2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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久世孝臣氏(以下、久世):じゃあ、いきますか。さっそく!
山田玲司氏(以下、山田):やりますか! お待たせしました!
久世:山田玲司流の漫画の描き方ネーム編「ネームの基本はさしすせそ」というところですね。
山田:っていう君の無茶振りを受けまして。
しみちゃん氏(以下、しみちゃん):おお?(笑)。
久世:なにかインパクトあったほうがいいかな、と。
山田:さすが演出家。持ってくね。
久世:いきましょう。さしすせそってさしすせそ?
山田:ありましたよ。さしすせそ、ありました。
久世:探しました?
山田:探しましたというか、そんな……。
久世:一生懸命探しました?
山田:一生懸命……えー、また俺を関西に連れていく。
しみちゃん:そうだよ(笑)。
久世:すいません(笑)。
山田:はい。いいです、いいです。
久世:じゃあまず、その前に質問なんですけど、僕みたいな漫画描きではない人も観てると思うので、一応一発だけ入れさせてください。ネームってそもそもなんですか? まずその説明からいってほしいな。
山田:はい。あのね、わかりやすくいうと絵コンテなんですよ。漫画をいきなり原稿用紙で描くのではなく、こうやって、こういう感じになって、次こういう感じになって。まあラフですね。これ。
久世:反射で見えない?
山田:あ、ごめんごめん。これこれ。まあ、こんな感じですよ。
久世:見えるかな? ああ、これで見えますね。
山田:これが俺のネームですけど、『CICADA』 の第1話です。
山田:こんなのを、これをもう俺バナーイ君に投げてるわけ。実はこれ自分で描いて、いつもは自分が描くんだよ。だから、原稿に……。
久世:そのあとも自分で描くってことですもんね。
山田:ただ、これがネーム1話分ありますけれども、これの出来で漫画のおもしろさがほとんど決まってしまう。
なぜかというと、出版社が載せるレベルの絵を描ける人たちが描くわけだから、このあとのクオリティはほぼそんなにぶれない。よっぽど手を抜いたりとかアホなことしないかぎりは。
久世:アホなこと(笑)。
山田:ただ、漫画おもしろいかおもしろくないか、第1はアイデア。その次がネームの出来なんだよ。
久世:じゃあ、もう絵コンテ?
山田:絵コンテです。なんでネームというと、セリフのことをネームって言うんだよ。これ、進んでいくと、自分はここにどういう絵が描いているかわかるから、セリフだけになってくるわけ。
セリフで、このキャラクターの名前が書いてあって、これを編集に見せるとだいたいの流れを読めるわけだよ。それで「構成よくないな」とか「直そうか」つって、ネームをどんどん直していくという作業で。
だからネームの意味はセリフだけだったんだけど、これ全体のことをネームって言うように変わっちゃったの。
久世:今はそうなってるってことですね。
山田:そうそう。そして1つ大事なことなんだけど、これ漫画描けない人には関係ねーじゃんって話ではあるんだけど、実をいうと、言ってみればプレゼン能力なのよ。
久世:ああ、なるほどね。
山田:だから要するに、俺が「これ、おもしろい」と思ったものを伝えるためのテクニックでもあるので、ネームというのは。だから、これ実をいうと、このテクニックは話術なかでは使える。別のものとしても通用する。いろんなものとかぶってくる。
久世:見せ方っていうことですもんね。
山田:要は自分のイメージを相手に伝えるためのものなので、共通点はいっぱいあるので、それは「そんなに役に立ちませんよ」みたいなことはないです。見てもらえれば、少しはこういうことは……。
久世:日常でもぜんぜん役に立つと。
山田:漫画描かなくても役に立つんじゃないのかなみたいなことなんですよ。そんなわけでこのネーム、実をいうと、ほとんどの日本の漫画家の人がこのネーム地獄に苦しんでいます。地獄の一丁目にいる人いっぱいいますよ。
久世:今日見ていらっしゃいますもんね。
山田:「これがあるから漫画が嫌だ」っていう人もいっぱいいます。漫画描いてて楽しいのは、「実はカワイイ女の子を描いてるときが一番楽しい」みたいな、そこからスタートしてる人にとっては「こんなクソめんどくせーものを描くよりも、カワイイ女の子のイラストだけを描いていたい」みたいな。
久世:それでお金が欲しいと(笑)。
山田:それがだから、なんだっけな、そういうサイトがあるじゃん。
久世:ピクシブとか?
山田:ピクシブとかそっち側の人たちに流れていく。
久世:まあ絵師とか言われる人たちですよね。
山田:絵師と言われる人。絵師で、絵がうまいんだけど、漫画描けないって人いっぱいいるじゃん。やっぱりなんでかというと、これが地獄のように苦しいからなんですよ。ただし、これができるようになると、めちゃめちゃ楽しい!
久世:へえ。
山田:俺、実はこのネームが好きなんだよ。だから、もちろん作画になったら気が楽なのよ。だから、魂注入してるからえらいしんどいんだけど、充実感という意味では半端ない。よくさ、幸せと充実感の話するじゃん。人間って。
久世:うんうん。
山田:幸せなのは、アシスタントと一緒に馬鹿話しながらペン入れとかしてるときが幸せ。だけど、充実感はこっち。
久世:そっちのほうが充実してる?
山田:1人で「俺は死ぬんだ」って。
しみちゃん:(コメントにて)「岸本『わかるーーー!』。
山田:そうそう。そんな感じなのがこっちの仕事なんですよね。
久世:でも、自分の頭のなかにある、誰だって漫画描きたいってなったら、「俺の頭の中めっちゃおもしいろい」ってなってるじゃないですか。でも、いざ描いてみると、「なんか俺の頭のなかのほうがぜんぜんおもしろいけど、このネームつまらないな」っていうときにもなったりするじゃないですか。だから、頭の中にあるお話をきちんとおもしろく見せる方法というのを、今回学べるわけですよね。
それができるだけで、持ち込みだったりなんだったりで、もうぜんぜん合格ラインに引っかかり方が違うと思うので。
山田:そうそう。今回は出版社に投稿するための原稿の描き方。だから、それってどういうことかっていうと、1話完結。それでキャラが立ってる。
なんでキャラが立ってるといいかというと、キャラアイデアが立ってると連載につながる。実をいうとゴールは、連載、単行本化、ヒットというのが、まずいったんのゴールなので。
久世:そうですよね。
山田:じゃあ、その最初の段階でそこにつながるような。例えば、ワンパンチで誰でも倒せる男の話。
久世:あっ、それ聞いたことある。
山田:あるでしょ。これ、このアイデアがおもしろいわけだよ。強すぎるから困ってる。これおもしろいアイデア。「だけど、どんな敵が来ても一瞬で終わっちゃうから、つまんなくなっちゃうかもしれない。じゃあ、それをどうするか?」みたいな作業。
その最初の出だしのこのアイデアで一発ガッとつかめる。これがものすごい大事。これは今まで『Cバージン』のなかで何回も言ってる話なので……というような。
それとキャラの話もしました。その話とかいろいろやったんだけど、とりあえずストーリーまでできた。アイデアがあって、キャラができて、ストーリもできた。そこから具体的にどうしていくかって話をするっていう話ですよ(笑)。
久世:最高だぜ。
山田:でね、まずぶっちゃけ、最初にまずざっと作り方をやります。
久世:ざっと!?
山田:そのあと、最初のさしすせそをやったあとに、秘伝のテクニック、俺が山田玲司流のテクニックというのを公開するという流れになっていきます。
久世:おお、すげーな(笑)。みなさん、ガッテンの準備はできていますか?
しみちゃん:(笑)。
山田:まず一番最初にやることはなにかっていったら、ストーリーできてんじゃん。そこから世界に入るんだよ。その世界に。イメージの中に。
久世:え、自分が?
山田:そうそう。だからノイズがあると困るわけ。誰とも会えなくなるわけ。だから世界に入ってるのに、「あのさー」とか言って、つまらないことを、「先週のテレビの〇〇観た?」とかさ「このあとAKBどうすんの」とかさ、「そんな話、うるせーよ!」みたいな。
久世&しみちゃん:(笑)。
山田:そうなるたびに、せっかく向こう側に行ってるのに戻されるんだよ。だから、やっぱり大事なのは自分を隔離することなのね。
久世:なるほど。
山田:そして、もう1つのポイントは血流です。
久世:血流!?
しみちゃん:出ました。
久世:なにいってんの?
山田:つまり、もう寝不足だったらアイデアなんか出ない。入れないんだよ。もちろんその逆もあるんだよ。限界までいってトランス状態に入って、ランナーズハイみたいになって入る世界もあるんだよ。
久世:覚醒ってことですよね。
山田:だけど、でもこれ夜中に描くラブレターなので、あとで読み返すと「なにを言ってるんだ。俺は」って。
久世:「イタイ、イタイ! イタイ、イタイ!」って。
しみちゃん:(笑)。
山田:そういうことが起こりがちなので。だから、やっぱり俺、本当に集中してできるのは1日3時間ぐらいじゃないかなと思うよ。
しみちゃん:おお。
山田:だから、その3時間ぐらい、できれば午前中というふうに。本当をいうと、これが長期連載のコツなんだよ。長期連載が成功してる人ってネームできるんだよ。なんでネームできるかというと、バキ先生だったら走ってるじゃん。山走ったりとかすんじゃん?
久世:バキ先生って(笑)。
山田:とか、村上春樹だって走ってんじゃん。ああいう人たちは要するに血流よくするための方法をやってるわけ。長風呂する人もいるんだよ。
だから、けっこう風呂はよくて。「もうダメだな、これ」と思ったら、風呂って遮断されてるじゃん。そこで浮かぶまでずっと考えられるという。そしていればいるほど血流がよくなる。っていう作戦。
久世:のぼせるってことですか?
山田:あとは、1人でファミレスになにも持たずに行く。だから、できればスマホも持たないほうがいいの。ノートとペン、鉛筆だけ持って、浮かぶまで、その世界に入れるまでそこにいるという作戦をずっとやる。
その次が、散歩もいいよね。散歩がけっこう適度にいい。それも、だから歩いてる、体動かしてる、血流回ってる。そして1人の世界に入れるっていって。
山田:その世界の入り方なんだけど、イメージの仕方としては、上空から。
久世:上空から?
山田:地球の上から。Google Earth的な感じ。ずーっとその世界があります。例えば、関東地方です。そして埼玉県です。埼玉県のとある町ですみたいな感じで入って。これもカメラワークあるじゃん、そんな感じで世界入っていくんだよ。
久世:その漫画の世界のことをずっと延々とね。
山田:そうそう。それで、そいつが朝起きる、そして彼女がいなくなってるみたいな感じで話が始まったとするじゃん。そしたら、そのカメラワークでどういう絵になってるかというのを想像するんだよね。
1個1個想像してって、この流れになって、そのあとこんなやつが現れてこんなこと言って、それで、そのあとこいつはショックを受けるだろうな。そしたら、このショックを受けたときの顔はこんな感じで……みたいな感じでイメージガーッとしていくわけ。
それで、まず第1に起こすのが、その世界に入って浮かんだとすんじゃん、そしたら例えばここで朝で「やべー」ってなって、「……」ってなって、セリフがこうあって、もういっちょ入ってつって、ここでいきなりドカーンってなって。
ドカンってなんかというと、自分だけはわかってるわけ。ドカーンってなって、ここでいきなり敵が襲ってきてるとか、「なんなんだ?」とか言って、「あの女が裏切ってたのかもしれない……」とか言って、「は?」……みたいな展開になったとすんじゃん。これが最後までずっとこの調子で描いていくんだよ。
それでそうすると、バーっと見たときに、「どうもこの流れ邪魔だな」とか「ここでこう伏線張っとこう」とか「ここで振ったセリフがここにくるな」とか、こうやっていろいろやっていくんだけど、基本的にはセリフ、セリフ。
そこで、例えばびっくり、「あっ!」とか、大きなインパクトのやつはでかくなる。説明ゼリフがここ並ぶみたいな。こんなふうにして強弱がつくわけだよ。これで。
そして最後に、ここでびっくりシーンが、要するにクライマックスね。クライマックスがあって、オチがあるみたいな。そして引きがある。どっちでもいいんだけど。ここまで持ってくみたいな、こういう流れがだいたいできる。ここが頭の中で物語ができて、だいたい映像とともにある。
山田:問題は、ここまでしっかりできると、今度ここからが作業なんだよ。本当に。ネームの作業ってやつなんだけど。
それでここで描いてあるのは、本当は16ページってなかなかないんだけど、手塚先生が言ってたのは16単位、要するにこれ雑誌に載りやすいんだよ。16ページ。だから、描くんだったら16の倍数、32とかになるんだけど。
とりあえずわかりやすくいうと、わかりやすい一番古典的なやつね。1ページ目が扉になっちゃうパターンね。クラシックだけど。今はもうだいぶ少ないけど。1ページ目が扉って。だからこれね。これなにかというと、「2、3」って書いてあんっでしょ、これ。これは見開きなの。
久世:インパクトのある絵をバーンって入れるってことですか?
山田:違うの。これ実をいうと、ここ、こうなって、この感覚で見ていくっていう。
要するにネームって紙芝居なんだよ。つまりこれ、こうあって、ここからこうやって次。紙芝居でしょ? これ。
これ本になってるときに、めくる、めくる、めくるって現れるのが、このめくり、めくり、めくりっていって読者が体験することになるので。そうすると考え方としては、1ページ、1ページって考えないでセットなんだよ。
久世:ああ、なるほどね。
山田:だから、場面転換の場合は次のページになったりとか、すごいキャラが現れたりときはここで現れる。
山田:まずこれが第一の基本です。
久世:じゃあ、もうめくったら違う世界が……というか。
山田:めくってバーン、めくってバーンってやると、そのリズムがあって。俺の『Bバージン』とか読んでもらうとわかるんだけど、とにかくリズム感なんだよ。そのものすごいコツ、それがあると、もうすごい読みやすくなる、テンポがよくなる。
山田:それで、すごい基本中の基本を言いますけど、右上開放です。
久世:開放?
山田:開放なんだよ。パーンと。だから「え?」とか。例えば『SLAM DUNK』とかでさ、次の試合に出る超でかいやつが現れたとかシーンあるじゃん。
久世:まあ、ありますね(笑)。
山田:それは必ずこっち側に描いてあります。バーンと。そして、セリフが少ないです。
久世:それはだから、視線の誘導まで計算してるってことですよね?
山田:視線の誘導の話はあとでやります。ここが開放、要するにに一番最初「えっ」って思うシーン、ここ。だから、ここでごちゃごちゃやってる人はアマチュアなの。プロほどここが気持ちいいの。
久世:もうシンプルにパーンって見せてくれる。
山田:ここで「えっ!」とかいって、「お前マジかよ!?」ってなったときに「え、なにがマジかよ?」ってなるわけよ。
山田:それで「マジかよ、マジかよ」って話が、ここからの流れがあって、左下には圧がかかるわけ。
久世:圧?
山田:圧がかかる。「えー、なんなの、それ?」っていって、この次めちゃめちゃ気になる引きがここで入るわけだよ。
久世:うわー、めくりてー!
山田:めくりてーだよ。例えば、ここにちょっとだけ血が流れた手がこうやって見えてたとすんじゃん。「なに最後ここ? こいつ殺したの?」みたいな雰囲気になんじゃん。で、これをめくると、次のめくりで回答がここにくるわけだよ。
だから、ここが超大事。ここに圧。
久世:そういう方程式がね。
山田:その答え合わせがここ、ここ、ここって、こうやってなってくわけ。
しみちゃん:なるほど。
山田:この場合、クライマックスシーンで逆算して考えると、まあ手塚先生だったら、ここはブラックジャックが後ろ姿で去っていくところですよ。
(一同笑)
久世:わかりやすっ(笑)。
山田:もしくは、例えば引きの場合は、ここですごいやつ現れちゃったとか、もしくは……なんだろうな、いっぱいあるんだけど、引きで終わる場合もあるし、満足しましたみたいな感じで。でも、投稿の場合は引きがないので、だいたいここである種のオチというか、結果みたいな。
久世:ちゃんと終わらせる。
山田:これ基本、古典のことやってるので。これからのバリエーションなので。
山田:重要なのはここです。ここからこのあたりを、手塚先生は山場って言ってんだけど。
久世:要するに10ページから14ページ……15ページ?
山田:この終わり方でいうと、とにかくここ、このわずか6ページぐらいにみんなを最高に満足させるなにかを。あとで、めくりのなかで見開きの話をしますけど、見開きを持ってくるんだったら、ここです。
久世:ええっ、なんで?
山田:このあとに見開きのあとの、見開きのこともあとで説明するけど。ここで例えばなんらかの衝撃的なカットが入ったとすんじゃん。これで終わっちゃったら「は?」だよ。1ページで終わったら。
これに対する落としとして、このくらい必要なってくるという。そして、最後こうやってなるというさ。ここに持ってくるためのみたいな。
山田:ただ、あともう1個重要なのはここですね。ここの最初の4ページ。
これでつかめなかったら、もう読み飛ばされるのが漫画雑誌の世界。
久世:それがね。残酷だけどね。
山田:とにかくどうして日本の漫画がこれだけ刺激的でおもしろいかというと、20本近く1つの雑誌の中に入っていて、つまらなかったら飛ばされるんだよ。
つまりどういうことが起こってるかというと、序盤めっちゃおもしろそうな雰囲気がないと、もう通用しない。この序盤が大事って話で。
久世:「最後まで読んだらおもしろかったのにな」じゃ、ダメってことですね。
山田:そう。ここでめっちゃ、ここで大ゴマ使って、あとで話すけど、例えばここで「どうもこの子、裸じゃねーか」みたいな女の子がシルエットが入ったりする。もう読むよね(笑)。
久世:(笑)。
しみちゃん:読むよね(笑)。
山田:そうでしょ?
久世:だって、めくったら、もしかしたら裸かもしれませんもんね。
山田:という期待感みたいなやるじゃん。そうするとさ、この引きのあとに説明が入るんだよ。「やべえ、俺のベッドに裸の女がいる」みたいな、あったとすんじゃん。
そしたら、これがこうなってみたいな、もうこういうふうにして割っていくわけだよ。こうやって。
この部分でこう、ここの部分まで……ドカンはここだなとか、こうしてつって。そしたら、わりとここだなとかってなってきて。
これがいったん設計図として、こうやって起こして、こうやって起こして、こうやって起こす。この時にざっとでいいから、流れ、キメの台詞とか、それから魅せることっていうのをざっとでいいからできてると、だいたいこれができた時点でもうお仕事終わりです。
久世:おお!
山田:このやり方をやっているやつが週刊連載で長生きできる。なんでかというと、1ページ目からやっていったら地獄なのよ。なぜならば、ぐちゃぐちゃして、このへんで「どうすんだ、もう帰りたい」みたいになるわけ。「もう逃げたいみたい」になるんだけど。あと、ここまで行って「話がぜんぜん盛り上がってないぞ」みたいな。
1個ずつやっていったらやっぱりダメなんだよ。こうやってちょっとガーッと引いてみて、漫画というものを全体に1本でどうやってまとめていくかみたいなっていうことがわかってきて……これ基本みたいな。
久世:読ませる技術がわかってるんだから、そこはもう最大限使って、それに乗っかっていくってことですよね。
山田:そう。このあと秘伝で言いますけれども、オープンニングのつかみだったりとか、その流れ、クライマックス、この流れを落としていくみたいなことがやれれば、これがわかってるだけで相当違う。
久世:右上開放で。
山田:右上開放で、左下が圧。
久世:うわー、それすごいな。
山田:これが基本の1個目なんだけど、漫画ってすっごい多様なのよ。だから、実をいうと、これを頭に入れた上で、オリジナルのことをいくらやってもいいのがネームなの。
久世:へえ。
山田:それで、少女漫画とかものすごいいろんなことやり倒してるわけ。あとは『火の鳥』とかもやり倒してるし。
久世:一応この基本は踏襲しつつ、そこからどんどん崩していくという?
山田:これ手塚式なの、本当に。手塚式でいうと、最初の冒頭は一番大変。そのあと中詰め、もしくは長かった場合、なかで中盤の山があるんだよ。そこからクライマックスに向けていってオチになるという、このパターンです。ただ、これは本当に古典なので、これをマスター上でバンバン壊していっていいのがネーム。
久世:これから現代に通じる方法というのにいくということですよね。
山田:そうそう。そうなんだよ。
久世:ちなみに「さしすせそ」はまだってことですよね?
山田:やります。
久世:みなさんお持ちくださいね(笑)。
山田:言い忘れたことないかなと思って。まあそうだね。もう1つは、はっきり言って、「見せたいものってなんだ?」ってことが自分でつかめてると、こことここがわかるんだよ。
久世:なるほど。読ませたい一番始めのつかみと、最後のほうのバーンって。なにを一番この話で言わなきゃいけないかというのがわかると。
山田:だからワンパンマンだったら、ここでもう一撃で倒してるシーンとか入って。名前はサイタマみたいな。趣味はスーパーにいくことみたいな。「なにこいつ?」みたいな感じそれで、最後どうなるかというと「パンチしない」みたいなところがオチになる。
久世:(笑)。
山田:それは「パンチしない」というのをどう派手に見せるかというところになっていくとか逆算して。
久世:なるほね。
山田:要は「ワンパンマンに含まれているテーマみたいなものをどういうかたちで見せるか、投げるか」みたいなことが整理されてたら、もう大丈夫なんだよ。
久世:とりあえず、これを基本的に固めたら、あとは自分なりの個性を出していけばいいということですね。
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