2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Pyrotherapy: An awful Nobel prize for infecting people with Malaria(全1記事)
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オリビア・ゴードン氏:1900年代の初期に、肉体的、精神的にひどく衰退を引き起こす、不治の病にかかったところをちょっと想像してみてください。怪しい医者が、もう少し治療の可能性のある、ましな病気に感染させると言ったら、あなたはそれを許すでしょうか?
それが20世紀の始めに、神経梅毒を治療するために使用されていた危険なテクニック、「発熱療法」の背後にある論理でした。
神経梅毒は、梅毒を治療しないことで、らせん状のバクテリアである梅毒トレポネーマに感染して引き起こされます。今日では梅毒は抗生物質により治療できるので、神経梅毒は稀な病気です。しかし、最初の抗生物質であるペニシリンは、第二次世界大戦までは広く使われていませんでした。それ以前は、梅毒の細菌を殺す知られている方法はありませんでした。
梅毒は性器や口の周りが腫れる、性行為によって広がる病気で、酷くて恥さらしな病気でした。
梅毒の第2ステージは、熱と発疹を伴いました。全員が神経梅毒になる恐れがあったわけではありませんが、大きな危険性はありました。
神経梅毒は、最初の感染から10年以上たってから起こる可能性があり、細菌が患者の中枢神経に潜り込んで、認知症のような衰退や筋麻痺を含むさまざまな恐ろしい症状を引き起こします。
梅毒の治療法はなかったものの、特に感染の後期において、ウィーンの精神科医であるユリウス・ワーグナー・ヤウレックは、彼が治療していた神経梅毒の患者が発熱した後に並外れて症状が良くなったことに気づきました。
彼は、この発熱が回復の手助けになったのではないかと考えましたが、確実に発熱を起こさせて、この考えを試す術がありませんでした。
そして、彼は結核に関わるタンパク質、腸チフスワクチン、連鎖球菌株などを用いて、小さく危険な無合意の実験を行いましたが、あまり成果は得られませんでした。
そして1917年マラリアにかかった兵士が、手違いで彼の精神科診療所に送られて来ました。そしてワーグナー・ヤウレックは、かなり怪しい実験を行う機会を再び得たのです。
マラリアも恐ろしい病気です。プラスモディウム属の寄生原生動物によって引き起こされ、特定の蚊に刺されることによって感染します。他の症状と共に繰り返し起る熱発作は、多くの場合致命的です。
しかし、梅毒とは違いマラリアにはキニーネによる治療法がありました。木の皮に含まれるアルカロイドはマラリアの原虫にとって毒となります。キニーネは17世紀からヨーロッパ人によって使われてきました。彼らはそれを南アメリカの原住民から学び、原住民はそのもっと前からキニーネを使っていました。
そして、ワーグナー・ヤウレックは、マラリアにかかった兵士から採血し、彼の神経梅毒の患者に注射しました。それも、もちろん患者の合意なしにです。今日では、それは安全でも道徳的な医療行為であるとはみなされません。
患者たちはマラリアにかかり、彼がキニーネを与えて、熱を抑えるまで発熱を繰り返しました。この方法で治療した彼の9人の患者のうち6人は、少なくともある程度は神経梅毒から回復しました。他の梅毒の患者が治療法があるかもしれないと知った時、彼らはマラリアに感染するように求められ、医者はこの方法を繰り返し使うようになりました。
これは「Pyrotherapy(発熱療法)」と呼ばれました。この治療の目的は体温を上げることであり、“Pyro”とはギリシャ語の「火」に由来しています。
全体的に、この発熱療法は治療を受けた人の半分を治癒しましたが、15パーセントの患者は梅毒の代わりにマラリアで死んだと予測されています。
そして1927年、彼の非倫理的な実験にも関わらず、ワーグナー・ヤウレックは、彼の発見によって薬学のノーベル賞を獲得しています。
第二次世界大戦が始まった時、抗生物質の需要は多大で、ペニシリンの発展と大幅な流通へとつがって行きました。
抗生物質は、人々を殺すかもしれない危険な病気に感染することなく、病を治癒したので、この時点で発熱療法は廃れていきました。
そして、もう1つは第二次世界大戦の頃、ワーグナー・ヤウレックはナチス党に加わりたいと申請しました。彼は優生学者で、民族純化の支持者でした。ナチスが彼を拒んだ事実があるからと言って、彼が良い人であったということにはなりませんし、彼が獲ったノーベル賞も、悔いあるものとして歴史に刻まれることとなりました。
しかし、発熱療法が実施されている間に何人かはそれで救われています。そして、もう1つ予想外であった利点は、治療のためにマラリアの患者を手元に置いていたため、マラリアがどのように発達し広がるのかをより理解する結果になりました。マラリアは、今日世界的な災難ではありますが、発熱療法がなければ、私たちの知識はより乏しかったでしょう。
けれども、実は、私たちはなぜ発熱療法が上手くいったのか、きちんと解明できていないのです。
この治療法が中止されたとき、その効果の研究もまた中止されました。最も有力な推測は、梅毒のバクテリアを燃焼させるのではないかということです。
熱は、私たちの先天性免疫機構の一部であり、温度が上がると感染病原体がはびこるのが難しくなります。しかし、わかっている限りでは、梅毒菌は実際はわりと熱への耐性があり、 この仮説は成り立ちません。単純にマラリアの熱発作に菌が耐えられなくなったのかもしれませんが、はっきりとはわかっていません。
また科学者の間でも、それを調べようとする意欲がないのは、仕方のないことかもしれません。
もう1つ奇妙なことは、熱の仮説によって発熱療法が成功したのだとすれば、感染以外には効果がないはずですが、神経梅毒は精神病も引き起こします。不思議なことに、ギリシャの医者であるヒポクラテスに遡ると、熱でてんかんのようなさまざまな脳に関する病気を治療できたという逸話もあります。そして、熱が精神病の症状を改善させたという、少なくとも1件のケースがあることを、2007年の医療文献が示しています。
しかし、これらは明確な科学的理解をするには充分な数とはいえません。そして熱が精神病や肉体的な病を和らげる補助になるかを解明するには、科学的な厳密性とワーグナー・ヤウレックの眼中にはなかった患者からの明確な合意が必要です。
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