2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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坂本龍一氏(以下、坂本):僕は60年代に高校生で10代で、サイケデリックとか音楽とかヒッピーズとか、そういうものにもろに影響を受けた世代なので、まさかね、その頃は自分がティモシーに会うことになるとは想像もできなかったけども。
超有名なカルトの教祖ですよね。という感じでとても大きな関心を持っていたので、90何年か、92年か93年ぐらいかな。L.A.で会った時に本当に驚きましたよ。
友達に連れてってもらったら、いた。そしたら「お前日本人か。日本人だったらJoi Itoを知ってるか」と言うから「知らない」。「すごいおもしろい日本人がいて、若い子で、ヴァーチャルリアリティのテーマパークみたいなものを作ろうとしてるから絶対会えよ」っておじいちゃんに言われて。それで記憶にあったの。
伊藤穰一氏(以下、伊藤):ティモシーのビバリーヒルズのお家だよね。
坂本:そうです。そうです。
伊藤:もう本当いろんな人いるんだよね。行くとわけわからないいろんな人たちと出会えて。彼はやっぱりすごいgenerousだった。だから、僕も最初アメリカに行くって言ったら、連れていって家でパーティして、もう友達全員に紹介してもらって。
自ら車を運転してサンフランに連れて行ってもらって、『Mondo 2000』というマガジンやってたところのお家でパーティして、みんなに紹介して。そして本当にそういうコネクティングもやって。
あと彼がもう1つおもしろかったのは、60年代の本当にそういうヒッピーカルチャーの教祖だったんだけれども、ちゃんと進化し続けてるんだよね。CD-ROMも興味持って、ヴァーチャルリアリティにも興味持って、最初のホームページ、個人ホームページに立体的なやつを作って。
林郁氏(以下、林):VR。
伊藤:VRで作って、それで表彰されたりして。
坂本:最後は自分の死を自分で観察して、それをインターネットでみんなと共有するという、最後のプロジェクトね。
林:確か宇宙葬でしたね。
坂本:宇宙葬。あれはおもしろかったね。
伊藤:みんなに灰が渡って、今でもいろんなところにある。
坂本:そうそう。すごいよね。だから最後まで、それこそ実験精神というか、進歩し続けた人ですよね。
林:当時やっぱりニクソンにあそこまでいろいろやられたんですけど、もうすごい反骨精神でしたよね。
坂本:そうですね。
林:結局あそこでモデムの先になにかがあるって言ってたのがインターネットだったということですよね。
伊藤:だから、本当にそういう意味でちょうどインターネットが出た頃に亡くなったんだけれども、やっぱり彼はそれが。
60年代に「Tune in, turn on, drop out.」って、「ドロップアウトしよう」というのがキーワードだったんだけど、彼と一緒に日本の若者には「Tune in, turn on, take over.」といって、そしてやっぱりこれはtake overしないといけない。ネットを使ってそれをやろうというのをずっと彼とやっていて。
彼には本当に教え子みたいな人たくさんいて。ただ「think for yourself」、さっき坂本さんも言ったけど、生まれた時からそうだったんじゃなくて。ティモシーってよく講演をしたんだよね。
その時にヒッピーみたいなちょっと歳とった人たちとか若いやつらとか来るんだけど、「どうしたらいいんですか?」って聞いてきて、ティモシーは「Think for youself」とか言って。でも、言っても伝わらないんだよね。
だから、それがたぶん会社もそうだし、メディアラボもそうだし、自分のファンもそうなんだけれども、やっぱりパッシブな人をどうやってスイッチオンするかっていうのってすごく難しいのね。
ただ、僕もやっぱりYMOのファンだったんだけども、やっぱりテクノのあの時代って、みんなの行動を変えたじゃない。パンクも変えたし、ヒッピーも変えたので、やっぱり新しいムーブメントを作る必要があって。
最初はかっこいいから参加するけど、途中から自分の行動とかパターンが変わってくると思うので。それは今、シリコンバレーのベンチャーなんか、これは音楽じゃないし文化もあんまりないんだけれども、なんかコミュニティで行動パターンが変わってるんだけれども、なんかやっぱりそういうパターンをこれから変えていく必要があると思うんだけど。
林:僕からすると、坂本さんもそうだしティモシーもそうなんだけど。同じ大きな第一世代というか、あのベトナム戦争反対という流れがヒッピームーブメントとカルチャーになって、そこから音楽とか、ああいう生き方のコンセプトみたいな。それがスティーブ・ジョブズに伝わって、というか受け継がれて。
そういう次の流れが、ティモシーみたいな人とかJoiもそうだけど第二世代というか、次の世代というか。
伊藤:そこで坂本さんに聞きたいのは、パンクってノーフューチャージェネレーションの破壊的なムーブメントですよね。ヒッピーは反体制的だったけど、その頃のドラッグ・カルチャーとか、あとはコミュニティみたいな感じのグレイトフル・デッドっぽかったんだけど。たぶん今の問題というのは戦争と環境と、あといろいろあると思うんだけど、破壊的なパンクじゃないと思うんだよね。
パンクだとトランプになっちゃう。トランプはモダンなんだよね。だからもう少し日本の神道とか、ソフトな愛があるムーブメントをちゃんと広がる形にしてどうやってデザインするかって、すごい重要な課題のような気がします。そもそも最近のコラボレーションとか音楽から、その辺をなんとなく感じるんですけどね。
坂本:なんていうのかな、広い音楽的な環境とかそういった環境というところから、日本の古い音楽とか文化にはますます興味が出てきて、能とか雅楽とか、そういう付き合いがより深まってるんですけど。知れば知るほど非常に長い期間伝わってきた音楽というのはとても強いことがあるし、これだけ生活スタイルや歴史が変わっても残っている音楽というのは何かとても強い力があって、そこから僕らも学ぶことがあるので、Joiが言っている浸透と環境へのエコというのを結びつけるようなことは、とても近しいところだと思います。
例えば、江戸時代というのは非常にエコロジカルな大きな街で、ごみゼロだったとかそういった捉え方もされていますし。日本の伝統から未来に導き出せる感覚とか感性とか技術とか、そういうものはまだまだたくさんあると思います。それは日本だけでやるんじゃなくて、世界に役立つ知恵だと思うんですよね。
林:日本型の持続可能な社会というか、そういうことですよね。
坂本:そういう可能性はとても大きいと思います。
司会者:時間に限りがありますので、最後のテーマに移りたいと思います。後進の育成について触れていただきたいと思うんですが、坂本さんが育成という観点で大切にしていることはありますか? 伝えていきたい精神やマインドなど。
坂本:これは賞をいただいたからおもねるわけじゃないんですけど、非常に今言っていたことと近くて。「とにかく自分の頭で考えろ」、ということですよね。だから「大人が言うことを信じるな」ということを僕が言わなきゃいけないんだけど(笑)。それを言葉で言うんじゃなくて、なんていうのかな。
実地のいろんな音楽を体験する中で、自分で考えて自分が何が好きか、自分が何をやりたいか。そういうことがいちばん大事なんだということを子供たちに体得して欲しい。それがわかったら音楽をやめちゃってもいいし、何をやってもいいんだ、と。大学なんて行く必要ないし、そういったこと。親には何か言われるかもしれないけど、それは一番伝えたいことですね。
司会者:ありがとうございます。それでは最後に林社長とJoiさんにデジタルガレージが考える今後の構想というか、坂本さんとの関係性というか、期待する点はありますか?
林:期待するもなにも先輩の後ろ姿を見ながら(笑)。今日、わりとご謙遜なさってますけど、僕の記憶違いでなければ、戦後中国ではじめてコンサートをやられたのも坂本さんですし、韓国との関係がちょっといろいろあったときに、コンサートもやられていましたし。
僕らはコンテクストカンパニーと言って、ティモシーのように常識を疑いながらやっていくというコンセプトではじめたんですけど。いろいろあちこちきな臭いし、いろんなことが起きそうな感じなので、民間交流のなかでもつテクノロジーの力とか、コンテンツの力とかがかつてないくらい重要なんじゃないかと思います。そこはどんどん坂本さんに引っ張っていっていただきたいと思います。
我々もできるだけ、微力ながら応援させていただきます。
伊藤:僕はやっぱり坂本さんとニューヨークでよく話している時に、日本の話をするんですけど。坂本さんって、僕もこれ(会社)をがんばってるんだけれども、神道とか日本の食べ物とか、日本の良さを引き出してアメリカにトランスレートしているけれども、日本のダメなところは絶対に持っていかない。デジタルガレージもそれを望んでいると思うので、アメリカのベンチャーコミュニティにちゃんと合わせて、日本らしくやるんだけど日本のままやらない。ちゃんと日本がトランスレーションされたもの。
だからブリッジビルディングの所をなんとなく肩に力が入ったやり方をやってきたんだけれど、もうちょっと味のあるやり方をデジタルガレージもやりたいと思っているので、そこはできればインスピレーションで続けていってほしいなと思います
坂本:そうですね。日本のやり方の駄目なところは外にいるとよく見えるので、そこは助言をしつつ、いろいろ言うんですけど、とにかく良くなってもらいたい。やっぱり自分の生まれ育った国だから、黙っていられないというところがあるので、アメリカや世界にも日本の良さというものを伝えたいという気持ちは当然ありますね。
実際はそれを伝えるとき、たぶん日本の感性とかそういうものは役に立つと思うんですよね。それはビジネスでもそうですし、カルチャーにもそうだと思うんですけど。
最後に言いたいのは、ファーストペンギンアワードといいますけど、ファーストペンギンにふさわしいのはこの2人だと思うんだけど。自分で自分に賞をあげたら?
(会場笑)
林:3回目は(笑)。
司会者:興味深い話は尽きませんが、続きは居酒屋でお願い致します。
(会場笑)
司会者:それでは、みなさまお待たせいたしました。演奏に移りたいと思います。それでは坂本さん、ご準備をよろしくお願いします。
坂本龍一氏(以下、坂本):もうあんまり時間ないよね? トークが長かったもんね(笑)。どのくらいやればいいんですかね? じゃあまず最初に、この晴れがましいステージなのにあまり晴れがましくない曲を最初に弾きますけれども(笑)。『美貌の青空』という曲です。
(2曲演奏)
(会場拍手)
素敵な明るい青空の下でこんな悲しげな曲を弾いちゃってちょっと申し訳ないんだけど(笑)。場違いだったかな。2曲目は、僕が2回目にイタリアのベルナルド・ベルトルッチという監督と仕事をした『シェルタリング・スカイ』という映画のテーマ音楽でした。
次は、林さんたっての希望で『メリークリスマスミスターローレンス』ですね。
(演奏)
(会場拍手)
司会者:ありがとうございました。この距離感で聞かせていただけて光栄でございます。今一度盛大な拍手をお送りください。ありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:ここで伊藤さんと林社長に感想を聞かせていただきたんですけど。林社長、リクエストされたということで、思い入れはありますか?
林郁氏(以下、林):実は僕が大学出てすぐ会社を始めたんですけども、そのときの1番最初の仕事が『戦場のメリークリスマス』のプロモーションなんですよ。結婚式も父の葬儀も全部この曲です。なので、これを聴くと心の琴線が震えてしまうんです。ありがとうございました。
司会者:伊藤さんもお聞かせください。
伊藤穰一氏(以下、伊藤):僕もずっと向こうでDJやってたので、実は働いていたシカゴのクラブでもよくこの曲をかけて人を沈ませる……リラックスさせる曲ということで。
(会場笑)
伊藤:あとは確か、1回ピアノでツアーしましたよね? そのときに初めて生で聴いて。すごく感動しました。
司会者:最後に坂本さんから同じように独創的な挑戦を続けている同志の方々に向けて熱い一言をお願いいたします。
坂本:先ほども言ったようにファーストペンギンがこの2人だと常々思っていたので、そのファーストペンギンたちからこのような賞を与えられて、僕もちょっとがんばらないとなと(笑)。これから先、何年がんばれるかわかりませんけど続けないとな、と気持ちを新たにしました。ありがとうございます。
司会者:ありがとうございました。以上をもちまして、トークセッションとスペシャルライブを終了とさせていただきます。
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