2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Editing Genes Inside the Human Body(全1記事)
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ハンク・グリーン氏: 先週、これまでの医療を根底から覆す大きなニュースがありました。DNAを編集するためのツールを体内に注入することで、遺伝子性疾患を治療する道筋を立てることに、研究者チームが初めて成功しました。
これがうまくいけば、最も衰弱性がひどい遺伝子性疾患の1つに対処するための大きな1歩になります。ですがこうしたことがあちこちで行われたからといって、デザイナーベイビーの時代がやってくるというわけではありません。
11月13日にブライアン・マドゥーという人は、緻密に設計された、遺伝子を編集する数十億のウイルスを点滴静脈注射で投与されました。マドゥーはハンター症候群という、多糖分子を分解するために必要な酵素を持たない病気でした。糖が細胞内に蓄積すると、細胞が膨れて組織や臓器が異常な大きさになってしまいます。ハンター症候群になると、歩行が困難になったり、難聴や視力喪失、脳の変質や心臓病など、数多くの合併症を引き起こします。
そして多くの遺伝子性難病と同じく、治療法がありません。患者は症状を抑えるために酵素を増やす薬を服用しますが、極めて高価ですし、酵素が急激に低下する場合もあります。
うまくいけば、遺伝子編集はとても有用な治療法になるでしょう。発想はまさにその言葉通りです。患者の遺伝子を取り出して変異した箇所を修復し、病気を治療するのです。
研究者たちは1989年からこうした治療方法に取り組んできました。ですがこの数年で、遺伝子の編集技術の正確さと信頼性は飛躍的に向上しています。すでに認可を受けた治療法も幾つかあります。例えば患者の細胞を取り出し、遺伝子を編集して元に戻すといった具合です。
マドゥーの場合は新しい手法が取り入れられました。DNAを編集するツールが血中に直接注入され、体内で細胞の編集作業を行うのです。
彼の場合は肝臓でした。
最近で有名な遺伝子編集のツールといえば、CRISPRと呼ばれる、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)という仕組みを使った方法でしょう。いくぶん古く、実際に行うのは難しいですが多くの実績がある手法です。
ZFNは2つの部分から成り立っています。DNAを切断する酵素と、ゲノムの切った場所を直接つなげる機能です。遺伝子を編集するために、研究者はDNAらせんの両側を切断できるものを設計しました。
挿入したいDNA片を切断した場所に適合する形にすれば、細胞が切断部分を修復する際に新しい遺伝子を取り込みます。マドゥーの場合、遺伝子編集の設計図は改造されたウイルスに組み込まれたので、ウイルスが感染するように細胞に影響を与えます。そして昔ながらの点滴静脈注射で注入されました。
計画通りに進めば、マドゥーの肝臓は彼が持っていない酵素を生成するように組み換えられます。研究者チームによると、肝臓の1%のゲノムが置き換えられれば、治療に必要な酵素ができるようです。
ですがこれはとても難しいことです。遺伝子治療の治験はそのリスクの大きさで知られています。別のタイプのウイルスが用いられた遺伝子治療の治験では、免疫システムが活性化しすぎたせいで患者が死亡した例もあります。
さらに難しさの原因はこれだけではありません。注入された遺伝子が間違ったところにつながり、ガンを引き起こすかもしれません。遺伝子が間違った細胞の種類で活性化すれば、別の組織になってしまいます。
新しい手法では、間違った箇所に遺伝子がまず置かれないようされ、肝臓以外の細胞として成長しないようなフェールセーフも備わっています。ですがミスが起こるリスクはありますし、一度そうなってしまえば元に戻せません。細胞を変更前の状態にはできないのです。
マドゥーはそうしたリスクとリターンを考慮した上で参加し、成功とわかるまで数ヶ月間を要しました。仮に治療が順調に進んだとしても、将来的に一切の治療が必要なくなるというわけではありません。
この遺伝子治療はほとんどの症状に効果がありますが、酵素が脳を保護している障壁を超えて進むことはできません。つまり、脳が受けるダメージから守ることはできないのです。また彼が44年間の間に負った脳へのダメージを回復することもできません。さらにこの治療は最低でも数年間行う必要がありますが、どの程度効果が続くのかは年齢や新しい遺伝子によって作られた細胞によって左右されます。
マドゥーや他の研究参加者といった成人を治療することが最終目標ではありません。子供や赤ちゃんに対しても十分安全に行える手法を確立することです。そうすれば、この最悪の症状が増え広がるのを抑えられるでしょう。またこの治療法がうまくいけば、別の病気に対する同じような遺伝子治療の開発にも弾みがつきます。
ですがこうした研究で問題となるのは、ディストピアな未来の可能性もはらんでいる点です。指をもう1本増やすような、遺伝子的に自分の子供を設計する未来です。
新しい遺伝子治療が開発されるたびに、赤ちゃんの遺伝子を改変されるリスクや、病気を無くすために胎児の遺伝子を編集するのか、望みどおりの子供にするために編するかの線引きをどこに置くかといった議論が巻き起こってきました。実際に生まれる前にこうした編集作業を行うには、こうした倫理的な問題を解決する必要もあります。
ですが、病気を抱えて生きている人に対する治療法を研究することはまったく異なります。マドゥーのDNAにあった変質が精子にまで及ぶことはなかったので、次の世代に受け継がれることはありません。これは遺伝子治療においての、とくに深刻な合併症がなくなるという点においては大きな飛躍です。デザイナーベイビーとはまったく違うのです。
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