2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:これからプロデューサーというお仕事についてだったりとか、あとは映画の裏話であったり、そして、ショートフィルムというジャンルについてのお話をいろいろ聞いていきたいなと思っているんですけれども。
鈴木さん自身が、テレビに出られたり、ラジオに出られたり、こうやってトークイベントに出られたりしていますけど、それは、もともと自分で広めていこうみたいな思いから出られているんですかね?
鈴木敏夫氏(以下、鈴木):そういうことはなかったんですけど、きっかけは『もののけ姫』でしたね。そのときに宮崎駿が、いきなり僕の部屋にやって来て、「映画を作った上に、なぜ俺が取材までやらなきゃいけないんだ」と(笑)。「それは本来プロデューサーの仕事ではないか」と。すごい剣幕で怒ってきて、それで、「まぁしょうがないな」と思って(笑)。
それまで僕は裏方に徹していたんですよ。自分が出て行くということに対して、非常に抵抗がありました。でも割り切りまして。それからちゃんと出るようにして、映画の宣伝もするようになりました。そうやって考えると、短い歴史なんですよ(笑)。
司会者:プロデューサーになるということ自体が、もともと映画を作っていこうという気持ちでスタートしたわけではないんですよね?
鈴木:そうですね。僕、子供のころから映画が大好きで、なにしろ僕が生まれたころは、まだいわゆるテレビというものがない時代だったんで。気がつくと、映画がすごい好きで毎週、映画館へ行く。
お袋と親父というのは当然いたわけで。お袋が、洋画が大好きなんですよ。親父が日本映画で。それをテレコで、交代で連れていかれるんで、僕は同じ量だけ洋画も邦画も見ていたと。それがたぶんトラウマ、きっかけになったんでしょう。だから、だんだん歳をとっていっても、とにかく映画が好きな子供になってしまい、それで映画が好きだというのはあったんですよ。
みなさんがご存知かどうか、1978年、今から37年前ですか。『宇宙戦艦ヤマト』というのが、すごくいろんな若い人に支持されて。それまでアニメーションというのは、子供のものだと思われてたんですけれど。
それをきっかけに、実は若い大人たち、つまり小さい子向けじゃないアニメーション映画が、みなさんに支持される。実はそれをきっかけに、『アニメージュ』というのを作るんですけれど。
それで、やっているときに、いわゆる『ガンダム』というのに出会いまして。ガンダムの資料だけが来たんですよ。それを見た瞬間、なんか気持ちが働いたんですよね。「この作品はもしかしたら、いろんな人を巻き込むかもしれない。人気が出るかもしれない」って。
いまだによく覚えているんですけれど、雑誌の世界で、この日が終わればもうそれは本になっちゃうという、校了という日があるんですけど。その日に、ガンダムの情報が来て、本当は、1ページのうちの半分くらいしかページなかったんですけど、急遽、全部やり直して、そのガンダムのページを多く取ったんですよ(笑)。
そしたら、それを作ってた富野(由悠季)さんという人が、僕がそういうことをやったことで、数あるアニメ誌のなかで、『アニメージュ』のことをすごく信頼してくれて。
僕、そのときに、ふっと思い付いたんですよ。要するに、まだガンダムというのは、当時海のものとも山のものともわからない。だけど、それまでヒット作を追いかけてたわけですが、それをやめてですね。雑誌だったんですけれど、自分たちでこれがヒットすると決めて、毎号やっていけば。
要するに1年間、全部ガンダムやろうと。特集は全部ガンダムだと。表紙もガンダムだと。それでやってたら、本当に、人気が出たんですよね。そのときに、僕は初めて、雑誌がきっかけになって、作品がヒットすることもあるなんてことをちょっと学ぶんですよ。
ガンダムはある段階でテレビは終わるんですけれど。ヒットしているやつをなにかじゃなくて、「次にどれをヒット作にしようか?」なんてね、図々しいことをみんなで相談する(笑)。
そんなことやってるうちに、自分たちで決めて、それで雑誌を作っていく。それも、やってるうちに飽きてきたんですよね。飽きてきて、いろんな要素が絡まるんですけど、飽きてきて「自分たちで映画作っちゃったら?」と。それを雑誌で扱えば。
それが実は、『ナウシカ』なんですよ。あとで考えると、実はきっかけ。ナウシカを作ろうって、これがね、たぶんプロデュースの最初なんですよね。
司会者:今思えば、プロデューサーとして、一番大切にしているというか、信念として持っているものって、なにかありますか?
鈴木:どこかで僕、そういうことを覚えたんですけど。とくに初期は、監督の味方になること。
企画って、いろんな人がいろんなことを言うんですよ。「これ本当にいいの?」とか。そういうときに、「いや、いいんだ!」って、それを言い切る。それを本当に僕が思ってるかわかんないですよ。わかんないけど言い切っちゃうんですよね。
例えば、今だから話せる話としては『もののけ姫』をやろうというときなんかは、まぁお金を出す人たちが、みんな大騒ぎだったんですよ。それはなにかと言うと、宮崎駿にとってあの企画は、日本が舞台の時代劇なんですよね。
それを宮さんがやりたい。だったら『もののけ姫』だろうということで、やろうということになるんですけど。当時の日本映画界というのは、時代劇は絶対お客さんが来ない企画。そういうときに時代劇をやるというのは、いかがなものかっていうことなんですけどね。
お金を出す人たちにとっては、実を言うと、『もののけ姫』っていう企画は、三重苦。企画はよくない、ライバルが『ジュラシック・パーク』、おまけにお金がいつもの倍。最悪なんですよね。
お金を出す人たちがね、もちろん僕には声を掛けないで、各社いっぱい会社があったんで、「みなさん、この『もののけ姫』っていう企画は、どう思いますか?」と、どうもやったらしいんですよ。「企画を変えてもらえませんか?」ってみんなに提案したらしいんですよね(笑)。
それで、「なにしろライバルは『ジュラシック・パーク』でしょ。そんなときに日本のチャンバラなんか誰が観るんですか?」と。僕はそう言われたら、なにがなんでも、この『もののけ姫』でやりたくなったんですよね(笑)。なおかつ、宮さんの味方になる。そういうことがありました。
司会者:仕事が大変だから楽しくないと、だからこそ楽しく仕事やっていこうというのを心がけていると。
鈴木:それは、自分の信念として、仕事におもしろいとか、おもしろくないとか、そういうことって、ないような気がしてるんですよね。
なんでかと言ったときに、僕は古い人間なんで、根底にあるんですよね。仕事っていうのは「日々の糧を得るためにがんばる。つまり、ご飯食べるため」。
だとしたら、仕事におもしろさを求めるとか、僕はピンと来ないんですよ。僕は、とくに自分が雑誌を作っていたときは、みんなけっこう忙しかったんだよね。
編集部の人間を集めて、僕が常日頃言ってたのは。あえてこういう言い方で「仕事はつまらない。お金を得るというのが、そんなに楽しいわけがない。だけど、その仕事のために1日の大半の時間を割くんだから、せめてもっと楽しくやる。それしかないんじゃない」って。こういう言い方をよくしましたね。
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