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Anatomy of a Super Storm(全1記事)

衛星からの映像でわかる「暴風雨」の科学

今年の4月29日から30日にかけて、アメリカ南部と南西部を雷と嵐が襲い、洪水と竜巻によって少なくとも20人が亡くなりました。YouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」のハンク・グリーン氏は、その嵐を映した衛星動画を見てアメリカ国立気象局に連絡。そこで教えてもらったことについて、暴風雨や嵐が起こるしくみと衛星動画を照らし合わせながら解説します。

今年4月にアメリカを襲った嵐

ハンク・グリーン氏:週末だった今年の4月29日と30日、アメリカ南部と南西部を雷と嵐が何度も襲い、洪水と竜巻を引き起こしたせいで少なくとも20人が亡くなりました。

翌週の月曜日、僕はTwitterでこの嵐がアメリカを横断していく衛星動画を見つけました。

見ただけでヤバいと分かる動画で、こんな嵐は見たことありません。

僕はアメリカ国立気象局に、この嵐についてあらゆることを教えてほしいリプライを送りました。すると返事をもらえたので、僕は電話番号を伝えていろいろ教えてもらいました。

YouTuberをしていてラッキーでした。そこで今日は、見入ってしまうような衛星からの動画がなぜできたのか、壊滅的な嵐が引き起こした要因がどんなものなのかをご紹介しましょう。

まずこの衛星動画が他の嵐と違うのは、なにも嵐の規模があまりに大きかったからというだけではありません。この動画は去年の11月に打ち上げられた新しい気象衛星が最初に映像化した動画なのです。

GOES-16と呼ばれるこの衛星は、1975年から打ち上げられてきたGOES(静止軌道環境調査衛星)という気象衛星シリーズとして最新のものです。

GOES-16は試験運用段階ですが、今回の動画は衛星から送られてきた映像は一般公開された最初のうちの1つです。従来の衛星より極めて高い解像度を誇り、画像の品質と撮影できる枚数の両方で性能が上がっています。

従来の衛星と比べて解像度は4倍、単位時間あたりの枚数は5倍に増えているのです。リアルタイムのデータを30秒毎に撮影できるので、今回のような嵐で何が起こっているのかがよりわかりやすくなりました。

まぁ衛星の話はこれぐらいにして、嵐の話をしましょう。

衛星からの映像でわかること

動画の最初の数秒間で、アメリカ中西部を横断するように停滞前線が見えます。

停滞前線は冷たい空気と暖かい空気がぶつかりどちらも乗り上げない状態なので、大きな雲を作り出して大雨の原因となります。典型的な停滞前線は北西部の冷たい空気と南西部の暖かい空気によって作られ、どちらも同じ大きさなのでお互いに動けず「停滞」するのです。

暖かく湿った空気が前線にたくさんできますが、暖かく乾いた空気が蓋をします。暖かく湿った空気は上昇しようとしますが、上部を阻まれて上がることができません。が、その均衡はついに破られます。

こうした現象が中西部を横断するように起こり、停滞前線そって急速に嵐が引き起こされるのです。前線に沿って風が吹いていくため嵐も同じ方向へ次々にできていきます。

まるで列車(トレイン)が線路に沿って走るかのように嵐が同じ方向にできていくことから、気象学者はこの現象を「トレインニング」と呼びます。

蓋をしていた暖かくて乾いた空気が次々に前線へ落ちてくると、暖かく湿った空気は上昇させられて温度が下がります。すると水蒸気は凝結し、内部のエネルギーはすべて雨に変わってしまうのです。

時にはスーパーセルと呼ばれる暴風や鉄砲水を引き起こす猛烈な嵐になったり、竜巻を引き起こすこともあります。

スーパーセルに見られる斑点の正体

高解像度のGOES-16のおかげで、こうした猛烈な嵐で見られる黒っぽい小さな斑点を確認することもできました。

スーパーセルのような猛烈な嵐は、暖かく湿った空気を大気中に打ち上げて冷やし、やがて周囲の温度と同じ温度になります。

すると嵐は上層部で平らになり、「かなとこ雲」と呼ばれる形になります。「鉄床」(鍛冶する時に使う金属の土台)と形が似ているからですね。

しかし内部では空気が高速で上昇し、かなとこ雲の上部を押し上げて「オーバーシューティング・トップ」と呼ばれる形を作り出します。

これが小さな黒っぽい斑点の正体です。かなとこ雲の上から見るとこんな感じです。

しかし残念ながら停滞前線は暖かく湿った空気として、周りの空気を吸い上げながら停滞し続けます。雨を降らし続けるだけでなく、全く同じ場所にとどまり続けるため、時には1日で250ミリもの雨を降らせるのです。

翌日には同じような気象状態で、テキサス州の東部に竜巻が形成されました。その原因になった嵐がここに確認できますね。

動画の最後までで、嵐が48時間にわたって南東部全域に広がったことが分かります。

通常の気象条件では、ジェット気流という上層での風の流れが起こっています。

北米の西から東へと吹き付けていて、あらゆるものを大西洋へと送っているのです。

ですがジェット気流は波打ちが激しくなる時があり、4月29日と30日は特に大きくなったせいでジェット気流は東西より南北への動きが大きくなったのです。

その結果東へ移動していく速度が遅くなり、数日に渡って嵐は同じ場所にとどまり続け、洪水や死傷者という甚大な被害をもたらしたのです。

ですがこのアメリカ海洋大気庁(NOAA)が持つ高解像度のGOES-16が、地球の情報をリアルタイムで集めて送ってくれるので、こうした災害の解明や備えは一層進んでいくでしょう。

SciShowの今回の話は、NOAAが膨大な資金をつぎ込むことで実現したので、みなさんもぜひNOAAのデータを覗きにいってみてください。

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