2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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唐木明子氏(以下、唐木):ありがとうございます。男女が一緒である必要はないというのは、極めて大事なポイントだと思います。女性はコミュニケーション能力がこれからどんどん求められていく時代において、それを強めていくという意味で、非常に力強い言葉をいただいたなと思います。
男女が一緒じゃなくてもいい、男性みたいな女性がいてもいいし、女性みたい男性がいてもいい。いろいろな人がいればいいという「HeForShe」の世界の中で、男性つまりHeの強みはどんなところでしょうか?
松尾豊氏(以下、松尾):Heの強みですか? 人工知能が使われるようになる社会では、女性の方が明らかに有利だと思っていまして。
前に、厚生労働省が話したことがあるんですけれど、人工知能が代替していくような仕事は、基本的には専門性が高い定型的な業務であったり、それから記憶とか計算とかが必要な業務であったりします。
これは従来だと男性が強いとされてきたものです。先ほどからもあったように、お医者さんの業務、つまり患者さんの検査の結果や顔色を見ながらの問診など、診断するという行為自体はビッグデータ使ったほうが絶対にいいので、そこは自動化しますと。
残るのは患者さんとの対話でいろんな話を聞き出したり、あるいは患者さんの価値観を解った上で治療法を提示するところなので。これはお医者さんもそうだし、弁護士も会計士もコンサルタントも全部、クライアントと向き合うような仕事が重要になっていく。
「バックヤードは自動化します」ということだと思うので、かなり男性に不利になっていくのではないかと。そういう意味でも、「HeForShe」という観点から考えると、今の経営者はやはり女性に活躍してもらわないと損だし、そうでなければ「このAI時代においては生き残れませんよ」ということも言えると思います。
ただ今のところ、ロボットを作るような仕事、機械を作るような仕事は男性の方がやっていますから。そういったあたりで今後の特にこの日本において、先ほどのディープラーニングの技術と機械・ロボットを結びつけるような部分は男性にがんばってほしいなと思います。
唐木:ありがとうございます。そうは言っても「HeForShe」の「He」の部分を担う男性のみなさんが意気消沈してしまうと困るので。
AI時代おけるHeとして、ここら辺は未来があるというかすごくおもしろいんじゃないかと思うのは、先ほど先生が話していた「コミュニケーションがすごく大事だけれども、人間は何歳になっても変われるというか、適応力が高い」と言いますか、そういうところなのかなという気がしているんですが、いかがでしょうか?
松尾:あと責任主体という話があって、例えばロボットがすごく進歩したとしても、このロボットはいろいろな仕事ができるんですが、「謝るという仕事ができるのか」という議論があります。
仕事でなにかミスをしたとき、お客さんのところに謝りにいく仕事をロボットができるのか。たぶんできなくて。ロボットが謝りに来ると、ますます火に油を注いじゃう。「本人が出てこいよ」という感じなわけです。
「本人が出てこいよ」というのは、考えてみると面白くて。ようするにロボットは責任主体になれない。人間しか責任主体になれないんだということだと思うんですよ。
そういう意味で、最後、責任をとって謝ってもらうような仕事は男性の方が若干向いているのかもしれないですし……。あとは責任を伴う判断のような仕事も……。そういったあたりかなと。
唐木:ありがとうございます。青砥さんいかがでしょう。
青砥瑞人氏(以下、青砥):そうですね……。先ほど、「女性の方がオキシトシンが出やすいので、コミュニケーションという観点においては強みを発揮できそうだ」というお話をさせていただいたんですが、一方で男性の方はバソプレシンというものが出やすいんです。
これはなにかというと、行動を促す時によく出るような分泌物で、先ほどのドーパミンとも相関性がある。ドーパミンとバソプレシン、この2つが出やすいと言われています。
これはなにを意味するかというと、「テイクアクション」です。行動するという点では、やはり男性の方が脳の機能から言うと優位そうだなと思います。だとしたら今日の「HeForShe」という新しい概念に対して、次動き出そうといったときにどちらがテイクアクションしやすいかというと、男性の方かなと思います。
実際、行動することは1つ強みとして考えられると思うのですが、それ以上に、なにか新しい物に対する認知の仕方を、万人誰問わず考えをマインドセットとして変えていくことがやはり重要だと思っていまして。
どういうことか、人間の本能的なところで言うと「新しいもの」に対しては、やはりネガティブな情動であったりだとか思考に陥りやすいんです。太古の昔は、周りに危険なものが当たり前にある環境だったので、本能的にそういう反応になってしまうんです。
ただ先ほどもお話があったように、今は変化の時代なんですよ。変化している時代において、新しいものに対していちいちネガティブな情動を出していくって、それってハッピーですかと思っていて。
本当に生死を分かつような機会は、なかなか今はないと思うんです。太古は周りの危険に対応するためにネガティブな反応をしていたが、今はそういう状況にない。まずはそれに気付くことが重要だと思うんです。
「今の自分は新しいものに対して否定的になっちゃってるな」という自分を認知する。最近はマインドフルネスだったり、アウェアネスで「気づく」というのがすごく重要だと言われていますよね。それも1つ、ここに通ずるところかなと思うんです。
自分が新しいものに対してネガティブになっている状態に気づいたら、「それを書き換えていこう」。この人間の感情の書き換えというのも科学で証明されています。
これは日本の理化学研究所さんが発見して、詳しく知りたいマニアの方は「感情の書き換え 理研」とかで検索するといろいろなメカニズムが細胞分子レベルで理解できると思うので、読んでいただけたらと思います。
なのでそういった新しいものに対するマインドセットを書き換えていくことが、今後、新しい変化の時代において、非常に重要なことかなと思っています。
唐木:ありがとうございます。冒頭に確か松尾先生の方から「AIは日本のこれからの産業の1つの大きな核になるかもしれない」とお話をいただいたのですが、一方で日本人は新しいものに対する拒否感がそれなりにあって、受け入れてもらうことにもかなりご苦労されていると思うんが。
その新しいものを受け入れていく気持ちといいますか、体制というのは日本で変わってきたとお考えですか?
松尾:やはり頭が固いところは、すごくあるんじゃないかと思いまして。
先ほども話の中で「頭の固い人を変えられるんですか」という話がありましたが、特にITの分野やAIの分野は、本当に20代が一番強い領域。ただ、日本社会はかなり年功序列なので、未だに60代とか70代の人がいろいろなデシジョンをしている。
これは領域によって違うと思いますが、少なくともこのITの分野というのは、例えばマーク・ザッカーバーグにしてもGoogleの創業者のセルゲイ・ブリンやラリー・ペイジにしても30代40代前半と若い。
最近上場したスナップチャットという会社の社長は20代。そういう人達と伍していくには、やはり若い人がデシジョンするような社会に日本もなっていかないといけないなと感じるんですけれども、そこに対する移行というのはなかなか進んでいかないなと思いますね。
唐木:ありがとうございます。青砥さんいかがでしょう。
青砥:なんとなく思い付いたことがあって。先ほどの松尾先生の話の中で「人工知能が今後どんどんどん強くなっていく。その際にパターン認識させているものがビジブルな目に見えるところ、つまり目に見える役割のところをパターン化していくのが非常に重要になってくる」とありました。
そうなったときに、人間として今後より強みを発揮していくのは、インビジブルなところだと思っているんです。
今はおそらく、周りにモノが増え、スマートフォンがあるゆえにいろいろな情報が目の前にあり外側に注意が向かれがちなんです。だからこそインナー、つまり自分の内側にもっと注意を向けるということが非常に重要だと思っていて。それはなかなか機械ができることではないだろうなと思っています。
すごいんですよ、やはり脳って。
なぜかと言うと、例えば、目をつぶって僕がいきなり宇宙にいる。宇宙で大好きなスイカを食べてまた戻って来るというイメージができるのは、この快速な画像を勝手に頭の中にクリエイトする創造性があるということ。機械がいきなりババッとそのイメージを作るのは、超スーパーコンピューターが何台あってもなかなか難しいだろうなと。
そこがおそらく人間の強味になっていく。この内側をしっかりモニタリングする。おそらく活躍されている方々というのは、自分の内側をよく着目しているんだろうなと思うんです。それが最近、世の中ではメタ認知という言葉で語られているのかなと思うんです。
自分の事を客観的に俯瞰して見てみる。そうすると、ジョブズなんかもそうだったんだと思うんですが、違和感にも気づいたりすると思うんです。彼は禅をやっていたからというのがあったかもしれないですが。
コンピューターにファンが付いて「ガーガーガー」と言っているのが昔は当たり前だったんですよね。それに対して「あんなうるさいところで仕事なんてしたくないよ」ということから、感じた違和感をなんとかなくすための開発に、ずっと没頭した。
そういったことも自分の内側にちゃんと注意が向けられたからこそできたことなんだろうなと思うと、今こんなにいろいろな情報に溢れた中で着目すべきは……。もちろん外側も見たほうがいいんですが、そこは多くの場合パターン化されて、人工知能がやってくれるような時代になっていく。
今度はなかなかそこが追いつかない内側に目を向けていくことが大事になってくるのではないかと。そんなふうに考えています。
唐木:ありがとうございます。お時間がせまってきましたが、最後にお2人から「HeForShe」という観点、あるいはこれからの我々の生活全般に関してでも構いませんが、ここにいらっしゃる方と、あとご自身「こんなことやっていきたいな」「やっていこう」ということがございましたら一言ずついただけますでしょうか。
松尾:直接関係しているかどうかはわからないですが、オープニング時に「ジェンダーという言葉がある社会ある時代における、固定された役割なんだ」とおっしゃっていたのがすごく適切だなと思っていまして。
やはりそれは1つの見方に過ぎなくて、例えばIQというのがありますが。IQとはなにかと言いますと、これはもともと「たくさんある人間の能力をあえて1つの値で表すとしたらどうなるか」という、数学的に計算したものなんですよね。
それから今受験で5教科とかテストしますけれども。5教科というのも「たくさんある人間の能力をあえて5つで表すとこの得点になります」ということで、要するに情報処理が貧困な時代の産物なんですよね。
今はこれだけITやAIの分野が進んでいるのだから、人の能力をそれそのまま測定することもできるし、それを活用することもできるはずです。そうすると、ジェンダーだけじゃなくて「いろいろな人の属性でその人自身を判断することがいかに無駄なことか」ということに、だんだん世の中が気付き始めるのではないかと思います。
個人を個人として見るような社会になってくるはずだと思いますし、自分自身も研究の世界の中では、その人の属性に惑わされずに個人を個人として評価するような、そういう心掛けをしていきたいと思います。
唐木:ありがとうございます。青砥さん、お願いします。
青砥:先ほど「新しいものだったり違いというところに、基本的に人はネガティブな反応を示しがち」という話があったと思いますが、それに気づくことができると、書き換えることもできるのもまた真なので、新しいものを受け入れることができる。
そしてそれぞれの強味をちゃんと認識して進んでいくことが1つ重要な要素です。先ほど内側を見るというお話をしたのですが、例えば、自分がワクワクするような楽しむようなことも内側の反応なんです。
そういう場面が来たら「あっ今自分、こんなことにワクワクしているな」と気付いて、それに向かてもっと進んでいくというのも、1つの人間の強味になるからなと思うので。そんなふうに進んでいけたらいいかなと思っています。
唐木:ありがとうございます。一言だけ私の感想を申し上げさせていただきますと、2人のお話をおうかがいして、「HeForShe」とは言いながら、男女だけじゃなく、年齢も個々人の問題なのかなという感想を強く持ちました。
一人ひとりが自分の個性と内面を持ちながら「私の将来ってどうなるだろう」ということをきちんと想定をして作っていく、自分らしく行動していくということがまさに、AIと人間という……。
AIと人間と言ったときに「人間の中の細かいことなんてどうでもいいじゃないの」とおっしゃってくださいましたが、そういった世界で必要なことになるとも思いました。それにあと「人間は何歳になっても変われるんだよ」というところですよね。
みなさん、何歳になっても変われます。40代の方も50代の方も、はたまた60代70代の方も変われるそうですので、「ここ変わりたいな」「変えたいな」と思うところ、あるいはこれから「変わらなきゃな」と思ったところがあったら、男性の方がよりアクションが取りやすいという話もございましたので、ぜひテイクアクションをしていただければと思います。
本日は貴重なお話を頂戴いたしまして、お忙しい中どうもありがとうございました。
(会場拍手)
青砥様、松尾様、脳とAIについての興味深いお話どうもありがとうございました。「誰でも変われるんだ」と信じてやることが大切なんだという力強いメッセージいただきました。ありがとうございます。
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