2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山田:というふうになるのもよくわかるんだよ。だから、このへんがもめる理由で。で、ざっくりでですけどね、評価が分かれる3つの理由があります。
乙君:3つの理由、来ました。
山田:1つ目ですけど、1つはこの映画の強みでもあるんだけど、どういう部分が強いかというと、もう徹底してノイズカットしてるの。
山田:ノイズカットと分断。
乙君:ノイズカットと分断?
山田:そう。これをどういうふうに説明しようかというと、観てて、『ラ・ラ・ランド』はとくに、「うわー、こういう展開か。このあとこういうシーンになるんだろうな。見たくねーな」と思うところないんだよ。「Summer......」とか変わっちゃうわけ。「あっ、季節が過ぎちゃった」みたいな(笑)。
それから、「うわー、そうかあ。黒人の人出てくんだ。こういう問題にいくのかな?」と思ったら、別にそういうのもサーつって。「売れりゃあいいのか、売れなきゃいいのか、本当のアートってなにか?」っていうところで、「ああ、ここでめんどくせえ話いくかな」と思ったら、スルーみたいな。
乙君:おお。
山田:まあ、きれーいに嫌なものはカットで。わたせせいぞうスタイルですね。だから、街は汚れてないんです。
乙君:はあ、なるほど。キラキラしたまんまなんだ。
山田:キラキラなんですよ。ずーっと。「これは最近見たことあるな」と思ったら、なんか「糸森町に隕石が落ちる」みたいな。
乙君:それはねえ、そうですねえ。
しみちゃん:(笑)。
山田:ねえ。東京が全部るるぶみたいな。「なんで浅草バカにしてんだよ」とかって「浅草出てこねーんだ」……浅草出てくるか。「上野出せよ」みたいなさ、「上野も東京だぞ」みたいな。「観光地だぞ」って。でも、四ツ谷キラキラみたいなさ。
乙君:表参道でパンケーキ食って、みたいな。
山田:ものすごく、そういう嫌なものは完全にいりませんっていう、ノイズカットが起こってる。
乙君:つまりこれは、コメント欄にもありますけど、チューニングということですかね。
山田:まさにそのとおりです。
乙君:デイミアンチューニング。
山田:デイミアンチューニングというのが、まあそうなんだよね。
山田:人類、いろんな問題にはじまるあらゆる問題ってあるじゃん。社会問題。これがよくテーマになってくるわけだよ。この作品がとくに典型的なんだけど、同じミュージカル映画で『ヘアスプレー』ってあった。
乙君:『ヘアスプレー』。
山田:これ、太った女の子が「ミュージカルが大好き。音楽が大好き。踊るの大好き。最高!」みたいな感じで踊って、彼氏をゲットするぜみたいな。
それでやっていくうちに、テレビの番組に出てみたいな感じでいくんだけど、「そんなことやっちゃダメ」みたいな、すごく保守的な50年代から60年代ぐらいの話で。でも、この話で出てくるのが主に公民権運動なんだよね。人種差別の話なんだよ。これ。
乙君:おお。
山田:だから、「ブラックミュージック最高!」って白人の女の子が言うと「なに言ってんの?」って言われちゃう。
「ブラックチャンネル」というのがあって、黒人だけが出てるチャンネルがあるんだけど、「それって最高!」って主人公の白人の女の子が言うんだけど……っていう、それは逆マイノリティというか、なんつーのかな、なっちゃうわけで。でも、彼女は「関係ない。どっちも最高じゃない!」って言う。
それは、彼女がものすごく太ってるけるどかわいいんだよ。それもまたかぶってて。「スタイルがいい美しい女の子だけが、女の子として魅力的なわけじゃないわ」というのが入っているわけだよ。
乙君:はあ、(社会問題が)乗っかってますねえ。
山田:あらゆる問題について、葛藤があり、行動があり、前向きな解釈、そして未来を見せていく。もうこれね、ブロードウェイで観た時は、もうとにかくチケット取れなくて、大変な騒ぎだった。
乙君:へえ。
山田:これともう1個。あとでちょっとお話しますけどね、もう1個、典型的なパターンでいいますと、みんな大好き『グリー』ですね。
乙君:『グリー』。
山田:『グリー』、うん。『グリー』ってドラマが……知ってる? これ。
乙君:うん。まあ噂では。
山田:あとでちょっと話しますけど、『グリー』のすごさって、『グリー』、まさにスクールカーストものなのね。
乙君:ほう。
山田:スクールカーストで頂点にいるチアリーダー、フットボールのスターから、マイノリティ、それから人種問題、それから障がい者も出てくるよね。いろんな人たちがいて、その下のほうにいる人たちほどものすごい悲惨な差別を受けてるんだけど、負けないと。
そして、歌うことによって開放される。歌うことによって理解し合える、協調し合える、そして未来を開いていくという話で。これはとにかく言ってみれば『ズートピア』です。多様性最高。
乙君:うんうん。
山田:これ、おもしろいのが2009年スタート。これってオバマ政権のスタートなんだよね。
乙君:きたきたー。
山田:は〜い。これ怖い話ですね~。どういうことでしょうか?
乙君:怖いの? どういうことですか?
山田:はい、こっちは「多様性最高」。はい、ラ・ラ・ランド、ノイズカットです。
乙君:ああ。
山田:「いらないものいらないんです。移民は出ていってください。白人のためのアメリカに戻りましょう!」っていうことの、分断の時代をちょっとかぶっているというところでゾクッと怖い感じが入ってくるわけですよ。
乙君:それを意識はしてなくても。
山田:出ちゃってる。
乙君:表層に出てしまってるのが。
山田:そう、そうなんだよ。トランプ、アメリカファースト。これ描いているのは、白人ファーストだった時代のオマージュ。「あの頃って最高」。だけど、フレッド・アステアとかが活躍していた時は、黒人が主人公ではないわけだよ。だから、ほかのあらゆるマイノリティが背景にされてしまう時代みたいなもののオマージュ。
乙君:なるほどね。
山田:はいはい、ちょっと怖いですね〜。
乙君:そう言われると、なんかそんな気がしてきますね。
山田:みなさんこれ、一番日本でピンとくる感じでどういうことかというと、FacebookとかTwitterとかでミュートとかしていくと、結局その人にとっての世界になるわけだよ。情報が。
乙君:そうですね。自分のほしい情報しか入ってこない。
山田:自分の見たい世界だけが見える。まさにこれ、今回あとでエヴァで言おうとしてる、「それが君の望んだ世界なんだよ」。
しみちゃん:(笑)。
乙君:ウェーイ。
山田:ウェーイ。選択してしまった。ここにいるということ。そして、ほかは見ないということ。もう社会問題から離れるということを。
これ、さっき言ったお笑いの話とも通じるんですけど、「世間のこととか、政治のこととか、世の中で困ってる人のこととか、どうでもよくねえ?」。だから、この時に言ってる夢ってものが個人の欲望に見えるから、それに気がついてる人はひっかかるんだよ。キキキキキッ。
乙君:なるほど。「その夢ってただのエゴじゃねえか?」ってこと?
山田:そういうことです。いわゆる『グリー』が多様性を言っていることで意識高い系だとすると、残念ながら意識低い系に見えてしまうわけですよ。言いませんよ。意識低い系とは。
乙君:言った、言った。言ったよね?(笑)。
しみちゃん:(笑)。
山田:だけど、そう見えてしまうというノイズです。これが。
乙君:あ、見えてしまうだけね。
山田:見えてしまうように。そうなんですよ。なぜかというと、トランプっぽいんですよ。これ実をいうと。
乙君:うわー、そんなの……いやー、なるほどねえ。
山田:そうです。だから、これで違和感ある人は、『グリー』見てなかったら『グリー』をぜひ見てほしいっていう話なんですよ。
乙君:おお。
山田:それと、やばいよ。時間ないから先……あと2番目。これは、アメリカ文学っていうのがあるじゃん。
乙君:マーク・トウェインだ。
山田:うん。それで、途中からアメリカ文学には不条理の死というのがよく出てくるんだよ。いきなりさ、よく映画で出てくるでしょ。うまくいってるのにいきなり交通事故で死んだりするじゃん。ああいう唐突のなにかというさ。いきなり穴に落ちるみたいなさ。『ガープの世界』とか『イカとクジラ』とか。『華麗なるギャツビー』なんかもそうなんだよ。
そういう、アメリカの文学の歴史みたいなものには、必ず車に乗ったら「事故るかもしれない」という怖さがあるわけ。常に。だから、「うわ、幸せそうだな」と思ったら、「事故るんじゃねーかな」「やっぱり対向車トラック来ちゃったよ。ドーン!」みたいなやつが来るというのがアメリカなんだけど、これ完全に消しています。アメリカの文学マナーを完全に消してるんだよ。
乙君:ほう。
山田:俺からするとね。「じゃあどんな映画がのれるか?」つったら、この同じ業界ものだとしたら、俺は圧倒的に『バードマン』のほうがのれるわけね。なんでかっつうと、『バードマン』はもうのっぴきならないの。俺にとっては。
乙君:のっぴきならないんですか。
山田:なんでかつーと、こういうことなんですよね。夢というのを追っかけてるときはね、基本的に「夢を追うんだ!」なんていうときで、もうねサンゴ礁の中にいるんですよ。
乙君:ラグーンにいるんだ。
山田:ラグーンなんですよ。
乙君:ニモが。
山田:ラグーンで「ウニ踏んだ。痛い」とか「ナマコ気持ち悪い」とか言ってるレベルの話。これはいいんです。みんなここで夢を育んで、いずれ大海に出ていくと、ここにドロップオフといって、サメはいるし、寒いし、海流悪いし、地獄が待ってるわけですよ。いつこうなると思います? 浅瀬から。
乙君:いつ?
山田:そう。売れたときなんです。
乙君:おおー!?
山田:怖い、怖い! 結婚したあとなんです。怖い、怖い、怖い!
そういうやつなんですよ。だから、ここの話をしてる。だから、こっちで地獄でサメに食われた人は、この頃を思い出すんですよ。「あの頃は……」みたいな。「あのまんまずっといたかった」「疑うこともなく、知り合う人たちを友達と呼びたかった」とか。またユーミン出ちゃった(笑)。そういうやつなんですよ。
だから、この浅瀬……それを話が浅いと言ってるわけじゃないですよ。浅瀬の時代なんですよ。
乙君:なるほど、なるほど。
山田:そういうことなの。これって、ここで終わってしまうっていうことは、ここから先の人生を描くってことを放棄してる。イコール、「人生を描くことを放棄してるんじゃないか?」って思う人は、この外に行ったことのある人だったら、感じてしまうわけだよ。
乙君:なるほどね。
山田:だから、本格的に行っちゃったやつは、「ちょっと待てよ」と思ってる。そして……やべえ、もう時間ねえ。
乙君:大丈夫です。ゆっくり行きましょう。
山田:延長はできないか。
スタッフ:大丈夫です。
山田:ちょっといい? じゃあ。あとは、さっき言ってた、少女漫画じゃないかという。少女漫画メソッドがめちゃめちゃ入ってくる。
乙君:うん。
山田:少女漫画っていうのは、まさに浅瀬の話を描いていい世界なの。少女が読むから。だから「壁ドン男子。いや、本当はやさしい。犬拾ってる」みたいな。
乙君:猫、助ける。
山田:「雨のなか犬拾ってる。あんなむかつくやつなのに……ドキドキ」みたいな。っていうやつが許される世界だから、少女漫画とすごく近い世界だなと思って。
これはどういうことかというと、観た人はわかるけど、女がほしいと思ったことはすべて手に入る世界なんだよ。入っちゃうんですよ。ピュアな自分がいて、そこには必ず助けてくれる男が現れる。勇気を出して自分を出すと幸せになれるという構造が、これ少女漫画目線なの、これ。「素直になったら、伝わった」みたいなやつです。
最後まさに主人公のミアが行動する、言わないですけど、そういうエッセンスですね。まさにね。まさに彼女がそこをいってる。殻を破って、未来にいくという少女漫画のメソッドが入っているという話ですよね。
そうすると当然同時に起こるのが、視界は狭いんですよ。だから「半径5メートル」って言われるわけ。でも、それでいいんだよ。日常を描く。女の人たちは見たいものしか見ない。それをアートにしてるのが少女漫画なので。だから背景しっかり描かなくていいんだよ。大事なのは、彼の表情とか肩幅とか、そういうやつなんだよ。
乙君:こっちの角度みたいなね。
山田:角度。こっち(斜め後ろ)から見ているとか。そうそう。とか、キュンってくるセリフみたいな、そういうやつが描けてればよくて。
乙君:波の音みたいな。クラクションとかね。
山田:あとの後ろにいるおっさんとかいらねーし、みたいな。
乙君:ああ、確かにね。
山田:そうそう。路上で困ってる人いらねーし。しらねーし。
乙君:物乞いもいらないし。
山田:そういうことなんだよね。だから、そういう意味では、ノイズカットするという部分でも、少女漫画ともすごくリンクするという感じですね。
それから……キリねえな。浅瀬時代でいうと、先週言ってたNOKKOなんかまさにそうで。レベッカの『LITTLE ROCK』という曲があるけど、あの頃の気分みたいなのが乗っかってるという。これはまいいか、そんなに広げなくて。
ここで、今の浅瀬の話のなかであえて言うならば、この時(浅瀬)にいる時に感じてる気分というのは「穴には落ちたくない」と思ってるわけだよ。今までは「穴に落ちるのが人生だ。さあ、どうする?」というのは映画をアメリカは作ってきたんだけど、「穴に落ちたくないんです」「お金払ってまで穴に落ちる話見たくないんです」というチューニングが行われているという。
乙君:つまり、エンターテイメントっていうことでしょ?
山田:エンターテイメントです。そうそう。それでちょっと待って。あとけもフレの話はどうしようかな。後で言おうか。言っちゃおうか。
乙君:後半にしましょう。
山田:後半にしますか。そうだね。
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