2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小池百合子氏(以下、小池):高齢化に耐えられる社会ストックでいうならば、今日は無電柱化対談ということで進めさせていただいてますけども、これからは車いすの方々や、最近はシニアカーというのがありますね。
ロバート・フェルドマン氏(以下、フェルドマン):はい。
小池:免許が(必要)なく、おじいさまたちが手でこぐのではなく(電気で)ズーって行くでしょ?
フェルドマン:ありますね。
小池:私はああいうのが日本の成長戦略といいましょうか、これから日本製(品)に対して……世界は人口爆発と同時に高齢化、特に中国なんかでもこれから高齢化が一気にやってくるわけですよね。
小池:これは車いすですけれども、シニアカーが通りやすくなるとかそういった街の設計そのものを、これまでの若い人たち(の世代)というか人口増加・右肩上がりの経済成長が続いたときとは変えていかないといけない。今回の広島で、本当に多くの犠牲者の方々が出たわけですけれども……。
フェルドマン:悲しいですね。
小池:そしてまた一方で、空き家になってるのが822万件、さらに増えてましたかね。というのを考えれば、まちづくりそのものから考えないといけないわけですね。
フェルドマン:その通りですね。シニアカーもそうですけれども、自動車も電気化されてくる。もちろん他の技術もいっぱいありますけれども、特にシニアの方が使う車は電気ですね。だとすれば、この前の広島も(東日本)大震災もそうだったんですけど、電気が途絶えてしまったらアウトですね。誰も動けない。1箇所がダメになったら全部周りもダメになっちゃう。
ということは、社会が崩れてしまいます。本当におかしいことになっちゃうんですね。なので、無電柱化によってそういうことにならないように、かなり効果があるようなプロジェクトもいっぱいあるじゃないかと思いますね。
小池:ですから、これは刷り込みが大変上手くいったのかもしれませんが、「電線の地中化はかえって危ないじゃないか」という話があるんですが、じゃあ世界ではどうなのかと。「日本は地震国だから」と言うけれども、そうではないと思いますね。
フェルドマン:この前の震災でわかったと思いますけれども、建設基準をしっかりすれば、あれだけの地震でもまったく問題ない。
小池:ガス管も通ってるわけですからね、そもそも。
フェルドマン:(地理的に)遠いかもしれませんけど、東京都内で崩れたビルはないんですよね。なので、基準さえあればまったく問題ないんですね。
小池:耐震化の話ですね。
フェルドマン:むしろ(基準が)ないほうが危ないと思いますね。阪神淡路(大震災)のときに、(小池氏の)ご出身のところだと思いますけれども、いろんな電線が落ちて大変なこともあったんですよね。なので、「このほうが危ない」どころか、電線を埋めることがむしろ正しいと思いますね。
小池:無電柱化について、いうならば安全性の問題と、関係する方々……電柱の会社は「やめてくれ」と悲鳴が聞こえそうなんですけれども……こちら(上部文章)が、党の方針の中でいわゆる成長戦略(にあたります)。「観光地の魅力向上等を図るため、地方公共団体、電線管理者等と連携して、本格的に無電柱化を推進する」ということで、この「無電柱化」という言葉が入りました。ただ、こちらはむしろ「景観」という観点になっているわけです。
小池:下部文章のいわゆる「骨太の方針」というものですが、ちょっと読んでみますね。
「コンパクトシティ、スマートシティ等の形成に向けて、民間の資金やノウハウを活かし」……うん、ここもポイントかもしれない。「都市機能の集約を含めた都市再生や地域公共交通網の再構築、中心市街地の活性化を推進するとともに、子育てしやすく高齢者の暮らしやすい住宅・まちづくり、無電柱化などの景観や防災に配慮したまちづくりや、開かずの踏切の解消等に向けた取組のほか、環境モデル都市等の持続可能な地域づくりを推進する」。
まあ、あれもこれもいっぱい入れたからずいぶん長い文になってますね(笑)。
フェルドマン:まあ、官僚の文章ですね。
小池:でも、無電柱化という言葉がここで盛り込まれました。経済効果の観点からはどうご覧になりますか。
フェルドマン:長所は二つあると思います。ひとつは観光が良くなる。「日本に来てよかったな」という部分がさらに増えるんですね。外国人が日本に来ると、本当に好きになりますよ。犯罪がない、きれい、交通が簡単でみんな優しくてお世話してくれる……そういうことがたくさんあるんです。ただ、これ(電柱・電線のある光景)を見ると、ちょっと見苦しいなということもあるんです。だから、観光を呼び込むということはいいと思います。
もうひとつは、必要な社会インフラですね。震災のとき、あるいは何か起きたときに、社会機能がなくならないように、やっぱり投資をしないといけないんですね。そういう経済効果が非常に大きいです。この前のように、電気がなくなって大変なことになった人たちの、経済効果が大きいんですね。
小池:経済ロスですね。
フェルドマン:ロスですね。それが大きいんですね。そのロスを避けるには、こういう投資が非常に大きいと思いますね。
小池:それと今、さまざまな建設関係の入札がおこなわれても人が集まらなくって、公共関係の入札がポシャってしまう、流れてしまうケースなどもとても多いんですね。地中化をしていくことになりますと、交通整理の要員など、また人が要ります。
昼間は交通を遮断するからほとんど工事ができなくて、夜の工事になるとまた人件費が高くなってしまう。ということで「莫大なお金がかかるんじゃないですか」「特に人が足りないんじゃないですか」という指摘もあるんですけど、どうでしょうかね。
フェルドマン:私はそういう問題があるからこそ、労働市場の適性化が必要だと思います。今の労働のルールは非常に厳しいんですね。「安全のためだ」ということを言い訳にして余分に人を使ってることもありますし、十分効率的に人を使ってないということもあります。
さっきの銀行の話にもありましたけれども。人が流れないんですね。正社員という概念は、ちょっと時代遅れだと思いますね。なので、本当に必要だということであれば、こういうことはできます。一方、必要ない労働者がいっぱいいるところもあるんですよね。あれは、さっきちょっと申し上げましたけれども、あんまり高齢ではない高齢者……。
小池:「敬老会青年部」って言ってますけどね、私は(笑)。
フェルドマン:私は「後期実年」という言い方を使ってますけれども、65歳から72、3歳の人たちも結構いるんですね。
小池:元気ですよ。
フェルドマン:そういう人たちを上手く使うのもありますし、移民の話をしてもいいと思いますしね。日本で働きたい人はたくさんいます。特に優秀な方もたくさんいます。今は日中関係があんまりよろしくないんですけれども、中国の良い大学を出ても仕事がない人はいっぱいいます。
小池:中国では、大学卒業者が毎年700万人出る。700万人! すごいですよ。
フェルドマン:職に就いてない人が大半ですね。そういう人たちはどうしても働きたい。勉強をしてるということですから、日本に来ていただいて働いていただけるんなら、日中関係は良くなります。
小池:移民に関しては「どういう人が入ってくるかわからない」とか……ウチの池袋の地域もそうなんですけど、例えば中国の人たちが住んでいるところは「ゴミの出し方がひどくて、町会費も払わないし」と言って。そういうのはちゃんと教えればコミュニティとして、仲間としてやっていくんでしょうけれども、まだちょっとアレルギーは強いですね。
フェルドマン:ありますね。そこで大事なポイントをある日本人が教えてくれたんですけども、この方はヨーロッパのいくつかの国に住んだことがあります。移民の問題がいっぱいある国、ない国があるそうです。
何が違うかというと、問題があんまりない国は長期滞在、「来てそのままいてもいいよ」ということですね。すなわち「外国人労働者」じゃない。「移民」です。すると、「この国にいたい」「この国の言葉を覚えると良いことがある」という(考えになる)。長期滞在あるいは移民、「この国の人になります」というところは、そんなに問題がない。面白いですよね。
小池:今、北欧などで移民をめぐって、大量殺人事件が起こったりとか、これまでだったら考えられないようなことも起こっていますし、ヨーロッパの例なども学んでいかなくちゃいけない。
フェルドマン:管理も大事ですね。日本の場合は入国するときに指紋を当然押しますね。持ち歩くパスポートだと思ってやってるんですね。そういう管理体制をしっかりすれば、みんな見られてるよってことがわかるから、悪いことしないと思います。
小池:ちなみに私の祖父が、若い頃にシアトルにいて貿易を学んで。ちょっと差別を受けたりして、それで結局日本に戻ってきて神戸で仕事を始めた、というのが我が家の歴史なんですね。ですから、祖父はアメリカで多くを学んで戻ってきた。そういうのもひとつの変形移民の例かな……移民ではないですね。海外体験ということですね。
フェルドマン:そういう差別を受けたということは本当に心苦しいことですね。そうならないように日本が受け入れるなら、日本と海外の関係が良くなっていきますね。
小池:これから少子化に向けて対策を打っていかなければなりませんが、日本人はへとへとに疲れて夜中まで働いて、遊ぶ時間も十分になくて、若い人たちも出会いがなかなかないということで……。
私は街コン議員連盟【正式名称:婚活・街コン推進議員連盟】の会長もやっているんですけど、やはり日本の問題といいましょうか、もっと時間を効率的に、そして人生を楽しむようにしないと、結局会社人間が辞めた後にアイデンティティを失うというのは、考えなくちゃいけないと思いますね。
フェルドマン:そうですね。今のホワイトカラー・エグゼプションという話がありますが、労働時間制限がかなり厳しいんですね。ただ制度的に見ると、(現在は)ある時間以上で追加賃金がもらえます。
小池:残業代ね。
フェルドマン:残業代。それをみんなわかってるから、意図的に残業を増やしているという面もあるんですね。この制度を直せば、みんなもうちょっと効率よく普通の時間働いて、余分な時間を自分のために使えるということになるのかなと。
小池:じゃないと、日本人自身が陳腐化しちゃうと思うんです。ひとつの仕事だけをやってるのももちろんいいんですけれども、世の中の変化に取り残されてしまうような。まあ職種にもよりますけれどもね。ですから、時間をどう効率的にやっていくか、生産性のことについてもいろいろご提言されてますよね。
フェルドマン:そうですね。これからは生産性をグンと上げないと高齢化に間に合わないということが大原則ですけれども、日本のいろんな産業を見てみますと、業界によって生産性が全然違いますよ。この前、塩崎先生(衆議院議員・塩崎恭久 氏)が作った自民党の成長戦略の中にきれいなグラフがありましたけれども、アメリカを100として、日本の各産業はどうなってるのか。米国より高いところもありますよ。
小池:どういう産業ですか?
フェルドマン:機械産業とかね。
小池:ロボット。
フェルドマン:そういう製造業は非常に高いんですけれども、卸(売業)とか農業とか、そういうところは断然低いんですね。で、日本が労働力の使い方で非常に上手な産業があります。自動車もそのひとつの例ですけども、世界を制覇したんですね、自動車産業は。
小池:カイゼンとか、ロボットも活用したりね。
フェルドマン:すばらしいことやってますね。そういう産業で世界を制覇できる日本人は、なぜ農業をやると制覇できないのか。これは制度の問題だと思いますよ。
小池:明らかにそうですね。
フェルドマン:なので、ルールを変えてもっとみんなが効率よく働けるようにするなら、アベノミクスの目標である高い成長率は、私は問題ないはずだと思います。
小池:そうやって生産性も良く、それによって収入が確保できるとなったならば、後継者が出るわけですね。
フェルドマン:その通りですね。
小池:なぜ後継者がいないかっていうと、やりがいもそうだし、収入についても不安がある。あるいはお米(農家)などが良い例ですけれども、ある意味あまりにも保障されていて、やる気が起こるか起こらないか。やる気がある人もいっぱいいるんですけどね。
フェルドマン:ちゃんと採算が取れるような「農業いいよ!」という地域の中に、若い人が入っていくんです。この前、岩手県の話を聞きましたけれども、すごいですよ。熊本あたりもそうだそうです。チャンスを与えれば、若い人が行くんですよ。で、子どもも作って、いい将来を作ると。そういうことですよね。
小池:そうですね。成長戦略、それを含むアベノミクス。日本にとっては正念場だと思うんですが、最近少しマーケットの状況を見ていても、「本当にやるのかね?」っていう疑問符が付いているように感じる方も多いと思います。ここでもう一押しということでは何が必要でしょうか。
フェルドマン:いくつかあると思います。ひとつは労働市場のルールを、もう1回プッシュして早く直すということです。このホワイトカラー・エグゼプションをもっと広げることもそのひとつで、やっぱり人が自由に動けるようにすると。同じ労働・同じ賃金という原則を徹底することですね。これは一番大きいと思います。
もうひとつは税制の改革ですね。今、払っていない企業がものすごく多いんですね。タダでディズニーランドに入ってるようなもので、楽しく見てるけど払ってない。これはちょっと不公平ですね。頑張って払ってる人の目から見れば不公平ですね。これは直さないといけない。やっぱり、みんながちゃんと法令を守る税制を作って、みんなが安く払えるようにすると。これが法人税制の変化ですね。
あとは、医療制度の改革ですね。ムダが多いんです。ものすごく多いんです。日本の制度も悪い制度とは思いませんよ? ただ、お金を使いすぎです。だから、必要ないお金は使わないことですね。
小池:毎年、高齢化にともなって1兆円は必ず増えていくということが刷り込まれてますけれどもね。これでは、消費税がこの後どうなるんだという話になりますね。
フェルドマン:今のままの制度を続けてやっていきますと、この前財政審議(会)が計算しましたけども、消費税を34%にしないといけないってことですよ。「誰が働くの?」っていうことですから。やっぱり効率化ですね。その中が大事だと思いますね。
小池:なるほどね。日本はこれまで高度経済成長を楽しんでというか、それを経験してきたわけですけれども、そのサクセスストーリーは置いておいて、また新たなサクセスストーリー作りをしなくてはならないと思います。また、マーケットのほうもこれからのアベノミクスの行方については大変興味を持ってというか、最大の関心を寄せて……というか、関心そのものが薄れてるのが私は怖いなと思ったりするんですけども。要は、やるべきこと、決めたことはやる。
フェルドマン:「やる」と。続けてこうやります、こうやりますと。既得権益で動きたくない人たちを外して、「動くぞ」という印象ですね。
小池:ということで、今日の無電柱化対談でありますけども、エコノミストのロバート・フェルドマンさんにお越しをいただきました。どうもありがとうございました。
フェルドマン:こちらこそ。クールビズもやっていきます。ありがとうございます。
小池:クールビズOK! ネクタイの次は電柱を引っこ抜きます(笑)。
フェルドマン:そう! 動けば世の中は変わるということです。
小池:わかりやすくいかないとね。よろしくお願いします。ありがとうございました。
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