2024.10.01
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目で見るトポロジー(全1記事)
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佐々木和美氏(以下、佐々木):大学時代にトポロジーというのを専攻しておりまして、今は、紹介にあったとおり、3女の母で、和(なごみ)というところで講師をさせていただいています。そのトポロジーについて今日はお話したいと思います。
トポロジーというのは、ほとんどの方がご存じないと思うんですけれども、ざっくりとどういう勉強なのかなということをご紹介したいと思います。
(スライドを指して)寝てる猫、花、満月。これは丸です。
おにぎり、ヨット、トライアングル。これは三角。
これはコースターですね、冷奴。家。もうわかったと思いますが、四角。
ということで、形を分類するというのがトポロジーの大きなテーマです。形といってみなさんがまず思い浮かべるのは、きっとこんな感じですね。平行四辺形や台形。小中学校で習ったと思います。平面図形。
ほかにも、三角柱や円錐。空間図形として習ったと思いますね。
これらはまず物体を外側から見て、大きさ、長さや面積や体積と角度や曲率なんかを判断する。これは幾何学の考え方です。
幾何学というのはgeometryと言いますね。土地の測量からはじまった、ギリシャ時代に始まった学問ですから、もちろん面積とか角度が大事になるわけです。
一方、トポロジーとは英語でこう書くんですね(topology)。場所学というような感じです。だから、位相幾何学なんて日本語で訳されてますけれども、geometryの一分野というわけではないんですね。別の学問だと思ってください。トポロジーでは、次元や、境界があるか、つながり方、などについて考えていきます。
では、トポロジーの視点に沿って形を分類していきましょう。それには、物体の内部に住む小さな生き物の気持ちになってみると簡単です。
まず円について。前後左右に自由に進んでいますよね。この世界は二次元の世界。そして、白いところに行けずに壁にぶつかっていますね。これは境界がある世界というふうになっています。
丸と三角ですけれども、比べてみますと、どちらも大して住み心地は変わらない。トポロジーとしては同じような形となります。つまり、平面図形はどれでも同じような形というわけです。
じゃあ、なんでも同じかというと、そうではありません。これは周のみの円ですけど、この円のなかに住んでいる小さな生き物の気持ち。前後に進めるので1次元。行き止まりはないので、境界はありません。
比べてみてください。ぜんぜん違いますね。同じ円でも住み心地が違う。つまりトポロジカルには違う形。円盤と円周というふうに名前も区別します。
じゃあ今度は3次元になって、球と球面(表面のみ)です。球の中に住んでる生き物の動きはこんな感じ。前後左右上下に動きますね。球面の上だとこんな感じ。行き止まりがなく、ぐるぐる回ったりして。ということで、これは同じではありません。トポロジカルに違う。球体と球面。ballとsphereというふうに名前も違います。
じゃあまとめてみますと、geometryでは外部から見た視点でこのように図形を分類しますけれども、topologyになると内部から見た視点なので、円周、円盤、球面、球体というふうに、真ん中のところが違ってるのがわかりますか。ずれていますよね。
じゃあこの球面と円盤、両方2次元なんですけれども、比べてみますと、球面の上半分を取ってぎゅっと潰すと円盤になる。トポロジカルには同じものということになります。
次に、少し書いてあったのでお気づきの方もいらっしゃると思いますけれども、多様体という言葉を説明したいと思います。位相多様体とは、トポロジーの観点で、今言った観点で、分類した形のことです。で、局所的に見ると普通の空間であるもの。
ちょっと例を出しますね。(スライドを指して)このなかで多様体はどれでしょう? 上2つ、丸と三角は多様体。バツとリンゴは多様体ではない。
どういう意味かというと、この一部分を取ると線ですよね。こっちは一部分取ると面。境界があるところはこんな感じ。ただ、バツになると、この真ん中のところが線の一部とは言えない。リンゴも面と線がくっついちゃってどっちかわからない。ということで、次元が1個に決まらないと多様体ではないんです。
じゃあここから、いろいろな多様体、どんなのがあるかご紹介します。耳慣れない用語が出ますけど、あえて説明しませんので、気になる方はあとでいらしてください。
まず、基本はN次元ユークリッド空間ですね。直線、平面、3次元空間。これらは無限に広がっています。
そのN次元ユークリッド空間の一部分で、これが3次元球体、これが円盤ですけど2次元球体、線分は1次元球体かな。次はその境界たちで、これが2次元球面。ってことは、この円周は1次元球面。
なにも書いていないここ、なにかありそうですよね。ここに3次元球面っていうのがあるんですけど、絵が描けません。最近解決されたポアンカレ予想、ペレルマンの定理ですね。それに関係してるのがこれです。
境界あり・コンパクトと境界なし・コンパクトというグループです。
今度、CDのような穴開き円盤が出ましたけど、これはさっき松居(エリ)先生の話に出てきたもの。これはあの袖になりますね。
豚の鼻みたいなもの、これがズボンになります。単連結でないという。言葉が知りたい方はあとで。
ちなみに、こういうふうにお面みたいになると、これはセーターになります。
ここから境界のない2次元多様体を見ていきます。基本は球面ですね。
これがドーナツの表面なんですけれども、中身は詰まっていません。浮き輪の表面といったほうがいいかな。トーラスと名前がついています。これが2人乗り浮き輪の表面。で、3人乗り浮き輪の表面ですね。これらは閉曲面という呼び方をします。
今度はメビウスの帯。たぶん聞いたことがある方もいらっしゃると思います。これは境界がありますけれども。これはさっき出てきましたね、クラインの壺。それから実射影平面。これをご存じの方はかなりのツウだと思います。これらは、向き付け不可能な曲面になります。
このように曲面、2次元だけでもいろいろあるんですけど、このへんが私の一番好きなところですね。
今度、1次元になりますけど、結び目、が出てきました。これらは全部多様体としては同じで、円周と同じです。ただ、3次元空間への入り方が全部違う。こういうのを結び目と言います。
似たようなので、今度は2つの円周ですね。右側は絡まっています。こういうのを絡み目と言います。
では最後に、小さな生き物の気分を体験していただきたいと思います。右に消えると左から出てくる。これ直線じゃないかと思うかもしれませんが、これ円周ですね。つまりしばらく行くと元の場所に戻るということと、右から出て左から入ってくるのは同じなんですね。
あとこちら。右から出ると左から、下から出ると上から。ドラクエをやったことがある方はたぶんわかると思うんですけど、こういう感じになっていますよね。船で地図を1周すると。
この世界はどうつながっているのかなと。よく見てください。同じだとわかると思います。さっき出てきたトーラスなんですけど、下と上がつながって、右と左がつながっていますね。
つまり形というのは、形にとらわれないで、つながり方に注目すると、こういう見方ができます。
「小さな生き物の気持ちになって世界を感じる=トポロジー」ということで、みなさんに楽しんでいただけたらうれしいです。以上です。
(会場拍手)
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