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インターネットラジオ : ハマれないふたり(全9記事)

アイスバケツチャレンジ騒動の気持ち悪さは、「踏み絵」的本質にあったのかもしれない

バケツに入った氷水をカブって筋萎縮性側索硬化症(ALS)への寄付を募る運動、「アイスバケツチャレンジ」。盛り上がりを見せていた今夏にはこの運動そのものに対する是非の議論も生まれ、世の中を騒がせた。お笑い評論家のラリー遠田氏と編集者の梅田カズヒコ氏が、「正義か悪か」ではなく、「ハマれる・ハマれない」という観点からこの問題に切り込っむ。

アイスバケツチャレンジは日本の風土になじまなかった?

ラリー遠田(以下、ラリー):世間をにぎわせていた、アイスバケツチャレンジってありますよね。

梅田カズヒコ(以下、梅田):ALS(※筋萎縮性側索硬化症)という病気の認知のために氷水をかぶるというね。

ラリー:氷水をかぶった動画をSNSなどで公開しようという運動があって、その運動自体が賛否両論含め議論になりました。

梅田:もともとアメリカ西海岸のIT起業家あたりが盛り上げた運動なんですけど。向こうは寄付文化で、自ら率先して氷水をカブって注目させるみたいなことらしいんですけどね。これが日本に入ってきて、ソフトバンクの孫さんとか、浜崎あゆみさんとかがカブったわけです。

ラリー:イメージとしては、有名人が氷水浴びている動画がインパクトがあって、「何だろう」と見ると、実はチャリティだったと。寄付を募るためのパフォーマンス。

梅田:氷水をかぶった人が、次にかぶってほしい人を3人指名する。言い方は悪いですけど、構造的にはチェーンメールとか「不幸の手紙」と同じ。

ラリー:ねずみ講とか。

梅田:「不幸の手紙」は、これを3人に渡さないとあなたは不幸になるとすることで、みんな手紙を出すから広まっていくわけです。

ラリー:内容がいくら慈善事業とはいえ、最初の見え方としてはうさん臭いですよね。日本とアメリカの文化の違いもあるんだろうけど。そのうさん臭い部分をごまかしながらやっていく感じがぬぐい去れない。

梅田:この運動に対する批判も出てきてるんですけど、でも批判するのもカッコ悪い気がして。だから黙るしかないんですけど。

ラリー:このラジオの主旨通り「ハマれない」ですよね。アイスバケツ賛成か、反対かって言われたら、賛成派にも反対派にもハマれないというか。

梅田:もし自分に来たらどうするかって言うと、多分やらないです。そういう意味で反対なのかもしれないですけど。みんなどう思ってるのかな。目くじらをたてて怒ることでもないと思うんですけど、単純にスベッてる感じが……。

ラリー:そこは否定出来ないです。ただ、僕が聞いてなるほどと思ったのが、キングコングの西野さんがいて、結構早い段階でチャレンジをしていたんですよ。内容の良し悪しは人それぞれ感想あるだろうけど、うさん臭いからこそ広まったと。

梅田:なるほど。

ラリー:つまり、これをやると面白いと思う人もいる一方で、反感を買うとか意味がわからないとか、議論になるじゃないですか。そういうのを含めて話題になるってことだから、だから仕掛けた人が上手いのはそこだという話をしてて。確かにそれはあるなって。

梅田:考えた人は賢い。CMをやるとしたら何億かかるなかを、SNSでやれば費用をかけずに認知度を広げられると。そういう意味では最高ですね。

ラリー:でも、日本の風土に馴染まないですよね。日本の思想と合ってないものが入ってきた感じはありますね。

人間の心をもてあそばないでほしい

梅田:ラリーさんは回ってきたらやります?

ラリー:難しいですね。……やるかもしれない。でも、やった後にどんな顔していいかわからない。芸人で言ったら、普通にリアクションするところを、期待を裏切るから面白いって構造があるじゃないですか。

でもアイスバケツって、氷水をかけられた時のリアクションが笑顔で「冷たい」しかない。怒ったりしたら善良なキャンペーンに対して悪者だし。強制的に爽やかなリアクションを求められるでしょ? 僕が一番イヤなのがそこです。ここは声を大にして言いたい。

梅田:その人のキャラもあるかもしれませんね。

ラリー:僕は良いことするのがすごくイヤなんです。本当は良いことをするのは好きなんですけど、人前でドヤ顔で「良いことをしています」ってやるぐらいなら、死ぬほうがマシってくらいイヤなんです。

梅田:(笑)。なるほど。それは日本人のメンタリティーのひとつですよね。

ラリー:やっぱり僕は“陰”の文化の人間なんですよ。あれは西海岸的な陽の文化だから。やるからにはひとボケしたいって思うじゃないですか。あの運動はそれが本質じゃないんでしょうね。

梅田:ボケたい人が考えたイベントじゃないですからね(笑)。

ラリー:広めたい人が考えたイベントですよね。だから本人的にはもう成功なんでしょうね。

梅田:ぐちゃぐちゃ言うより氷水をカブっている人のほうがカッコいい気もしますね。

ラリー:そう。でも、ああだこうだ言ってる人は正しいんですよ、多分。武井壮さんとか。持論を言っていて、私はカブらないことにしたって。

梅田:武井さんは、もっとマイナーな病気があるからそっちに寄付すると言ってましたね。

ラリー:かぶらないカッコよさもあるんですよ。一方で、カブる人のカッコよさもあるし。「どっちがカッコいいんだ、どっちが正しいんだ、どっちが正義なんだ」ってのが、不安定な感じ、入れ替わっていく感じが苦手なんです。人間の心をもてあそばないで欲しい。これは踏み絵で、踏むかどうかを試されているわけでしょ? 人を試すなって言いたい。人をなめるなって言いたい。ぼく、良いこと言っていません? 自分で言うのもなんだけど。

梅田:踏み絵かぁ。

ラリー:そう。自分がキリスト教徒だとしても、そうじゃないとしても、踏み絵をさせるなよって思うわけ。何の権限があってそんなことするんだと。

梅田:何かいろいろな考えちゃう日々でしたね。思ったのは、武井壮さんみたいにバシッと断るのもアリだと思うし、西野さんみたいにうさん臭くても乗っかるってのも素敵だと思うけど、ぐちゃぐちゃ考えちゃうのが、自分の「小物感」かなって思いますね。

ラリー:僕はぐちゃぐちゃ考えてしまう人でありたい。そういう人の人権を大切にしたい。ひとつ言えることは、僕らには回ってきてないでしょ? 僕らが全然セレブではないっていう(笑)。

梅田:セレブじゃないし、なんだかんだ言って、あの人に回しちゃいけないっていう感じが伝わっているんだとも思いました。だからもうちょっとカラッとした人間になってもいいなって僕は思いましたけど。

ラリー:今度一緒にカブりましょうか。指名されてないのに、されている感をだして(笑)。

梅田:カブってる人は気持ち良さそうでしたしね。

ラリー:難しい問題でした。

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