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庄司智のラノベ編集者NIGHT! SIN 【第5回】(全2記事)

声優&編集者は語る “やりたいこと”を仕事にするということ

2000万部ものライトノベルを売った編集者、講談社ラノベ文庫の庄司智氏がパーソナリティを務めるWebラジオ「庄司智のラノベ編集者NIGHT!」。アフタヌーン編集部の高橋正敏氏、声優の内村史子氏とともに、編集者に関するさまざまな話題を語り合います。本パートでは、「やりたいこと・やれること」というテーマで、エンタメ業界に関わるパーソナリティの3人が大激論。それぞれが経験した「やりたいこと」と「やれること」にまつわる葛藤や、仕事への活かし方を語ります。

「やりたいこと」と「やれること」

内村史子氏(以下、内村):テーマトークのコーナー! というわけで、本日のトークテーマを発表したいと思います。本日のトークテーマは、「やりたいこと・やれること」ですね。

高橋正敏氏(以下、高橋):けっこう深いですね。

内村:難しいですね。みんな、ありますよね?

高橋:僕はこれが社会問題化してると思うしね。やりたいことができないというか、やりたくないことをやらされてしまってキレちゃう、というか。けっこう、みんな抱えてる問題な気がします。あと、やっぱり物を書く人ってこれをめっちゃ考えてると思う。

内村:やりたいこととやれること。

高橋:そう、新人さんもだし、プロもみんな考えてるんじゃないかな。

内村:そうですね。役者も自分がやりたい役とやれる役、「これをやってください」って求められる役って、やっぱりイコールじゃなかったり。イコールになる人はいるとは思うんですけど、なかなか一致しないことのほうが多いので……。「こういう役がやりたいのにな」って思ったからといって、それができるわけでもないですし。

高橋:そういうこと多いよね。みんなはやりたいことはできてるの? どうなの?

内村:細かく言わないのであれば、私はいま声優という仕事をやらせていただいてるので、自分がやりたかったことをやれているという意味では、やれてますね。

庄司智氏(以下、庄司):おお、すばらしい。

高橋:庄司くんは、見た目からしてやりたいことしかやってないような気するじゃん(笑)。

庄司:そう?(笑)やりたいこととか、特にないんだけどな……。

高橋:おかしいでしょ。そんな格好してて?

内村:でも、庄司さんはこういう服を着たいから着てるんですよね?

庄司:そうですね。

内村:それなら、それが同意義だと思うんですね。

庄司:なるほど。

内村:「こういう服を着たいけど、周りの目が気になるな」とか、「金銭的な余裕もないな」とか。あとは何だろう? 恥ずかしいと思って着られない子もいると思います。

庄司:……。

内村:あっ、別に庄司さんの格好が恥ずかしいって言ってるわけじゃないですよ!

高橋:なんか、そう言ってる気がするなあ(笑)。

やりたいことが周囲に求められなかった瞬間

内村:「やりたいこと・やれること」って、いろんなことに当てはまると思うんですよね。仕事だけではなくて、例えば趣味だったりとか、そういった服装だったりとか。

高橋:何でも当てはまりますよね。庄司さんや内村さんみたいにやりたいことをやってる2人からすると、やりたいことをやることってけっこう大変じゃないですか? 僕は大変だと思ってるんだけど、やりたいことをやって求められなかった時って、すごく傷ついたりしない?

庄司:「恥ずかしい」とか、「周りの目を気にしろ」とか言われたり……。

高橋:そうそう。そういうの傷つかない?

庄司:そうですね。今は幸い、仕事では好きなようにと言うか、「信じる道をやっていいよ」という話をしてもらってるので、そこに関するストレスはないけれど。そうじゃなかったら傷つくかも。

編集者には「尽くしたい」タイプが多い?

庄司:高橋さんはどう?

高橋:俺は、やりたいこととやれることが比較的一致していて。子供の時から相手に合わせてあげたいと思う欲求がすごく強かったんですよ。

内村:尽くしたい?

高橋:そうそう。昔から、相手を大事にしてあげたいという欲求が強くて、自己主張の少ない子供だったんですね。だから、割とやりたいことがないから、やりたいことがある人に合わせるのはわりと幸せなんです。

内村:求められたいんですかね?

高橋:そう、だから編集長に「こういうのをやって欲しい」って言われたら、それをすごく勉強して研究して、こういう作家さんと一緒にやったらおもしろいんじゃないかとか考えたり。あとは作家さんの「こういうのやりたいよ」っていうのを一致させていくといった作業が僕はけっこう好きなんです。なので、自分ひとりで何かやれと言われても、実は困るというか。

庄司:思ったんだけどさ、編集者ってそういう人が多いのかも。

高橋:多いのかもね。

内村:誰かのために何かをしたいということでしょうか?

高橋:そう。だから、庄司さんの「やりたいことがない」というのは、そこかもね。

庄司:うん。

高橋:そうだね。0は何をかけても0?

庄司:――だからこそ、無限(∞)の可能性を秘めているわけで。

高橋&内村:ああ!

内村:なるほどね。インフィニティ。

高橋:よくわかんないけど(笑)。このラジオを聞いてらっしゃる作家さんとか、声優志望者さんとかに向けて。やりたいことをやったほうがいいと思う? それともやれることやったほうがいいと思う? どっちだと思う?

内村:私はやれることをやったうえで、やりたいことのテイストをその中に入れていく、ってことが大事なのかなって思います。

高橋:庄司さんは?

庄司:うーん、作家さんなり作家志望の方々に関してでいうと、やりたいこと優先でいいんじゃないかな……。「そこは行き過ぎなのでちょっとご相談しませんか」とか。そういったバランスを取るチューニングは、僕らがお手伝いできると思うんです。

でも、突っ走ることっていうのはクリエイターさんならではの才能だと思うんですよね。さっき言ったように、僕らは周囲に合わせることもできるし、自分自身でやるより一緒にやっていくのが得意だったり好きなタイプなので。すると、才能を持っている方々には、まず全速力でやってもらったほうがいいんじゃないかなと。

内村:なるほど。

高橋:そうだね。

庄司:それが一番、みんなやりやすいんじゃないかなって。

やりたいことがあるならやったほうがいい!

庄司:高橋さんは、どう?

高橋:僕はスタンスによると思うんだけど、すべては読者さんが決めると思うので。「読む人と自分は同じだ」と思ったら、やりたいことを突き詰めていけばいいと思うんですよ。

それで、「俺は人と違うな」っていう全能感みたいなものを持ってる人は、むしろやれることをやったほうがいい。「俺は人と同じことは嫌だ!」っていう人ほど、やりたいことよりもやれることをやってもらったほうが近道かなと思う時はありますね。

庄司:うんうん。でも、今までの自分の経験でいうと、「これやりたい」で突っ走ってもらったものを、「まあまあ、いいんじゃないですか?」と……。「あんまり市場にはないかもしれないけど、そこは上を説得しますよ」みたいな感じでやったほうが、さっきの流行を作るじゃないですけど、結果的にムーブメントになっていった経験があるんだよね。

高橋:ああ、なるほど! 経験はでかいよね。俺はないからね。庄司さんがそういう経験があるんだったら、そうかも。

庄司:やりたいものをぶつけてもらうほうが自分は好きかなって話。

高橋:これさ、結局行き着くとお金のために働くのか、自分のために働くのかみたいな話にならない? 周りからお金をもらうことをやれることだとすると、……ああ、嘘だわ。やりたいことやったほうがいいと思う。

内村:(笑)。

高橋:やる意味がないと思うから。

内村:やりたいことがある人は、やりたいことをやったほうがいい?

高橋:前言撤回します! やりたいことやったほうがいいと思います! ごめんなさい。

内村:例えば、やりたいことがないっていう人は、いま自分に何がやれるのか、できるのかってことを考えてみると、答えが見つかるかもしれないと思うので、自分を省みて考えてみるのがいいかなと。

庄司:(挙手)ミュージシャンになりたい。

高橋:俺も(挙手)。

内村:え、じゃあ私も私も(挙手)(笑)。

高橋:どうぞどうぞどうぞ……って、ダチョウ倶楽部か!(笑)

内村:これはまあ答えが出ないので。

高橋:ないね。

内村:うん。各々の心の中でちょっと答えを見つけていくっていうテーマですね。

庄司:僕らの世界だと、作品作りに関して、作家さんがやりたいことをぶつけていただいて、それをサポートするのが編集者の仕事だと思います。

内村:はい。

高橋:超いい話じゃん。

内村:というわけで、庄司智のラノベ編集者NIGHT! SIN! 番組のお相手は?

庄司:講談社ラノベ編集部の庄司と。

高橋:講談社アフタヌーン編集部の高橋と。

内村:ナビゲーターの内村史子でした。それじゃあまた次回もお会いいたしましょう。せーの。

全員:おやすみなさい。

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