2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山田:そうそう。次、じゃあ「さしすせそ」の話します。
久世:いきましょう。
山田:じゃあ、ちょっと待って。
久世:しみちゃん、黒板消してー。
しみちゃん:僕が消します。
山田:ちょっとこれ、お願いします。
しみちゃん:全部いいんですか?
山田:うん。いいよ。
久世:今は見れるんでね。質問とかあれば、書いていただければ読めますよ。すいませんね。こっち見てたので。
山田:さとう、しょうゆ……ではないんですよ。
久世:そうですよ。
山田:そうなんですよ。
久世:(コメントにて)「ノート取りたいw」これ何回でも見れますからね、何回でも見直してください。
山田:でね、まあだって俺さ、あれじゃない? プロになってからもう31年間ネーム地獄だよ。今週もじゃん(笑)。
久世:すげえな(笑)。
山田:俺、デビューする前10年ぐらいネーム描いてるから。
久世:ええっ!
山田:だから、たぶん40年以上ネームを描いてる。
久世:ネーム職人じゃないですか!? すごいな。
山田:ネーム職人ですよ。だから、あんまり「なに言ってんだ」って思わないで(笑)。
(一同笑)
久世:そんな感想は来てません。大丈夫です(笑)。
山田:なんとか食えてたんで、大丈夫ですよ。
山田:まあ、もうわかりやすくいうと、もう絶対なのがこれですよ。ネームの基本中の基本は「さ」はもうサービスです。
久世:サービス。はあ。
山田:そう。お客のために一手間かけるんですよ。料理に例えると一番わかりやすいよ。もう「小骨抜く、生臭さ抜く」みたいな。
久世:灰汁を取るっていうね。
山田:「灰汁を取る」みたいな。この間も話したよね、この話。
久世:しました、しました。
山田:しましたけど、まさにネームはこれ。「自分のために描いてんじゃねぇよ!」って叫んでください(笑)。
(一同笑)
山田:「客のために描いてんだろうがよー!」って言いながら。
久世:どのタイミングで叫ぶんですか?(笑)。
山田:いやいや、だから例えば……。
久世:煮詰まったら?
山田:設定とかに凝りすぎて、「これがわかねーやつは、読者がバカなんだ」とか「編集が古いんだ」みたいなことをよぎりますから。そしたら、そんな自分をひっぱたいてください。「パーン! サービスだろうがっ!」(笑)。
(一同笑)
久世:これは覚えておいたほうがいい(笑)。
山田:「お前、金もらうんだろうが。これでよぉぉ! お客さんに向かってなに言ってんだよ!?」ということを忘れないでください(笑)。まあいいんですよ。アーティーになってもいいんですよ。それが漫画家なんですけど、まあそれはその先です。とりあえず。
久世:サービスだろうがっ!
山田:そう。なぜかというと、お客さんの興味が消えたらそこで負けなんですよ。俺たちはもう即死ですから。
この生臭さというのはさ、けっこう自意識から生まれる灰汁みたいなものもあったりする。「俺様みたいなすげーやつが描いてる漫画だから、これ漫画すげーし」みたいな。「これ理解できねーやつらは死ねっ!」みたいな、そういうのが生臭さになるんですよ。
久世:なんか玲司さんの経験からだいぶ出てるようなね(笑)。
山田:俺、ずっとそうだったんだよ(笑)。
(一同笑)
久世:自分に言ってますね。自分に(笑)。「これはサービスだろうがっ!」。
山田:あの頃の俺に言ってる。あの頃の。「お前もうちょっと気がつけよ」みたいな。「お前さ、原稿料もらってなに言ってんだよ?」つって。
久世:「芸術家気取ってんじゃねえよ! パーン!」。
山田:「パーン!」って感じっすよ(笑)。
久世:「なにがアートだ。この野郎!」。
山田:みたいなさ。それでもう1つ、だからやればやるほど深み、出汁、素材のバランスみたいなこと。それからスパイス。「いや、甘みを足そう」とか「ここはちょっと厳しすぎんな」とか思ったら、「ちょっとパンチラ入れとけよ」みたいな。
久世:なるほど。それがスパイスを効かせるってことで(笑)。
山田:少女漫画だったら、ちょっとここでイケメン出しておけよとか、壁ドンしておけよとか、都合のいいことやっておけよとか。
久世:都合のいいこと(笑)。
山田:こういうのやって、「お前、客に向かってお前……」みたいなさ、「『そんなことできません』じゃねーだろ。この野郎」みたいなさ、そういうことも大事です。
久世:なるほどね。
山田:まあ、いいんです。その先があるので、実をいうと。まあこれ、基本の1つで覚えておいていいかなというのと。
あともう1個サービスで言うとね、どんだけ考えたアイデアでも、ポーカーでいうところのワンペアの場合があるんですよ。
久世:ええっ!
山田:だから、がんばって揃えたんだけど、「このネタはどう考えてもワンペアしかねーな」って思ったら、もう諦めて振り出しに戻る。
久世:じゃあ、そのネームは捨てる?
山田:そう。ゼロから考え直す。
久世:そのネタは捨てる?
山田:そうそう。
久世:それどうやって気づくんですか? 「これどんだけサービス精神出して、パンチラも入れたし、胸元もアップしたし、サービスしまくってるけど、これワンペアやな」っていつ気づくんですか?
山田:たぶん「和歌山でパンダが大好きな女の子がいた」みたいなところから始まったとすんじゃん。
久世:うん……ぜんぜん意味わからない。
山田:だから「そのパンダと女の子でなにかできねえかな?」と思って、「よし、これがいいぞ。パクっちゃえ」つって、「水がかかったらパンダになる女の子の話どうかな?」みたいな。
しみちゃん:ええっ?(笑)。
久世:それもう、ワンペアというかルール違反(笑)。
山田:「『パンダ1/2』ってどうだ?」(笑)。
しみちゃん:聞いたことが(笑)。
久世:ちょっと(笑)。
山田:それで和歌山の動物園でパンダの飼育員してるんだよ。「そのパンダの飼育員してる彼が大好きだったらどうかな?」みたいな、散々考えたとすんじゃん。「いや、そのパンダになるだけだな。おもしろいのは」みたいな(笑)。
久世:それあれでしょ。血流よくするためにお風呂とか入りながら散歩しながらずっと考えて、パンダと女の子なんでしょ?
山田:だから最初はおもしろいと思ったんだよ。「水かかったらパンダになっちゃうんだぞ、これ。超おもしれーじゃん」と思って。でも、その先なにもなかった場合、「やめよう。これ」。
久世:撤退、撤退! パンダ以外ありませんでした!
山田:こんなことばっかりずっと考えてるのが漫画家なんだよ。
久世:うわー。
山田:それの組み合わせで、「ちょっと待て、これ超イケるんじゃねーの?」、もしくは「もうちょっと考えたらイケるんじゃないの?」っていって、考えて考えて考えてるというのが、これ、読者が楽しめるためのサービスつながる。あ、これ、「し」がそれなんですよ。
久世:いきますよ。「さ」はサービス、「し」は?
しみちゃん:なんでしょう?
久世:いきまっせー。
山田:まあ、もう今言っちゃいましたけどね。
久世:いいですよ。思考錯誤と。
山田:そう。これはさっき言ったパンダワンペアだった場合、「これどこまでいったらツーペア、フルハウスになるだろうか?」というふうにしてずっと考え続けるの。この思考錯誤の時間がけっこう大事で。
久世:それつらいな。
山田:だけど、これ、サービスのための思考錯誤なんだよ。セットです。だから、それわかってるやつのほうがやっぱりおもしろい漫画描く。
久世:試すというんじゃなくて、思考の錯誤ってことですよね。まあ両方かけて。
山田:要するに、トライ&エラーを繰り返し続けて。しかも大事なのは、実は担当に見せる前なんだよ。担当に見せるときは「ここがベストです」ってところまで持っていかないと、次行けない。
久世:担当さんに見せたときに、あのパンダで止まっていれば、もう載せてはもらえないというわけですね。
山田:向こうはもうプロで、時間、わざわざコストかけて来てくれてるのに、中途半端なところで、まだ思考錯誤できるって……「思考錯誤は限界までやりました」というネームを持っていかないといけない。「まだいけんじゃねーか」というところだったら、やっても結局ダメだしされて傷つくだけだから、その前にぎりぎりまでやらないといけないのが。
だから本当に、ネームもし送るんでも持ち込みするんでもいいんだけど、直前までやらないといけないのがこれなんだよね。
久世:これ間違えじゃないですよね。試す行くじゃなくて、考える錯誤だから思考錯誤って、あえてのね。あえての漢字違いみたいです。
山田:そのとおりです。考えるんです。「これでいいのだろうか?」みたいな、ずっとね。そうそう。「もっといい演出できるんじゃねーか」というやつですね。
山田:それで、「す」なんですけど、これあれですね。
久世:寸止め?
山田:寸止めです。
久世:一番いいところで「はっはうっ!」っていうことですか?
しみちゃん:(笑)。
山田:「すっげえおもしれー話あんだよね」って「言いてぇ。言いてぇ」という芸人さんいたじゃん。「あるある言いたい」。
久世:「言いたいけど、言いたいけどな、言いたいけど……」。
山田:ってずっと歌う人いるじゃん。あんな演出の方法があって。漫画ってけっこうそうで。「これバレたら大変なことになる」というのを振っておいて、延々溜めたりするわけだよ。だから、すぐに答えとか出さないでドキドキさせるという。この寸止め演出というのでどんどん盛り上がっていく。
久世:これ玲司さんめちゃくちゃ、こんな言葉あれですけど、お上手ですよね。『Bバージン』とか見てても、「もうっ……だからっ……ちょっともうっ!」っていうふうなずっとなってるから。これすごい。
山田:そうそう。だから「あの子もたぶん好きだろう、自分のことを」「そして、自分は彼女に告白すればうまくいくだろう」みたいな感じになのに、なかなか会えない。
久世:「早く告白するところみたいのに!」って。
山田:なのに、彼女はなぜか別の男に呼び出されててみたいな。
久世:「なにやってんねん? お前」って。
山田:自分はバイクで行こうつったら、事故っちゃったみたいな。「どうしよう?」みたいな。
久世:遅い、遅い。早くっ!
山田:すげえ金持ってる別の男が「タヒチに行こうよ」とか言ってるとか、そんな漫画描いてましたね。
久世:描いてました(笑)。あれもう本当たまらない。
山田:そうそう。たまらない。だけど、もう漫画なんてさ、流れできてんのわかってて、自分でもそれ、こうなってこうなってこうなって……ってわかってんだよ。「それ全部スーッと描いてどうすんの?」って話。
久世:「あれ、終わった」ってなるもんね。
山田:「ふーん」で終わっちゃう。
(一同笑)
山田:この寸止めがあることによって、「どうなるの、どうなるの、どうなるの?」みたいな感じになるというか。あとは、言い過ぎないというのもあるし、あと一部しか見せない演出というのもあるし。
久世:うわー、いやらしいな。なんの講義でしたっけ? これネームの講義でしたっけ?
山田:ネームの講義なんですけど……。
久世:夜の営みの講義じゃないですよね?
しみちゃん:(笑)。
山田:それもありまして。
久世:すいません(笑)。
山田:さすがフランス人。ねえ。
久世:どうも、こんにちは(笑)。
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