2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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瀬戸内寂聴氏(以下、寂聴):男女の愛でも、親子の愛でも、兄弟の愛でも。愛しているっていうのは、妹さんが言った一番確かな言葉は「お姉ちゃんの愛はエゴだ」って。これですよ。みんなエゴなの。愛してる自分を愛してるんですよ。自分はこれだけ愛しているから、相手もこれだけ愛してくれて当たり前ってね。
自分が10愛しているんだから。相手はそれに利息を付けて12の愛を返してくれって、それがみんなの気持ちなんですよ。銀行だって利子が付かない時代に、何で利子が付きますか。だから、10愛して3返ってきたら良い方ですよね。返ってこないの。愛は無償です。あげっぱなし。あげっぱなしの愛でないと、これは本当の愛じゃありません。
黒田あゆみ氏(以下、黒田):去る者は追わない方が良いですかね?
寂聴:去る者追ったって惨めになるだけよ?
黒田:でも、心底愛していたら追いたくなりますよね?
寂聴:そうね、なります。
黒田:寂聴さんはそういうところ……。
寂聴:あります。そういうこと、今でも。馬鹿だなぁって思いますけどね。
黒田:どうやってこらえました?
寂聴:いや、でも私はね、手放しました。向こう行けって、手放しました。せいせいしました。しばらく嫌だったけど。
黒田:でも寂しいですよね、女の愛は恩返しっておっしゃったことがありましたけど……。
寂聴:私は仕事がありましたからね。すぐそれを材料にして小説を書きました。それで、書くことによってね、あぁ、自分は馬鹿だなぁってことがわかりますからね。だからそこから抜け出すことができるの。
黒田:辛いですよね、その間は。
寂聴:その小説で今度自伝書が出るんでね、嫌でもそれを読まなければいけない。読んだらね、嫌でしたねぇ。なんて馬鹿なことをと思いますけどね。ある時期それが私の真実だったんだから、しょうがないですよね。
今小説を読むとね、相手が裏切っていることがちゃんと小説の中に書いてあるんですよ。それが書いている本人にわからないのね。相手の言動を見たらここでも裏切ってるじゃないのってのが、それがわからないの、その時はね。愚かですね、人間って。
黒田:(朗読)
不倫をしました。
でも もう半年も彼の腕のなかで休むことも出来ないのに。
怒らせて 別れて 甘えて話をして また怒らせて。
「もう しない」と約束したのに私は また彼の家に 電話をかけて押しかけたのです。
彼の奥様は怒り 彼も怒り
でも帰るお金もなかった私を家まで送り届けてくれたのは彼でした。
「もう 愛はない」と彼は 何度も言いました。
そして 彼は 私の主人に何度も頭を床にこすりつけて謝ってくれました。
「私だけが傷ついた」と私はわめき 彼をなじり黙る主人 謝る彼。
その時間だけが過ぎ 彼は帰っていってしまいました。
主人は「子供のためだ」「もう終わったことだ」とそれだけ言いました。
なのに 私は まだ彼を求めています。
寂聴:もういい加減にしたら良い。それはもう渇愛でね、エゴの塊です。そんなことはもうね……。だって、周りを全部傷つけているじゃないですか。自分だけが傷ついたと思っているのね。そんなに好きならね、離婚してもらうべきですよ。
黒田:愛していた彼が自分の方と一緒に将来を約束していてくれれば戦えるけど、彼も自宅へ戻り、まぁ、去りですよね?
寂聴:当たり前じゃないですか。
黒田:で、自分は愛の残っていない夫のところに戻らなきゃならないっていう、この……。
寂聴:ご主人がそれを許すということはね、子供のためとは言いながらね、ご主人は、もしかしたら愛しているのかもしれませんね。まだ奥さんに愛が残っているのかもしれない。
だけど、子供のためなんて言って物事は済みません。子供はね、そういう親を決してありがとうとは思いません。仲の悪い夫婦がね、「お前のためにお母さんはね、我慢したのよ」なんて良く言いますよね。もうとんでもないことですよ。みんなね、子供たちは自分のために辛抱したなんて言わないでくれ、って言いますよ。
子供はね、子供のアレがあるんですから。そういう恩なんか着せてもらいたくないの。男女の間は男女において解決すべきですからね。でもね、恋愛っていうのは天災みたいなもので、降ってくるんですよね。
黒田:災みたいに?
寂聴:災い。雷と同じでね、ぱーっと降ってきて、当たったらどうしようもないんですよね。ですから、愛してはいけませんなんてわかっていても、愛さずにいられない場合があります。それが不倫になるんですけどね。
やっぱりね、私は奥さんのある人を愛してですよ、それで離婚させてですね、結婚して幸せにはなれないと思いますね。人を不幸にした上に、自分の幸せは築けないですよ。
黒田:覚悟を持って、不倫も突き詰めれば純愛になり得るとおっしゃいましたけども。
寂聴:私は思いますけどね。
黒田:それは、どういうあり方でいろと、どういう愛し方をしろということですか?
寂聴:それは無償の愛ですね。
黒田:そこに、その例えばこの場合にはまぁいろいろ守りたい物があるとか、あれも失いたくない、これも失いたくない。
寂聴:全部失うんですよ、純愛は。全部失うの。世間から指弾を受けるし、家族からは見限られるしで、全てを失うんですよ、純愛は。純愛を貫こうと思えば。それくらいの覚悟がないとそんなことしちゃいけませんよ。
みんなね、本当に安易ですよね。自分の情熱を切れっ端でね、ちょこちょこっと恋愛してるのね。そんなのね、私はちょっと厳しいのかもしれないけど、私はそういう恋愛はもうやめてくれって言いたいですね。だから、本当に命がけで恋をする人に、誰も文句を言えませんよ。
黒田:たとえそれが外れるとしても……。
寂聴:人の道に外れていてもね、それが命がけならね、もうそれは仕方がないですね。
黒田:ただ失うものも大きいですよね?
寂聴:だから覚悟してしなきゃしょうがないですね。渡辺淳一さんの小説で私が一番好きなのは、『失楽園』なんですよ。あれはとても売れましたね。あれは結局心中しています。全てを失っていますね。全て失って愛を貫いた。もう馬鹿だ。とかね、情けないとかね、人は言ってもですね、それは仕方がない。あの二人は全て失ったんだから、許されるんですね。
黒田:ただ小説は都合が良いですよ。普通は子供がいたりして、なかなかああいう風に勝手に死ぬことも許されないと思いますけど。
寂聴:その時はね、子供もなくなるんです。ああいう時は。
黒田:なくなるっていうのは、自分の中で捨て去るという……。
寂聴:そう。それくらいね、渇愛ってものは恐ろしいものなんですよ。だからそんなにね、軽々と恋愛しないでくれって言いたいですね。そんなにね、軽々しくするものじゃないと思いますね。やっぱり、愛すると同時に苦しみが伴うんですよね。
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