夫つまんねーよ」と。ツイッターにもそういう悪口を書く人がいて炎上して。この話はいろいろ切り口があるんですけど、まずは作り手が何を意識して、どういう着地点でこの企画をやっていたのかが見えないですね。

梅田:生放送でタレント任せな部分が大きいとはいえ、制作者としては「なんとなくこうまとまるだろうなぁ」とか、着地点を描いていたりしますよね。

ラリー:そう。最初に哲夫さんが坂上さんに噛みつくわけですよ。「あんたばっかりテレビ出てるじゃないですか」と。そしたら坂上さんの反論が「スタッフが自分にオファーしていただいているから出ているだけ。それを批判するということは、あなたはテレビのスタッフを批判しているんですか?」と聞いたんです。そしたら哲夫さんが口ごもった。

「じゃあ何が言いたいわけ?」ってなって、そこでうまく返せなかったんですよ。見え方としては、「哲夫! 反論をちゃんと準備しとけよ!」って思うじゃないですか。

梅田:はい。

ラリー:でも後に、自分のラジオ番組でその件を哲夫さんが語っていて。実はあれをやるときにテレビのスタッフから「24時間テレビは続くので『テレビやスタッフが悪い』という結論にはしないでもらえますか」って言われたらしいんですよ。哲夫さんはそれで「わかりました」と言って意向通りに触れなかったと。

梅田:お約束としてね。

ラリー:だからある意味、哲夫さんは被害者というか。スタッフの言う通りに話を進めたのに、いまいち盛り上がらなかったと。哲夫さん的には「どうしたら良かったんだ」と。

梅田:じゃあ坂上忍さんのほうにも、そう言っとくべきだったんでしょうね。「スタッフのほうに話をふらないでほしい」って。

ラリー:それがどこまで話伝わっていたかはわかんないんですよ。スタッフが悪いんだと言うのは簡単ですけど、そういう単純な話でもないんですよね。

梅田:確かに百戦錬磨の芸人が出ていて、あの着地はない気がしますね。哲夫さんもしゃべれない人じゃないし。

ラリー:そう。流暢にしゃべれるのに、噛み合わなかった。

梅田:坂上忍さんも、キャラのままだったし。

哲夫さんが炎上したことこそ、坂上忍人気の証

ラリー:でも哲夫さんメインの企画だから、哲夫さんももうちょっとなんかできたかもしれないっていうのもあるんですよ。哲夫さんが100パーセント悪いわけじゃないですけどね。もしあの場が盛り上がらなかったとしたら、MCのくりぃむしちゅー上田さんとか、あるいは雛壇にいたみなさんとか、全員が作るものなんで、全員にちょっとずつ責任があると思うんですよ。

梅田:なんで笑い飯をコンビで呼ばなかったんですかね?

ラリー:そういうのもあるでしょ。コンビでやれば和らぐし、とかいろいろあるんですよ。例えばMCが上田さんじゃなくて、さんまさんとか今田さんなら違っていたかもしれないし。誰が悪いとかじゃないんですよ。いろんなことが全部ちょっとずつ噛み合わず、裏目に出続けた。全部が悪い方に噛み合って、公開処刑みたいな空間が偶然にも演出されてしまった感じがしますね。

梅田:舞台とかちょっとでも立ったことがある人なら、見てるだけで凍りつく場でしたね。あれ収録だったら絶対カットですよね(笑)。

ラリー:そう、あれが生放送の醍醐味でもあるんですよ。

梅田:我々の仕事でもああいう状況ありますよね。誰が悪いんじゃないけど、ヤバいとき。

ラリー:あります。いわゆる「スベる」ってやつ。トークライブで経験あるんですよ。ヤバいのは自覚してるけど、自分の能力では取り戻し方がわからない。だから、ヤバいまま何十分か乗り切らなきゃいけないわけですよ。

僕の職業的な役割としては、そんなに笑いを取らなくてもいいわけですけど、でもこれはヤバいって時があるんですよ。あのときの哲夫さんも絶対そうなんですよね。途中でわかっているんですよ。でもわかってもどうしようもない時もあるんですよね。

梅田:やり方がわかったら上手く切り返したと思いますし。誰が悪いとも言えるけど、ツイッターを見ると、視聴者は哲夫さんが悪いと見たわけですね。でも坂上忍さんが悪いという見方もできるじゃないですか。だけど坂上さんのせいにはならない。つまり、坂上さんが現在そこまで人気があるということだと思うんですよ。

ラリー:存在でもう勝っちゃっているんですよね。だから例えば議論して互角くらいってなったら、坂上さんが正しいと思う人の方が多い。今の状況ではね。

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