2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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加藤一二三氏:それで私は18歳で八段になったときにね、早稲田大学に入りました。「入りました」って言ったら、いとも簡単に入ったようなんだけども。
(会場笑)
やっぱり早稲田や、そういった、いわば伝統的大学に入るのは、僕なんか「入りました」なんて言ってるけれども、正確に言うと「本当にものすごく、よくしっかり勉強して、なんとか早稲田大学に入りました」というのが、なんだろう、慎重な表現でしょう(笑)。
(会場笑)
僕もですね、とにかく早稲田に入ったんです。それで、じゃあ早稲田大学は、僕にどういうふうな扱いをしてくれるかと言いますと、途中、中退したんですよ。中退したんだけれども、例えば私が西暦2000年に60歳で国から紫綬褒章をもらったときは、その時の総長がお祝いのワインを贈ってくれました。
はっきり言って、早稲田大学は私のことをね、何かにつけて応援してくれています。あるとき、今から5年ぐらい前に、早稲田大学の広報誌で「西北の風」というものがあるんですが、その「西北の風」から、こういう取材を受けたんです。
早稲田の卒業生で最も活躍した人っていうことで、私が選ばれまして、「西北の風」に私が登場いたしました。早稲田大学のほうは、連絡のとれる卒業生約60万人の人にその「西北の風」を送った、と言っております。ありがたいことですよね。
それで、ついこの前にも、10月のはじめに大隈講堂で、トークショーをやってきたんですよ。僕はもともと、大学で話をするのが長年の夢でして、その前に一番最初に、学習院大学の学園祭で講演をしたというのも、うれしい思い出です。それからつい先日ですけれども、一橋大学の講演を頼まれまして、たしか聞くところによると、650人ぐらいの聴衆を前に講演をしてきました。
一橋大学なので一般の、近隣の社会人の方も見えていらっしゃっていて、それで一応、講演をしてきたんですよね。僕は大学で講演するのが夢だったんだけれども、その前にはですね、東北大学の講堂で、これは東北大学の主催じゃなかったんだけれども、これは住友生命のイベントでね。東北大学の講堂を使わせてもらって、これはかれこれ、少なくとも1,000人ぐらいの方を前にして講演をしてきたんです。
もちろん私はいろいろと言うんだけれども、大山康晴名人、将棋界の大先輩の大名人の大山康晴名人からは、本のなかで「加藤一二三は、将棋の大天才」というふうに書いてもらっています。
将棋界の覇者で、棋士のトップの大山先生が、僕のことを「大天才」と書いてくださっているんですけれど、たぶんね、これに対して反論する人はいませんよね?(笑)。
(会場笑)
まあ、これ以上のお墨付きはないわけで。大山先生と僕は125局戦ったんですが、私の自己紹介で言いますと、私は昭和45年にカトリックの洗礼を受けたんです。
そのカトリックの洗礼を受ける半年前ぐらい、私は思ったんです。14歳で四段になり、それから18歳で八段になり、20歳のときに大山名人と名人戦の七番勝負を戦って、1勝4敗で負けました。その前に一応、昭和44年に大山先生名人に勝って十段というタイトルをとったんですよ。
それで、十段にもなってね、まあ順調な生活であったんですけれども、昭和45年の前あたりで私は「あ、私の棋士人生は行き詰まった。もうこのままでは先が見えてる」と思ったんです。
それで、かねてより関心のあったキリスト教の洗礼を受けたんですけれども、以来、だいたいキリストの洗礼を受けてから、たぶん間違いなく800勝はしておりまして、洗礼を受けたあと名人にもなり、賞もたくさんとりました。勝った数が、1,324。四段になってから勝った数が1,324です。これは現役のなかでは羽生善治さんに次いで、第2位です。
この前ね、NHKの新春のスペシャル番組で、羽生善治さんと私は1時間対談をしました。1月3日に、NHK BSで放送されます。
実はこれは、公式にははじめてのことでした。非公式には羽生さんと私は、例えば仕事を一緒にするときに、上野の駅から4時間ぐらいかかるところに行ったときに隣合わせで、2時間ぐらい喋りました。
これはいわゆる非公式ですけれども、先日、公式で1時間話をいたしましてね。羽生善治さんというのは、非常に将棋の天才で、覇者です。すごいんですよ。羽生さんのことに、ちょっと話を移しますと、彼は19歳で竜王になっていまして、たしか25歳で七大タイトルをとったんですよ。25歳ですよ。
ちなみに私が25歳のときには、タイトルを1回もとっていませんでした。その羽生善治さんは近々ですね、読売新聞社主催の竜王戦というのを戦っておりまして、7番勝負で、今は3勝1敗。これで次の対局に勝ちますと、彼は永世称号というのを全部手にします(注:2017年12月5日、第30期竜王戦第5局に勝利し、永世七冠を達成)。現在、永世竜王を除いたもの、例えば永世名人、永世王将、永世王座、永世王位、それから永世棋聖、永世棋王。
永世という称号がありますが、羽生さんは永世竜王だけを除いては、全部永世称号を持っています。もしですよ、もしというかほとんど可能性は高くなってきますけれども、羽生さんがこの竜王戦で勝ちますと、永世竜王の資格がとれます。したがって、羽生さんは永世称号を全部獲得することになるんですよ。
それで、思いますけれども、すべてのタイトルの永世称号をもし獲得しますとね、やはり普通に言って、我々関係者もやっぱり、何か大きな称号を考えるべきでしょう。
実を言うとね、ずっと前に、羽生さんと渡辺明さん、今回も同じ顔ぶれなんですけれども、勝ったほうが永世竜王という勝負がありまして、そのとき、羽生さんが負けて渡辺明さんが永世竜王になったんです。
羽生さんは負けたんですけれども、いろいろ勝負の話をいたしますと、私は思いますよ。我々の世界というのは、普通ですね、大逆転劇というのはそうはありません。形勢がいいほうが順当に勝つということが多い世界ではあります。
なぜかと言いますと、将棋というものは理詰めなんですよ。どういうことかと言いますとね、私もよく色紙に「直感精読」と書きますけれども、どんな局面でもパッと手が浮かんでくるということがありますが、その最初に浮かんできた手の90パーセントが、一番いい手なんです。
私の場合はそうですね、だいたい浮かんだ手が95パーセント、一番いい手だというふうに体験をして、確信をしているんですけども、大山名人は、この浮かんできた手が一番いい手である確率は、90パーセントというふうに本に書いています。ですから、将棋というものは理詰めです。
自分たちの指した将棋は、「絶対にこの局面ではこれが一番いい」という手を確信して指しております。ですから、例えば私が公式戦を2,505局戦った中で、今、棋譜というものが残っておりまして、その棋譜を見ると、将棋は平均125手で勝負がつきますけれども、自分と相手が指した手の、読んだ内容、お互いの考えた内容は、その95パーセントまでは思い出せます。
ここで仮に「5六」と付けた手があるとすると、「これはかくかく、こういうような理由で指した」と。それに対して相手がこう来たんだけども、「それはね、こういうような理由で彼は指した」ということを、95パーセントまでは思い出すことができます。
したがって、私は2,505局戦っていますが、そのうちの30パーセントは『加藤一二三名局集』で、出版しております。私のこれからの宿題はですね、まだかれこれ約1,000局くらい、勝った将棋の名局がいっぱい残されておりますから、これも「加藤一二三 名局集」として、これから先、努力して書いていく、というのが残されております。
例えばバッハやモーツァルト、べートーヴェンなど、クラシックの名曲は、楽譜があるから名演奏によって我々は感動ができますけれども、『加藤一二三 名局集』というものを私が書いておきますと、後輩の棋士たちの勉強にもなるし、多くの将棋ファンにも感動してもらえると思っております。
もしですよ、私がそういう努力を怠って、本を残しておきませんと、私の指した名局のほとんどは、他人にはすぐは理解不可能なんですよ。僕の仕事の経験から言っても、例えば羽生善治さんの将棋を私が解説することがありますけれども、その場合、羽生さんや大山名人の将棋なんかでも、だいたい5、6回棋譜を見て、何回も並べ返して、1つの名局で8時間くらい研究をして、だいたい内容がつかめる。それを文章にして書いていくということを、私はよく頼まれてしてるんですね。
ですから、他人が名局を研究してまとめれば、8時間かかります。名人でもね。五段の人だったら無理ですよ。藤井聡太さんだって今はとても不可能ですよ。わかりっこない。
(会場笑)
名人、達人の棋譜なんかね、藤井さんが今見たって、そんなものは不可能ですよ、若い者がね。それはやっぱり同じ達人が見て、8時間かかる。これをね、ひふみんが本にすれば、あっという間に、2時間でできるわけですよ。
(会場笑)
いや、そういうものなんですよ。それは超まじめな話で言うとですね、いろいろとまぁ、今のところね、TVの出演、年末年始にかけても、15本は決まってるんですよね。それから先ほども言ったように本の出版はもう、20冊というのを約束してます。今はそういったことで、当面の仕事を精一杯やっておりますけど、いずれ時間を編み出して、名句集を書く作業をしていきたいと思います。
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