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3 Genes That Give People Superpowers(全1記事)

スーパーマンは存在する? 遺伝子の突然変異によって超人的な能力を有する人々

子どもの頃、常人をはるかに超えるパワーを持つ漫画やアニメのヒーローに憧れたことがあるのではないでしょうか。しかし、超人的な力というのは訓練でどうにかなることではありません。もちろん、現実世界でそのような力を持った人と出くわしたこともないでしょう。ところが、なかにはDNAの変異によって超人的なパワーを持つにいたった人も存在することがわかってきました。生まれながら、常識を超える筋肉量や骨の強さを持つ人もいるのです。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、遺伝子の突然変異によってスーパーマンのような力を手に入れるパターンについて解説します。

超人的なパワーを持つ人々

ハンク・グリーン氏:スーパーパワーを手に入れられたらと誰しも思うものですよね。放射線を浴びたクモや化学物質の山に遭遇してしまうのを妄想したことあるでしょう?

ですが、DNAの変異によってスーパーパワー的な力を持っている人が私たちのなかにいることがわかってきたのです。

DNAは、人の外見から各部位のはたらきといった体のすべてをコントロールしており、DNAがわずかに異なるだけで、強さやスピードに計り知れない違いが生まれるのです。

筋肉について考えてみましょう。筋肉の成長にはたくさんの物質が関わっており、骨格筋も例外ではありません。骨格筋とは体を動かす時に使う筋肉で、見た目にも影響がある筋肉です。

その物質の1つはミオスタチンというタンパク質で、遺伝子中ではMSTNという名前で「記載」されています。通常、ミオスタチンは骨格筋細胞にある特定の受容体と結合し、骨格筋がどの程度成長し細胞分裂していくかを制限するはたらきをもっています。

しかし研究者たちは、遺伝子内のMSTNが最低でも1つの変異をきたすことで、その機能を失うことを発見しました。その変異が起こると、ミオスタチンの生成をやめてしまうか、少なくとも骨格筋を制限するはたらきを持つタンパク質を生成しなくなるのです。

ミオスタチンがなければ、筋肉の細胞が通常よりどんどん成長して分裂していくため、筋肉が巨大化し実際に力も強くなる場合もあるのです。

そうして引き起こされる症状は「ミオスタチン関連筋肉肥大」とよばれ、この症状になった人は例え子どもであっても、キツい筋トレをしたわけでもないのに筋肉隆々のボディビルダーのようになります。しかもこの症状で何か健康上の問題が起こるというわけでもないようです。

研究者たちはミオスタチンに関した治療を、筋力が弱かったり筋細胞が早く死んでしまう人たちに施す研究を続けています。

通常よりも骨が強くなる“骨硬化”

筋肉ムキムキなのはスーパーヒーローの特徴の1つですが、では怪力や高速移動といった能力だとどうでしょうか。そうした能力にも役立つ遺伝子変異があるのです。

骨格筋のなかにある「αアクチニン-3」というタンパク質、遺伝子内ではACTN3と呼ばれていますが、これが速筋線維に関係しているようなのです。速筋線維とはその名の通り、素早く収縮できる筋細胞なので瞬発的な力を発揮する役割があり、短距離走で早く走れるかはこの筋肉にかかっています。

ふだん速筋線維には、糖を保持しておくためにグリコーゲンという分子がたくさん蓄えてあります。グリコーゲンはグルコースと他のエネルギー物質に分解されて、速筋線維が動くときに消費されるのです。

研究者たちは今のところ、αアクチニン-3がどんなはたらきをしているのかはっきりとわかっていません。ですが、おそらくは速筋線維の生成や安定、グリコーゲンの分解といった多くのことと関係しているのではないかと考えられています。

誰しもがこの遺伝子を持っているなら、なぜウサイン・ボルトのように早く走れないのかと考えてしまいますが、ほとんどの人はACTN3遺伝子が変異してその機能を失ってしまい、結果として本来の機能を持つαアクチニン-3がないのです。

ですが一流の短距離走やウエイトリフティングの選手には、最低でも1つは正常に機能する遺伝子のコピーを持っている人がいます。それによって超人的な怪力や速度を出す上で必要なタンパク質を生成できるのです。

では、超人的な耐久力を求めているとしたらどうなのでしょうか。実は骨の強さを強化する遺伝子も存在するのです。ウルヴァリンの骨、アダマンチウムほどではないかもしれませんが(注:アメコミヒーローが持つ架空の合金)。

LRP5という通称でよばれるタンパク質の生成に関わる遺伝子があります。正確には、低密度リボタンパク質受容体関連蛋白5という名前です。細胞膜にたくさん見られる受容体に関連したタンパク質で、細胞間での化学物質のやり取りに関係しています。

LRP5はWntシグナル経路という、細胞が成長していく上で重要な役割を持つネットワークの一部を担っていることでも知られています。

そしてLRP5が変異したため、タンパク質にまったく新しい機能が備わった人がいるのです。どうやら変異によって骨の細胞がやり取りする信号にはたらきかけて、骨を固く、大きくするようなのです。骨硬化、骨過剰とよばれている症状です。

この症状の人たちが、健康上の問題を持っているわけではありません。むしろ固い骨を手に入れたお陰で、腕を折ったり頭蓋骨を痛めたりする心配をしなくていいのです。

ですが骨過剰があまりにひどくなると、頭蓋骨が脳を圧迫したり、骨が神経を挟んだりといった骨が形成していく上での重大な問題が起こります。いずれにしても研究者たちは、LRP5が骨の形成で果たしている役割の理解を深めて、骨硬化症の原因や対処法を調べています。

今度Xメンのアメコミを読んで自分がスーパーパワーを手に入れる妄想をした時は、私たちはみなある意味ミュータントであることを思い出してください。筋肉がムキムキになる代わりに、髪の色が変わっていたり、牛乳を飲んだらお腹を壊してしまう、というミュータントですけどね。

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