2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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石井真太朗氏(以下、石井):現時点で作品名がつらつらとたくさん出てきていると思いますので、そのなかで、「実際に読まれやすいWebマンガとは?」というお話をできればと思います。
まず現時点で、僕らpixivが感じている、「読まれやすいWebマンガってどういうものなんだっけ?」っていうのをまとめてきておりますので、私のほうからお話できればと思います。
まず、すごい手前味噌で恐縮なんですけれど、(スライドに)「pixivユーザー発」みたいな書き方をさせていただいてますけれど、Web発、Twitter発、pixiv発など、「もとがフリーゲームで公開していたものだよ」みたいなものは、Webでもやっぱり支持を集めやすい傾向にはあるのかな、と思っています。
2個目ですが、これはすごく大事な要素かなと思うんです。Webっていうのは、すごく共感や共有の世界だなと思っていまして。よりシェアしやすくなる仕組みで考えると、共感を得やすいものこそが、やっぱりWebで支持されやすいのかなと思っています。
具体的なジャンルでいうと、恋愛ものであったり、エッセイですね。私は「最後、ツッコミどころがあるもの」って言ってるんですけど、これも結局、「共有したくなる」という意味合いで良いのかなと思っていて。あとは犬、猫のかわいいモフモフのものや、食事ですね。「これ美味しいよね」っていう共感が伝わりやすいもの。そういうものこそが、Webでは読まれやすいんじゃないかなと考えています。
少し具体例をみなさんとお話できればと思います。じゃあ、左から順にいきましょうか。瀬川さん。
瀬川昇氏(以下、瀬川):(スライドの)一番左の『あっくんとカノジョ』という作品を、ジーンで連載しています。もともとは、作者の杜若わかさんが、本当に鉛筆書きで、趣味でpixivに投稿していた1ページショートのラブコメです。これは、今思うとすごくヒットの理由が詰まっていて。個人的には、こういうユーザーコンテンツのヒットの条件としては、「読みやすいこと」「広まりやすいこと」「共感しやすい」の3条件だと思ってます。
とくに若い子は、すぐそれを勧めたいというときに、今ではTwitterというものがありまして。1ページショートなので、そこで1ページぽんっと貼るだけで、すぐ友達に見せられたりする。それで流行ったのかなと思います。
ただ、確か『あっくんとカノジョ』は2012、3年ぐらいだったと思うんですけれど、やっぱり、移り変わりも早くて。今では逆に、こういった瞬発系のマンガはちょっと飽和している状態で、これからまた違った潮流が出てくるとは思っています。それが何なのかは、まだ僕もわかってない状態ですが。そういう感じです。
石井:じゃあ続いて、(スライドを指して)この2作については一迅社さんから出ているものなので、鈴木さんのほうからお願いします。
鈴木海斗氏(以下、鈴木):はい。まず(スライドの)真ん中の『恋と呼ぶには気持ち悪い』は、僕の担当ではないんですけど、内容自体は、「普通の女子高生がすごいエリートのかっこいい男性にベタ惚れされて」っていう、かなりスタンダードというか、昔からある題材だと思うんです。それを今の作家さんがpixivでやることによって、すごい新鮮で新しいものに見えたっていうのが大きかったんじゃないかと思っています。
あと、最近アマチュアの方のマンガのなかでも、ヒットするかしないかという勝負は分かれると思うんですけど、やっぱり読者の方々も読むことに慣れてきていて、ある程度マンガとしてしっかりしたものが、商業に落としたときもヒットする傾向にあるのかなと思っています。
もぐすさん(『恋と呼ぶには気持ち悪い』著者)に関しても、ふじたさん(『ヲタクに恋は難しい』著者)に関しても、マンガ的な腕はかなり高かったので。そこがかなりの(ヒットした)要因になったんじゃないかなと思っています。
『ヲタ恋』に関しては、ぶっちゃけた話を言うと、時代に合っていたっていうのが、一番だと思うんです。あとは、やっぱりpixivの時代から本当に応援してくれたお客さんや読者が多かったので、そういうところの後押しを受けたり、pixivさんや書店さんにも応援していただいたので、そういうところがかなり大きかったのかなと思っています。
石井:ちょっと僕、巻いて進めちゃったんで、中里さんにもそのへんをうかがおうかなと思うんですけど。講談社さんのなかでも、Web初のヒット作品というのは、ちょいちょいあったりしますよね。
中里郁子氏(以下、中里):そうですね、はい。
石井:例えば……あれか、若林先生の。
中里:はい、『徒然チルドレン』ですね。
石井:『徒然チルドレン』はアニメ化もして、ヒットしてきている作品かなと思うんですけれども、中里さんのなかで、なんかそういうの(ヒットの理由)あったりしますか?
中里:『徒然チルドレン』は弊社の作品ではないんです。若林さんに関しては、SNSの使い方が昔から抜群にうまかったっていうのはありました。『徒然チルドレン』は、当時、『good!アフタヌーン』でやっていたマンガを宣伝するために、ご本人が始めたんですね。やっぱり自分が手作りでファンを増やしていって、本体のマンガを読んでもらいたいっていう。そういうマンガ家さんが出てきて、しかも発信できるツールも増えたんだなっていうのは、ここ5年ですごく感じています。
それまではどうしても、「POPを作りますか?」「ポスター作りますか?」とか、そういった発信の仕方しかなくて、作家さん自身のやきもきした気持ちを、ご自身のなかで消化する場所がなかったんです。しかし今はTwitterが出てきた。昔はブログがあったけど、そのあとにTwitterが出てきたのがやっぱり大きかったと思います。そこに画像ファイルを載せられるというところで。
本当に作家さんのほうから、そこを発見していかれたっていうイメージです。とくに『徒然チルドレン』は、はたから見ていても「若林さんすげー!」みたいな感じで思っていました。
石井:ありがとうございます。じゃあ続いてですね……もう少し、引っ張りましょうか(笑)。
(会場笑)
石井:先ほどは、鈴木さんに『ヲタ恋』の解説をしていただきましたが、せっかくなので、なぜ売れたか。なぜ今400万部も売れているのかというところを鈴木さんのほうから、こう……ノウハウ的な(笑)。なにかがあったら教えていただきたいなと。
(会場笑)
鈴木:もちろん作家さんの自力がすごかったっていうのもあると思うので、僕はそんなに大したことはしてないんですけど。1個だけ言えるとしたら、アマチュアの方々が(出版社に)あげてくるマンガって、本当に瞬発力が高いものが多くて。一発目(の作品)とか、本当に口コミとして広がる拡散力は半端ないなと思っているところで。
『ヲタ恋』は最近4巻を出したんですけど、各出版社含めて、そういうふうに各作者さんが自分であげてきたマンガを、いかに連載のフォーマットに落とし込むか、いかに長尺のマンガに落とし込むか、巻数を続けていくか、ということが大事なんでしょうね。そういうところを見据えて動けるかというのが、今後かなり大事になってくると思っています。
石井:Web発のものって、どうしても巻数が短く終わってしまうんですよね。そのあたりは、瀬川さんとかはどうお考えですか?
瀬川:ストーリー性がなかなかないものが多いと思うんです。それが必須ではないと思うけど。例えばショート系のマンガは、1巻はめちゃくちゃ売れて、2巻の定着率がすごい下がるというパターンは本当によくあって。たぶんそのあたりが、今後のWeb発のマンガがどう変わっていくのかというカギなのかなと思ってますね。
石井:なるほど。ありがとうございます。ご説明いただいた通り、SNSで広がるためにはSNSで支持されないといけない。というところがありながら、じゃあそれをどうストーリー性をもって続けていくのか。それが、これからのWebでヒットを出していく重要なキーになっていく、というところでまとめさせていただければと思います。
これまでは、pixiv、『pixivコミック』の変遷と、Webコミックがどうして売れたのかについて話してきたと思うんですけれど、次は、これからのpixiv、そしてマンガ文化への挑戦というのはどういうことをしていくのか。そんなお話ができればと思っています。
今までのセッションであった通り、pixivは創作活動をもっと応援していく場所であるというところは崩すつもりはありませんし、これに基づいてどういうふうに活動していくことができるのかということが、pixivが今後考えていくことだと思っています。そんななかで、『pixivコミック』がやるべきことは、「マンガの文化を支えていく」ということ。やっぱりこれかなと。
(スライドに作家の創作活動を応援するCMが流れる)
後ろに、エモい(感情的な)CMも流れていますけれども(笑)。作者さんに寄り添う、出版社さんに寄り添う。そういうことこそが、『pixivコミック』がやっていくべきことかなと考えています。
まとめになるんですけれども、さっきも言った通り、今までもこれからも、「新しいマンガが生まれる、そして出会う場である」というところは崩すつもりないです。そういうところを最先端にやっていきながら、「Webマンガの最先端である」「一番アンテナを張っているところである」というところを僕らは目指していきたいと思っています。
永田寛哲氏(以下、永田):ちょっといいですか?
石井:はい、ぜんぜん。
永田:やっぱりpixivが、ほかのWebでコミックを扱う企業と最大に違う点は、コンテンツが商材なわけではなくて、あくまでユーザーを集めて、ユーザーがコンテンツを生み出してくれる。そういった「場を提供する」ということこそが、pixivの目指しているものであり、そこから企業活動をさせていただいてると考えています。
なので、例えばコンテンツだったりクリエイターを囲い込むであったり、自分たちで閉じて何かを作っていってそれを提供する、という考え方を最初からしていないんです。極めてプラットフォーマーに徹して、オープンにすることで、いろいろな出版社さんともフラットにお付き合いをする。それが体現されているのが『pixivコミック』だと思うんですね。
特定の出版社さんとはもちろん仲良くはさせていただいて、より深い取り組みをしてはいますが、基本的にはオールカマーで。そのなかで、それぞれの作品を生み出している。それを僕らは支援する。そういった立場に徹しているところが、pixiv、ないしは『pixivコミック』という場の特徴であり、我々の会社の特殊な点なのかなと思っています。
そして、次の話に繋がっていくんだと思います。
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