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Cryonics: Could We Really Bring People Back to Life?(全1記事)

現代科学的に、“人体の冷凍保存”はちょっと無理かもしれない

SF映画などでは、しばしば「人体の冷凍保存」が登場します。長期間の宇宙の旅を快適に過ごすためだったり、タイムスリップをするためだったり、何らかの理由で封印されたり……登場シーンはさまざまです。そんな人体の冷凍保存を実現させようと、奮闘している人々がいます。彼らは、現代医学では治すことができない病気を治療するために被験者を冷凍保存し、医学が発達したい未来で生き返らせ治療しよう、という発想のようです。しかし、現実は映画のようにかんたんではありません。今のところ、人体の冷凍保存と解答においては、乗りこえなければならない壁が数多く存在しています。YouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」。今回は、人体の冷凍保存の今を解説します。

コールドスリープは実現できるのか?

マイケル・アランダ氏:SFの世界では何十年も前から、死の間際の人を冷凍し、遠い未来に解凍、治療して、ロボットの執事に出会う、なんてシーンがあります。

人体を超低温で保存し将来に蘇らせるこのアイデアは、クライオニクス(人体冷凍保存)と呼ばれています。ですが実際にうまくいくかどうかはまだ誰にも分かりません。

現在主流のクライオニクスという考え方は1962年に、大学で物理の講師をしていたロバート・エッティンガーという人によるものです。彼は「不死への展望」という本を出版し、その中で、冷凍保存した人を将来医療が一層進歩した時に蘇らせる、という考えを示しました。

クライオニクスの研究者たちは、脳内の情報が完全に無くなるまで人は死んだとはいえない、と考えます。この考えによれば、心を保存することがその人自体を保存することになるので、技術が進歩した将来に体を修復さえすればいい、ということになります。

しかしクライオニクスを実現するためには解決すべき多くの問題があります。まず冷凍保存を成功させるためには、冷凍状態から上手く解凍しなくてはいけません。その後に、死因となった病気を治療します。そして蘇らせるのです。言葉にすると簡単ですね。

まず、冷凍保存の際のダメージは最小限にする必要があります。これはおおむね成功していますが、まだ完ぺきではありません。冷凍保存には、液体窒素を使って-196℃ の状態にする、ガラス化法という手法を使います。英語の vitrification も、ラテン語のガラス(vitreum)が語源になっています。

ガラス化法は、体外受精(IVF)治療で受精卵を冷凍保存する際に用いられています。冷凍保存された受精卵は最長で12年、解凍して移植できます。たった8個の細胞を冷凍して解凍するのは、人体をまるごと冷凍して解凍することに比べればはるかに簡単です。しかし体全体を冷凍しようとすれば時間がかかってしまうため、その分細胞が変質してしまいます。

中には脳だけを冷凍保存しようと考える企業もあります。

体全体に比べれば素早く冷凍できるからです。いつの日か脳を直接埋め込めるような何かが開発されたり、コンピュータそのものに脳をアップロードできるのではと考えています。

しかし人体を冷凍するということは、血管にダメージを与えますし、細胞の水分が失われてしまいます。この問題に対処するため、血液を不凍液のような冷凍しない化学物質に置き換えようと考えられました。

冷凍したとしても不凍液では血液のような凍り方はせず、ガラスのように結晶を持たずに固まります。しかし不凍液を使っても、臓器のような、より大きなサイズになると結局は損壊してしまい、もう一度再生させるのは難しいでしょう。

冷凍保存研究の今

2009年カリフォルニアに拠点を置く「21st Century Medicine」という研究者チームは、ウサギの腎臓に同じ技術を用いて冷凍したあとに解凍することに成功したと発表しました。解答した腎臓は再びウサギに戻され、48日間にわたって異常が見られなかったのです。

研究者チームは実験が成功したと見て、道義的に安楽死させました。

この実験は臓器提供にも道を開きます。ドナーは臓器や組織を冷凍保存しておけるので、今まで以上に適合者が見つけやすくなるでしょう。ウサギの腎臓が再び動いたという事実から、上手く冷凍保存しておける臓器もあるのではないか、と考えられます。

しかし人間の脳はウサギの臓器よりはるかに複雑です。腎臓なら上手く冷凍できる技術があるかもしれませんが、脳には何かの障害が残るかもしれません。そもそも私たちは、一度死んだ脳の中に人の意識が残り続けているかどうかもはっきりと分かっていません。

そんな中、冷凍保存した後でも記憶が残り続けることを示す証拠が見つかりました。2015年、特定の臭いに反応するようにした線虫を、冷凍保存した後に解凍しました。すると線虫は解凍した後にも反応したのです。

明るい証拠かもしれませんが、線虫は人間と比べ物にならないほど簡単な構造です。

そもそも、どんな理由で死亡したにせよ、冷凍保存から解凍されたらまずはその病気を治す必要があります。技術の進歩には目をみはるので、今ではどうしようもない病気も、将来には治せるようになっているかもしれません。

しかし、蘇って病気を治療できたとして、その後も本当に生きられるのでしょうか。

ここを明確に答えられる人が誰もいないので、クライオニクスには数多くの問題があるのです。冷凍保存している段階で脳は確実に多少のダメージを受けます。さらに血液と置き換えた不凍剤は人体には毒なので、もっとダメージを受けるでしょう。

ではダメージを修復して、問題なく生きていけるようにするにはどうすればいいのでしょうか。

クライオニクス研究者の出す1つの答えは、細胞レベルで修復ができるナノロボットを使うということです。

ですが技術的にも医学的にもナノロボットの実用化はまだまだ先になりそうです。将来、人間を冷凍保存できる日が来るにはまだまだ知らないことが多いですね。キャプテン・アメリカの世界ではうまくいった冷凍保存を現実世界でも可能にするには、さらなる研究が必要です。

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