2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岩崎究香氏(以下、岩崎):祇園甲部に四条の角に一力さん……「一力茶屋」というのがあります。「ここの角にみんな集まれ」と言うと、私の仲間が集まる。それは私が「祇園すずめ」、言ぅたら編集長をやってたんです。
私が「集まれ」と言ぅて、「実は昨日、この姐さんが、この人にいけずしゃはったんやんか、この原因を調べてみそ」みたいなやつで、うちの仲間をそこへパッとやる。
そうすると、筋がみんなあるのね。豆の筋、葉っぱの筋、里の筋などね。祇園甲部の筋にはいろいろあるんですけど、この筋の人が姐さんのところへ行って「昨日はどんなようなことでございましょう?」と事情聴取をして聞き出す。そのようなことをしたりとか。
お茶屋や置屋(屋形)姐芸・舞妓と夫々に筋があります。筋とは、政界で言う派閥のことです。そうすると、ご本人の名前を出すとかじゃなくても、「実は昨日こんなようなことがあったので、小話でそれをやります」みたいなことをお座敷でやるんです。で、「こういういけずはよくないと思います」言うて(笑)。
山中哲男氏(以下、山中):いけずを(笑)。
岩崎:そういうことをしたり。
山中:なるほど。
山中:そうやって日々努力する中で、やっぱり諦めようとか、もう舞妓さん辞めようかなと思ったことはなかったのですか? やっぱり練習したり、ずっとバタバタしているでしょ? 毎日。
岩崎:お稽古は絶対してました。お稽古だけ好きなんです。他はあまり好きじゃない(笑)。お座敷もね、関連してるぐらいのことで。やっぱりお稽古ができたらいいです。
山中:諦めようと思ったことは、一切ないのですか?
岩崎:お稽古でですか? お稽古は1回もないです。
山中:ないのですね。これもご質問の中に「私はものが長続きしなくてすぐ諦めてしまうのですが、そのように諦めようと思ったことはありますか?」といった質問があったのですが。
岩崎:そけどね、人て必ず1つや2つ自分の好きなことがあるはずどっせ。
続かへんってことは、好きじゃないんですよ、それは。私は好きやもん。
山中:最初に言ったように、好奇心のような、好きなものを追求することがやはり人生も豊かにするということですか?
岩崎:そういうこと。だから今まで見えてきいひんかったことも、今までそれを一生懸命にすることによって必ず見えてきますって、必ず。そやからそれまでやることやねぇ。
山中:それはやってみないとわからないですものね。ずっとやってみて、追求して追求して、でもやっぱり違うなと。もう辞めたいなと思ったら、そっちは違うのかもしれませんね。
岩崎:そうそう。そうしたら他に目を向けたらいい。
山中:やるときは、やっぱり1つのことをちゃんと追求する。
岩崎:そうそう、やってみたらいいですよ。
山中:たまにいるじゃないですか、4つも5つも、好きなことをバンバンバンバンやっている人。
岩崎:でもそこから省かれますよね?
山中:そうですね、続かないものは。その中で続くものをどんどん。続くものは好きなことなのだと思うし、好奇心もあるから、やっぱりそれはセットでやっていかないといけませんよね。
あと、僕は本当にこの質問に興味があるのです。それは「究香さんの人生を振り返って、一番成果や結果が出たことはなんでしょうか?」というものです。
これまで本当にいろんなことをやられて来たと思うのですが、究香さんが自分で思う、一番の成果や結果はなんでしょうか?
岩崎:1992年5月、顧客から頼まれてA.Gと言う米国人の作家を自宅で2週間預かりました。後に彼の作品はベストセラーになりますが、この本が原因で酷い誤解を受けました。
この方を預かる条件として、私を含む家族の名前は一切表に出さないという約束をしました。しかし、彼の作品が出版されるにあたり、その約束は見事に反故にされたんです。
本を売るための海外戦略として、日本以外の海外メディアに「唯一、峰子に感謝する」と謝辞の所に書かれたんです。つまり、A・Gさんの出版される著書のCMのために新聞を私の名前と写真でデカデカと飾られていたわけです。A.Gさんは臆面もなく、海外で取沙汰されたいろいろな新聞を送り付けて来た時には気を失いそうになりました。
山中:海外で?
岩崎:そうそう。これで困ったなと思ったのがA.Gさんという人は、有名な新聞社オーナーのファミリーなんです。
この人に対して、要するに、私の名前を取ってもらいたいけど、どのようにしたらいいのかなと言った時に、うちの顧問弁護士さんが「どっちみちあんたなぁ、芸妓さんしてたんやし、有名税や思ったらええねん」と言わはった。
そやけどね、本を売るために、新聞に「売春婦」と出たんです。「芸者」「究香」「売春婦」と。「あ~!」みたいな。それはもう、どうしたらよかんべさと思たんですね。
とりあえずこの本をなんとかせないかん。出てしもたから。とりあえず私は自分の経験したことを書いて(自伝『芸妓峰子の花いくさ』)。経験したことを書くのが、一番いいやんかと思って。ほんでそれを出すことにしました。
その後 映画の製作を「ちょっとだけ待ってください」と言って、ニューヨークまで行って裁判したのですが。まぁそれは勝って。映画が出ました。
結局それまでにどういうことが起こっていたかといいますとね、京都に先斗町という花柳界があるんですね。先斗町に3ヶ月ほど、外国の方が行ってはったんです。
要するに、お修行されたわけではなくて、芸妓さんの格好したりというような方がね、「Geisha」という論文を出さはったんです。論文ですよ。Geishaと言ったらその人か、A.Gさんなんです。これは日本人としてとんでもないことをしてしまったと思いました。
とりあえずと思って(『芸妓峰子の花いくさ』の)海外出版をするのに、日本でまず講談社が出してくれはって。「講談社から世界出版してもらえませんか?」と言ったら、「いやや」て言わはったんですね。花柳界とかお坊さんの世界は、触ると怖いんですって。
そういうことがあるので、ほなしょうがないと思て、私は世界出版しようと思って、ニューヨークで裁判をしているので、そこでそのエージェントを見つけて出しました。
この成果としましては、その本を出したことによって「私の本を読んで舞妓さんになりました」て言ぅてくれはる人がやはるんです。
山中:それはうれしいですよね。
岩崎:でしょ? それがすごく成果なんです。というのは、昭和31年までは、確かに売春は日本の文化やったんです。けれども、それは売春防止法という法律ができて、「そういうことしたらダメ」ということになったんです。
だから今の舞妓さん・芸妓さんはそういうことを知らないんです。そして、私がこれを出しました。私の時代にはもうなかったもんですから、やっぱり払拭をしないといけない。要するに、「フジヤマ・ゲイシャ」いうのがあるでしょ?(笑)。これまた誤解があって……だから本を出したんです。
フランシス・フォード・コッポラという監督さんが『ゴッドファーザー』という映画をお撮りになった。この方の家がサンフランシスコにあるんですけど、そこに行ったときに、コッポラさんのスポンサーかなんかの船のオーナーがいはったんですよ。(アリストテレス・ソクラテス・)オナシスみたいな人ですよ。
その息子さんが「おーい、フジヤマ・ゲイシャ!」と言わはったんですよ。そうしたらコッポラさんも怒って、私も「帰る!」と言ったんです。
だから、世界に出るとまだまだそういう誤解がある。それを払拭するのが私の役目やなと。
山中:海外からの方を対応されることも多いと思うのですが、その時に日本の文化や祇園の文化について質問されることもありますよね。これも質問の中では、「日本文化や祇園文化はどのように発信していけば広がるのでしょうか? そのためにどういったことを意識されていますか?」とあります。
岩崎:私は、とりあえず年齢いってますから、自分がアピールするわけにはもういかんのです。やっぱり舞妓さんや芸妓さんのときに使っていたもの、代々受け継いできたものをご覧いただいて。
例えば「明治時代です、江戸時代です、これはこういうときに使ってきたんです、これが日本の文化なんです」というふうにしてお話してるんです。
山中:究香さん、今日の着物もそうですが、かなり貴重なものをたくさん持っておられます。それをみんなに「触って触って」と言ってきますよね(笑)。
岩崎:そうそう。というのは、軽いでしょ、普通は。こう見てね。でも持ったときに、その匠のね、心。それが来るはずなんですよ。だから「触れてみてください、触ってみてください」と。
山中:よく言いますよね(笑)。
岩崎:それやないとわからへんと思います。日本の美術館とか博物館でもそうですけど、ちゃんと厚い厚いガラスの中に入ってるでしょ? あれではやっぱりわからへんかなぁと思いますね。
山中:発信するときは、お話するのもいいけれども、実際に触れてもらうということがとても重要じゃないかということですよね。
岩崎:そうです、そうです。
山中:これから僕も、若者……今日も経営者の方もたくさん来ておられますが、これから海外の方々と本当に交流していったり、一緒にお仕事をすることがあると思うので、絶対に聞かれると思うんですよね。日本の文化や歴史について。
京都も今すごく人気ですから、京都についてなど。そういったときに、こうお話するよりも、実際に来てもらって、体験してもらったり、触れてもらったほうがなによりもいいということですよね。
岩崎:というのはね、京都だけではなくて、お茶屋さんに上がらないと、舞妓さん、芸妓さんは呼べへんやないですか。一見さんお断り。だから山中さんが窓口になってくださって、こうして来ていただいていますけども。
でも、やっぱりご自身で足を運んでもらわないと、これは一見さんお断りの壁は取っ払えへんですよね。その経験はやっぱりしていただきたい。怖いとは思いますよ。
山中:最初に行くときはね、確かに僕も、初めて行ったときはよくわかんなかった(笑)。フラフラっと。
岩崎:食べられそうやった。食べよう思ったんです。
山中:いえいえ(笑)。
岩崎:でも、やっぱり祇園町という名称や言葉といった、日本の伝統文化と言ったら堅い堅いやないですか。だからそれをなんとか払拭してもらいたいと思うので、自分が例えば「今日こんな着物着てます」「こんな帯してます」「こんなんつけてます」というようなことで説明するしかないんです。
山中:そういうものに触れてもらって、興味を持ってもらって。そうですよね。そうしたらどんどん広がっていきますね。
岩崎:そうそう。
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