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The Amazing Humanoid Diving Robot(全1記事)

水深100メートルの海中を探索するロボットダイバー

人間には不可能なことが、ロボットで代替できる時代になってきています。今回ご紹介するロボットダイバーもその1つ。「オーシャン・ワン」と名づけられたそのロボットは、人間にはけっして近づけない水深100メートルの場所にある花瓶を回収しました。オーシャン・ワンのすごさは、AIによるコントロールと人間のような手を持ち、危険な場所でも複雑な操作が行えるところにあります。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」は、水深100メートルの海中を探索するロボットダイバーと、虫を捕獲してしまう驚異の植物ハエトリグサの秘密の2本立てです。

水深100メートルの海の底から花瓶を回収したロボット

ハンク・グリーン氏:1664年の11月、フランスのルイ14世の旗艦「ラ・ルーン」が地中海で沈没しました。

数千もの歴史的に価値ある品が、数百人の乗員と共に沈んだのです。しかし最近、そのうちの1つであるグレープフルーツほどの大きさの花瓶が回収されました。

しかもダイバーを使わずにです。花瓶を回収したのは「オーシャン・ワン」という名前の人型ロボットダイバーです。

水深100メートルの場所にあるラ・ルーンの残骸に、人間は安易に近寄れませんでした。

そうした水深では、ダイバーは潜水病にならないためにサンプルを採取できる時間は10分、さらにその後は2時間かけてゆっくりと海面に上る必要があります。ですがロボットなら問題になりません。

海中を探索するためにロボットを活用するのは目新しいことではりません。しかしそうしたロボットはどうしても大きな箱状になりがちで、人間の思い通りに操作しづらいものでした。

オーシャン・ワンは、ロボットの耐久性と直感的な操作性を兼ね備えています。機敏に動く指と、親指が向かい合わせについているという人間のような手は、低速で複雑な動きが要求される水中での作業にうってつけです。

さらに、オーシャン・ワンの動きを体感して、直感的な操作ができるようになっています。触覚フィードバック機能が内蔵されているため、例えば掴んだサンプルがどの程度重いのか、といった情報が操作している研究者に伝わるのです。

4月15日、ウサマ・カティーブの操縦するオーシャン・ワンが最初の任務を行いました。

彼はスタンフォード大学のコンピュータサイエンス教授で、オーシャン・ワンプロジェクトの主任研究員です。

カティーブは、オーシャン・ワンのカメラから送られてくる映像と、手指にある人間のような関節を注意深く操作して花瓶を掴みます。一方、オーシャン・ワンは多方向スラスターをAIによって自ら動かし、姿勢を安定させます。

オーシャン・ワンの手首に取り付けられた力覚センサが触感をカティーブが操作するジョイスティックに伝えので、彼は花瓶を割ることも落とすこともない絶妙な強さで握ることができるのです。

オーシャン・ワンはもともと、紅海の海底にあるサンゴを調査するために開発され、今でも活用されています。いずれはこうしたロボットダイバーたちが海底を科学調査してまわるようになる日が来るでしょう。

一方、虫を回収する植物は

大昔の遺品の回収はロボットを使ってこのように行われています。ところが虫を回収することを生業にしている植物もいます。ハエトリグサはその好例です。

バネ式のねずみ取りのようなこの食肉植物のことをあなたもご存知でしょう。捕らえた虫をサプリメントのような栄養源として消化してしまうこの植物は、沼地のような土壌に生息しています。

2016年5月に発表されたゲノムリサーチ誌の記事では、ドイツとサウジアラビアの研究者グループが遺伝子科学を用いて、ハエトリグサが虫を捕まえる2つの側面に注目していました。虫を捕まえたり消化したりする上で、ハエトリグサはどのような進化を遂げたのでしょうか。

生物学者は長年、ハエトリグサの罠部分は葉が変化したものだと考えてきました。ところが遺伝子情報を見るとかならずしもそうとは言えないのです。それに普通の葉は虫を消化吸収したりしませんよね。

そのため研究者たちは、全く新しい進化をしたのか、植物の別の部分が形を変えたのかを特定しようとしました。そこでRNA解析を行って、植物のそれぞれの箇所の遺伝子がどのタイミングで活性化したのかを調べました。

すると罠部分の基本的な構造は葉に近いことがわかり、従来の考えも支持されました。しかし、罠の内側にある蜜腺の遺伝子は、葉より根っこの遺伝子と酷似していたのです。罠と根っこのどちらにも栄養分を吸収するはたらきがある点も興味深いです。

こうした点を考えるとハエトリグサの罠は、葉と根の両方の特徴を1つにしたハイブリッドな器官だと言えます。

研究者チームはさらに、捕らえた虫を食べてしまう仕組みがどのように進化したのかも調べています。虫を消化するRNAを解析することで、既に解明されている別の似たような植物と比較しようとしました。もちろん、虫が触れた瞬間に閉じ込めて消化してしまうような植物はそうそうありません。

ですが大抵の植物は虫に対して抵抗するための、巧妙な反応を示します。例えば芋虫が葉っぱを食べようとすると、植物は「接触ホルモン」ともいうべきジャスモン酸を分泌します。すると植物の細胞は化学反応を起こして、不味かったり毒があったりする物質を放出し、願わくは芋虫が離れるようにするのです。

ハエトリグサが捕らえる仕組みも、ジャスモン酸のこうした反応が形を変えたと考えられます。不味い物質を放出する代わりに、虫を殺せる消化酵素を緑色の「胃」に送り込むのです。こうしてハエトリグサは虫を栄養源として活用するための武器を手に入れているのです。

特徴的な見た目だけでなく、ハエトリグサはトゲや化学物質を再活用して進化をとげました。新しい器官を作り出すのではなく、既存のものを流用して変化に対応することは「外適応」と呼ばれます。ハエトリグサの外適応はまさにユニークで他に類を見ない、ハエにとって致死的なものです。

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