2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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乙君氏(以下、乙君):もう1つ、はい。
山田:走る、飛ぶ、追いつめられる、そしてガラスが割れる。しゃべらない。
(一同笑)
乙君:そうそう、あれなんですよね。まあちょっと、見てない人にネタバレにしないようにはするんですけど。概要としては、ダンケルクという街がベルギーとフランスの国境に近いところにあるんですよ。そこで第二次世界大戦のときに、追い詰められたフランス軍とイギリス軍。
山田:あの段階で、もうフランスはボロボロだよね。それを助けにきたイギリス軍の話ではあるよね。
乙君:30万人ぐらいが包囲戦されて、そのダンケルクという小さな田舎町、港町に閉じ込められてると。
(海岸が)めちゃめちゃ遠浅だから、当時の巡視船っていうのかな? 戦艦とかそういうのも、近くまで寄ってこれないから、救助がなかなか難しい。だから、当でっかい飛行機とか輸送船とかも当時ないから、う回路しかない。
そこで取り残された30万人をどう助けるか、どう生き延びるかというのが、この『ダンケルク』っていう話なんですな。
山田:うん。このへんのところは、いろんな人が解説してて。あと、現実に起こった戦争のことを表現するのに、1番リアルにするために本物の戦艦や「スピットファイア」(を使った)。
イギリス軍のスピットファイア2機だけ見つかったから、(戦闘機が)3機しか出てこないのは、使いまわしでなんとか見せようと。でも実際に飛行機を飛ばしてる。IMAXカメラ乗っけて飛ばしてるからね。
乙君:CGじゃなくて、実際の映像という。
山田:実際、浜に、兵士の格好させたキャストをウワーッと何千人も置いて、実際に空爆してるからね。バーッって音するから、俳優みんなが「演技いらなかった」って言ってたよ。本当にウワッてなるから、誰も演技指導が必要なかったって。すげえなあ。
よくまあ有名な話だけど、クリストファー・ノーランといえば、遠くから「カット」って言わないっていう。必ずカメラの横にいる男っていう。
乙君・しみちゃん氏(以下、しみちゃん):へえー。
山田:ちょっとディカプリオが年取ったみたいな顔してんだよ。
乙君:へえー!
山田:だから『インセプション』のディカプリオは、けっこう被ってんだ。ディカプリオはアメリカ人だけど、ディカプリオがイギリス人になったらこんな感じかな、みたいな。
どういう佇まいかというと、インセプションのディカプリオって、ずっとこういう顔してんの。クリストファー・ノーランそのもの(笑)。
乙君:へえー。
山田:「世間はそんなに甘いもんじゃないんだよなあ」ってずっと考えてる顔をしてるのが、その性格に出てるよな。
ここがおもしろいのが、クリストファー・ノーランって、イギリスの人なんだけど、お母さんがアメリカ人でシカゴの人なんだよ。ロンドンとシカゴ、往復して生活してんの。
シカゴと言えば、ゴッサム・シティのモデルになってるところじゃない。だから、もうダークナイト撮るために生まれてきた、みたいな男なの、あの人は。
乙君:なるほどね!
山田:ロンドンの、雨のロンドンと、暗いロンドンと。
乙君:ああ、原風景なんだ!
山田:原風景。それはどうしてかっていうと、彼は生まれ生きてる時代っていうのは、斜陽のヨーロッパ、斜陽のアメリカの時代だった。だから不穏で。次に何が起こるかわからない、ドキドキみたいな。そして女は去っていく。ここが大事なんです。
乙君:女は去っていく?
山田:イギリス紳士で、アメリカの血が入ってるんだけど、ヘラヘラしてないんだよ。
山田:だから、マーベル・コミックってだいたい、どっかヘラヘラしてるんだよ。
乙君:まあ、軽いですよね。
山田:だから、イエーイってなるんだよ。『カンフーパンダ』は、中国の話だけど、中に入ってるのはアメリカ人じゃん? アメリカ人のハイスクールのやつみたいなやつが入ってるんだよ。
乙君:キャラクター設定ね。
山田:そうそう。「まじか~やってらんねえ、おっかねえよ!」っていう。そういう、お前どこのハイスクールのやつだ? みたいな(笑)。
(一同笑)
山田:そういうふうなのが。アジアにお前みたいなやつはいないぞ? みたいな。だからハリウッドスタイルのヒーロー物を見慣れてると、だいたいヘラヘラしてるし、チャラいんだよみんな。それのバランスをとってうまくやってるのが『アイアンマン』だと思うんだけど。
乙君:ああー。
山田:この人(クリストファー・ノーラン)は、バリバリのイギリス紳士を持ってきちゃう。そういうスタイルの映画もいくつかあるんだけど。
この人が一番そういうのにハマってるというか、本人がそういう人なんだろうなと思う。だから非常にクールに見える。で、リアルなことに向いてる。
それで、この人CG嫌いで、デジタル嫌いなんだよ。だからわざわざコダックと契約して、フィルム買ってるとか。今回もずっとフィルムで撮るというね。だから、徹底して実写主義っていうか。それはどういうことかというと、映画を嘘にするなと。
乙君:あー……。
山田:嘘を撮るなって。男って、嘘も好きだけど、リアルなことにこだわるでしょ?
乙君:まあまあ……。
山田:女の人は、「夢を見させて」って思ってるわけじゃん。
しみちゃん:うん。
山田:ここで、ノーラン対立が起こってんだよ。
乙君:ああ、男性と女性の気質の違いがそのまんま。
山田:そう。
乙君:でも、コメントでもずっとありますけど。「私、女だけどノーラン大好き」っていう人もいっぱいいますけどね。
山田:そうそう。それは、そういった「黙ってついてこい」という男も好きな女はいるわけよ。
乙君:ああ、そういうことなんだね。
山田:そう。そして、女の人がノーランを見て、好きになっちゃう理由が大きいのがもう1個あります。
乙君:ありますか? なんでしょう。
山田:この人は、1人の女をずっと待ってるんです(笑)。だから、だいたいどの作品でもそうなんだけど。「娘に会いたいんだ」とか、「妻に会いたいんだ」とか。「あの日もう一度」とか。お家に帰りたい……はい、ここでノーランメソッドまとめいきまーす。
しみちゃん:(笑)。
山田:ノーランがウケる理由は、第一義で、ずっと書いてんのが失敗男子の話なんだよ。
乙君:へえー!
山田:どの作品も、たいへんな失敗をやらかしてしまった人のは話なんだよ。それで、今回は、ダンケルクに関しては、それは本人の責任ではないよね。だからこれはちょっと違うんだけど。
でも、なんでこんなとこに来てしまったんだろう? っていう失敗だし、あと、もう1人出てくる、墜落する飛行機の人とか。いろんな人が出てくるじゃん。おもに失敗男子たちなんだよ。
乙君:そうですね。
山田:失敗男子たちが何を考えてるかっていうと、「おうちに帰りたい」と思ってるわけです。
乙君:わー! なるほど。
山田:ノーラン映画と言ったら、おうちに帰りたいってとこの話です。
乙君:確かに! 帰りたい人たちばっかりですもんね。
山田:で、一番信じたいのは、悪い人ばっかりじゃないんだよ。
乙君:なるほど!
山田:これがまたダークナイトの最後の、フェリーのくだりになってきたりとか。今回のダンケルクで、また同じ船を使って、希望を描いてますね。だから、ダークナイトのアンサーとしても同じようになってて。
乙君:なるほどね~。
山田:っていうところがおもしろい。で、女とはしゃべらないし行動するし、だけど泣いているという、明治の男ですね、これね。
乙君:いや、明治の男(笑)。
山田:違うんですか?(笑)。
乙君:まあまあ、うん……。
山田:女々しくて誇り高い、ちょっとクラシカルな男っていうとこれあれですよね。もう長渕剛しかいないじゃないですか。
乙君:長渕なの!? クリストファー・ノーランって。
山田:だからクリストファー・ノーランは……(長渕の真似をしなが)セイッ! セイッ!
乙君:それは長渕を誤解してますよ、長渕も、めっちゃお茶目なんで。
山田:ちゃう、めっちゃ女々しいだろ?
乙君:女々しいのはそうです。
山田:帰りてえだろ? 「鹿児島に帰りたいよう。帰ったらみんな来てよう」ってなるわけじゃん?
乙君:そうそう。
山田:「悪い人たちばかりじゃないよう」って言ってんじゃん。で、いっぱい失敗してきたじゃん!
乙君:いっぱいしてますよ。
山田:「俺は『昭和』っていう喫茶店でよう……」
乙君:そうそう(笑)。
山田:だろ!? 長渕以外いない!
乙君:まったく似てないけど、ものまね(笑)。
しみちゃん:(笑)。
山田:長渕以外いない。ようするにこれ、長渕の……ね。押してるボタンと同じボタンをノーランは押すんです。
乙君:ああー。いやあでも!
山田:うん。
乙君:ノーランのほうがおしゃれですよ?
しみちゃん:お前(笑)。
山田:お前長渕をバカにするとお前なあ。
しみちゃん:謝りなさい。
乙君:いやいや、そういうことではなくね!
山田:10万人が黙ってないぞ、お前。
乙君:いやいやそいうことではなく。
山田:お前あの、ピンクのタンクトップすげえぞ。バイクにのっけて。
しみちゃん:桜島の(笑)。
乙君:コメントで、なんかノーランは、お母さんが作ってくれたベストをずっと着てるって。
山田:ほら……な? マザコンですよ。母ですよ。そして1人の聖母を夢見て、諦められない。
山田:だから、でもここで、ユーミン(松任谷由実)の「あの家に帰りたい」という歌があるじゃないですか。
乙君:う、うん……。
山田:ユーミンの、「あの日に帰りたい」っていう歌があるじゃないですか。
乙君:あるんですか? はい。
山田:泣きながらちぎった写真を、手のひらで繋げてみるのって言ってんだよ。泣きながらちぎった写真。で、迷いなき昨日の微笑み、訳もなく憎らしいのよって言ってんだよ。あの頃幸せそうだった自分の写真が、わけもなく憎らしくて破ってんだよ。
乙君:はあ。
山田:あの頃なんだよ。破ってしまって、帰れないんだよ。あの頃の私に戻ってあなたに会いたいって言ってんのは、『インターステラー』そのものでしょ?
(一同笑)
乙君:どういうこと? ユーミンでもあるってこと?(笑)。
山田:ユーミンが……あの、ユーミンをバックに(映画を)見てください。
乙君:その、あの頃に帰りたいっていう歌を。
山田:あの日に帰りたいっていうことを……。
乙君:あの日に帰りたいっていう歌をリフレインしながら、クリストファー・ノーランを見ると、余計ハマると。
山田:そうです。そうです。ユーミンと同じこと言ってます。
乙君:沁みると。
(一同笑)
山田:あと、もう1個すごくあるのが「お前ら本当にそれでいいのかよ」をずっと言うんだよ、この人。
乙君:はあ……。
山田:今回も、一般市民の男の理想や誇りみたいなものを失っていいのかが、ダンケルクではものすごく大きなテーマになって。実は「こういうことになったけど、俺たちには誇りがあるよな。そのために何をするんだ」という話じゃない? これはほかの映画でもずっとそうで。
乙君:はい。
山田:インセプションとかでもけっこう強く、出てるんだけど。ダークナイトにも出てくるけど。何かを諦めて、我慢してね、あとは老いるだけの人生でいいのか? と。
乙君:はあー、なるほど。
山田:このことを、クリストファー・ノーランはずっと言ってて。だからこそ、この人のテーマの一番大きいのが時間の問題なんだよ。
しみちゃん:おお(笑)。
山田:このまんまで、ずーっと続いてしまうのか? 時間っていうのは基本的に、SFで言うと伸び縮みするっていう科学の理論があるじゃん。だからこのテーマがおもしろくてしょうがないんだよ。
インセプションだと、この夢のなかでは数秒間なんだけど、夢のなかの夢になると何時間になり。さらにその夢のなかになると延びるみたいな。
これはインターステラーでも思いきり、数分だけこの星に降りたせいで年を取ってしまったみたいな、ことをやるんだけど。ダンケルクは、それをリアルに、時間をこう、刻むことで見せる。
だからこの人はずっと時間のことを言ってる。それで何が言いたいかっていうと、「お前は老いていくんだぞ」。インセプションで渡辺謙が老いていくじゃない?
渡辺謙がそのテーマをまさに体現してて。はい、ここでブルーハーツの「ラインを越えて」っていう曲を聞いてください。
(一同笑)
乙君:聞いてくださいって言われても(笑)。いやあ、でもそれはまさに長渕ですわ。
山田:そうでしょ? まさに長渕です。
乙君:まさに長渕ですよ。
山田:そうですよ。「ラインを越えて」っていう、ブルーハーツの、マーシー(真島昌利)が歌ってた曲があって。いろんなことを諦めて、言い訳ばっかり上手くなり。責任逃れで笑ってりゃ、自由はどんどん遠ざかる。
山田:まあ中二っぽいんですよ? でもね、マーシーの本音だと思うんですけど。満員電車の中、くたびれた顔をして夕刊フジを読みながら、「老いぼれてくのはごめんだ」っていう。この歌のなかで、「あの時こうすればもっと今より幸せだったのか?」っていうセリフがあるんだけど。ノーランは、ずっとそれを映画にしてる。
あのとき、あのとき、あのとき……。だから今、どうしたらいいんですか? っていうのを。暗い画面のなかで、一筋の光を出すわけだよ。これは男はやられますよ、って話です。
乙君:なるほどね~。長渕の曲でいうとねえ。
山田:お願いします。
乙君:まあ……だいたいどのアルバムにも入ってるけど。
山田:だろ!? ノーラン、長渕剛じゃん。
乙君:「人間になりてえ」とかじゃないですか? 月並みな薄っぺらい……。
山田:歌うな、歌うな(笑)。
乙君:どっぷりはまってたまるものか~。つって。うん。
(一同笑)
山田:みなさん見てください(笑)。そうそう、そういうこと。ようするに、男が書いた演歌なんだって。
乙君:なるほどね。
山田:浪花節っていうかね。そんなようするに、男の泣きなんだよね。
乙君:なるほど。ピーピーピーという感じですね?
山田:泣きの涙。何をおっしゃてるんですか?
しみちゃん:(笑)。
乙君:ろくなもんじゃねえってことでしょ?
山田:あ、PPPで。PPPノーランです。
乙君:PPPノーラン(笑)。何言ってんの(笑)。
山田:何を言うてますのん。
乙君:怒られるわ(笑)。
山田:ではそんなわけで、ノーラン。孤独な男の、消えそうな何かを、消さないのがノーランですと。
乙君:ほうほう。希望を。
山田:そうです。クリストファー・ノーラン、最高です。ダンケルク最高です。
乙君:最高でした? ありがとうございます。
山田:お願いします。次、いきましょう。
乙君:おすすめは何ですか? クリストファー・ノーランの。
山田:実はダークナイトも最高なんだけど。もうパッと思い浮かんじゃって、なんかうれしくなっちゃうね、空撮が浮かんじゃって。あの美しい空撮が。
でもやっぱりね、『メメント』から見てんだよ。メメントなんかもそうだよ、時間の問題ですよ。でもやっぱダンケルクなんじゃない?
乙君:ダンケルクなんですか!
しみちゃん:おお(笑)。
乙君:ということで、みなさんクリストファー・ノーラン、気になった方はダンケルク、必見なんで。
山田:あのね、一番見てほしいのはね、スピットファイアが飛んでるとき、水平線が、ゆっくり斜めになるんだよ。そのときに太陽が光って、水面がキラキラって光るんだけど。なんでこんなところで撃ち合いしてんだ、ってくらい美しいわけ。
乙君:ああなるほど!
山田:たまんないって! 本当に。燃えていくスピットファイア、あれも素晴らしいね。1枚の絵画だね。一部だけですけど。
しみちゃん:はい。(笑)。
山田:見てください。お願いします。
乙君:はい、ありがとうございます。
しみちゃん:ありがとうございます。
山田:すげえよ、まじで。うん。
乙君:ではでは、次いきましょう。
しみちゃん:はい。
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